メビライブ!サンシャイン!!〜無限の輝き〜   作:ブルー人

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今回は自分なりの解釈が入ってるので、読者の方々が思っていたような考察と一致しない部分もあるかもしれません。
それでは9話後半、スタートです。


第87話 聖夜の悪魔

「ねえ、それなに?」

 

「え?」

 

ノートに考えた歌詞を羅列している途中。

 

ルビィの首元から下げられた紐を指差して、理亞は首を傾けた。

 

「ああ、これ?」

 

パジャマに隠れていたそれを引っ張り出し、青く輝く石を見せる。

 

「お守りなんだ」

 

「お守り……。綺麗な石ね」

 

「ありがと」

 

かつて自分をお姉ちゃんと呼んでくれた少女の形見。

 

別れてからこの石は肌身離さず持っている。

 

(サファイアちゃん、見てくれてるかな……?)

 

大事そうにそれをしまい込んだ後、ルビィは気を取り直してノートと向き合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

夜中。

 

普段寝る時間になっても、ルビィと理亞は歌詞の創作を続けていた。

 

廊下からその様子を見守る聖良は、微笑ましそうに————そしてどこか心配そうな表情を浮かべている。

 

「聖良…………さん」

 

「ああ、ステラさん。どうかしました?」

 

寝間着姿の二人が廊下で向かい合う。

 

ステラは「やったーーーー!!」という二人の声が理亞の部屋から漏れたのを聞き、安心したように胸をなでおろした。

 

「眠れないんですか?」

 

「いえ。……二人とも、頑張ってるなって……。私達も部屋に行きましょうか」

 

聖良に案内されて彼女の部屋へと入る。

 

人数の関係でステラだけここに寝泊まりする予定だった。

 

「すみません、ちょっと狭いかもしれませんが……」

 

「いえ、ありがたく使わせていただきます」

 

お互いにぎこちない様子で同じベッドの中に入る。

 

大した会話もないまま消灯し、ステラがそのまま眠ろうとした時————

 

「ステラさんは……Aqoursさん達のマネージャーでしたよね」

 

「えっ……はい」

 

突然話しかけられたことで答えるのが少し遅れた。

 

「……皆さん、普段は向こうでどんなことをされているんですか?」

 

「最近はひたすら練習ですね。……千歌達にとって、ラブライブを絶対に優勝しなくちゃならない理由ができましたから」

 

学校のみんなに託された想い。それを叶えるためにも、結晶は絶対に勝たなくてはならない。

 

「やっぱりそうですよね……」

 

「……でも、Saint Snowも凄いと思います。初めてライブを見た時、わたし————」

 

「私が」

 

途切れ途切れの言葉が聖良の口から漏れる。

 

「……私がもっとしっかりしていれば、こんなことにはならなかったんじゃないかって、今でも思うんです」

 

ライブ当日に見た理亞の様子を思い出す。

 

緊張からなのか。それとも他に理由があるのか。

 

————ひどく震える、理亞の手。

 

「……理亞を傷つけてるだけで、私は姉として何もしてあげられていないのかもって」

 

「断言しましょう、それは絶対にないです」

 

思わずベッドから跳ね起きて、隣で横になっている聖良と目を合わせた。

 

「え……?」

 

「……きっと、もうすぐわかると思います。今はこれしか言えません」

 

話は終わりだと言わんばかりに再びベッドに倒れるステラ。

 

聖良はただ呆然とするのみだった。

 

 

◉◉◉

 

 

ルビィと理亞が行うサプライズの流れは既に決まっていた。

 

まずは二人のライブを函館山でダイヤと聖良に見せる。そして次に————

 

彼女達は第二の贈り物として、A()q()o()u()r()s()()S()a()i()n()t() ()S()n()o()w()()()()()()つもりだったのだ。

 

そのための人数分の衣装を作るのは骨が折れる作業だったが……。

 

今頃は千歌達にも連絡が伝わり、こちらに向かって来ているだろう。

 

もちろんどちらもダイヤと聖良には内緒だ。

 

「クリスマスイベント……受かるといいわね」

 

本日は彼女達が参加しようとしているイベントの選考会。そこで受からなければ“全員で歌う”という願いは叶わない。

 

部屋の中で審査を受けている二人の姿を、花丸と善子、ステラの三人が見守っていた。

 

「……私達は、スクールアイドルをやっています。今回は、このクリスマスイベントで、遠くに暮らす別々のグループの二人が手を取り合い、新たな歌を歌おうと思っています!」

 

「大切な人に贈る歌を!」

 

頼もしく映るルビィと理亞の姿を見て、花丸と善子は揃って号泣し出す。

 

「なに泣いてるずらぁ……」

 

「あんたの方が泣いてるわよ……!」

 

「ずらぁ〜……」

 

ふと視線を横にやると、自分達と同じように理亞達の様子を眺めている者が二人いることに気がつく。

 

