メビライブ!サンシャイン!!〜無限の輝き〜   作:ブルー人

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テレビでオーブオリジンが登場してテンション有頂天マンです。

さて、今回からサンシャイン4話に突入……。花丸とルビィ加入までは戦闘ないので、不穏な展開とか心配無用ですぞ、たぶん。


第14話 互いの背中

「ふぅ……すっきりした……」

 

未来は濡れた髪をタオルで拭きながら、Tシャツと短パンというラフな格好で、リビングにあるソファーに吸い込まれるようにして座り込んだ。

 

『未来くん……。ちゃんと家の中は掃除してるのかい?』

 

「掃除?してるけど……?」

 

オレンジ色の光球がぷかぷかと周囲を漂う。未来が一人でいる間は、メビウスも彼の身体から離れているのだ。

 

散らかっているわけでもないが、所々に溜まっている埃が気になったのだろう。メビウスは控え目な口調で質問する。

 

『それにしてもこの家……、ほんとに未来くん一人で管理を?』

 

「まあな。俺も一人っ子だったし、母さんと父さんがいなくなってからは……なかなか家中にやることが行き届かなくて」

 

『あっ……、ごめん……』

 

「いいっていいって。今更…………」

 

たまに自炊もしているが、面倒なので大体は惣菜やコンビニ弁当で食事を済ませている。……ので、気付いた時には台所まで埃を被っていることもしばしば。

 

「千歌の家の料理美味いんだよなあ……。俺もステラみたいにあそこで暮らしたい」

 

『たしかにステラも褒めていたな、あの家の食べ物は美味いと』

 

「そうそう…………ん?」

 

メビウスとは違う何かの声が耳朶に触れ、反射的にその声音が聞こえた方を振り向く。

 

ーーそこにいたのは、蒼い光の球と化したウルトラマンヒカリだった。

 

「うおおおおっ!?!?どっからわいた⁉︎」

 

『ヒカリ⁉︎どうしてここに⁉︎』

 

大袈裟にソファーから転がり落ちる未来を尻目に、ヒカリは不規則に動き回りながら語り出した。

 

『ステラは今、あの千歌という娘と入浴中だ。少しの間ここにいさせてくれ』

 

「難儀だなぁ……。千歌は知らんが、ステラはそういうの気にしない印象なんだが」

 

『俺も以前まではそう思っていた。が、前に海で水浴びをした時にうっかり彼女の裸体を見てしまったのだが……』

 

「だが?」

 

『その後しばらくは口を聞いてくれなかった』

 

「おう……」

 

話の途中から声にいつもの張りが無くなったことから、ヒカリはかなり申し訳なく思っているらしい。おそらく今でも。

 

 

 

……少し時間が経った後に、気づく。この空間、野郎しかいない、と。

 

普段千歌と曜と一緒にいるので、このような状況は新鮮だ。例えるならそう、修学旅行での男子部屋のような。

 

『そうだ……。君達に話しておかなければならないことがあった』

 

急に声のトーンを下げて真剣な雰囲気を漂わせるヒカリに、未来とメビウスは揃って小首を傾げた。

 

『ここ最近、ボガールを見なくなった』

 

「……?よかったじゃん」

 

『いや、そうとも限らない』

 

しん、と空気の流れすら止まっているように感じるリビングの中が、段々と緊張感に包まれていく。

 

『前に話したが、俺達はアークボガール率いるボガールの集団を追って、この星に来た。奴らは今まで、この辺りに多く生息していたはずなのだが……、以前ボガールモンスを倒したきり、全く姿を見せなくなったんだ』

 

「うん」

 

『……まだ理解できないか。アークボガールはまだ倒していないのだぞ』

 

『……たしかに、それはおかしいね』

 

状況が飲み込めない未来の隣で、メビウスが納得したようにそう言った。

 

『奴らがそう簡単に地球を諦めるとは考え難い。……なのに、ボガール達は姿を消した』

 

「……?つまり……?」

 

『詳しいことはわからないが、ボガール以外の”何か”が干渉しているのは間違いない』

 

「ちょっと待てよ、それってまさか……!」

 

直感的に未来の頭の中で一つの名前が浮かぶ。

 

