メビライブ!サンシャイン!!〜無限の輝き〜   作:ブルー人

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ステラ&善子回後編!

ああ……オーブのオリジンサーガ観たいけど、Amazonプライム会員じゃない……。


第29話 星斬りの訪問者:後編

「どうかしたか?」

 

「いえ、お気になさらず」

 

顔を横に振ってそう言う未来だったが、内心焦りまくりだ。

 

まさか以前ステラが滅多斬りにした手紙の差出人がわざわざ訪ねてくるとは。それに決闘がどうとか言ってたし。

 

ここまで気不味い場面に出くわしたのは久々だった。

 

「お前達はツルギの知り合いのようだな。奴の居場所を知っているのならば教えてもらおうか」

 

時代遅れな風貌をした宇宙人が鋭利な目つきを向けてくる。

 

一方、未来はどう誤魔化そうかという考えで頭がいっぱいになっていた。

 

「どうするんだよ……、なんかめんどくさいことになりそうだし、お帰り頂く?」

 

『でもわざわざ地球まで来たみたいだし……』

 

小声でメビウスと会話しているのがバレたのか、ザムシャーと名乗った宇宙人は不信感を含んだ声音で聞いてくる。

 

「噂に寄れば”ステラ”と言う名のノイド星人と共に行動しているとか……。何をコソコソと話している」

 

……そんなことまで知っているのか。

 

一体ヒカリとステラは過去に何をしてきたんだという疑問が自然と浮かんでくる。

 

漂う不穏な空気に、未来はたまらず半歩引いてしまう。

 

「どーすんだよ!もう俺怖いよこの人!あれ絶対何人か()ってる目だよ!」

 

『名前くらいは聞いたことあるよ、宇宙剣豪のザムシャー……』

 

メビウスの話を聞くと、どうやら彼は宇宙の様々な場所で強者に決闘を挑んでは勝利し、名を轟かせている者らしい。

 

一時期グレていたヒカリーーもといツルギの噂を聞きつけて来たのだろう。彼の目的はおそらくヒカリ達と一戦交えることだ。

 

「でも帰ってもらうにしても……ステラとヒカリをけしかけて追い払うなんて……俺もお前も嫌だろ?」

 

『そうだね。できれば争わないように……穏便に……』

 

未来とメビウスの平和主義な意見を斬り伏せるように、唐突にザムシャーが口を開いた。

 

「……時間の無駄だったようだな」

 

「あっ!ちょっ……待て!」

 

ザムシャーは未来の横を通り、風のような速さで坂を下りていった。

 

威風堂々とした雰囲気の余韻を感じつつ、未来とメビウスは唖然とした様子で既に誰もいない背後の坂道を見据えた。

 

 

◉◉◉

 

 

「ふんっ!むこうが謝るまで許してやらないんだから!」

 

制服のまま校庭へ飛び出した善子は、途方に暮れたような顔で街へ行こうと歩き出した。

 

校門前辺りまでやってくると、走りながらこちらに向かってくる少年とすれ違う。

 

「あれっ?ヨハ子ちゃん?」

 

「ヨハネだってば……」

 

立ち止まって、背中を向けている善子を見て首をかしげる未来。

 

「もう練習始まってるんじゃ……」

 

「私、今日は休むわ」

 

「へ?なんで……」

 

「なんでもいいでしょっ⁉︎」

 

そう言い残して、すぐさま未来の元から離れようと駆け出す。

 

今思い返せば、下らないことで喧嘩をしたと後悔している。ステラにだって悪気はなかったはずなんだ。

 

彼女はただ、合理的な考えが過ぎるだけで、Aqoursのことを想っているからこその行動だったのだから。

 

「はあ……これじゃあ顔も合わせづらいじゃない……」

 

バス停まで下りてくると、善子は足を止めて先に見える海岸を眺めた。

 

海鳥の鳴き声が青い景色の中を木霊し、太陽の光がジリジリと肌を焼く。

 

「あーもうっ!私のバカ!ステラのバカーーーーッ!」

 

内にあるものを全て吐き出す勢いで叫ぶ善子。辺り一帯に彼女の声が響き、先ほどまで聞こえてた海鳥の声よりも遠くへ渡った気がした。

 

「”ステラ”……だと……?」

 

