今回からサンシャイン6話に突入。
ゼロクロニクルが終わったら新しいウルトラマンって始まるんですかね……?
「どういうことですの⁉︎」
「書いてある通りよ。沼津の高校と統合して、浦の星学院は廃校になる……。わかってたことでしょう?」
「それは……そうですけど……」
理事長室で何やら深刻な話をしている様子のダイヤと鞠莉。
身を乗り出して抗議するダイヤを、鞠莉はゆったりとした口調でなだめる。
「ただ、まだ決定ではないの。まだ待って欲しいと……私が強くそう言ってるからね」
「鞠莉さんが?」
「何のために、私が理事長になったと思っているの?」
瞼を閉じて物思いにふける鞠莉を見て、ダイヤは何か悟ったように顔を伏せた。
「この学校は失くさない。私にとって、どこよりも…………大事な場所なの」
「方法はあるんですの?入学者はこの二年……、どんどん減っているのですよ」
「だからスクールアイドルが必要なの」
先ほどから表情を曇らせていたダイヤだったが、鞠莉のその一言でより一層悲しげな顔になる。
「鞠莉さん……」
「あの時も言ったでしょう……?”私は諦めない”と。今でも決して、終わったとは思っていない」
不意に差し出された細い腕に視線を落とすダイヤ。
まるで鞠莉の手を視界から遠ざけるように目を閉じた後、一言だけ残して部屋を去ろうとする。
「私は、私のやり方で廃校を阻止しますわ」
扉が閉まる音が聞こえ、鞠莉は前に出した手を引き戻し、空しく呟いた。
「ほんと、ダイヤは好きなのね……。果南が」
そしてその一連のやりとりを数百メートル離れた場所から観察していた人物が一人。
黒ずくめの悪意が、不敵に笑った。
「へえ、廃校か。この状況が利用できるかどうか……、少しだけ様子見といこう」
◉◉◉
ーーーー統廃合おおおおおお〜〜〜!?!?!?
スクールアイドルの部室に集まったメンバー達が一斉にほぼ悲鳴に近い声を上げた。
「そうみたいですっ。沼津の学校と合併して、浦の星学院は無くなるかもって……」
「そんな!」
「いつ!?」
「それは、まだ……」
田舎ということに少子化というものが重なり、年々浦の星の入学希望者は減ってきている。
だが、まさかこんな急に話が挙がるとは思っていなかった。
「一応、来年の入学希望者の数を見て、どうするか決めるらしいんですけど」
いずれは直面していた問題だ。……ただ、少し唐突すぎる。
いや、どこかでみんな予感はしていたのかもしれない。ここは都会と違って人も多くない。当然子供の数もその分少なくなっていく。
「廃校……?」
「千歌?」
重苦しい雰囲気の中、たった一人だけ笑顔で顔を上げる。
「きた!ついにきた!統廃合ってつまり、廃校ってことだよね⁉︎学校のピンチってことだよね⁉︎」
「千歌ちゃん?」
「まあそうだけど……」
「壊れたか……?」
曜が目の前で手をかざしてみせても固定された笑顔で前方を見つめる千歌。
「なんだか、心なしか嬉しそうに見えるけど」
「だって!廃校だよー⁉︎音ノ木坂と、一緒だよ〜‼︎」
部室から飛び出したと思ったら校内を駆け回り喜びを表現する彼女に、未来達は呆然と立ち尽くす。
「これで舞台が整ったよ!私達が学校を救うんだよ!そして輝くの!あの、μ'sのように!」
「そんな簡単にどうこうできるわけないだろ」
善子を抱えてポーズを決める千歌を見て、目を細めながら突っ込みをする未来。
「花丸ちゃんはどう思う?」
「……と、統廃合〜‼︎」
「こっちも⁉︎」
千歌と同じく学校が無くなることに対してあまり危機感を感じていない様子の彼女は、むしろ沼津の高校に通えることを歓喜している。
「よ、ヨハ子ちゃんはどう思う?」
「そりゃ統合したほうがいいに決まってるわ!私みたいに、流行に敏感な生徒も集まってるだろうし!」
「よかったずらね〜!中学の頃の友達に会えるずら〜!」
「統廃合絶対反対ー!!」
花丸の一言で瞬時に意見をひっくり返す善子。
不意に千歌が机を軽く叩き、皆の視線が自然と彼女へ流れていった。
「とにかく!廃校の危機が学校に迫っているとわかった以上、Aqoursは学校を救うため……行動します!」
「ヨーソロー!スクールアイドルだもんね!」
「で、具体的には何をするつもりなの?」
ステラの質問に沈黙で答える千歌を見て、彼女が何も考えていないことが露見する。まあ予想していたが。
