メビライブ!サンシャイン!!〜無限の輝き〜   作:ブルー人

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ジードは7月からでしたっけ……楽しみすぎてもう……。

最近別の執筆活動でなかなか今作に時間がとれずにいます。一週間に一度は更新しようと思っていましたが、ついに今回それも叶わず……(少し前からそうだった気もしますが)申し訳ありません。
遅いなぁ、と感じた時にはこの前書きを思い出して、お察しいただけると幸いです。


第54話 進む条件

「…………」

 

肌を焼く炎天下のなか、険しい面持ちで各々のスマートフォンの画面を凝視する。

 

ついにラブライブの予備予選結果…………それがもうすぐ発表されようとしていた。

 

「まだ?」

 

「まったく……どれだけ待たせるんですの……!」

 

「あ〜こういうの苦手!ちょっと走ってくる!」

 

落ち着きなくそわそわした様子の一同が不安に顔をしかめるなか、未来は少し離れたところで彼女達に見守るような瞳を向けていた。

 

「あんまり食べてると太るよ?」

 

「食べてないと落ち着かないずら!」

 

「リトルデーモンの皆さん……。この堕天使ヨハネに魔力を……霊力を……全ての……力をっ!」

 

(緊張してんなあ……)

 

前回ライブを行ってから今日までずっとこのような調子だったが、それもあと数分もすれば終わる。泣いても笑っても結果は出るのだ。

 

「あ、きた!」

 

曜の一声で彼女のそばに全員が駆け寄る。

 

「ラブライブ……予備予選……合格者……」

 

「ついに発表か……!」

 

「緊張する〜!」

 

Aqours(アクア)のア、ですわよア!ア!ア!アーーーー」

 

ぴこん、という通知音と共に複数のグループ名が羅列されていく。

 

食いつくように身を乗り出した千歌達に代わり、曜が一行目にある文字を読み上げた。

 

「イーズーエクスプレス…………」

 

ひゅおお、と皆の心境を表すような冷たい風が吹き抜け、千歌達は揃って眉を下げた。

 

「うそ!」

 

「落ちた……」

 

「そんなぁ〜!」

 

落胆しているダイヤの横から顔をのぞかせ、未来は画面の端に小さく書かれている文字に気づく。

 

「……ん?曜、それ…………」

 

「……あ、エントリーナンバー順だった」

 

ずっこける者のなかから顔を上げていち早くサイトを確認しようとする鞠莉。

 

「鞠莉さん、どうだった?」

 

鞠莉が見開いた瞳を向けた先にあった文字を確認する。

 

縦に並ぶグループ名のなかに、確かに「Aqours」の文字が見られた。

 

「Aqours……!あった!」

 

「予備予選……突破…………!」

 

「……鞠莉さん?」

 

「おう……まい……がぁ……!」

 

「まr」

 

「オウマイガーーーーーーッ!!」

 

 

◉◉◉

 

 

「さあ、今朝とれたばかりの魚だよ!みんな食べてね!」

 

部室のテーブルの上に置かれたいかにも高そうな大量の舟盛り刺身。

 

果南が用意してくれたものだった。

 

「なんで……お祝いに刺身なの?」

 

「だって、干物じゃお祝いっぽくないかなって」

 

「干物以外にもあるでしょ……」

 

「そうそう、夏みかんとか!」

 

「パンとか」

 

 

 

各々の食べたいものが飛び交うなか、パソコンを抱えたルビィが慌てた様子で駆けてきた。

 

「見てください!」

 

「この前のPV……?」

 

予備予選で千歌達が披露した「想いよひとつになれ」のPVが開かれていて、ふと下にある再生数に視線を移す。

 

なんと十五万以上もの再生数だ。

 

「って……めちゃくちゃ見られてるじゃん!」

 

「私達のPVが!?」

 

「それだけじゃなくて、コメントもたくさん付いていて!」

 

さらにページを下にスクロールしていくと、「かわいい」「ダークホース」といったコメントのなか、全国進出を予想するものまであったのだ。

 

始めたばかりの頃に比べれば、Aqoursの評価も上がっていることがはっきりとわかる。

 

「よかった、今度はゼロじゃなくて」

 

「そりゃそうでしょ、予選突破したんだから」

 

「予備予選、だけどな」

 

みんなが胸を弾ませていると、千歌の携帯から着信音が鳴る。

 

「梨子ちゃんだ!」

 

すぐさまスマホを耳に当てて電話に出る千歌。

 

 

 

 

 

「ふう……」

 

『どうかしたの?』

 

「なんか安心したら……どっと疲れが……」

 

『ははは。見守るほうも楽じゃないね』

 

ここまで来るのに色々あった。

 

メビウスと出会い、それに合わせたかのように千歌がスクールアイドルを始めた。

 

梨子と出会い、ステラと出会い、ファーストライブを成功させて……。

 

今思えば、全部運命だったのかもしれない。

 

(感傷に浸るにはまだ早いかな)

 

まだ何か終わったわけじゃない。むしろ始まったばかりだ。

 

千歌達はスクールアイドルの高みを目指し、未来はエンペラ星人という絶対的な壁を乗り越える。

 

それに、まだ浦の星の存続が決まったわけでもない。

 

 

「これは学校説明会も期待できそうだね」

 

「説明会?」

 

「ええ、セプテンバー(九月)に行うことにしたの」

 

「へえ。希望者はどれくらいなの?」

 

予備予選を突破したことで、浦の星の名前はさらに広く知れ渡ったはずだ。少なくともゼロなんてことはーーーーーー

 