前にメビウスから聞かされた、ウルトラマンの宿敵とも呼べる者。

 

『エンペラ星人……。僕を再起不能な状態まで追い詰めた、暗黒の皇帝……』

 

『ああ。エンペラ星人がボガールを消したか……もしくは奴らが手を組み、何かを企んでいるのか』

 

「……!」

 

エンペラ星人ーーーーメビウスと、ウルトラマンベリアルですら敵わなかった相手。

 

『それと、だ。最近わかったことなのだが……。この地球から……特殊な時空波が発せられている』

 

「時空波?」

 

『発信源を無くさなければ、怪獣の出現は止まらない。宇宙だけでなく、この地球に眠る怪獣まで呼び起こすことになるぞ』

 

「なっ……!」

 

怪獣を引き寄せる、電波のようなものがこの星から流れ出ているという。……これもエンペラ星人の仕業なのだろうか。

 

『伝えたいのはそれだけだ。……そろそろ行くよ、すまなかったな、勝手に上がり込んで』

 

そう言い残すと、ヒカリは側にある壁をすり抜けて隣ーーーーステラがいる千歌の家へと戻って行った。

 

 

 

 

『未来くん……』

 

「……大丈夫だ。例えどんな怪獣だろうと……、エンペラ星人だろうと……この地球は、俺が守る……!」

 

宿敵の相手を深く胸に刻み込み、未来は戦いへの決意をより一層強めた。

 

 

◉◉◉

 

 

「これでよし!」

 

念願のスクールアイドル部が設立され、意気揚々と名札を取り付ける千歌。

 

「それにしても……まさか本当に承認されるなんてなあ」

 

ノリノリで判子を押し込む小原鞠莉の姿を思い出す。もしかしたら全てあの人の計算通りだったのではないかと思うほどに、ファーストライブは大成功に終わったのだ。

 

「でも、どうして理事長は私達の肩を持ってくれるのかしら?」

 

「それも何か狙いがあるとか……」

 

もう何もかも怪しく感じられる。本来ここは感謝すべきなのだろうが……。

 

「スクールアイドルが好きなんじゃない?」

 

「それだけじゃないと思うけど……」

 

「とにかく入ろうよ!」

 

与えられた部室の鍵をチラつかせる千歌を見て、皆の興奮が高まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「う……」

 

「うわぁあ〜……!」

 

「なんでこんなに荷物が……」

 

未来達を待っていたのは、物置と勘違いしそうなほどに埃っぽく、ダンボールの箱が至る所に積み重なった部屋だった。

 

想像していたのと真逆の光景を見て、口があんぐりと開いたままになる。

 

「理事長はたしか、片付けて使えって言ってたわね……」

 

「うっそだろ……これ全部か?」

 

「文句言っても誰もやってくれないわよ?」

 

腕まくりをして今から掃除する気満々の梨子と曜、そしてステラ。

 

「もう〜…………ん?」

 

千歌が設置してあった汚れたホワイトボードの面を見て、何かに気がついたのか小股で側に寄る。

 

「なんか書いてある」

 

「ほんとだ。……”いつもそばにいても伝”……んだこれ」

 

「歌詞、かな?」

 

「どうしてここに?」

 

以前この部屋を使っていた部活の人が書いたものなのだろうか。文字の掠れ具合からしてかなり前に書かれたものだろう。

 

「わからない……。それにしてもーーーー」

 

千歌が再び振り向き、積まれている荷物をじっと眺める。

 

 

 

『ん……?』

 

(……?どうしたメビウス?)

 

『いや、外に誰か……』

 

(え?)

 

メビウスに言われるままに外に繋がっている出入り口へと視線を移す。

 

ーーほんの一瞬、可愛らしい赤髪の先が見えたような気がした。

 

 

◉◉◉

 

 

静かな空気と本の匂いに包まれた図書室。

 

図書委員である少女ーー国木田花丸。彼女以外には生徒の姿がなく、それが一層この空間に物寂しい雰囲気を与えていた。

 

廊下からこちらに走ってくる足音が聞こえ、数秒後に図書室の引き戸が横に開かれた。

 

「やっぱり、部室できてた!スクールアイドル部承認されたんだよ!」

 

興奮気味で身を乗り出してきた友達に、花丸は笑顔で答えた。

 