「結局、μ'sがやったことはスクールアイドルのランキングに登録して……」
「ラブライブに出て有名になって……生徒を集める……」
「それだけなの⁉︎」
過去に調べた内容を走りながら口に出していく未来とステラ。
やがて海岸の砂浜で休憩をとっていると、意外とやるべきことの少なさに曜が思わず聞き返した。
「あとは……」
◉◉◉
大量の資料を机に山のように積み重ね、小原鞠莉はパソコンの画面に目を凝らしていた。
何度も同じ映像を見返す。かつて内浦に現れた光の巨人が、怪獣ディノゾールを倒す瞬間の映像だ。
当時の住民が撮影したもので、画質はかなり荒い。
「…………やはりこれだけで何か見つけるのは難しいデスね……」
目を静かに閉じ、鞠莉は過去の記憶を思い出した。
住んでいたホテルは半壊し、当時まだ幼かった鞠莉も瓦礫に埋もれて身動きがとれない状態となっていた。
「うっ……ぁ…………ッ」
子供……それも女の子の力ではここから抜け出すことなど叶うわけがない。
すぐ側では怪獣が暴れており、奴の放つ焼夷弾が流れてきた時には鞠莉の命も終わりを告げることだろう。
「だれか…………」
「鞠莉ッ!!」
「……⁉︎」
頭に小さな団子を作っている少女と、前髪をぱっつんと切り揃えた黒髪の少女。
ダイヤと果南が、鞠莉を助けようと駆けつけて来たのだ。
「鞠莉さん……!大丈夫ですの!?」
「ダイヤ!誰か大人の人呼んできて!」
「わっ、わかりましたわ!」
ダイヤに指示をした果南は、今度は鞠莉を覆っている瓦礫に小さな手をかけ、必死に持ち上げようと顔を真っ赤にしている。
「ふっ……う〜……!!」
「もうだめだよ果南……、私はいいからもう逃げて!」
「ぜったい……やだ!!」
泣きそうになりながらも友達を助けようとするその姿勢に、鞠莉は心打たれながらも彼女の心配の方が勝る。
「あっ……!」
次の瞬間、怪獣の放ったミサイル弾が鞠莉達のいるホテルへと迫ってきた。
「…………ッ…………!」
死を覚悟し、視線を背けようとした鞠莉だったが、予想外にも放たれた攻撃は寸前で突如現れた”光線”に撃墜された。
「えっ……?」
「あれは……」
その場にいた果南と鞠莉は、舞い降りた光のカーテンを、まるで神を見るような瞳で見つめた。
『チッ……。めんどくせえなあ、まったく』
どこからともなく聞こえてくるその悪態は不思議と安心感があり、躍起になっていた果南と鞠莉に落ち着きを与える。
「光の……」
「巨人……?」
赤と銀の体色を持つその巨人は、怪獣に掴みかかるとそのまま戦闘に移った。
迫る斬撃、焼夷弾を巧みに回避し、逆に強烈な攻撃を撃ち込んでいくその姿は、まさにヒーロー。思わず見惚れてしまう戦いぶりだった。
『ケンの奴も人使いが荒い。こんなもん下っ端の仕事だろうが』
腕を十字に組んで放たれた光線が怪獣へ直撃し、肉片を撒き散らしながら爆発四散する。
「す……」
「すごい……」
「私達を助けてくれた、ウルトラマン。…………彼にもう一度会って、ちゃんとお礼を言いたい」
ーーーー私と果南に、ダイヤ。あの人が守ってくれたから、今もこうして日常を過ごしていられる。
「……こんなに素晴らしい友達を持てたんだもの。私は諦めないわよ、果南」
◉◉◉
外に出てカメラを構えている未来。
手始めに内浦のいいところを伝えるために、PVを作成するという話になったのだ。
今彼らは、外に出てその材料を探している最中だ。
「よしっ!じゃあ試しになんか撮ってみようか」
「わっ!いや、マルには無理ずr……いや、無理……」
「うぅ……っ!ピギィ……!」
くいっとカメラを花丸やルビィへと向ける。が、二人とも恥ずかしがって画面外へと逃げてしまった。
「あれ?…………ほいっ」
今度は隣に立っていたステラにレンズを向ける。
「斬るわよ」
「なんで⁉︎」
未来は一旦カメラを下ろし溜息をつくと、後頭部を掻きながら千歌達に言った。
「おいおいおい。肝心のメンバーが恥ずかしがってちゃ、PV撮るどころじゃないぞ」
「そうだよみんな!もっとグイグイいかないと!」
「じゃあ次、千歌」
「へ?」
再びデジカメを持ち上げ、Aqoursの誇るリーダーへと向ける。
急に振られたこともあってか、千歌は若干躊躇いながら……、
「えへへ、ピースピース」
「ホームビデオじゃないんだぞ」
ーーーーカンッ!