「え?……わぁ⁉︎」

 

いつの間にか隣に立っていた侍のような姿の男に驚き、仰け反ってしまう。

 

「貴様……今、確かにステラと口にしたな……?」

 

「きさっ……⁉︎だ、だれ!?」

 

見覚えのない顔に戸惑う善子を、男は気にも留めずに問い詰める。

 

「……ちょうどいい。少々手荒だが、協力してもらうことにしよう」

 

「へっ……?」

 

男は手刀を作ると、目にも留まらぬ速さで善子の背後に回り込み、うなじ部分に軽く叩き込んだ。

 

一瞬で気を失い倒れかけた善子を抱え、男は懐から一枚の紙を取り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「休憩〜……」

 

「はーい…………」

 

屋上で練習中の千歌達は、いつまで経っても善子が戻ってこないことに不安を感じ始めていた。

 

「善子ちゃん、どうしたんだろう……」

 

「今までこんなことなかったよね……」

 

「さっき校門前ですれ違ったけど、何かあったのか?」

 

未来の質問にはだれも答えず、ただフルフルと首を横に振るだけだ。

 

その中で、ステラだけが申し訳なさそうな顔で露骨に未来から目を逸らしているのが目立った。

 

「ステラ?」

 

「なっなに?」

 

「……?いや、お前何か知ってないか?」

 

「ぃ……いいえ、し、知らないわ……」

 

(怪しすぎんだろ)

 

明らかに挙動不審な彼女を見て、鈍い未来やメビウスでさえ異変を感じる。

 

「ちょっとこっちこい」

 

「わ、わたしはなにも隠してないわ!本当よ!」

 

未来に引きずられていくステラという珍しい図に、千歌達は呆然と二人を後ろから見送った。

 

 

◉◉◉

 

 

二年生教室前の廊下まで移動し、未来とステラの二人きりだけの空間となる。

 

たまに他の生徒が通りかかったが、近づき難い雰囲気に自然と離れていく。

 

「え〜と……、これは……」

 

「なによその目は。いいわよ、わたしが悪いって言いなさいよ」

 

『どっちもどっちなんじゃ……』

 

話を聞くと、一重にどちらが悪いとも言えないものだった。

 

ステラも善子も素直な性格ではない(ゆえ)、このような結果になっているのだろう。

 

「そんなに気になるんなら、謝ればいいじゃないか」

 

「わかってるけど〜……!」

 

頭を抱えるステラというのもレアなケースだ。しばらく見物していたいところでもあるが、ここはさっさと解決してほしい。

 

「……あ、そういえばステラさ。前に”喧嘩売られた”とか言ってたよな?」

 

「なんの話?」

 

「完全に忘れてやがる」

 

もう興味のかけらもなかったんだろうな……。ステラは面倒なことに関しては極力巻き込まれたくないのだろう。

 

そんな性格でなぜボガール狩りなんかしていたのかが不思議だが。

 

「ザムシャーって奴がお前を訪ねて来てたんだよ」

 

「ザムシャー……あの宇宙剣豪の?」

 

『ステラ、もしや以前の手紙は……』

 

ヒカリに指摘されて始めて気がつくのと同時に、普段感情の上下がわかりにくいステラの顔がみるみる青くなっていくのがわかった。

 

「ああ……あの手紙ね」

 

「思い出したか……、どうするんだよ?」

 

「無視を通すわよ。わたしは前と違って、お遊びに付き合ってる暇なんかないの」

 

『お遊び……か、どうやら向こうはそうは思っていないようだな』

 

瞬間、弾丸の如きスピードで廊下の窓から何かが突っ込んでくるのが見えた。

 

窓ガラスにもたれかかっていたステラの頰を掠め、壁に甲高い音を上げて物体が固定される。

 

見てみるとそれは、小刀で縫い止められた一枚の紙だった。

 

「なんだぁ⁉︎」

 

「これは……」

 

壁に近寄り、小刀を引き抜いて付いてきた紙切れを手に取る。

 

 

人間の少女を一人預かった。

 

 

紙には、ただそう一言だけ記されていた。

 

「ザムシャーから…………なのか?」

 

嫌な予感を察知したステラが咄嗟に地面を蹴り、窓から飛び降りる形で校庭へと飛び出した。

 

