メビライブ!サンシャイン!!〜無限の輝き〜   作:ブルー人

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マリー登場!!シャイニィィイィィイイイイイ!!!!


第12話 踏み出す条件

「いやよ」

 

「そこをなんとか!」

 

教室の隅でステラに頭を下げる未来。その光景を見てすぐに他のクラスメイト達は気まずそうに目を逸らす。

 

「い・や・よ。大体なんでわたしに頼むわけ?」

 

「いやぁ……他に頼んだ人は全滅だったし……。お願いだ!俺達を助けると思って!」

 

ついに頭を地に付けて土下座の体勢になる未来を見て、ステラは後ずさりをした。

 

「ちょっ!やめてよ!頭上げなさいよバカ!プライドは無いの⁉︎」

 

「んなもんより今は部の方が優先だぁ!!」

 

「いやったらいや!!アイドルなんて絶対やらないから!!」

 

そう。未来は距離が縮まったステラに改めてスクールアイドル部へと勧誘していたのだ。

 

部の設立に必要な人数の規定は5人。あと一人で正式に申請を出せるというのに……なかなか最後の一人が集まらないでいた。

 

「み、未来くん、あんまり無理強いは……」

 

「ご、ごめんね、七星さん。あはは……」

 

見るに耐えない光景に千歌と曜が止めに入る。

 

「……そんなにアイドルやりたいの?」

 

「うんっ!私達、絶対μ'sみたいになるんだ!!」

 

「みゅー……?」

 

ステラの問いに即答する千歌の目は、幼い子供のように輝いている。

 

「あれ?知らないの?じゃあ今日の放課後私達と一緒に来て!見せてあげるから!」

 

「え?あの……ちょっと……!」

 

休み時間の終わりを告げるチャイムと共に自分の席へ戻っていく千歌を、ステラは唖然と眺めていた。

 

「強引な人……」

 

「通常運転だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というわけで放課後。

 

ステラを連れて砂浜までやって来た未来達は、彼女にスクールアイドルのことを知ってもらうために練習を見せることになった。

 

「「「ワンツー!スリーフォー!ワンツー!スリーフォー!」」」

 

メトロノームに合わせて振り付けの稽古をする千歌、曜、梨子。未来とステラは少し離れた所で体育座りをし、3人を観察するように見ていた。

 

『頑張ってるね、3人とも』

 

「ああ」

 

「スクールアイドルね……。普通のアイドルなら知ってるけど、コレはわたしの故郷には無い文化だわ」

 

『俺もこのようなものは初めて見る』

 

ステラだけでなくヒカリまで興味深そうに眺めているのは意外だったが、割と好感触なようだ。

 

「ほら、これ見てみろよ」

 

「……?」

 

未来はスマホに一つの動画を映し出し、ステラの方へ差し出す。”第二回ラブライブ!”でのμ'sのパフォーマンスの動画だ。

 

「千歌の奴、その人達の動画を見て、スクールアイドルを始めようと思ったらしいんだ」

 

『ヒカリも見てみなよ。すごく綺麗で、素晴らしい歌だよ』

 

 

 

横でそう言う未来とメビウスなど気にもせず、ステラは動画に見入ってる様子だった。

 

未来は自分も最初μ'sの動画を見た時、同じような反応をしたのを思い出す。

 

「どうだステラ。仮にも女子なら、少しはやりたいと思ってくれたか?」

 

「ぶった斬るわよあなた」

 

溜息を吐いてスマホを返すステラ。その視線の先にある千歌達が練習している姿を、彼女は先ほどよりも真剣な眼差しで見た。

 

「ふぅ……!休憩しよっか」

 

「そうね。じゃあ10分後くらいにまたやりましょう」

 

「あっ!()()()ちゃあーん!」

 

額の汗を拭いながらこちらにやってくる千歌達。いつの間にか名前で呼ばれていることに少し遅れて気がつく。

 

「見てた見てた⁉︎スクールアイドルやりたくなった⁉︎」

 

「え?えぇっと……」

 

チラッと未来に助けを求める視線を送るステラ。これまでに見たことがない戸惑いようだったので、未来は面白がりながらも助け舟を出す。

 

「やっぱり踊るのは恥ずかしいから無理だってさ」

 

「べっ……別に恥ずかしいとは……」

 

「じゃあ入ってくれるの⁉︎」

 

「ち、千歌ちゃん……」

 

梨子に制止されてしょんぼりと落ち込む千歌に、ステラは慌てて付け足した。

 