「どうですかー⁉︎この雄大な富士山っ!!」
ーーーーカンッ!
「それとー、この綺麗な海!」
ーーーーカンッ!
「さらに!みかんがどっさり‼︎」
シーンを変えながら内浦の様々な場所を紹介していく千歌。やがて街の場面へと移り変わり……。
「そして街には!」
一瞬の沈黙。徐々に焦りが見え始めてきたその時、ついに彼女は口にしてしまった。
「街には…………特に何もないです!!」
「オイオイオイオイオイ」
一旦カットし、未来はカメラ前に立つ千歌にジトっとした瞳を向ける。
「ダメだろそれじゃ!」
「そんなこと言われても……」
「ええい次だ次!」
再び場面を変更させ、今度は沼津の街へ。今度は曜が台詞を言うシーンだ。
「バスでちょっと行くと、そこは大都会!」
(うんうん)
「お店もたーくさんあるよ!」
(いいぞいいぞ)
ほんの少しだけ調子が良くなり、ドンドンいこう!と次の場所へ移動する。
「そしてぇ……ッ‼︎ちょっとぉ…………ッ!!」
(うんう……ん?)
「自転車で坂を越えると……っ!そこには……!伊豆長岡の商店街が…………ッ……!!」
(…………)
明らかに辛そうな状態で紹介を始める千歌と梨子。息切れした様子の彼女達は地面に座り込み、肩を上下させながら途切れ途切れに台詞を言う。
「全然……ちょっとじゃない……!」
「はぁ……はぁ……沼津に行くのだって、バスで五百円以上かかるし……」
「ねえちょっと待って」
カメラを持たない方の手で顔を覆う未来。このままではいけない。人を呼び寄せるどころか、むしろマイナスのイメージを与えてしまう。
「一度ちゃんと考える必要があるみたいね」
「そうだな」
ここまで終始走って移動していた未来とステラだが、いつも通り体内の宇宙人のおかげで息一つ乱れていない。
「なんで二人ともそんなに元気なの〜……⁉︎」
「鍛え方が違うんだよ」
「ぷっ……メビウスのおかげなのによく言うわ」
「あ”?」
彼にしか聞こえない大きさで呟くステラを睨みつける未来。彼女はそれすらも面白がってクスクスと笑いを漏らす。
ノイド星人はそもそも基本的な身体能力が地球人よりも別格なので、ステラに関しては本来ヒカリの力を借りなくても、今回のような距離を走ったくらいじゃ疲れないだろう。
「さあ、そろそろ戻りましょ」
「ち、ちょっと休憩してから…………」
上体を地面に吸い付かせるように倒れ込む千歌達。
(先が思いやられる……)
なんと数年前の襲撃の時に鞠莉達は間近でベリアルのことを見ていたんですね。彼に救われたのは未来や千歌だけではなかった……。
解説はこの作品でのベリアルについて。
ディノゾール襲来時には既にベリアルはある程度出世しています。ただ、本編と同じようにウルトラの父は彼よりも上をいってしまったようですね。
アーリースタイルの時は愚痴を吐きながらも仕事はこなしていたようですが、カイザーダークネス状態の彼はどうしてああなった……。
ベリアルと未来が再会した時、未来は彼を受け入れることができるのか?
今後の展開にご期待ください!