メビライブ!サンシャイン!!〜無限の輝き〜   作:ブルー人

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ジードにもついにゼロが登場、というわけで……?


Episode2 つるぎ〜狩人〜

「奴を城へ近づけさせるな!命を張ってでも守り通せ!」

 

「「「了解!!」」」

 

「コトハ様は、どうか俺のそばを離れないように」

 

「……っ……わかりました」

 

とうとう現れてしまった巨大ボガールを前にして、何もできない自分を呪った。

 

戦うのは嫌いだ。争いなんて…………戦神の力なんて、欲しいわけじゃないのに。

 

 

 

王族にはこの星を守る義務がある。このままじっとしているだけなんて到底許されない行為だ。

 

わかっている。わかっているはずなのに…………

 

(どうして私の身体は……動いてくれないのですか……?)

 

城の窓からのぞく灰色の肌が視界に入る度に足の震えがひどくなっていく。

 

こちらの戦力は数少ない戦闘機と、歩兵のみ。どう考えてもあの体躯を討ち果たせるとは思えない。

 

また自分のせいで、兵と民が無駄に命を散らしていくのか……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ……あれは…………!?」

 

「……?ダイモン……?」

 

護衛についていたダイモンが外の景色を見て絶句した。

 

何事かと思った矢先、群青色の閃光が遠くの空で爆発するのが見えたのだ。

 

 

 

 

 

「光の…………巨人……?」

 

戦神に少し似ている……が、雰囲気はそれとは別物だ。

 

女神と例えるには語弊が感じられる、騎士然とした風格。

 

「……⁉︎コトハ様!?」

 

気がつけばコトハは、その場から飛び出していた。

 

 

◉◉◉

 

 

蒼い騎士は街を荒らしていた一体のボガールと対峙していた。

 

相手は通常のボガール。加えて単体ならば倒すことは容易いだろう。

 

巨人————ヒカリは右手を逆で前に出し、軽く挑発するように手招きした。

 

「◼︎◼︎◼︎◼︎————ッッ!!」

 

誘いに乗るように叫びながら突進してくるボガール。

 

それを軽くあしらうように受け流し、正確に手刀を与えていく。

 

(ぬるいわね)

 

『今の俺達ならば当然のことだろう』

 

今まで何体ものボガールをこの手で葬ってきた。この程度が相手ならば取るに足らない。

 

「◼︎◼︎◼︎◼︎————ッ!」

 

「フッ……!」

 

振り下ろされた鉤爪を両手で受け止め、身体を捻りながらのドロップキック。

 

重い蹴りが直撃したボガールはたまらず後方へとバランスを崩した。

 

その隙を見逃さず、ヒカリは抜刀するかのような動作でナイトブレスから光の刃を伸ばす。

 

「デエェェエエヤッ!!」

 

空中で軌跡を交差させる。質量を備えた残像が斬撃となって奴の懐へと射出された。

 

「◼︎◼︎◼︎◼︎ィィィイイイイ!!!!」

 

ブレードが炸裂した瞬間、耳をつんざくような断末魔が地に響き渡り、同時に爆散したボガールの肉片が周囲へ飛び散る。

 

戦場で静かに佇む蒼雷の騎士を、人々は神でも崇めるような歓声で讃えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう」

 

変身を解き、草原のど真ん中で一息つく。

 

もしかしたら一分もかかっていないのでは、と思うほどに早く片付いてしまった。

 

出会ったばかりの頃と比べれば、自分達の実力もかなりのものになっていると実感できる。

 

「掴みはオーケー……って感じかしら?」

 

『ああ。もしかしたら俺達のような存在とは馴染み深い惑星なのかもしれん』

 

過去にウルトラマンがやってきたのか、または彼らに近い存在が守り神としているのか。

 

前者は聞いたことがないのでおそらくは後者だろう。

 

……だとしても先ほどの民衆の反応は大げさすぎやしないか?と唸るステラ。

 

「まあとりあえず、危険視されてはいないみたいだし……このまま城へ向かって正体打ち明けちゃおうかしら」

 

『信じてもらえるかは別だがな』

 

気を取り直して城の方へと向かおうとしたステラだが、背後に猛スピードで迫る気配を感じ取り足を止めた。

 

ボガールとは違い全く悪意のないそれは一気にこちらへ肉薄してくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「だれ————」

 

「あっあの!」

 

振り返ると唐突に突き出された大きな瞳に戸惑い、つい後ろへ下がってしまった。

 