すぐに未来も後を追おうとするが……、

 

「こないで!」

 

「ステラ……?」

 

「これは、わたし達だけの問題よ」

 

いつの間にか遠くの方で巨大な人影が形成されていくのが見える。

 

甲胄をその身にまとい、引き抜かれた刀を片手に持つ、宇宙人の姿。おそらくあれがザムシャー本来の姿だ。

 

「人質取るような真似されちゃ、行くしかないか……」

 

『準備はいいか?』

 

「ええ、わたし達の力、見せてあげましょう!」

 

ナイトブレードを取り出し、右手に出したナイトブレスに挿し込む。

 

青い光に包まれたステラが飛翔し、ザムシャーの目の前までやって来ると、ついにその巨体を露わにした。

 

「その青き身体……ツルギだな?」

 

『お前の挑戦、受けてやろう』

 

街中に現れた二人の巨人。その周りには張り詰めた空気が漂い始め、遠目で見ている未来は息を呑む。

 

(人質はどこかしら?)

 

「安心しろ。もとより危害を加えるつもりなどない」

 

ザムシャーが見やった方向を見る。

 

そこにあったのは、近くの砂浜に目を閉じて横たわっている善子の姿だった。

 

彼女はただヒカリとステラを呼び出すための餌として使われたのだろう。

 

(やっぱりあの子が捕まってたのね……。ごめんなさい)

 

ステラは心中でそう呟いた後、青い巨人の身体を操って右手のナイトブレスから抜刀する動きでナイトビームブレードを伸ばした。

 

「…………」

 

風の音だけが聞こえる。

 

意識を集中させ、戦いが始まるのを待った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ーーーーーーーーッッ!!」」

 

雷のような速度で振り抜かれた二つの刃が激突し、街中にその音が響き合った。

 

両者は休む暇など与えられず、お互いの動きを読んでそれぞれの剣を繰り出す。

 

(なかなかの腕ね……)

 

『ああ、だが俺達も負けてはいない……!』

 

「デヤァッッ!!」

 

一瞬の隙を見てナイトビームブレードの刺突を放つヒカリ。だがそれすらも先読みしていたのか、ザムシャーは身を翻してそれを回避する。

 

「せいっ……!」

 

「ヤァアアッ!」

 

互角の戦いとはこのことを言うのだろう。拮抗し、どちらが勝っても、負けても、おかしくない状況だ。

 

侍と騎士。剣を極めし者同士が、尚も自らの力をぶつけ合っている。

 

「甘いわ!」

 

「…………!」

 

ヒカリが攻撃を放った瞬間を見計らい、ザムシャーは胴体に星斬丸を振りかざす。

 

ギリギリのところで前宙し、躱すことに成功したヒカリだったが、さすがに今の一撃は危なかったと胸をなで下ろした。

 

「……聞いていたほどではないな。俺は貴様らを少々買いかぶっていたようだ」

 

『それは、どうかな?』

 

「なんだと……?」

 

『悪いが今の()()()は、以前とは違う』

 

ヒカリは膝立ちの状態から腰を上げ、再びナイトビームブレードをザムシャーへ向けて構えた。

 

『(ここから先は、二対一でいかせてもらう)』

 

「なにっ…………⁉︎」

 

飛ばされた斬撃を星斬丸で弾く。が、そのわずかな間でザムシャーに肉薄したヒカリは、下から上へと光の刃を振るった。

 

「これは……っ!ノイド星人の小娘と、ツルギの動きが……!」

 

ーーーーーー完全にシンクロしている……!

 

「デェェエエエヤァアアアア!!」

 

「くっ……!」

 

距離を取り、攻撃を回避したとほぼ同時に、両者が再びお互いに向かって走り出す。

 

「「……………………ッッ!!」」

 

 

刹那的な交差。

 

蒼雷の剣と星斬りの刀が激突し、耳をつんざく音の刃が生まれる。

 

数秒の静寂を確かめた後、ピシッと何かが砕ける音が耳に滑り込んできた。

 

「なにっ……⁉︎星斬丸が……!!」

 

ザムシャーが握っている名刀が、音を立てて両断されたのだ。

 

小惑星すらも真っ二つにする刀が、ヒカリのナイトビームブレードの前に敗れ去った。

 

 

 

 

「なぜだ……!なぜ俺は負けたのだ……⁉︎」

 

『……もし戦っていた者が以前までの俺達ならば、勝者はお前になっていたかもしれない。その理由がわかるか、ザムシャー?』

 

「なんだと……ッ⁉︎」

 

(ヒカリ……?)