「でも、未来みたいにマネージャーならやってもいいわ」

 

「えっ⁉︎」

 

4人の顔が驚愕で満たされ、たちまち目が点になっていく。

 

「ほ、ほんとに⁉︎」

 

「入ってくれるの⁉︎」

 

「ええ」

 

「いやったあーーーー!!」

 

思い切り飛び跳ねる千歌に釣られ、思わず未来までもがジャンプしそうになる。

 

 

 

『急にどうしたんだ?ステラ……』

 

(ちょっとだけ見たくなってね。この星の人間がーー未来達がどこに行くのか、どこまで進めるのか)

 

輝きを追いかけようとする千歌達の姿に影響でもされたのか、とステラは自分でもこんな事を口にしてることが不思議で仕方がなかった。

 

 

 

「これで5人!」

 

「うん!あとは生徒会長に頼むだ……け……」

 

急に目の色を変えて空を見つめる千歌。そこには一機のヘリコプターが浮かんでいる。

 

「なに?あれ……」

 

「小原家のヘリだね」

 

「小原家?」

 

「淡島にあるホテル経営してて、新しい理事長も……たしかそこの人だって聞いたぞ」

 

「へえ〜……」

 

「…………」

 

なぜか警戒心丸出しでナイトブレードを取り出そうとしているステラを遮り、未来は遠くにあるピンク色の装甲を見つめた。

 

「なんか……こっちに近づいてないか?」

 

「気のせいよ……ははは……」

 

梨子の言葉に反して、そのヘリは段々とこちらまでの距離を縮めていく。

 

『未来くん……これは……』

 

流石のメビウスも嫌な予感を察知したのか、警告するように言葉をかけてきた。

 

「ふ、伏せろォ!!」

 

「「「うわぁあ!?」」」

 

なんとそのヘリコプターは未来達の真上を通り過ぎ、旋回して再び側の砂浜に着陸しようとしたのだ。

 

風に吹かれて荒れる砂嵐に目を瞑り、未来達は目の前のヘリに視線を固定した。

 

 

「あれは……」

 

ヘリの扉が横に開き、中から1人の少女が姿を現した。

 

外国人のような黄金色の髪の毛をなびかせ、少女は座り込んでいる未来達へ向かって一言。

 

「チャオー!」

 

 

◉◉◉

 

 

「ええ?新理事長?」

 

「イェース!でもあまり気にせず、気軽にマリーって呼んでほしいの!」

 

理事長室の机の側に立つ少女ーーーー小原鞠莉は軽快な口調でそう言った。

 

「でも……」

 

「紅茶、飲みたい?」

 

「あの、新理事長……」

 

「マリーだよぉ!」

 

ずいっと千歌に顔を近づける新理事長を名乗る少女に、未来達は隠しきれない困惑を表情に滲み出させる。

 

「ま、まりぃ……。その制服は……」

 

鞠莉が身につけている服は紛れもなく浦の星学院の、それも三年生のものだ。彼女が理事長だと言うのなら、どうしてこの学校の制服を着ているのだろうか。

 

「どこか変かな?三年生のリボンもちゃんと用意したつもりだけど……」

 

「り、理事長ですよね?」

 

「しかーし!この学校の三年生!生徒兼理事長!カレー牛丼みたいなものね!」

 

「例えがよくわからない……」

 

「わからないのぉ⁉︎」

 

なんともまあ自由人な方だ。制服を持っているということは浦の星の生徒に間違いないのだろうが……。

 

「わからないに決まってます!」

 

「うわっ⁉︎生徒会長⁉︎」

 

「わぁお!ダイヤ久しぶり〜!随分大きくなって〜!」

 

「触らないでいただけます?」

 

唐突に現れたダイヤに頬ずりする鞠莉を見て、さらに困惑する未来。

 

「胸は相変わらずねぇ……?」

 

「やっ、やかましい!……ですわ」

 

「イッツジョーク」

 

あの生徒会長の胸を鷲掴みするほどの度胸を持ち合わせてる鞠莉を見て、「何者か」という疑問が強く湧き上がってきた。

 

「まったく……一年の時にいなくなったと思ったら、こんな時に戻って来るなんて……一体どういうつもりですの?」

 

「シャイニィー!!」

 

ダイヤの問いを無視して奔放な行動を続ける鞠莉。

 

ダイヤの一年の時にいなくなっていた、という発言から察するに、鞠莉は過去に浦の星に通っていた経歴があるようだ。

 