「よかったね!」

 

「うん!あぁ〜……またライブ見られるんだぁ……」

 

まるで恋焦がれるような瞳で上を向く少女ーールビィを見て、花丸は慈愛に満ちた微笑みを浮かべた。

 

(よかった……。これでやっとルビィちゃんーーーー)

 

「……?花丸ちゃん、それなあに?」

 

「うん?」

 

ルビィは花丸が手に持つ、ボロボロの羊皮紙のような紙を見てそう尋ねる。

 

「オラもわからないんだ。来た時にはもう机の上にあって……」

 

紙には何か文章が書かれているのだが、日本語ーーいや、もしかしたらこの世界のどこにも存在しない言語で書かれているため、解読するのは不可能だ。

 

 

 

「こんにちはー!」

 

「ピィッッ!!」

 

数人の生徒が入ってくると同時に、ルビィは咄嗟に近くの扇風機の後ろへと身を隠す。

 

その生徒達はーー他でもないスクールアイドル部の部員達だった。

 

「あ、花丸ちゃーん!それと……ルビィちゃん!」

 

「ピギィ!」

 

隠れているルビィの居場所を見事当ててみせた千歌に、天敵に発見された小動物のような反応をするルビィ。

 

「よくわかったね」

 

「へっへーん!ふふ!」

 

「こ、こんにちは……」

 

おそるおそる挨拶を返すルビィを見て、千歌の瞳がキラキラと輝きだす。

 

「かわいい〜……!」

 

「ほらほら、俺達はコレ返しに来たんだろ?」

 

「あ、そうだった」

 

未来達は抱えていた本の山を花丸の前に置く。なぜだか部室に残されていたものだ。

 

「これ、たぶん図書室のものだと思うんだけど……」

 

「ああ……。たぶんそうです、ありがとうございまーー」

 

「スクールアイドル部へようこそ!!」

 

未来を押し退けて花丸とルビィの手を握る千歌に、二人は戸惑いを隠せず小さな悲鳴を上げる。

 

「結成したし、部にもなったし、絶対悪いようにはしませんよ〜?」

 

(またこいつは……)

 

「二人が歌ったら絶対キラキラする!間違いないっ!」

 

「あ……えっと……でも……」

 

「お、オラ……」

 

「おら?」

 

「あっいえ!マルそういうの苦手っていうか……」

 

「る、ルビィも……」

 

ルビィを見て少し悲しそうな表情を浮かべる花丸にーーーーその場にいる者は誰も気がつかない。

 

 

 

『ん……。んん!?』

 

(あ?どうしたメビウス?)

 

『そ、そこにある紙!』

 

(紙……?)

 

未来は目玉だけを動かして机の周辺を探す。すると花丸の手元に、所々が欠け、黄ばんでいる紙が置かれているのが見えた。

 

「なんだ、これ……」

 

ひょい、と片手で紙を目の前まで持っていくと、羅列されている文字をじっと見る。……が、何を書いているのかさっぱりだ。

 

『この文字、光の国の……!』

 

(はあ⁉︎うそぉ⁉︎)

 

なんと使われているのはウルトラの星の言語らしい。

 

「花丸ちゃん、どこでこれを?」

 

「わからないんです。マルが来た時には既にあって……誰かの忘れ物かもしれません」

 

「じゃあ借りるわけにも……。メモとっていいかな?」

 

「はあ……、たぶん……」

 

生徒手帳を取り出して、慣れてない文字を写していく。書いているうちに何か規則性があることはわかるが……やはり詳しい内容は理解することができない。

 

「どうもー。さ、そろそろ練習行こうか」

 

「あっ、そっか。二人とも、じゃあね!」

 

花丸に紙を手渡し、未来は千歌達の後ろへ続くように図書室を去って行った。

 

 

◉◉◉

 

 

「む、無理よ……さすがに……」

 

「でも……μ'sも階段登って鍛えたって……」

 

「でも、こんなに長いなんて……」

 

「こんなの毎日登ってたら、身体が保たないわ……」

 

足腰を強くするため、淡島神社にある尋常でないくらい長い階段をランニングしに来た千歌達だったが、途中で息を切らしてへたり込んでしまった。

 

ステラと未来も三人に同行しているが、メビウスやヒカリとの融合の影響でほとんどのスタミナが有り余っている状態だ。

 

座り込んでいる三人の隣で、未来は先ほどメモを取った紙を眺めていた。

 

(どうだ?)

