新規UR曜ちゃんを当ててやったぜ!!!!!!!!!
夏ノ眼龍は怒り狂った。
祠を破壊した者達を焼き尽くし、村に火を放ち燃やした。
もう誰もあの怒りの化身を止めることなどできはしない。
村人はただ、自分達の故郷が消し炭と化していくのを眺めるばかりである。
「ああ、儂達は間違っていたのか……」
一人の老人が、嗄れた声でそう言った。
◉◉◉
「…………あれっ?これで終わり?」
誰もいない図書室。
国木田花丸は机の前に座り一冊の小説を読み終えた後、素っ頓狂な声を上げた。
本の名前は「夏の怒り」。かなり昔に出版されたものらしく、本そのものは所々が傷んでいる。
内容は祭りのために祠を壊してしまった村人を龍が怒り、村を滅ぼしてしまうというものだった。いわゆるバッドエンドというものだろう。
「すっきりしない終わり方だなあ。ま、こういうのも乙ずら」
パタリと小説を閉じ、花丸は動くもの何一つない図書室を見渡す。
(やっぱりここは落ち着くずら……)
スクールアイドル部のみんなとワイワイ過ごすのもとても楽しいが、このように静かな空間で読書に勤しむのも同じくらい好きだ。
(……あ!もうこんなに外が暗い……)
時計を見ると既に6時半。夏も近いとはいえ、この時間になるとやはり日は暮れ始めている。そろそろ帰らないと家族も心配するだろう。
花丸は急いで荷物を鞄にしまい、席を立った。
(明日はスクールアイドルの練習……。頑張ろう!)
「うおっ⁉︎」
「わっ⁉︎」
図書室の出入り口を開くと、そのすぐ隣に見知った人物が驚きのあまり飛び跳ねた。
「未来くん?どうしたの?」
スクールアイドル部マネージャー、日々ノ未来である。
「いやー……なんでもないんだけど……」
「……もしかして、ずっとここにいたずら?」
「えっいやちが……」
「……ま、まさかマルを……」
「やめろ誤解だ!!」
ストーカーと間違えられてもおかしくない行動をしておいてなんでもない、と言い張る未来に、花丸の瞳はどんどん冷たいものへと変わっていく。
「じゃあどうしてここに?」
「ほ、本だよ。本を借りに来たんだよ……」
「…………」
「なんだよその目は⁉︎ここは図書室だろ⁉︎」
「……ま、そういうことにしておくずら」
からかうように笑った後花丸はそのまま未来の横を通り過ぎ、昇降口へと向かう。
(……まあ、本借りに来たなんて嘘だけど……。バレてないよな?)
『いや、バレバレだったと思うよ』
最近付き合いに慣れてきたのか、たまにメビウスは未来に対して容赦なくツッコミを繰り出すことがある。
(しょうがないじゃないか。花丸ちゃんに”光の欠片”が宿ってるって言ったのはお前だろ?)
『だからってこんなストーカー紛いのことしなくても……』
(まあ結局失敗したし、形だけでも本借りに……)
図書室の戸に手をかけ横にスライドさせようとするが、何かがつっかえているように開いてくれないのだ。
「って鍵かかってるし!」
「図書室はもう閉店ずら〜」
「あっ!おまっ!」
遠くの方でケタケタ笑いながら走っていく少女が見え、未来は一杯食わされた、と顔を歪める。
「らあっ!」
メビウスの影響で何倍にも膨れ上がった身体能力を駆使し、廊下を一気に走り抜ける。思いっきり校則違反だ。
「待てや一年坊主ぅ!!」
「ずらぁ⁉︎」
一瞬で自分の目の前に現れた未来に目を見開く花丸。
「あ、足速いずらね……」
「一年の頃は短距離で曜と互角だったぜ……」
「すごいのかすごくないのかわからないずら」
ええいうるさい。曜に負けてる男子なんか他にいるんだしいいじゃないか別に。
「もう遅いし送っていくよ」
「別にいいよ。帰り道マルぐらいしかいないし」
「逆に危険だろそれ」
いつもはルビィと帰っているようだが、今日はスクールアイドルの方の練習は休みな上に図書委員の仕事で帰るのが遅くなってしまっている。
「マルを襲おうなんて考える人いないよお……。あ、でも一人ここに……」
「誤解って言ってますよねぇ⁉︎」
◉◉◉
「図書委員の仕事って、こんなに遅くなるまであるのか?」
「ううん。今日はつい本に夢中になっちゃって……」
「ほんとに本が好きなんだな」
薄暗い街道を二人並んで歩く。
普段通らない道ということも相まってか、未来は自然と周囲を警戒してしまう。
「未来くんは本読まないの?」
「活字にはあんまり触れる機会がなくて……。強いて言えば物語くらいかな、読んだことあるのは」
論説文等が国語のテストで出てきた時はその度に顔を青くして頭を抱えているほどに苦手だ。小説を読み解く問題のほうがまだ楽な方だ。
