メビライブ!サンシャイン!!〜無限の輝き〜   作:ブルー人

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新規URのルビィちゃんを引き当ててやりました。
やっぱり11連は神です。


第32話 戦慄のエンカウンター

「この前のPVが五万再生?」

 

部室の窓際でうちわを扇ぐ千歌が後ろを向いて反応した。

 

「ほんとに⁉︎」

 

「”ランタンが綺麗だ”って、評判になったみたい」

 

いつものように自分達のスクールアイドルランキングを確認しようと、パソコン前に身を寄せて集まる。

 

「ランキングは……」

 

未来は端に表示されているランキングへと視線を移す。

 

そこに書かれていた数字は……。

 

「99位ぃ⁉︎」

 

「ずらっ⁉︎」

 

「……きた。きたキター!」

 

なんと全国で五千以上も存在するスクールアイドルの中で二桁台ときた。

 

千歌もこの躍進には予想外だったようで、興奮気味に距離を縮めてくる。

 

「一時的な盛り上がりってこともあるかもしれないけど、それでもすごいわね!」

 

「ランキング上昇率では一位!」

 

「おお!すごいずら!」

 

「この前の演出がかなり効いたみたいだな」

 

夜空に浮かぶスカイランタン。

 

歌の雰囲気と内浦の風景も合わさり、PVとしては最高と言ってもいいレベルのパフォーマンスが撮れたのだ。撮影していた当人が声を上げるくらいに。

 

「なんかさ、このままいったらラブライブ優勝できちゃうかも!」

 

「そんな簡単なわけないでしょう?」

 

「わかってるけど、でも可能性はゼロじゃないってことだよ」

 

何気ない会話の最中、パソコン画面のメールアイコンに赤い表示が現れ、メールを知らせる音が同時に鳴った。

 

「なんだ……?」

 

早速その中身を見ようと、アイコンをクリックする。

 

「”Aqoursの皆さん。東京スクールアイドルワールド運営委員会”」

 

「東京?」

 

「って書いてるな」

 

千歌達や未来にはあまり馴染みのない言葉に、その場にいた全員がキョトンとした顔へ変わる。

 

「東京って、あの東にある京……」

 

「なにそれツッコミ待ちか?」

 

蝉の鳴き声がやかましく響く夏場の一ページ。

 

数秒の間押し黙った後、千歌達は揃って声を上げた。

 

ーーーー東京だあ!!!!

 

 

◉◉◉

 

 

「東京、東京かぁ……」

 

『嬉しそうだね』

 

「そりゃあもう!内浦から東京行くっていったら一大イベントだからな!!」

 

リュックに着替えや荷物諸々を詰め込みながら、未来は早口でそう語る。

 

幼い頃に両親と一緒に旅行へ行ったりと、何度か足を運んだことはあったが、やはり同じ場所でも東京となると熱が入ってしまう。

 

「ところで、なんでお前が当たり前のように俺の家にいるんだ?」

 

「いいじゃない別に」

 

普段十千万で過ごしているはずのステラがソファーに腰掛け、頬杖をついて未来を見下ろしている。

 

「わたし、そのトーキョーって所には初めて行くんだけど……具体的にはどんな場所なの?」

 

「人々が集う混沌溢れる魔都さ」

 

「テンション上がりすぎて善子みたいな口調になってるわよ」

 

いまいち未来や千歌の喜びをわかっていない様子のステラは、退屈そうに自分の髪の毛を弄りだす。

 

「行くのはいいけど、あんまり羽目を外しすぎないようにね」

 

「そんなこと言って、お前が一番はしゃぐことになるかもよ?」

 

「わたしが?まさか。それに、わたしはわたしで向こうに用があるのよ」

 

「え?」

 

一息ついてソファーから立ち上がったステラは、右手に出現させたナイトブレスを未来に見せつける。

 

するとブレスから突然光で構成された文字が浮かび上がった。

 

「これは……?」

 

『……ウルトラサイン⁉︎』

 

未来の身体から飛び出したメビウスがステラの右腕辺りを飛び回る。

 

「そう。誰からかはわからないけど、わたしとヒカリにトーキョーから送られてきた」

 

「なんでまた……」

 