 

『これはたぶん……”光の予言”の一部だね』

 

(光の……予言?)

 

『うん。僕達にとっても神様みたいな存在……ウルトラマンキングが生み出したと言われる書物さ』

 

(でも、それがどうして学校の図書室に?)

 

『わからない……。けど、あれは本体じゃないね。君がさっきメモを取ったように、あの紙もただ本文を書き写した物だ』

 

(誰かが内容を写したのか……)

 

『もしくは……僕達にコレを伝えるために……』

 

(これ?)

 

『うん。ここに書かれてる内容はーーーー』

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?千歌達じゃない」

 

メビウスの言葉を遮るように上の階段から降りてきたのは、千歌や、未来もよく知る人物ーー松浦果南だった。

 

「果南ちゃん!」

 

「もしかして、上まで走って行ったの⁉︎」

 

「一応ね、日課だから」

 

(だれ?)

 

(果南さんだよ。俺達とは幼馴染)

 

テレパシーで尋ねてくるステラに、未来もまた脳内で返す。

 

「千歌達こそ、どうしたの急に?」

 

「鍛えなくっちゃって……ほら!スクールアイドルで!」

 

「ああー……そっか。ま、頑張りなよ!じゃあ、店開けなきゃいけないから」

 

そう言って階段を下って行く果南の息は全く上がっていない。まさに体力おばけといったところか。

 

「わ、私達も〜……行くよ〜……!」

 

負けじと対抗しようとする千歌に、周りの四人は苦笑を滲ませた。

 

 

◉◉◉

 

 

「で……なにこれ?」

 

「光の……なんだっけ?」

 

『光の予言』

 

「そうそれ!」

 

未来の自宅のリビング。

 

未来はステラをーーーー正確にはヒカリに内容を見てもらうために、家に招いたのだった。

 

「これが光の国の言葉なの?」

 

「メビウスが言うにはそうらしいけど」

 

テーブルに置かれているメモ用紙の前で蒼い光が止まり、しばらくして一言。

 

『よくわからん』

 

思わずコケそうになった。

 

『メビウス。君はこれをどう解釈する?』

 

『僕も何を伝えたいのかよくわからないんだ。読むのも初めてだし』

 

「二人ともかあ……」

 

「わからなくてもいいわ。とりあえず何が書いてあるのか教えてくれないかしら?」

 

『わかった』

 

メビウスは空中に日本語で光の文字を描く。

 

未来とステラはそれを見て数秒後、クエスチョンマークが頭付近に見えるくらいに疑問だらけの表情を浮かべた。

 

「一の光、憧れを捨て…………意味わからん」

 

「その前に闇って何よ」

 

『さあ……何かの災いを防ぐ方法なのかな……?』

 

 

 

 

 

 

 

その日は結局答えは出ず。頭の中がモヤモヤとしたまま次の日を迎えることとなった。

 

 

 




第7話でウルトラの父が言っていた光の予言が再び登場。そしてその内容を盗み、未来達に伝えたのは……⁉︎
ルビまるが加入した後の数話はオリジナルの内容で、出したかった宇宙人のエピソードとか消費したいと思います。

今回のプチ解説は今作の主人公について!

日々ノ未来。名前はもちろんテレビのメビウスの人間態である”ヒビノミライ”から頂きました。が、性格はテレビ版とは少々違います。基本落ち着いてますが、何かあるとすぐパニックになったり熱くなってしまう、メビウスに出会う前までは普通の男子高校生でした。ただ、正義感だけはテレビのミライにも負けません!
彼は過去に一度とあるウルトラマンと会ったことがありますが、本人はその事を思い出すことができないでいます。

それと今作のヒロインについてですが……。メインヒロインは千歌ちゃんでストーリーを進めていきます!
もちろん他のメンバーに焦点を当てた回も書きますが、千歌ちゃんがこの物語において重要なポジションにいることを先に伝えておきます。ほら、なんか黒い人から気に入られてるみたいですし(若干ネタバレ)

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