メビライブ!サンシャイン!!〜無限の輝き〜   作:ブルー人

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サンシャイン本編ではすっきりとした終わり方だった12話ですが……。
今回も自己解釈がバリバリなので、そこら辺はご了承ください。


第92話 新しい世界

「さすがに……厳しいな……!」

 

(わたし達だけじゃ……とても……!)

 

無数の怪獣軍団に囲まれながらも、ヒカリとジャックは背中を合わせて身構える。

 

地球時間でどれほど経っただろうか。既に百を超える怪獣達を倒した。

 

しかし————

 

『ぐっ……!』

 

迫り来るバードンの(くちばし)を回避し、瞬時にナイトシュートを放って撃ち落とす。

 

これだけ倒しても未だに勢いが落ちることなく攻めてくる怪獣達。

 

とうとうカラータイマーも点滅しだし、限界が訪れたと思った時————

 

 

 

 

 

 

 

「デヤアアアアアアッッ!!」

 

『(…………!?)』

 

二筋の光の軌跡が敵の軍隊を流星のように駆け抜け、同時に何体もの怪獣達を切り裂き、爆発させた。

 

助け船を出してくれた者を見上げ、ステラとヒカリは驚愕の声を上げる。

 

「よう、待たせちまったな」

 

赤と青の体色に、頭部にある二つのスラッガー。

 

間違えるはずがない。以前共にアークボガール討伐任務を担った————

 

(ウルトラマンゼロ…………!!)

 

『間に合ったか!』

 

「ああ。……おっと、来たのは俺だけじゃないぜ?」

 

(えっ……?)

 

刹那、背後からの爆発音を聞いてヒカリは振り返る。

 

「せいッ!はッ!……ぜあああああああッッ!!」

 

デブリを踏み台にしながら場所を変え、縦横無尽に刀を振るう宇宙人が一人。

 

鎧姿が特徴的な————宇宙剣豪。

 

『ザムシャー…………!?』

 

(どうしてあなたまで……!)

 

駆けつけたザムシャーへと近寄り、問う。

 

彼は相変わらずつっけんどんな態度をとりつつ、ゆっくりと口を開いた。

 

「勘違いするな。……貴様らの危機など俺が干渉することではない。……だが」

 

ビシリ、と血を払うように刀を振ったザムシャーは、その鋭い目をヒカリへと突きつけた。

 

「ステラ、ヒカリ、貴様らに死んでもらっては困る。俺はまだ……ハンターナイトツルギの首をもらってはいないのだから」

 

『ザムシャー……』

 

(……まったく……どうしてわたしの周りには素直じゃない男しかいないのかしら)

 

やや呆れ気味に肩をすくめたヒカリが再び怪獣達のいる方へと向き直る。

 

いざ、と拳を構えたところで、ゼロからまたも驚きの言葉が発せられた。

 

「ああ、ちなみに言っておくとこいつは偶然居合わせただけだ。俺が言ってるのは————」

 

(え?)

 

ゼロが指さした方を向く。

 

きらきらと輝く何かが星々に混ざってこちらへ向かってくるのが見えた。

 

「君達は本部に向かってサインを送ったのだろう?ならば当然、()()も来るさ」

 

ジャックはいたって落ち着いた態度でそう語る。

 

あのシルエット達は————

 

 

 

「シュアッ!!」

 

掛け声とともに発射された光線が怪獣の軍団、その一部を焼き払う。

 

凄まじい威力を前にして、ヒカリは思わず息を呑んだ。

 

「あまり先行しすぎるな、ゼロ」

 

「はは、悪い悪い」

 

怪獣達に勝るとも劣らない、大量のウルトラ戦士達。

 

それを率いてやってきた二人のウルトラマンがヒカリの目の前にやってくる。

 

『ゾフィーに……大隊長まで……!?』

 

「遅れてすまなかった」

 

ゾフィーに加えて、ウルトラの父までもが参戦したのだ。

 

ヒカリとジャックにエネルギーを分け与え、カラータイマーが青色に輝いたのを確認して、ウルトラ父が指示を出す。

 

「ここは我々が引き受ける。君達は、メビウス達のもとへ向かうんだ」

 

(それは、なぜ……?)

 

いきなりこのような大部隊を連れてやってくるなんてただ事ではない。

 

…………そう、ただ事ではない事が起きているのだ。

 

「エンペラ星人が地球へ向かっている。……この怪獣達は陽動だ、急げ!」

 

『なっ……!』

 

(————!みんな……!!)