「もったいないずら」
「はは……。何かオススメの本あるなら貸してくれよ」
「あっそれなら……」
花丸は鞄の中から一冊の小説を取り出すと、それをおもむろに未来へと差し出した。
「”夏の怒り”……?」
「これならそんなに長くないし、数分で読めると思うから……」
よく見れば確かに本自体の厚さはそれほどない。普段本を読まない人もこれならば最後まできっちり読み終えることだろう。
「ほー……。じゃ、読んでみるよ。ありがとう」
片手で受け取り、鞄にしまいながら未来はすっかり暗くなっている空を見上げた。
「……なんか雨降りそうだな」
「……あれ?そういえば未来くん、バスで帰らなくても大丈夫ずら?」
「ん?ああ平気平気。走ってもすぐ着くし」
メビウスの力を借りれば、の話だが。
花丸の家である寺の前まで彼女を送り届ける。祖母らしき人に家に上がるよう誘われたが、さすがにそれは悪いのですぐさま退散した。
「で、どうだ?」
『……以前のような光は彼女から感じないな……』
「やっぱり何か条件があるのか……?」
花丸が前に光の欠片らしきものを見せたのはルビィと一緒に体験入部でやって来た時だ。それ以降変わったことは特に見られない。
「ヨハ子ちゃんはもう発現しているんだよな?」
『それは間違いないよ。何か……引き金になるようなものが必要なのかもしれない』
「引き金……きっかけか」
光の欠片がどういった条件で発動するのかはまだわからない。エンペラ星人を倒すほどの力だ。そう簡単に出せるとは思えない。
(もしかしたら俺の中にも…………)
「あるよ」
「『!?!?』」
顔を上げると、そこにはいつの間にかにやけ面の黒ずくめの青年が立っていた。
「出たな変態」
「やめてくれ。名前は”ノワール”で通すことにした」
『じゃあ君に聞こう、ノワール。”ある”とは?』
メビウスは未来の身体から分離すると、ノワールと彼の間に割って入る。
「言った通りの意味さ。未来くんにも、”光の欠片”はあるはずだよ」
「……あんたはどうして」
「でも同時に、凄まじい闇の力も眠っている」
「なに?」
ノワールが一歩踏み出すと、メビウスは咄嗟に未来の身体の中へと戻り、警戒するよう促す。
「君は今、光になりきれていない状態なんだよ」
「どういう意味だよ……!」
さらに距離を縮めてくるノワールに対し、未来はメビウスブレスを構えた。
「これも言葉通りの意味だよ。……過去に、何かあったのかな?」
「……ッ!」
メビュームスラッシュをノワールの足元に放つが、奴はそれを難なく回避し、一瞬でこちらに肉薄してきた。
「自分を騙してはいけないよ。……ツルギやステラちゃんのように、自分の為に力を使おうとは思わないのかい?」
「なんであんたが……あいつらの事を……⁉︎」
「君はもっと力が欲しいと思っている……。そうだろう?」
「あんたは……どっちの味方だ……?」
「愚問だね。ボクはただ、光が見たいだけさ。闇に抗う、究極の光を……」
不気味な黒い青年は身体を黒霧へと変えると、未来の身体に侵入しようとしてくる。
『彼の身体に触れるな……っ!!』
体内に入ってくるノワールを無理やり追い出すメビウス。
身体の主導権を奪うと、メビュームブレードを展開してノワールへと振りかざした。
「おっと」
後方へ退避しながら逃げるように身体を消滅させていくノワール。
「……まだ足りないか」
ノワールはそう言い残すと、以前と同じようにして霧散し、消えていった。
「はぁ……はぁ……」
『大丈夫だったかい?』
「あ、ああ……」
一瞬だが、ノワールに体内への侵入を許してしまった。
奴の力は未知数だ。……それに味方とも思えない。
「あいつ……なにが目的だ?」
◉◉◉
「……へえ」
大木の枝に腰掛けながら、ノワールは一冊の本に目を通していた。ついさっき未来からこっそり奪い取ったものである。
「彼が読書家だとは意外だ。……いや、これは花丸ちゃんにでも借りた物かな……?」
”夏の怒り”と題名にある本を閉じ、ノワールは下に広がる内浦の街を見下ろす。
「……決められた運命に逆らえるかな……?」
ノワールは本に手をかざすと、ドス黒い闇のオーラを注ぎ込み始めた。
いかがでしたでしょうか?
いやあシナリオ考えるのも楽じゃないっす……。
プチ解説はナツノメリュウについて!
作中の文を見ればわかると思いますが、”夏の怒り”の内容はウルトラマンマックス第9話「龍の恋人」に沿っております。
つまり次回登場する怪獣はもちろんナツノメリュウ……。
今回は小説の中に出てくる龍として登場しましたね。
それでは次回もお楽しみに!