帽子が頭から落ち、隠していた表情が露わになる。

 

いつの間にかしっかりと握られていた両手。

 

目の前の少女は輝いた瞳をこちらへ向け、ベージュ色の髪を揺らしながら言った。

 

「あなた、ですよね!?さっきの巨人!」

 

「えっ……はぁ!?」

 

 

【挿絵表示】

 

 

キラキラとした双眸をまっすぐとステラに向けた彼女は期待に満ちた声音で問うた。

 

「さっきの騎士様と同じ雰囲気があなたからするんです!そうですよね!?」

 

「えっと、あー…………」

 

視線を前から逸らしてヒカリに助けを求めるステラ。

 

(どうするの……!?ていうかどうしてバレてるのよ!?)

 

『俺に聞かれても困るのだが……』

 

 

 

 

 

「違うの……ですか?」

 

瞬間、衝撃が走った。

 

どこか甘えているような口調で上目遣いになる少女を視界に入れた直後、

 

「……その通りよ」

 

ステラは即答していた。

 

「やっぱり!」

 

ぱあっと表情を明るくさせる少女に奇妙な違和感を感じつつ、口を滑らせたことを後悔する。

 

 

 

 

 

「姫様————!」

 

遅れて駆けつけてきたのは武装した男達の集団だった。

 

一人だけ装いの違う青年が真っ先に飛び出し、間に入ってステラの手を握っていた少女を引き剥がす。

 

「……貴様、何者だ?」

 

そして最初に彼が向けてきたものは言葉ではなく、刀だった。

 

「待ってくださいダイモン!その方は……!」

 

少女の言葉を聞き流し、青年はステラの右腕へと視線を落とす。

 

先ほど現れた巨人と同じ物————ナイトブレスがあることを確認すると、青年は警戒心を隠すことなく首筋に刃を当ててきた。

 

「ずいぶんと荒っぽい歓迎ね」

 

「黙れ。先の青い巨人は貴様だな?あの風貌は噂で聞いたことがある。……ハンターナイトツルギ」

 

もはや懐かしく感じる名を出され、ステラとヒカリはきょとんとした様子で青年を見た。

 

「ダイモン!」

 

「……⁉︎姫様……!?」

 

少女は青年が構えていた刀を振り払ってステラの前へ立ち、庇うように両腕を広げた。

 

「彼女を傷つけることは許しません!」

 

「どうか退がっていてください。その者はこの宇宙でも悪名高い。目的のためならば手段を選ばない冷酷な人物として知れ渡っています」

 

ツルギとしての活動はともかく、地球での活躍はカノンの人々にとって知る由もない。

 

狩人として名が広まってしまったステラとヒカリに対して当然の反応といえるだろう。

 

(めんどくさいわね。蹴散らしちゃう?)

 

『いや、ここは穏便にいこう』

 

(冗談よ)

 

 

「ま、勝手にこの星に入ったのは事実だし。抵抗する気はないわ」

 

おもむろにホールドアップしたステラを見て青年は刀を鞘に戻し、ステラの両腕に縄をかけようとする。

 

「お待ちなさい!」

 

青年を制止した後、少女は威厳を含んだ声で言い放った。

 

「この方は城に連れて行きます」

 

「コトハ様……!正気なのですか!?」

 

「私の命令に背くあなたではないでしょう?」

 

「…………」

 

不服だと言わんばかりにステラを睨む青年だったが、少女の言った通り取り出した縄を懐にしまいこんだ。

 

(……助かったのかしら)

 

『そのようだな』

 

 

◉◉◉

 

 

「……いったい何をお考えなのだ……!あんな得体の知れない者を自室に入れるなど……!」

 

ダイモンは不安を募らせながら扉の前で腕を組んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「————光の国、ですか」

 

「ええ。まあわたしはそこの出身じゃないけどね」

 

用意された椅子に腰かけ、向かい合いながらお互いの事情を話した。

 

目の前にいる少女の名はコトハ。惑星カノンを統べる王族の姫君なのだという。

 

「それでね、アークボガールを倒すまでの間この星に滞在させてもらえれば嬉しいのだけれど」

 

「それはもちろん、こちらからお願いしたいくらいです!今の私達にボガールと戦う術はありませんから……」

 

「……?どういうこと?」

 

話を聞く限りでは、この星には“戦神”と呼ばれる存在がある。

 