 

話を聞いて反射的に動いたヒカリが飛翔し、地球へと向かう。

 

それを追うように、ザムシャーもまた宇宙空間に散らばる岩を足場にしながらその場を離れた。

 

 

◉◉◉

 

 

「会場集合?」

 

「うん!本番前はみんな自由行動で、自分を見つめ直す時間にしてほしいの!」

 

 

 

 

 

昨日の夜に千歌から言われた提案により、現在は当てもなく東京の街を歩いていた。

 

数時間後には会場へ向かい、ラブライブの決勝が行われることになる。

 

「遅刻とかしなきゃいいけど……」

 

『あはは。いくらなんでも、こんな大事な日をすっぽかすなんてありえないよ』

 

内浦よりも圧倒的に多い人数のなかを歩く。

 

秋葉原の電気街はメカメカしくて、東京にある街の中でも一際賑やかだ。

 

千歌達は今、どんな気持ちでこの時間を過ごしているのだろうか。

 

勝ちたいと思っているのか。それとも————

 

「ん、千歌と……曜か?」

 

歩道を笑いながら駆けている二人の少女を見かけ、なんとなくその後を追う。

 

何かを追いかけるように走っていた彼女達は、やがてUDXのモニター前で立ち止まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビルの上から秋葉原の街並みを見下ろす青年が一人。

 

懐かしい景色を眺めながら過去の記憶に浸る。

 

目を閉じれば音楽が聞こえる。真っ暗な闇のなかで彷徨っていた自分を救ってくれた光。

 

「君達が繋げた可能性は……確かに新たな光を生み出した。ボクは————」

 

手を伸ばしても届かなかった輝き。汚れきった自分では掴めないと思いながらも、足掻き続けた日々。

 

意味はあったのだろうか。自分はなぜ生まれ、何のために生きてきたのか。

 

色々やってはみたが、相変わらず答えが見つからないのがちょっとばかし悔しい。

 

————ススメ。

 

「……ああ、そうだね」

 

考えたって仕方がない。今の自分にできることは————見守ること。

 

「さて、見せてもらおうか。君達の輝きを……!」

 

 

◉◉◉

 

 

  ーーWATER BLUE NEW WORLDーー

 

 

 

 

 

今は全力を尽くすだけだ。

 

今まで行ってきた努力、想い。その全てをこの数分間に凝縮して、会場のみんなに届ける。

 

Aqoursを象徴する水色の衣装に身を包んだ千歌達がステージ上で舞い踊る。

 

これまで紡いできたもの————その全てを一つにまとめたような、集大成に相応しいパフォーマンス。

 

迷いなど一切感じさせない真っ直ぐな想いの波が観客達を魅了した。

 

観客にいる者達も加わって、会場にいる全員で作り上げるような青い輝きの空間。

 

この瞬間だけ存在できる“光の海”。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………おめでとう、みんな」

 

“WINNER Aqours”と表示されているモニターを見て、溢れんばかりの歓声と拍手が巻き起こる。

 

肩を上下させて身を寄せ合うステージ上の少女達。

 

しばらくして拍手が鳴り終えると思った矢先————

 

「————アンコール!!」

 

誰が最初に発したかはわからない。

 

波のようにその願いは広がり、やがて会場にいる全員がそう繰り返す。

 

もっと彼女達の歌を聴いていたいと。多くの人がそう心動かされたのだ。

 

会場内が暗転した数分後、最高の景色を勝ち取った九人の少女達は高らかに叫んだ。

 

————Aqours!サンシャイン!!

 

 

 

   ーー青空Jumping Heartーー

 

 

◉◉◉

 

 

どれだけ走ってきたのか、もはやわからない。

 

色々な感情が胸を支配するなか、千歌達は笑顔で会場を出た。

 

「この旗、結構重いね」

 

疲れと嬉しさの混ざった顔でそう語る千歌。

 

ラブライブ————その栄誉ある大会のなかに、浦の星学院の名前は確かに刻まれた。

 

「ほんと……夢みたいな時間だったね!」

 

「会場全体が……海みたいにキラキラしてて……」

 

やり終えたみんなはそれぞれで想いを馳せる。

 

学校の生徒————そして内浦の住人みんなの応援と共に達成した一つの目標。

 

「みんなお疲れ」

 

「未来くん!」

 

外で未来と合流した千歌達は、何よりも先に勝ち取った旗を彼に見せつけた。

 

「私達……やったんだよね」

 

「ああ、客席からでもはっきりわかるくらい……輝いてた!」

 

彼女達はやり遂げた。————学校を救ったんだ。

 

そして、千歌達自身の願いも叶えた。

 

「Aqoursは、ラブライブで優勝したんだ」

 

もやもやとした空気のなか、未来にそう言われて改めて自覚する。

 

優勝した。勝ったのだと。達成感で満たされた胸をぎゅっと掴み、千歌はみんなのいる方向をへと振り返った。

 

「……ありがとう、ここまで一緒に来てくれて。私……今、最高に嬉しい!!」

 

「千歌ちゃん……!」

 

「泣いてはいけませんわよ」

 

「そうだね、ここは笑顔で!」

 

「ほら、未来くんも!」

 

「あ、ああ!」

 

円陣を組んだ千歌達はお互いの顔を見た後、溜め込んでいた感情を爆発させるように声を上げた。

 

————やったああああああ!!!!