「…………」

 

学校のサイトを開いた鞠莉が言葉を失った。

 

「……鞠莉さん?」

 

「ゼロ……」

 

「へ?」

 

「ゼロ…………だね」

 

彼女がそう口にした瞬間、皆の顔が驚愕の色に染められた。

 

 

◉◉◉

 

 

「はぁ……またゼロかあ……」

 

テーブルを囲んでかき氷をつつく千歌、曜、そして未来の三人。

 

松浦家が経営しているダイビングショップのフードコートで肩を落としていた。

 

「ゼロに愛されてるねぇ……」

 

「嬉しくな〜い……」

 

「入学希望となると、別なのかなあ」

 

「だって、あれだけ再生されてるんだよ?予備予選終わった帰りだって…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

予備予選を終えた帰り、駅でのことだ。

 

「あのっ!Aqoursの果南さんですよね!?」

 

「えっ?」

 

「やっぱりそうだ……!サインください!」

 

そう言って色紙を差し出してきた女の子は、どうやら千歌達のファンのようだった。

 

……といっても、自分達に人気が出てきたという実感のない彼女達にとってはあまりに唐突な出来事であり、皆は揃って呆けた顔を浮かべるだけだった。

 

「え、私でいいの?……ほんとに私で合ってる?」

 

困惑した様子で果南がペンを走らせる後ろで、ルビィもまた自分のファンに追いかけられていた。

 

「ピギィ〜!」

 

「握手してくださーい!!」

 

「ま、マネージャーさん通してくださ〜い!」

 

「え、俺!?」

 

 

 

 

 

 

 

「って感じで大人気だったのに……。これで生徒が全然増えなかったら、どうすればいいんだろ……」

 

「μ'sはこの時期にはもう、廃校を阻止してたんだよね」

 

「へ?ぇそうだっけ!?」

 

反っていた身体を戻して身を乗り出す千歌。

 

「うん。学校存続が、ほぼ決まってたらしいよ」

 

「しょうがないさ。向こうは東京、ここは内浦。比べるにしては色々と違いがありすぎる」

 

「差、あるなあ……」

 

しゅん、と顔をうつむかせる千歌。

 

「ここでスクールアイドルをやるってことは、それほど大変ってこと」

 

「あ、果南さん」

 

ダイビングスーツ姿で階段を上がってきた果南が隣の椅子に腰を下ろした。

 

スーツを脱いでビキニ姿が露わになるが、昔からの付き合いである三人は慣れたような顔だ。

 

「東京みたいにほっといても人が集まる場所じゃないしね」

 

「……でも、それを言い訳にしちゃダメだと思う」

 

数秒の沈黙の後、引き締まった表情になった千歌がこぼした。

 

「それがわかったうえで、私達はスクールアイドルやってるんだもん!」

 

「あぁ、そんなに急いで食べると……」

 

千歌が一気にかき氷を口にかきこんでその場を飛び出した。

 

「一人でもう少し考えてみる!」

 

「千歌ちゃん⁉︎」

 

そう言ってダイビングショップから駆け出したと思えばすぐに立ち止まり、どうやら頭痛を起こしたようで頭部に手を当てて唸った。

 

「うぅ……きたぁ……!」

 

 

◉◉◉

 

 

「返信が遅れてごめん。こっちも大丈夫だ、なんとかやっていけてる」

 

ステラに送るための映像を撮り、未来は力が抜けたようにベッドの上に倒れこんだ。

 

 

先日起こったクロノームの事件を思い出す。

 

あの時未来の命を救ったのは自分自身。だけどそれよりも前にベリアルに助けられたのは事実だ。

 

わからないことはまだたくさんある。不安なことも。

 

でもそれと同じくらい、希望だって確かにあるんだ。

 

「光の欠片……か」

 

人間のなかに宿ると言われる、究極の光の断片。ウルトラマンとの出会いにより、奥底に眠っていた力が目覚めようとしている。

 

エンペラ星人は千歌達や、未来の可能性に気づいているのだろうか。

 

ノワールが入れ知恵したと考えれば、彼女達に危険が及ぶことは免れない。

 

 

(救われてばかりじゃダメだな。俺自身が強くならないと)

 

炎の力を手に入れたことで以前よりは戦いやすくなったが、闇の皇帝に通用するかと問われれば首を横に振るほかない。

 

「どっかに稽古でもつけてくれる人がいればなあ」

 

 

そう細々と呟いた瞬間、机に置いてあったスマートフォンから着信音が鳴り、未来はベッドから上体を跳ね上がらせた。

 

(グループ通話……?)

 

Aqoursのグループで千歌からの着信だった。

 

「はいもしもし」

 

『よし、これで全員揃ったね!』

 

「どうかしたのか?」

 

 

 

『私……もう一度東京に行こうかと思ってるんだ!』

 

単刀直入に語る千歌からは、電話越しでも伝わる強い意志が感じられた。




ひとまず一章内で考えていた展開は前回でやり尽くしたので、ここからはしばらく穏やかな内容になると思います。

今回は千歌についての解説です。

今作では幼少期にディノゾールが内浦に降り立ったことで、二度目に奴が現れた時には若干のパニックを起こしていましたが、これは作者が扱いきれずにすぐに没となった設定なのは言うまでもありません。
未来には昔からの変わり者といった印象を持っているので、インペライザー戦の時に彼が正体を明かすまでは全くメビウスとの関係に気づいていませんでした。
十千万に住まわせていたはずのステラとの絡みもあまり描かれていませんでしたね……。千歌に限らず反省点が多いです、もう。

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