メビライブ!サンシャイン!!〜無限の輝き〜   作:ブルー人

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この作品の展開を常々考えながら生活している作者ですが、最近やっとバーニングブレイブ登場の回のシナリオが浮かんできました。
書くのが楽しみです。


第22話 偽りの天使

「どうして止めてくれなかったのおおお!?せっかく上手くいってたのにぃ!うぅ……」

 

「まさかあんな物持ってきてるとは思わなかったずら」

 

スクールアイドル部室。そのど真ん中に設置されているテーブルの下に、津島善子は膝に顔を埋めて項垂れていた。

 

どうやらクラスに馴染めるよう、花丸におかしな行動を取った時には止める約束をしたのだが、どうも失敗したらしい。

 

「どういうこと?」

 

「ルビィもさっき聞いたんですけど。善子ちゃん、中学時代はずっと自分は堕天使だって思い込んでたらしくて……。まだその頃のクセが抜けきってないって……」

 

「重症じゃないか」

 

善子はやっと立ち上がったと思えば、背を向けたまま肩を震わせて話し出す。

 

「……わかってるの、自分が堕天使のはずなんてないって。そもそもそんなもんいないんだし……」

 

「じゃあ、どうしてあんなグッズ持ってきたんだよ」

 

机に置かれている堕天使アイテムの数々に視線を向けながら話す未来に、善子は口ごもりながらも小さな声で言った。

 

「それは、まあ……ヨハネのアイデンティティみたいなもので……。あれが無かったら、私が私でいられないっていうか……!」

 

「あなた治す気ないでしょ」

 

「はっ!」

 

ステラに指摘されて初めて自分が自然と堕天使ポーズをとっている事に気がつき、善子はキリッとした表情から間の抜けた顔になる。

 

「もしかして、この動画も……」

 

未来は自分のスマートフォンで動画サイトを開き、全員に見えるよう画面を前に突き出した。

 

《またヨハネと堕天しましょ……》

 

「わぁっ!」

 

物凄い勢いで未来のスマホの画面をほとんど叩くようにタップし、サイトを閉じる善子。

 

「とにかく私は普通の高校生になりたいの!なんとかして!」

 

「…………かわいい」

 

「「「「え?」」」」

 

さっきからやけに大人しかった千歌がそう呟き、全員の視線が彼女へと注がれる。

 

「これだ!これだよ!」

 

パソコンを使って先ほどの動画サイトを表示した千歌が興奮気味に言う。

 

「千歌ちゃん?」

 

「津島善子ちゃん!いや、堕天使ヨハネちゃん!スクールアイドル、やりませんか⁉︎」

 

机に身を乗り出して善子に接近する千歌。瞳をきらきら輝かせて勧誘するその姿に、善子は怪訝な顔で答えた。

 

「……なに?」

 

 

◉◉◉

 

 

「間違いないのか?」

 

『うん。たぶん、彼女も花丸ちゃんと同じだ』

 

旅館十千万。

 

階段を上がった先にある千歌の部屋の前で、未来は光の予言の文が書かれたメモを眺めていた。

 

『彼女ーー善子ちゃんの中にも、君のような”光”を感じるんだ。とても強力な……』

 

「堕天使なのに光って……。まあそれはさて置き、その光を持つ人間を十人集まれば、エンペラ星人を倒せるってことなんだよな?」

 

『あの宇宙人の言葉を信じれば、だけどね』

 

メビウスの言う”あの宇宙人”とは以前未来が墓場で会った黒ずくめの男のことだろう。

 

目的はわからない。が、なぜか奴は未来達に情報を与えてくれたのだ。

 

「もしかしたら千歌達も光を宿しているのかもな」

 

『ならいいんだけどね。探す手間が省けるし』

 

「でもここに書かれてるのは全部で十もあるぞ?例え今揃っているメンツが全員その光とやらを持ってるとしても、あと二個足りない」

 

未来がため息をついてポケットにメモをしまっていると、千歌の部屋の襖が開かれ、ステラが出てきた。

 

「ん?終わった?」

 

「いいえ。まだ着替えてるわ」

 

そう、千歌達は今堕天使をイメージした衣装の試着中なのだ。男である未来は背後にある楽園に入る事は許されない。

 

「……それは?」

 

「ああ……これ?」

 

未来はステラが手に一枚の手紙を持っていることに気がつく。よく見るとそこには黒い大きな文字で「果たし状」と記されていた。

 

「なんか喧嘩売られたみたい」

 

「喧嘩?誰に?」

 

「さあ?さっき目の前に刺さってきた物だから、差出人の顔は見てないわ」

 

「刺さっていた⁉︎」

 

よくわからないが、誰かに決闘でも申し込まれたみたいだ。地球に来る前はかなりヤンチャしてたステラとヒカリのことであるから、不思議ではない。

 

「で、どうするんだよ」

 

「無視に決まってるでしょこんなの」

 

ステラは持っていた手紙を両手で掴み上下に引き裂くと、ナイトブレードを取り出して粉々になるまで切り刻んでしまった。

 

