メビライブ!サンシャイン!!〜無限の輝き〜   作:ブルー人

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どうやらキャラ別の回は前後編の尺が必要なようだ……。
今回は黒澤姉妹の名前に因んだ、”鉱石”に関係するオリジナル宇宙人の登場です!
それでは、どうぞ〜。


第18話 ルビィの妹:前編

宇宙に浮かぶ、青く美しい星ーーーー地球。

 

その輝きを求めて、様々な者達がその地へと降り立つ。

 

観光、侵略……目的もまた、それぞれで異なっていた。

 

 

◉◉◉

 

 

内浦の自然の中、一機の小型宇宙船が不時着した。

 

モクモクと煙を上げるその機体の中から、ヨロヨロとした動きで出てくる何者かの姿が見える。

 

「痛い……!もっと操縦練習してけばよかったなぁ……!」

 

青い髪をサイドテールで一つに束ねている、外見は小学生ほどの幼い少女。

 

サファイアブルーに輝く瞳に、透き通るような白い肌。宝石のように美しい姿を見れば、大抵の宇宙人は彼女が何者であるか理解できるはずだろう。

 

ーーーー彼女は、クォーツ星人と呼ばれる者達の仲間だった。

 

「うわぁ……」

 

淡島神社の上から見える景色に、思わず感嘆の声が漏れ出る。

 

近くに広がる青い海、潮の香り、のどかな雰囲気ーーーーあらゆる物が彼女を魅了した。

 

「作戦が成功すれば、ここがあたし達のモノになるんだ!すごいすごい!」

 

無邪気に笑いながらぴょんぴょんと飛び跳ねるのも束の間、少女はある事に気付いた途端、全身の血の気が引き、髪色と同じように真っ青な顔になる。

 

「あれ、そういえば”ゴーレム”はどこに……」

 

自分の衣服のポケットをまさぐり、全身を叩くようにして確認する。が、求めていた物の感触はなかった。

 

「ま、まさか……落とした……?」

 

不時着した時の衝撃でこの周辺に落としてしまったのか。積んでいたはずの()()が手元のどこにもない。

 

「どどどど、どうしようーーーーっ!!」

 

 

◉◉◉

 

 

「失礼します」

 

「オウ、来たみたいですね!」

 

「はあ……」

 

今スクールアイドル部のメンバー全員は鞠莉に呼び出され、理事長室へと足を運んでいた。

 

鞠莉の前にある、無数の資料とパソコンが置いてある大きな机に寄る。

 

「えーと……今度は何用で?」

 

「もう、そんなに緊張しなくていいのに!」

 

理事長に呼ばれたということもあって、その場の全員の顔に不安が入り混じる。

 

パソコンの画面から目を離した鞠莉が、並んでいるAqoursの面々を横から順番に流し見して言った。

 

「少しあなた達に聞きたいことがあって呼んだの」

 

「聞きたいこと……?」

 

「イェース!」

 

鞠莉は机の上に無造作に散らばっていたプリントの中から一枚だけ拾い上げ、それを全員に見えるよう突き出した。

 

それは、拡大された写真。写っているものは、大きな二つの影。片方は人型で、もう片方は長い首を持つ獣のような姿をしている。

 

「……!これって……!」

 

「まあその反応は当然よね。……覚えてるんでしょう?あの時の事」

 

鞠莉の言葉に梨子だけが理解できていない様子だった。……無理もない。彼女は”あの時”内浦にいなかったのだから。

 

「写っているのは、ウルトラマンと怪獣ですね?」

 

「そ。昔からこの辺りに住んでた人にとっては、忘れられない出来事ね」

 

「……”未確認生命体第1号”、いわゆる怪獣という生物が、初めて地球に現れた日ですね」

 

「そして、ウルトラマンが初めて地球に降り立った日」

 

次々に言葉を呟く未来達に、梨子はさらに困惑するように周りの顔を見渡している。

 

「そう。……まあ簡単に言えば、私はウルトラマンの事を調べているの」

 

鞠莉がそう言った途端、未来とステラの身体がほんの一瞬反応するようにビクつく。

 

「それで、昔からこの地にいるあなた達にあの日何があったのかを詳しく聞きたいと思って。……ああ、確かあなたは東京からの転校生だったわね?あなたもあの日のニュースとか、知ってる事を話してほしいわ」

 

……どうして自分達に聞くのだろう。あの日の事ならば当時幼かった子供より、街の大人に聞いた方が早いはずだ。

 