(留学でもしてたのか……?外国人っぽいし……)

 

「とにかく、高校三年生が理事長だなんて、冗談にも程がありますわ」

 

「そっちはジョークじゃないけどねっ」

 

「は?」

 

そう言って鞠莉が突き出してきた紙には、「任命状」と書かれている。大方これが理事長になったという証拠なのだろう。

 

「私のホーム、小原家の学校への寄付は、相当な額なの」

 

「うそっ⁉︎」

 

「そんな、なんで!」

 

どうやら彼女が理事長ということは事実らしい。信じ難い話だが、鞠莉の家柄のことを考えればあり得ない話ではなかった。

 

「実は、この浦の星にスクールアイドルが誕生したという噂を聞いてね」

 

「まさか……それで?」

 

「そう!ダイヤに邪魔されちゃ可哀想なので、応援しに来たのです!」

 

「ほんとですか⁉︎」

 

鞠莉の話を聞いて嬉しそうに表情を明るくさせる千歌。理事長が味方してくれると聞いて興奮しない者はいないだろう。

 

「イェース!このマリーが来たからには心配いりません。デビューライブはアキバドームを用意してみたわ!」

 

「そんな!いきなり……」

 

「き、奇跡だよっ!!」

 

「イッツジョーク!」

 

「……ジョークのためにわざわざそんなもの用意しないでください」

 

上げて落とされたのもあってか千歌の顔がみるみる暗くなっていく。

 

「実際にはーーーー」

 

 

◉◉◉

 

 

「ここで?」

 

「はい。ここを満員に出来たら、部として承認してあげますよ」

 

鞠莉に連れられて移動した場所は、浦の星学院の体育館だった。

 

千歌によるとダイヤは「5人集めても認めるわけにはいかない」と言っていたらしいが、理事長が出した条件なら関係ない。ダイヤにわざわざ頼まなくてもいいのだ。

 

「本当⁉︎」

 

「部費も使えるしね!」

 

「でも、満員に出来なければ……?」

 

「その時は、解散してもらう他ありません」

 

「ええっ⁉︎そんなぁ……」

 

「嫌なら断ってもらっても結構ですよ?」

 

ファーストライブでこの体育館を満員に出来れば、スクールアイドル部の設立が許される。出来なければ解散……一か八かの勝負といったところだ。

 

「どうしますか?」

 

「どうするって……」

 

「結構広いよねここ?……やめる?」

 

「やるしかないよ!他に手があるわけじゃないんだし!」

 

「そうだな」

 

曜お得意の方法で千歌のやる気を奮い立たせた後、堂々と啖呵を切る。

 

「OK。行うということでいいですね?」

 

体育館から去っていく鞠莉を尻目に考えていると、ステラはある違和感に気がついた。

 

数秒後、それがただの違和感でないと確信し、千歌、曜、梨子、未来の方を気まずそうに見やり、口を開いた。

 

「ちょっと待って。この学校の全校生徒って……何人?」

 

咄嗟に曜が指を使って計算し、全校生徒の人数を調べるのも束の間、曜も悲鳴に近い短い声を上げた。

 

「ああっ!」

 

「どうしたの?」

 

まだ状況が理解できないでいる千歌に、ステラは眉をひそめて言った。

 

「わからない?例え全校生徒が集まったとしてもーーーー」

 

自分達以外に誰もいない、もの寂しい空間にステラの声が木霊した。

 

「ここは……満員にはならないわ」

 

打ちのめされたように表情を曇らせる千歌達。

 

「まさかあの理事長……そのことを知ってて……」

 

 

◉◉◉

 

 

夕暮れの赤い日差しが差し込むバスの中。

 

千歌は窓に頭を預けて項垂れていた。

 

「どうしよう……」

 

「でも、鞠莉さんの言うこともわかる。それくらいできなきゃ、この先もダメということでしょう?」

 

「やっと曲が出来たばかりだよ?ダンスもまだまだだし……」

 

「じゃ、諦める?」

 

「諦めないっ!」

 

全校生徒を集めても満員にならないとしたら……校外の人にもお客として来てもらうしか手はない。

 

「はぁ……どうしてこう次から次に……」

 

「愚痴ってても仕方ないわよ。あんたもマネージャーなら、必死にビラ配りでもして来なさいよ」

 

「わかってるけどさぁ……」

 

どうもスクールアイドルにーーーーいや、千歌達に関わってから色々な事に巻き込まれている気がする。

 