 

体全体で全力の喜びを表現した千歌は、一息ついた後で言った。

 

「じゃあ、帰ろうか」

 

「ああ————」

 

やけに暗くなった外に違和感を感じ、未来はふと空を見上げた。

 

雨雲と言うには色がドス黒い、まるで闇を形にしたような暗雲が天を覆っている。

 

「……なに?これ……」

 

数秒前までは晴れやかな空だったはずなのに、いつの間にか辺りは薄暗くなってしまった。

 

 

 

 

 

『……!あれは————!!』

 

上空から一直線に地上へと落下してくる一体の巨人を視認する。

 

大地が揺れ、道路が割れ、ビルが崩壊する。

 

地に降り立った漆黒の鎧をまとう巨人は三叉の槍を肩に担いで立ち上がり、その全貌を露わにした。

 

「ベリアル……っ……!?」

 

「……黒い……ウルトラマン……?」

 

東京の街に立つそれを見た人々は足を止め、呆然と立ち尽くしていた。

 

やがて今までの平穏を終わらせるように————一人の男の声が世界中に響いた。

 

 

 

 

 

 

————余は、エンペラ星人……!!

 

黒い巨人とは別に、低い声音が耳に滑り込んでくる。

 

「この声……!」

 

千歌達のなかで果南のみが覚えのあるその声に反応した。

 

————この宇宙に君臨する者。……地球人に余の意思を伝える。

 

張り詰める緊張感のなか、次に伝えられた言葉に目を見開いた。

 

————ウルトラマンメビウスを……地球人自らの手で余に差し出せ。さもなくば送り込んだ下僕が……この星を滅ぼすことになろう。

 

「なっ……!」

 

皆の青ざめた顔が未来へ集中し、彼もまた予想外の事態に冷や汗を流していた。

 

————要求を呑むのなら、あらゆる脅威から余が地球を守ると約束しよう。

 

凄まじい威圧感が世界中に伝わる。

 

メビウスを追放すれば、永遠の闇の中で地球は存続される。拒否すれば————

 

————一時間だけ待ってやろう。賢明な判断を期待する。

 

「……っ」

 

未来は静かに立ち尽くすベリアルを見上げ、彼から意思というものが感じられないことに気づく。

 

かつて地球を守った光の戦士を使って、今度は逆に滅ぼそうと差し向けるなんて。

 

…………一時間だ。それを過ぎればベリアルは活動を開始する。

 

「……待つ必要なんか、ないよ」

 

「千歌……?」

 

一歩踏み出した千歌は、黒く塗りつぶされた空へと向かって声を張り上げた。

 

「ウルトラマンメビウスは私達を……地球を守ってくれた大切な仲間だ!!」

 

彼女に続くように周囲にいた人々も声を上げ、エンペラ星人の要求を拒否することを示した。

 

「そうだ……!宇宙人なんかに負けはしない!!」

 

「お前らなんかにこの星は渡さないッ!!」

 

どんどん声を大きくしていく地球人達に反応し、暗黒の皇帝は何気ない口調で言い放った。

 

————そうか。

 

直後、静止していたはずのベリアルが動き出し、傍にあった高層ビルを槍で薙ぎ倒す。

 

街中に悲鳴が轟き、すぐさまその場から逃げようと人々は走り出した。

 

「……!!みんなは早く避難を!!」

 

「未来くん……!!」

 

一人ベリアルのもとへ駆け出した未来は、左腕にメビウスブレスを出しては大きく天へと突き上げる。

 

「いくぞメビウス……!」

 

『ああ!……今日ここで、全部終わらせる!!』

 




いよいよ最終決戦の始まりです。
ヒカリとステラはザムシャーと共に地球へと向かいました。
まずはメビウスvsベリアルですが……勝てるビジョンが全く浮かびませんね(笑)

解説いきます。

駆けつけてくれたウルトラマン部隊は様々な戦士で構成されております。
今まで登場できなかった80から、パワードやマックスといったウルトラマンも一応紛れています。
ゾフィーに加えてウルトラの父までもが出動……って、光の国がガラガラなのでは?と思ったそこのあなた。最強のお爺さんがお留守番しているのでご心配なく。
エンペラ星人との総力戦ですからね。出し惜しみは無しです。

さて、エンペラ星人が理想とする「新しい世界」か。それとも未来達がそれを打ち破るのか。

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