これも、何か理由があるのだろうか。

 

「聞きたいことって言われても……。私、ただ逃げてただけだし」

 

「ルビィも、お姉ちゃん達と一緒に……」

 

「マルも同じずら」

 

曜、ルビィ、花丸が揃ってそう言う中、千歌と未来は引き締まった表情でボヤけた拡大写真を見つめていた。

 

「……ウルトラマンの事を調べて、何をするつもりなんですか?」

 

未来の問いに、数秒考えるような素振りを見せた後、口角を上げたまま鞠莉は言った。

 

「別にどうもしないわよ?ただ、彼の事をもっと知りたいの」

 

「机の上にあるのは見える限りメビウスではありませんが、そのウルトラマンは一体……?」

 

不意にそう言うステラへ、鞠莉の視線が移動する。

 

「メビウス?」

 

「あ……、私達最近現れたウルトラマンをメビウスって呼んでるんです。ややこしいからって」

 

「あら、なら私もそう呼んじゃおうかな?」

 

パソコンを回転させて画面をこちらに向けると、鞠莉は数十秒間の動画を再生させた。

 

ウルトラマンーーーーベリアルがディノゾールを光線で倒す瞬間だ。

 

「でも()()()じゃないの。私が欲しい情報は、数年前に現れたウルトラマンのことなの」

 

ステラはベリアルの事を知らないのだろう。豆鉄砲食らったような顔をして、固まっている。

 

「……そういえばあなた」

 

「えっ?」

 

鞠莉はステラに顔を近づけると、じっとその黒い瞳に黄金色の瞳を重ねた。

 

「あなたも転校生ってことになってるけど……前の学校の事は資料に無かったわね」

 

「…………学校側の不備でしょう」

 

「ま、それは置いといて」

 

鞠莉は片手で軽くパソコンを閉じると、固定されたかのような笑顔で未来達に改めて言う。

 

「何かあったらすぐに言いに来て欲しいわ。話はそれだけ。スクールアイドルの方も頑張ってね!」

 

 

◉◉◉

 

 

何か不安が胸の中で渦巻き、黒澤ルビィは淡島神社でお参りをしようと、階段を登っていた。

 

(ウルトラマン……かぁ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー『お姉ちゃあん!!どこお!お姉ちゃああああん!!』

 

 

 

 

寒気と共に過去の光景がせり上がってくる。

 

あの時、それはもうたくさんの涙を流した。怪獣がたまらなく怖くて、何度も何度も姉のことを呼んだ。

 

もしもあの時光の巨人が現れなかったら、と考えると今でも恐ろしく思う。自衛隊の攻撃を物ともせずに破壊の限りを尽くしていた、巨大な青い怪獣。

 

気の弱いルビィは、動けずに泣き叫ぶことしかできなかった。

 

(ウルトラマンが来てくれたから、今ルビィはここにいるんだ。あの人は、ルビィとお姉ちゃんをーーみんなを助けてくれた人)

 

ルビィは二つの赤と銀の身体を思い浮かべながら、淡島神社の頂上まで辿り着いた。

 

「うゅ……?」

 

祠の周辺で、何かを探すように屈んでいる人物の姿が視界に入ってきた。

 

見たところ幼いーーーー小学生くらいの女の子である。

 

「あ〜んもうどこいっちゃったかなあ……⁉︎」

 

茂みの中を手当たり次第に探る少女を見て、ルビィは思わず声をかける。

 

「あ、あの……何か探し物ですか?」

 

ルビィの存在に気付いた少女は、動きを止めたかと思えばすぐさま腰に装備していたレーザー銃を掴み取り、その銃口をルビィへ向けた。

 

「て、手を挙げろおおおおおおおおお!!!!」

 

「ピギィィィイィィイイイイイ!?!?」

 

二人の甲高い声が、街中に聞こえそうなほどに響き渡った。

 

 

◉◉◉

 

 

クォーツ星人のサファイアは、今この状況に陥っていることに凄まじい焦りを感じていた。

 

(見られた……見られた⁉︎地球人に、計画がバレちゃった⁉︎)

 

「あ、あの……」

 

「動くなぁ!」

 

「え、ええ⁉︎」

 

レーザー銃を構えたまま思考を回転させるも、パニックになった彼女はただ冷や汗を流すことしかできなかった。

 

そうしてるうちに、赤い髪の少女は銃をおもちゃと判断したのか、サファイアに向かって一歩踏み出した。

 