(この憂鬱な感じ、小さい頃を思い出すよ……)

 

『小さい頃?』

 

(いや……昔、一時期不幸続きだったことがあってさ……)

 

親が死んだ後しばらく立ち直れなかった未来は、自分の周りに起こることが全て不幸であると錯覚するまでに陥ったことがあった。

 

(ま、所詮は子供だったし、その時はいつの間にか立ち直ってたけどな)

 

 

 

 

 

 

 

五人はどうやって学校に人を集めるか考えるために、千歌の家に集まって作戦会議を行うこととなった。

 

バスを降り、旅館に入ろうとしたところで未来はふと疑問に思ったことを言う。

 

「あれ?そういえばステラ、お前……どこに住んでるの?」

 

地球に来て家も何もないはずなのに、ステラが制服や学校で使う教材はどこで調達しているのか全く知らなかったのだ。

 

千歌達も気になったのか、無言でステラへ視線を向ける。

 

「どこって言われても……色んな所を転々としてるから」

 

「え?どういうこと?」

 

「え?だから野宿……」

 

「野宿ぅ⁉︎」

 

今日一番の衝撃と驚きが未来達を襲った。

 

冷静に考えれば確かに野宿しか選択肢がないが、やはり実際に本人の口から聞くとまた驚愕の大きさが変わる。

 

「なんで⁉︎家は⁉︎」

 

「家って……わたしにそんなのあるわけーーーー」

 

ステラは千歌にそう言いかけて自分がどれだけまずいカミングアウトをしようとしているのか理解したようだ。

 

”宇宙から来たから家がない”なんて口が裂けても言えない。

 

「し、趣味なの……キャンプみたいなものよ。お、おかしい?」

 

とてつもなく苦し紛れな言い訳を言い放つステラだが、千歌はそれに納得したように感嘆の声を上げた。

 

「へぇ〜!意外とワイルドなんだねステラちゃん!」

 

「え、ええ、まあね」

 

冷や汗を流しながらそう受け答えするステラに、未来はテレパシーで続けて疑問を投げた。

 

(じゃあお前制服とかどうやって手に入れたんだよ⁉︎)

 

(そんなのヒカリに頼めば余裕で複製してくれるわ)

 

『……ごほん』

 

あまり会話に入らないヒカリが咳払いをする。姿は見えないが、なぜか自慢げに胸を張る青い巨人の姿が想像できた。

 

(えっ……メビウス……お前できる?)

 

『ど、どうだろう……』

 

どうやらメビウスにとっても予想外だったらしく、苦笑まじりにそう答えた。

 

「でもまだ寒いし身体によくないよ?」

 

「家に帰るわけにはいかないわ。しばらくは他所で過ごすって決めたの」

 

千歌は少し考えるように空を見上げた後、手をポン、と打ち付けてステラにある提案をした。

 

「じゃあさっ、しばらくうちに泊まってきなよ」

 

「うちって……この旅館に?」

 

「うんっ、部屋ならたくさんあるし」

 

たしかにいい考えかもしれない。

 

ステラ本人としては外に留まる理由は無いのだから、いっそのこと千歌の家に居候でもさせてもらえば好都合だ。

 

「えっと……いいの?」

 

「もっちろん!志満姉達もきっと歓迎してくれるよ」

 

ステラはほんの少し嬉しそうにはにかんだ後、顔を上げて言った。

 

「お言葉に甘えて。よ、よろしくお願いします……」

 

高海家の住人が、一人増えた瞬間であった。

 

 




今回は日常回でした。
とりあえずルビィと花丸が加入するまではこんな感じでサンシャインのストーリーを進めていきたいと思います。並行してほんの少し伏線混ぜたりもしますが。

そして今回の解説はなんと2話続きで再びステラ、そしてヒカリについて。

ステラは今までボガールを狩りながら山の中で生活するという非常に野生児のような生活をしていました。
食事はヒカリの影響で取らなくても支障はありませんが、元は地球人によく似た身体の構造をしたノイド星人なので、本能的に何か食べたいと思うことはあります。
淡島神社で野宿をした時には参拝に来たお婆さんからお饅頭を貰い、初めて地球の食べ物を口にすることとなります。ちなみにその時の影響で和菓子が大好物となったようです。

あとヒカリの力もこの作品ではかなり弄くり回しています。……すごい科学者だし、ある程度の物は複製できたりするよね?(震え)


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