「ちょっ⁉︎手紙書いた奴が超怖かったらどうするんだよ⁉︎」

 

「どんな奴だろうと、わたしとヒカリに勝てる者はいないわ」

 

「いやそういう問題じゃなくて!」

 

「ていうかなんであなたが焦ってるのよ」

 

と、その時。

 

再び背後の襖が開かれ、中から黒くてフリフリした服に身を包んだ千歌が飛び出してきた。

 

「着てみたよー!どう?どう⁉︎」

 

「ゴスロリ⁉︎」

 

「この前より短い……。これでダンスしたら、さすがに見えるわ」

 

「ダイジョブー!」

 

「そういうことしないの!!」

 

下に履いてあるジャージをおっ広げる千歌。それを見た梨子が慌てて彼女のスカートを押さえた。

 

「はぁ……いいのかなあ、本当に……」

 

「調べてたら堕天使アイドルっていなくて。結構インパクトあると思うんだよね」

 

なんでもかんでもアイドルに当てはめてしまうのは良いのか悪いのか。

 

「でもまあ、ヨハ子ちゃんの動画みたいな事をアイドルがやるって、今まで見たことないし」

 

「ヨハ子ってなによ!混ぜないでよね!」

 

「たしかに、昨日までこうだったのが……」

 

曜はファーストライブの衣装と今着ているゴスロリ衣装を見比べ、

 

「こう変わる」

 

「うぅ……なんかはずかしい」

 

「落ち着かないずら……」

 

他の面々もいつもより短いスカートに慣れていない様子だ。未来にとっては普段と違う華が見れた気分で悪くはないのだが。

 

「ねえ、本当に大丈夫なの?こんな恰好で歌って……」

 

「かわいいねー!」

 

「そういう問題じゃない」

 

「そうよ。本当にいいの?」

 

「これでいいんだよ!ステージ上で堕天使の魅力を思いっきりふり撒くの!」

 

「堕天使の……魅力?……はっ!だめだめ!そんなのドン引かれるに決まってるでしょ⁉︎」

 

「大丈夫だよー!」

 

千歌の言葉に惹かれるように妄想の世界へと誘われる善子。にやけ面を晒しながら不気味に笑う姿は、承諾してるも同然だった。

 

「協力……してくれるみたいです」

 

「しょうがないわねえ……。ごめん、ちょっと私お手洗い行ってくるわ」

 

「いってらー」

 

襖を開けて廊下に出る梨子を見送り、未来は視線の的を衣装に戻した。

 

「男の子から見てどう思う未来くん?」

 

「そうだなあ、俺的にはもう少し短くても……」

 

「未来?」

 

「冗談だよ……。衣装については詳しくないけど、いいんじゃないか?かわいいよ」

 

ステラの目線が刺さった瞬間に真面目な返答をする。

 

……ただ怖いのはあの生徒会長、ダイヤ様だ。この衣装を着た妹を見て癇癪でも起こすのではないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いぃぃいいいいやああああああ!!!!」

 

「コラ!しいたけ⁉︎」

 

唐突に上げられる悲鳴が耳をつんざき、咄嗟に廊下の方を見る。襖越しに少女が大型犬に追われているのが見えた。

 

そういえば梨子は千歌の家に来る度にしいたけを避けていたな、と今更彼女が犬嫌いということに気がつく未来であった。

 

「梨子ちゃん?」

 

「やめて!来ないでえええええええ!!」

 

「大丈夫?しいたけはおとなしーーーーぅ”あ”っ」

 

「あだぁっ⁉︎」

 

横ではなく前に開いた襖が倒れ、未来と千歌が重なるようにしてその下敷きになる。

 

「「梨子/ちゃん!?」」

 

「とおりゃああああああああああああ!!!!」

 

驚異のジャンプ力でベランダを飛び越え隣にある自宅へと移る梨子。

 

「「「「「おお……飛んだ」」」」」

 

その光景を目の当たりにしたのは未来達だけではなく、梨子の部屋を掃除中だった彼女の母も目撃者の一人となるのだった。

 

「お、おかえり……」

 

「ただいま……」

 

 

◉◉◉

 

 

「じゃあ衣装よろしくね」

 

「ヨーソロー!」

 

そろそろ日が沈み始めたのもあり、今日のところは解散することに。

 

バス停まで曜と善子を送った後、それぞれの帰路へと別れていく。

 

「じゃあマル達も」

 

「失礼します」

 

「うん!じゃーねー!」

 

花丸とルビィも自分の家へ向かおうと、その場を去っていく。

 

「あいたたたた……」

 

臀部を苦い表情でさする梨子を見て、千歌は小さく声を漏らして笑い出す。

 

「笑い事じゃないわよ!今度から絶対繋いでおいてよ!」

 

「はいはい、あはははっ」

 

「ほんとに犬苦手なんだな」

 

「もう、人が困ってるのがそんなに楽しい?」

 

「違う違う。みんな色々個性があるんだなーって」

 

「え?」

 

