発売が待ちきれなくてHAPPY PARTY TRAINをリピートしまくってます。
秋に放送する二期も待ち遠しい……。
『うーん……』
「ど、どうですか?」
ルビィの小さな手に収まっている青い石を観察した後、メビウスは彼女の目の前で動きを止めた。
『確かに生命反応は感じるね』
「ほ、ほんとですかっ⁉︎」
詰め寄ってきたルビィに若干驚きつつ、メビウスは「うん」と肯定する。
ルビィが持っているのは、以前地球にやってきたクォーツ星人、サファイアが遺したものだ。
クォーツ星人が生命活動を終えた後、彼らの身体は宝石へと変わる。
ルビィはサファイアの形見であるこの石をメビウスと未来の元に持って行き、なんとか彼女を蘇らせる方法はないか聞きにきたのだ。
『でも……残念だけど、ほんとに微量だ。この子がもう一度肉体を得ることはないと思ったほうがいい』
「……そ、そうですか…………」
一変してしゅん、と下を向くルビィ。
彼女もわかってはいた。が、諦めきれなかったのだろう。
最後の希望であったメビウスからも無理だと言われたルビィは、隠しきれない悲しみを表に出す。
(それにしても……俺らが思っていたより、みんな宇宙人と関わってたんだな)
三年生組といいルビィといい、未来やメビウスが知らなかった話が今になって舞い込んでくる。
「ありがとうございました……」
『あっ待ってルビィちゃん!』
「……?」
肩を落とし、去ろうとしていたルビィを引き止め、メビウスは早口で伝えた。
『あくまで可能性の話だけど……。その石に生命反応が残ってるってことは、代わりになる”器”があれば、彼女はまた動くことができるかもしれないんだ』
「……‼︎はいっ!!」
一瞬で曇っていた顔が晴れ渡り、ルビィは青く透き通った石を持ったまま走ると、砂浜に広げていた敷物に座り込んだ。
彼女は身に付けていた上着を脱ぐと、
「あっ!ルビィちゃん!」
「おまたせしました〜!」
同じく水着姿の千歌や曜が海の中で手を振る。
…………そう、今未来達がいるのは海。つまりは合宿に来たのだが……。
「遊んでばっかだし」
確か予定では昼に海の家を手伝うはずだったのだが……、みんな思い思いの時間を過ごしている。
かく言う未来も皆に合わせて水着になっているので、実は内心ノリノリである。
『未来くんは泳がないの?』
「あんな女の子だらけのところに突っ込む勇気はない」
砂の城でも作ろうかと足を曲げたところで、ふと隣に立っていた梨子に気づく。
一点を見つめたまま動かない彼女にいつもとは違った雰囲気を感じ取った未来は首を傾けた。
「どうかしたか梨子?」
「……えっ?」
「なにか悩んでる顔してる」
図星だったのか。一瞬梨子は動揺したように見えた。
「……悩んでる…………」
「相談事があるなら遠慮なく……」
「ううん、大丈夫。ごめんね心配かけて」
作り笑顔でそう言う彼女だったが、やはり何かある気がしてならない。
(深く聞くのはやめておこう)
『そういえば、海の家の手伝いがあるって言ってたよね?』
「ああ、うん……たしかーーーー」
立ち上がった未来が指差した方へ砂浜にいた皆の視線が集まる。
錆びた屋根に今にも落ちそうな看板。しばらくの間人の手が入っていないのが丸わかりだ。
客が一人も寄り付かなそうな外観の海の家だった。お世辞にも都会的とは言えない。
「……はて?そのお店はどこですの?」
「いや、だからこれだよこれ」
「現実を見るずら」
受け入れたくない現実を前にして会長が壊れてしまった。
それに対してすぐ隣に建っている海の家は、開放的な作りで電飾まで施されており、客も入りきらないほどに繁盛している様子だった。
「ダメかもなこりゃ」
「都会の軍門に下るのです……?」
腕を組んだ鞠莉が、唐突に低い声を出す。
「私達はラブライブの決勝を目指しているんでしょう?あんなチャラチャラした店に負けるわけにはいかないわ!」
「鞠莉さん……あなたの言う通りですわ!」
嫌な予感を察した千歌達は、一斉に唸るような声を漏らした。
「千歌と梨子、果南さんは宣伝……。俺達は何をすれば?」
「あなた達四人には料理を担当してもらいます」
鞠莉、未来、曜、善子、と並べられた四人の前に立ったダイヤ。
「え?料理?」
「ええ。都会の方々に負けない料理で、お客のハートを鷲掴みにするのですわ!」
「あの、俺料理出来ないんだけど…………」
不意を突かれたかのようにダイヤは目を見開いて未来の方を見る。
「……あら?たしかあなたは一人暮らしだったはずでは……。自炊はしないのですか?」
「主食はコンビニ弁当です」
「たまに千歌ちゃんの家からお裾分けもらってるね」
料理はレシピを見ながらじゃないと全くこなすことができない。よって海の家のメニューに貢献することは不可能である。
「はぁ……期待はずれでしたわ」
「なんかすいませんね……」
「仕方ありませんわ。掃除でもしていてくださります?」
「了解!」
料理は女の子組に任せ、未来は早速傍らに落ちていた塵取りと箒へ手を伸ばした。
《……では、次のニュースです》
「……ん」
カウンターの横に設置されていたテレビから流れてきた音声に耳をかたむける。
画面には「行方不明」や「誘拐」といった文字が見える。
「最近こういうニュース多いな……」
近頃よく報道されるものに、突然人が行方不明になってしまう、といったニュースがある。