 

ステラは唐突に語り出した相棒に困惑し、不意に彼とザムシャーの顔を交互に見た。

 

『教えてくれた者がいるんだ、強さの意味を。力を振るうことの重要さをな』

 

「力の重要さだと……?」

 

『ああ。そいつはいつも、何かを守るために戦っていた。……あの戦士達のおかげで、今の俺とステラがある』

 

「守る……」

 

ブレードを消滅させるヒカリを見て、敗北を悟ったザムシャーは舌打ちしながら背を向けた。

 

「俺はいずれ、再び貴様らに挑戦する。その時は、必ずこのザムシャーの名を首に刻み込んでやる」

 

そう言って地面を蹴り上げ、大空へと飛び上がるザムシャーの後ろ姿を、ヒカリとステラは見えなくなるまで眺めていた。

 

 

◉◉◉

 

 

「ん…………」

 

「目が覚めた?」

 

頰のザラザラした砂の感触と、潮の匂い。ステラの声が聞こえ、善子は重い瞼を開いた。

 

「あれ……私……、いたっ……!」

 

うなじを抑えて身を縮ませる善子に肩を貸し、ステラは海岸から出ようと足を踏み出した。

 

「……ごめんなさい」

 

「……え?」

 

「わたし、あなたのことを理解していなかったわ」

 

人間を守るために、人間を知る。

 

メビウスがそうしようとしているように、ヒカリとステラもまた、守るということが何を意味するのかを探さなくてはならない。

 

 

ーーーーわたしは、人間のことを…………理解したい。

 

 

 

「私の方こそ……悪かったわよ」

 

顔を赤くして謝る善子を見て、驚いたような顔をつくるステラ。

 

「てっきり、もうちょっと拗ねてるんじゃないかと思ったわ」

 

「な、なによ!口が減らないわね!」

 

「ふふ……、ごめんごめん!」

 

 

◉◉◉

 

 

「ふうん、ザラブ星人にババルウ星人か……」

 

黒い荒野が内部に広がる、ダークネスフィア。

 

エンペラ星人の足元に跪く二人の宇宙人をしばらく観察した後、ノワールは腰に手を当てて口角をつりあげた。

 

「いい人材をお持ちで」

 

「此奴らを使って、何をするというのだ?」

 

「まあ見てなって。…………でも彼らを出す前に、必要な手順がまだ残っている」

 

ノワールは背後に感じる威圧感に微動だにしないまま振り返り、だらしない格好で座り込んでいる漆黒の戦士に目を向けた。

 

「いよいよ君の出番が近づいているわけだが……準備はいいかい?」

 

「やっとか……。待ちくたびれたぜ」

 

黒い鎧を身にまとい、槍を持ち上げる禍々しい()()()()()()

 

「ベリアル、まずは君が地球へ向かってほしい。……極力ボクの指示に従ってくれると嬉しいな」

 

「どうでもいい。俺はただ、暴れたいだけだぁ!!」

 

赤黒い光線を槍の先から乱射するベリアルを一瞥し、ノワールは眉をひそめた。

 

 

 

 

(哀れだね……。こんなものが彼の憧れた存在だなんて……)

 

 




少し前にサンシャインパートで善子回をやったばかりでしたので、今回の話はどちらかというとステラを主要とさせて頂きました。

さて今回も解説のお時間です。

メビウスと未来も同じですが、ウルトラマンの身体を動かしているのは基本ステラです。
意識を完全に乗っ取ることもやろうと思えばできるのでしょうが、メビウスもヒカリも、それは人道的ではないと判断してます。(ツルギだった時は普通に乗っ取ろうとしてましたけど)
今回登場したシンクロという言葉ですが、あまり深い意味はありません。ウルトラマンと宿主がより強い力で繋がることができたという意味と捉えてください。ユナイトですユナイト。
ちなみにメビウスと未来はまだこの状態に至っていません。

さて次回からの数話、一気にウルトラマン要素が少なくなると思いますが、ご了承願います。

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