「ああ動くな!動くと撃つよ⁉︎ほんとに撃つよ⁉︎」

 

「そ、そんなに怖がらなくても……。ちょっと気になったから声かけてみただけだよ……?」

 

「ほ、ほんと?」

 

自分達の侵略計画がバレてしまったわけではないと理解すると、サファイアはレーザー銃を腰のベルトに挿し、安心するように深い溜息を吐き出した。

 

「お、驚かさないでよねっ」

 

「ご、ごめんね?それで、その……何やってたの?困ってるみたいだったけど……」

 

「……あっ、そうだった」

 

サファイアは自分達の侵略兵器である、”ジュエルゴーレム”を落としてしまったことを思い出す。

 

普段は手に収まるほどに小さな人形だが、クォーツ星人が念じればそれはたちまち巨大化し、強力な兵器と化すものだ。

 

ーーーーサファイアは、クォーツ星から地球を侵略するために尖兵として送られた少女だった。

 

「ちょっと落とし物しちゃって……」

 

「た、大変!大切な物なの?」

 

「え?う、うん……まあ」

 

「じゃあすぐに探さないと!手伝うから一緒に探そう⁉︎」

 

「え?」

 

呆気にとられたサファイアは、茂みの中へと手を入れる少女をしばらくただ見つめていた。

 

ーーーーこの人は何をやっているのだろう。

 

自分はこの星を侵略しに来た者だというのに、その敵の探し物を手伝う、と言った。

 

(あっ……そうだ、あたしはまだ侵略者だってバレてない……。えへへ、ここはこの人を利用しない手はないね!)

 

「なかなか見つからない……ってそういえばどんな物か知らなかった」

 

赤い髪の少女はサファイアに顔を向けると、言った。

 

「ねえあなた……って名前知らなかった。ねえ、教えてくれるかな?」

 

「教えるって、あたしの名前を?」

 

「うんっ」

 

まあそれくらい問題ないか、とサファイアは自らの名前を胸を張って名乗った。

 

「あたしの名前は…………さ、サファイア」

 

「えっ!サファイア⁉︎」

 

「うえぇ?」

 

瞳を輝かせて駆け寄ってくる赤毛の少女。興奮気味な彼女は早めに口を動かした。

 

「綺麗な名前!」

 

「え……?」

 

少女が言う鉱石、とはもちろんサファイアのことを言っているのだろう。ただしクォーツ星で”サファイア”と名付けられた宝石は地球の物よりも黒ずんでいて、あまり美しいとは言えないものだった。

 

サファイアは、昔から自分の名前があまり好きではなかったのだ。

 

「確かに髪も綺麗な青色で……すごくあなたに合ってるかも!」

 

(そっか……。この星では”サファイア”は綺麗な宝石なんだね)

 

「私の名前も、鉱石から取られてるんだよ!」

 

「えっほんと?」

 

思わぬ偶然を聞かされ、サファイアはつい彼女に聞き返してしまう。

 

「うんっ!ルビィって言うんだ!」

 

彼女の名前を聞いた瞬間、サファイアは氷漬けにされたかのように動きが止まる。

 

(同じだ……お姉ちゃんの名前と)

 

「あっ……そういえば探し物だったね……。えっと、何を落としたの?」

 

「これくらいの、虹色の人形だよ」

 

両手で円を描いてサイズを表すサファイアに、ルビィと名乗った少女は頷くと再び茂みの中を探索し始める。

 

(あっ……!あたしも探さないと!)

 

その日、青と赤の髪を持つ二人の少女は、日が暮れるまで一緒に”ジュエルゴーレム”を探した。

 

 

 




はい、まさかのオリジナル宇宙人でしたが……いかがでしょう?
今回と次回のエピソードは、実はモデルになった話がウルトラシリーズに二つ存在します。
一つはメビウスの「ミライの妹」、そしてもう一つは帰ってきたウルトラマンの「怪獣使いと少年」です。次回と合わせてみると共通点が見つかるかもしれません。

今回のプチ解説はクォーツ星人について。

星の景観としては惑星アーブが近いと思います。複数の結晶体で構成された街やテクノロジーが広がる星です。
大体の人々は生まれた時に鉱石にまつわる名前が付けられます。そして、住人全員が綺麗な顔立ちをしているという何とも羨ましい星です。
ただ、プライドが高く傲慢な人が多い星でもあります。

次回は久しぶりの戦闘もあるので、お楽しみに!

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