笑いながらそう言う千歌は、どこか哀しげにそう訂正した。

 

「私達始めたはいいけど……やっぱり地味で普通なんだなーって思ってた」

 

「そんなこと思ってたのか?」

 

むしろキャラが立ちまくりなのでは、とツッコミたくなる未来だったが、空気を読んでここは抑える。

 

「そりゃ思うよ。一応言い出しっぺだから責任はあるし」

 

段々と千歌の笑顔が綻び始め、ついには完全に目尻が下がった状態になった。

 

「かと言って、今の私にみんなを引っ張っていく力はないし」

 

「千歌ちゃん……」

 

再び顔を上げて笑顔を作った千歌は、先ほどの話にさらに言葉を重ねた。

 

「でも、みんなと話して少しずつみんなの事知って、全然地味じゃないって思ったの!それぞれ特徴があって、魅力的で……。だから、大丈夫なんじゃないかなって!」

 

未来は幼馴染の初めて見るようなその表情に思わず言葉を詰まらせ、数秒後やっと出てきた言葉が、

 

「変わったな、お前」

 

「えー⁉︎なに、褒めてるの⁉︎貶してるの⁉︎」

 

「どっちも」

 

「えーなにわかんないよー!」

 

地団駄を踏むかの如く足をバタバタさせる千歌。

 

 

 

未来は幼い頃、そして中学生の頃の千歌を知っている。だからこそ、先ほどの言葉を聞いて彼女が少しずつ変化していっているのがわかった。

 

部活動に興味がなかった千歌がスクールアイドルを始め、リーダーとしてメンバーの内面も見極めようとしている。

 

(いや……。俺が知らなかっただけで、これが本当の千歌なのかもしれないな)

 

「ふふっ……。とにかく、頑張っていきましょう。地味で普通のみんなが集まって、何ができるか、ね?」

 

「よくわかんないけど……。ま、いっか」

 

「よっしゃあ!うちまで競走!ビリはジュースおごり!」

 

「あっ!ずるーい!!」

 

駆け出す未来に続いて梨子、そしてかなり遅れて千歌が走り出した。

 

 

◉◉◉

 

 

暗闇に浮かぶ一隻の宇宙船。

 

エンペラ星人に仕える暗黒四天王達が乗り込むその船の中に、いつもとは違う人物がいた。

 

「一体皇帝は何をお考えだ!このような輩を再び仲間に加えるなど!」

 

銀色に光る鋭利なボディをした豪将ーーーーグローザムは不機嫌なのを隠す様子もなく態度に出す。

 

アークボガールはそれを気にする素振りすらせずに言う。

 

「仲間になった覚えはない。我はただ、この銀河全てを食い尽くしたいだけだ」

 

「まあまあ、落ち着きなさい二人とも」

 

冷静な雰囲気を保ちながら二人を止めたのはメフィラス星人。暗黒四天王の中で知将という位置にい宇宙人だ。

 

「以前までは邪将として四天王のメンバーだったではありませんか」

 

「はっ!追放されたがな!」

 

それぞれで好き勝手な意見が飛び交うこの場所で、唯一メンバーをまとめることができるのがメフィラス星人だった。

 

「それにしても、なぜ皇帝は俺達を地球に送ろうとしない?」

 

「……泳がせているのでしょう。()を」

 

「彼だと……?皇帝の同胞を名乗る、あの宇宙人か?」

 

「ええ」

 

そう。ノワールが地球でキングジョーブラックを使い破壊活動を行った事を知り、エンペラ星人はしばらく様子を見る事を決めたのだ。

 

「あんな雑魚……すぐにやられるに決まってる」

 

「わかりませんよ。彼も強力な闇の力を持っていますから……、それに……」

 

メフィラス星人は背後に控えている巨人を一瞥し、笑いを含めて言った。

 

「もし仮に彼が倒されたとしても……我々の出番はないかもしれませんね」

 

 

メフィラスの背後にいるのは、暗黒の鎧を纏った、”黒いウルトラマン”。

 

本来エンペラ星人専用に作られた鎧ーーーーアーマードダークネスを身にまとった、ウルトラマンベリアルの姿がそこにあった。

 

 

 

 

 

 

 




満を辞してチラッと登場したベリアル様は、やっぱりアーリースタイルではなく……!
彼の本格登場をお楽しみに!

プチ解説は今作の時系列について簡単に説明しましょう。

ウルトラ大戦争(エンペラ軍vs光の国の戦い)が起こる。

ベリアルが内浦にディノゾールを追って降り立つ。

戦争でウルトラの父が仕留め損ねたエンペラ星人にベリアルが挑み敗北。

メビウスがエンペラ星人に挑み敗北。

メビウスと未来が出会う。

といった感じです。基本的に元の設定はほぼ無視しています。
つまりテレビのウルトラシリーズとは違い、今作ではベリアルが初めて地球に来たウルトラマンという扱いになるわけです。

次回更新は都合により一週間以上間が空きます。楽しみにしてくださっている読者の皆様に深い謝辞を。


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