「それはわからない。……けど、イベントで未来達が同じ所に向かうなら好都合だわ」

 

文字とナイトブレスを消して、ステラは言う。

 

「これがもし罠で、わたしの留守を狙って敵が仕掛けてくるかもしれないから……、あなた達も一緒に付いてこれるなら安心よ」

 

「いやいやいや……、お前らがいなくても俺達がいるだろ」

 

「あなたとメビウスだけじゃ心配なのよ」

 

ナチュラルに傷つくことを言うステラにヘコみつつ、未来は荷物の整理を続ける。

 

「ところで未来」

 

「なんだ?」

 

「今光の欠片を持ってるのは、誰?」

 

背を向けたまま質問するステラを一瞥する。

 

思い出すまでに数秒間黙った後、未来は確かめるように頭に浮かんだ人名を口にした。

 

「メビウスの話によれば……。ヨハ子ちゃんと、花丸ちゃんかな?」

 

「二人だけ、か……」

 

小さく呟き、ステラは未来を見下ろす。

 

「過去のケースを見れば、光の欠片を発現した人間は複数いるみたいね」

 

「そうみたいだな」

 

「…………()()()()()()()()()()()、か……」

 

未来に聞こえないほどの大きさでそう言い残したステラは、出て行こうと玄関へ向かった。

 

「お邪魔したわね」

 

「おおー」

 

ヒラヒラと手だけ軽く振って、未来はステラを見送った。

 

 

◉◉◉

 

 

「おーっすー…………なにこれ」

 

「私に聞かないで……」

 

外に出ると、十千万の前にド派手な格好をしたルビィと千歌、それと探検家のような服装の花丸がいるのが見えた。一体どこに何をするつもりだったのか。

 

「美渡さんにでも何か吹き込まれたか……」

 

「未来くんも梨子ちゃんもそんな格好で東京行って大丈夫なの?」

 

「それはこっちのセリフだと思う……」

 

未来は半袖のジーンズジャンパーにワンショルダーのリュックと、いたって普通の外見だ。

 

十千万の方から物音が聞こえたので振り返ると、ちょうど出てきたところのステラと目が合う。

 

「ごめんなさい、少し遅くなったわ」

 

その姿を見て思わずギョッとする。軍服にも見える黒のコートに顔の三分の一を埋め、被っているキャスケット帽のせいでほとんど表情が見えない。

 

「まさかそれで行く気なのか?」

 

「他に持ってる服が無いのよ」

 

そういえばステラの所持品のほとんどはヒカリが複製したものだったことを思い出す。

 

「あ、なら私の服着なよ。サイズもほとんど一緒だし」

 

「わたしは別になんでもいいけど……」

 

「じゃあついでにお前も着替えてきたほうがいいぞ」

 

「ええー⁉︎」

 

千歌とステラが十千万に戻って行くのを見送ると、今度は花丸とルビィに視線を移した。

 

「二人もだよっ!!」

 

「ずらっ⁉︎」

 

「ピギィ⁉︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌の姉である志満の車を借りて沼津の駅までやってきた未来達。

 

人集りが出来ていることに気がつき、なんとなくその場へ近づいてみると、堕天使モードと化した善子とそれを見て引き気味の曜の姿が視界に入った。

 

「すげえ、羽ついてるよ」

 

「善子ちゃんも……」

 

「やってしまいましたねっ」

 

「善子ちゃんもすっかり堕天使ずら〜」

 

「みんな遅いよー!」

 

未来達に気づいた曜と善子がこちらへ身体を向けた。

 

「善子じゃなくてぇ……ヨハネ!せっかくのステージ!溜まりに溜まった堕天使キャラを解放しまくるの!!」

 

その勢いに圧倒されて見物していた人々が散らばって逃げてしまう。

 

(ああ、梨子が過労になるかもな……)

 

初っ端からまとめ役の安否が気になるところだが、未来も千歌達と同じく心躍っていることに変わりなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「千歌ー!」

 

「あっ!むっちゃーん!」

 

出発する直前になると、見送りに来た千歌の友人達が何かを抱えてこちらへ駆け寄ってきた。

 

「イベント、頑張ってきてね!」

 

「これ、クラスみんなから」

 