しかし不思議なことに、連続して起こっているはずの同じ内容の事件については全く触れられないのだ。
まるで、元々無かったかのように。
『ノワールが僕達の前からあまり姿を見せなくなったと思えば……、今度は別の事件が頻繁に起こってるね』
「……せめて犯人が、人間じゃないことを祈るよ」
「さすがにお店の後だとちょっとキツイね」
砂浜でのランニングを終えた果南がふと後ろを振り向くと、遠くの方で千歌達がバッタリと砂の上で倒れている光景が視界に入った。
予定通り海の家の手伝いが終わった後、次に練習メニューをこなそうとしていたAqoursの面々だったが……。
「こ、こんな特訓をμ'sはやっていたのですか……?」
「す、すごすぎる……」
バリバリ働いた直後にあの無茶な練習内容。大方の予想通り果南以外は立つこともままならない状態だ。
「やっぱり少し休んでからの方がいいよ」
「そ、そうですわね……。果南さんはともかく、私達にはとても……」
「水持ってくるから、ちょっと待ってて」
メビウスを連れて砂浜を飛び出した未来は、自宅の玄関前に準備しておいた水が入っている段ボール箱の所へ向かった。
「もうすぐ暗くなりそうだな……」
最近起きている事件がふと脳裏をよぎる。合宿中はみんな十千万に泊まる予定なので、心配することはないだろうが。
「よっと」
両手で段ボール箱を抱え、バランスを崩さないようにゆっくりと持ち上げる。
ーーーーーーーー…………ォォオ…………ォ……
「…………っ!?」
メビウスによって強化された聴覚が何かの鳴き声のような音を感じ取り、未来は咄嗟に周囲を確認する。
『……?どうかしたのかい?』
「今の音……聴こえなかったのか?」
『音……?』
どうやらメビウスには先ほどの鳴き声は聞こえていないようだ。もしかしたら未来だけが気づくよう、彼へダイレクトに発せられた音なのかもしれない。
(……どこかで聞いたことがあるような…………)
遠くへ波紋を広げるように鈍く聞こえるその音は、不思議と初めて聞いた気はしなかった。
◉◉◉
「くはははははは‼︎見ろ!俺の言った通りになったではないか!」
ダークネスフィアの周囲を漂う宇宙船。
メフィラス、デスレム、グローザム、ヤプールの四人が一人の青年を囲み、下品な笑いを船内に響かせた。
「皇帝の同胞と聞いたときは、どんな実力を持った者かと期待していたんだが……」
「まあそう言うなグローザム。このようなクズでも利用価値はあるさ」
散々な言われようである本人は、顔を伏せたまま左手にある黒いメビウスブレスを見つめている。
ーーーーこの力を手にした瞬間、理解した。
これは”光”なんかじゃない。
なら、なぜだ?ウルトラマンの、メビウスの光を奪ったはずなのに、どうして自分が使えるのは闇の力だけなんだ?
その答えはすぐに出た。
単純だ。ノワールという男が闇の存在だからだ。
ウルトラマンの光がノワールの手に渡ったその瞬間から、光は闇へと変換されたのだ。
(……諦めたわけじゃない)
色々なものを失って、沢山の命を奪って、その果てに手にしたものが闇の力だけ…………?
冗談じゃない。
(ボクは手に入れたはずなんだ……!ウルトラマンの力を……!)
どうやっても光が宿らないのなら、次に取る手は一つだ。
ーーーーウルトラマンという存在を、自分を否定したあの光の戦士を超える。
ウルトラマンという光を乗り越えた先には、きっとそれよりも素晴らしいものが待っているはずなんだ。
ーーーーボクは諦めない。
この手に入れた力でウルトラマンを超え、絶対的な存在へと昇華してみせる。
……いや、待て。
超えるべき存在はウルトラマンだけか?
否だ。彼らよりも優れた存在はいる。
…………そう、例えば…………
「……?なにを笑ってやがる?」
「いやあ、ごめんごめん。気に障ったのなら謝るよ」
不気味に口角をつり上げるノワールを見て、四天王達が怪訝そうに視線を注いだ。
「確かに今回はボクの負けさ。返す言葉もない」
「はははははッ!そうだろうそうだろう⁉︎」
あはは、と周りに合わせて笑いを飛ばすノワールだったが、その内心に秘めているものは穏やかではなかった。
ーーーーエンペラ星人。
……ウルトラの父と引き分けた存在。ウルトラ大戦争を引き起こした張本人。
奴を超えれば、光の戦士など敵ではない。
幸いエンペラ星人は自分のことを利用しているつもりでいるようだ。
ならばこちらもそれに乗じて、その首を頂くとしよう。
(……待っていろ日々ノ未来。ボクはこのまま終わるつもりはない)
もっと強い力を手に入れ、それを奴らに示してやるのだ。
ノワールという男が、光の戦士よりも優れていることを…………!
今回はサファイア関連や、未来の過去に関係する話を混ぜました。
そして懲りずに何かを企んでいる様子のノワールはこれからどうなるのか……?
今回の解説ではノワールについてまとめてみましょう。
ノワール(本名不詳)
エンペラ星人の同胞を名乗る宇宙人。いつも同じ服、それも全身真っ黒のものを身につけており、しかしながら清潔感を漂わせている。
エンペラ星人と同質の闇の力を身体に宿しているが、彼自身の力は皇帝のそれよりも遥かに劣る。
ただ、メビウスの力を奪ってからの能力は未知数であることから、未来達の脅威だということには変わりないだろう。
極度の寂しがり屋。よく笑う。
好きなもの:光の力。
嫌いなもの:日々ノ未来。Aqours。闇の力。