王族のみが変身できるという、カノンの守り神だ。

 

ウルトラマンと同等の力を持つ戦神ならば、ボガールごとき倒すのは容易いはずなのだが……

 

「恥ずかしながら……。私は戦神になることができないのです」

 

「……戦神に……なれない……?」

 

「はい。戦いを拒む私を、王家の血が認めていないのかもしれません」

 

「なるほどね。……それで、わたし達に代わりにこの星を守ってほしいと」

 

『それでは、意味がないのではなかろうか?』

 

先ほどまで黙っていたヒカリがステラの身体を飛び出し、コトハに語りかけた。

 

『承知しているとは思うが、俺達は任務を終えればこの星を去ることになる。そうなればこの先のあらゆる脅威からカノンを守るのは君だ』

 

「……っ……それは……」

 

『アークボガールは強い。俺としても君の助力が欲しいところだ。どうにかして力を扱えるようにしてもらいたい』

 

「わかっています。……しかし、私は————」

 

コトハは苦い表情で言葉を濁す。

 

「——怖いのです。私の母が戦神になれなくなったのは、怪獣から受けた毒のせいですから。いずれ私もそうなると考えると……」

 

コトハの母、ヒルメが患っている病の原因は、ガーゴルゴンと呼ばれる怪獣との戦闘で負ったダメージだった。

 

別名石化魔獣とも言われる奴は、あらゆるものを石へ変える光線を放つことができる。

 

ヒルメはガーゴルゴンを倒すことには成功したが、同時に石化の呪いを受けてしまったのだ。

 

全身が徐々に石へと変わる呪い。いずれ心臓までも石に変わり、生命活動は完全に停止するだろう。

 

「お母様はもう歩くことすらできません。……バカみたい、ですよね。故郷が危ないのに、私は戦いから逃げようとしている」

 

「そう?」

 

「え?」

 

コトハの自虐を気に留めていない様子でそう口にするステラ。

 

「人間らしくていいと思うけど」

 

「…………」

 

「戦うことが怖いなんて当たり前でしょう?私はあなたを臆病だと思うけど、バカだとは思わないわ」

 

コトハは呆然とした顔で落ち着いているステラを観察するように見る。

 

「不思議な人ですね、ステラ様は…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

————ドォ……ォオ…………ン……!

 

「「……!?」」

 

何かが落ちてきたような衝撃を感じ、ステラとコトハは咄嗟に椅子から立ち上がった。

 

城の中からも騒がしい声が聞こえ、外で待機していたはずのダイモンが焦った様子で部屋の扉を開く。

 

「大変ですコトハ様!」

 

「何事ですか!?」

 

「それが…………正体不明の巨人が現れました!」

 

「なんですって……?」

 

てっきりボガールが再びやってきたのかと思ったが、違うみたいだ。

 

ステラは巨人と聞いて頭に浮かんだ予想を言葉にしてつぶやいた。

 

「もしかして……援軍?」

 

『その可能性はあり得るな。行ってみるとしよう』

 

「……!ステラ様!?」

 

地面を蹴り、コトハの自室から弾丸のような速度で外へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えーっと…………ここでいいのか?」

 

城内にある庭園で一人立っている巨人が一人。

 

ステラは彼の足元までやってくると、その巨大な身体を見上げた。

 

「おっ!いたいた。暑苦しいコートに、いもくさい帽子…………あんたがヒカリか?」

 

青と赤と銀。

 

ブーメランのような形状をした突起が頭部に二つ。

 

さらに特徴的だったのは、目つきが悪いこと。

 

「あなたは……?」

 

「俺か?……ふっ」

 

自信ありげに腰に手を当て、巨人は自ら名乗り上げた。

 

「俺はゼロ。ウルトラマンゼロだ」

 

 

 

 




ゼロが登場です。
一章ではメビウスとヒカリがメインで進めてたので、なんだか新鮮ですね。
彼も外伝でのメインキャラとして活躍させていきます!

解説はゼロについて。

以前解説したものでゼロについての記述があったと思いますが、ここでもう一度。
この作品の世界ではゼロとベリアルに面識はありません。
セブンが父親だということは修行を終え、本人から聞かされたことになっております。
ウルティメイトイージスも持っていないので、原作と比べればかなり力が抑えられてる感じです。


今後のことを少し伝えると、外伝ではカノンとは別の舞台も用意したいな〜と思っております。
それでは次回もお楽しみに!


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