そう言って差し出してきた物は、袋に入った大量のパンだ。

 

「わあ、ありがとう!」

 

「それ食べて、浦の星の凄いところ見せてやって!」

 

「……うんっ!頑張る‼︎」

 

クラスメイトの応援を背に、ついにAqoursは東京へと旅立つのであった。

 

 

◉◉◉

 

 

「おお……やっぱり……」

 

大きな建物が至る所に見られる。内浦はおろか、沼津と比較しても比にならないほどの大都会。

 

「わあ見て見て!ほらあれ、スクールアイドルの広告だよね⁉︎」

 

「ここがトーキョー……」

 

若干その表情に驚きの色を見せるステラ。内浦との差に驚いているといった様子だ。

 

「はしゃいでると、地方から来たって思われちゃうよ」

 

「そ、そうですよね。慣れてますーって感じにしないと」

 

「そっか」

 

何か思いついたのか、千歌が急に飛び出したかと思えば街行く人の側で止まり、

 

「ほんと原宿って、いっつもこれだからマジやばくなーい?おーほっほっほっ!」

 

「おいやめとけ」

 

「千歌ちゃん、ここ秋葉……」

 

「てへぺろっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

衝動を抑えきれなかった千歌達は、ついに街中目掛けて駆け出した。

 

未来とステラも彼女達とはぐれないように後ろを付いていく。

 

「みんな好きに行動してるなぁ」

 

「ちょっとわたし、一人で色々見てくるわ」

 

「は⁉︎ちょっと待てステラ‼︎」

 

去り際に見えたステラの瞳が普段よりも輝いていたのが見えた。案の定この大都会に興奮したのだろう。

 

「あーもう!…………ってあれ!?」

 

前方へ身体を向け直すと、そこには既に千歌達の姿はなかった。

 

完全に見失ったのである。

 

「しまったぁーーーー!!!!」

 

 

◉◉◉

 

 

『迷子になっちゃったのかい?』

 

「俺はもうそんな歳じゃない」

 

沈んだ雰囲気でヨロヨロと人混みの中を進む未来。

 

「くそ……迂闊だった……」

 

『携帯電話もあるし、大丈夫なんじゃないかな』

 

「……それもそうだな」

 

千歌達も女子だ。そしてこういう場所に来た女の子という生き物は、しばらく夢中になって買い物をすることだろう。

 

「しかたない、俺達もどっかで時間潰すか」

 

『あ、あれ食べてみたいな』

 

「高えよ」

 

街に並ぶレストランやカフェの前に展示されている食品サンプルを見かける度にメビウスが反応する。食事をする必要のないウルトラマンにとっては、味を楽しむだけの娯楽に近いものなのだろうが。

 

「さて、どうするか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんにちはぁ」

 

「……⁉︎」

 

後ろから肩を掴まれる感触に驚き、未来は足を止める。

 

「奇遇だね、こんなところで会うなんて」

 

「……っ……お、まえは…………‼︎」

 

間近に感じる不気味な雰囲気にどっと冷や汗が流れ出す。

 

未来はおそるおそる声の主の顔を確認した。

 

夏だというのに暑苦しそうな闇色のコート。塗りつぶされたような短い黒髪。そしてどこか清潔感のある男…………。

 

「やあ未来くん。一緒にお茶でも……どうかな?」

 

「ノワー…………ル……!!」

 

 




着々と物語が進んでいく……。
次回にはSaint Snow登場させられますかね。

今回の解説は、ノワールについて。(何度目だろう)

もはや未来やメビウスのライバルキャラとしてのポジションを確立したノワールですが、次回は少しだけ彼の心中が明らかになる予定です。
結構行動力はある彼が怪獣任せで自ら未来やメビウスと戦おうとしないのは作戦というのもありますが、一番の理由は巨大化や変身といった大層な能力を持っていないことでしょう。(ジャグラーの魔人態のような姿がないのです)
ぶっちゃけ本人はそこまで強くありません。せいぜい未来の身体を使ったメビウスと互角くらいでしょうか。第20話でエンペラ星人に押し負けたのも頷けますね。
そんなノワールも今後直接戦う機会を与えるつもりです。どうやってメビウスと戦うのかは……今後の展開をお楽しみに。

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