「……あの制服……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絶対満員になる、と豪語した結果、なんとかイベントの参加権は勝ち取ることができた。

 

今は放送局でその告知をしている最中である。

 

「さあ今日は!クリスマスフェスティバル出場者の……えっと……」

 

「Saint Aqours Snowです!」

 

「が、お越しくださいました〜!」

 

「ネーミングセンスもストレートなのね……」

 

「ちゃんと告知するずら」

 

「うん!」

 

喋るのは花丸、ルビィ、理亞に任せてステラと善子は待機。

 

意を決してマイクに顔を近づけ、ルビィは自分達のライブの知らせを言った。

 

「クリスマスイブにライブを行います!」

 

「よろしくず——じゃなくて、よろしくお願いするず——じゃなくて、お願いしますずら!……あ」

 

結局口癖を隠せないまま告知をしてしまう花丸であった。

 

 

 

 

 

「あぁ……失敗したずら」

 

なんとか告知を終え、放送局を後にしようとするルビィ達。

 

「大丈夫だよ花丸ちゃん」

 

「あんな一瞬の放送だったんだし、聞いてる人も気づいてないわよ」

 

そう言いつつ施設内を歩いていると、前から歩いてくる制服姿の二人の少女がルビィ達の目の前で立ち止まった。

 

「……?この二人、選考会の時にもいた……」

 

「どなた?」

 

「……クラスメイト」

 

理亞は絞り出すようにそう言った後、怯えるようにルビィの背中に隠れてしまう。

 

「どうして隠れるの?」

 

「だって……ほとんど話したことないし……」

 

少しの間の沈黙。

 

やがてそれを壊すようにルビィが言い放つ。

 

「Saint Snowのライブです!理亞ちゃん出ます!」

 

その知らせを聞いて、張り詰めていた二人の表情が一気に明るくなる。

 

「理亞ちゃん……」

 

「私達も行っていいの!?」

 

「えっ……うん。それと……今更だけど……ラブライブ予選は、ごめんなさい……」

 

小さくそう語る理亞に対して、彼女達はいたって優しげな態度で言った。

 

「いいんだよ。私達のほうこそ、嫌われてるのかなって……。会場にも行けずに、ごめん」

 

「理亞ちゃんや聖良先輩が、みんなのために頑張ってたの知ってるよ」

 

「Saint Snowは学校の……私達の誇りだよ!」

 

「クリスマスフェスティバルには出るんでしょ!?みんなも来たいって!いい?」

 

「……うん。……うぅ……!」

 

今まで知らなかった気持ち、想い、そして言葉。

 

思いもよらぬ告白を聞いて、理亞は無意識に涙を流していた。

 

「……違うようで似ている、ね……」

 

つられて瞳を潤すルビィを一瞥し、ステラは改めて彼女達は似た者同士なんだと思わされた。

 

 

◉◉◉

 

 

その夜。

 

ダイヤがロープウェイに乗ると、隣に立つ客が聖良だということに気がついた。

 

「聖良さん?」

 

「あら、どうしてここに?」

 

「いえ、ちょっとここに来るよう言われまして」

 

「えっ……!?実は、私もです」

 

星の仄かな光が入り込んでくるなか、二人の少女が指定された場所へ向かう。

 

山頂まで登ると、二人にとっても大切な人達が待ち構えていた。

 

ルビィと理亞は足並みを揃えて二人に駆け寄り、一枚の封筒をそれぞれ渡す。

 

そう、“第二の贈り物”の詳細が中にある封筒だ。

 

「……これは?」

 

「クリスマス——」

 

「プレゼントです」

 

まだ幼さが残る、妹達の贈り物。

 

「クリスマスイブに、ルビィと理亞ちゃんで、ライブをやるの!」

 

「姉様に教わったこと……全部使って、私達だけで作ったステージで!」

 

「自分達の力で、どこまでできるか!」

 

「……見て欲しい!」

 

「あのー……」

 

見つめ合う姉妹達の最中、聞き覚えのある声が上から飛んでくる。

 

「私のリトルデーモン達も見たいって!」

 

「誰がリトルデーモンよ!」

 

上の階でこちらを見下ろす、Aqoursのメンバー達の姿がそこにあった。

 

「千歌ちゃん!みんな!」

 

「来てたの?」

 

「鞠莉ちゃんが飛行機代出してくれるから、みんなでトゥギャザーだって!」

 

「あったりまえデース!こんなイベント見過ごすわけないよ〜」

 

「さすが太っ腹!」

 

「まったく……今までで一番の仕事量だったよ……」

 

脱力気味にそうこぼす未来に対して、ステラは珍しくキツイ言葉はかけなかった。

 

「今回は色々と世話になったわ。ありがとね」

 

「お、おう……」

 

素直に返されて少々戸惑い気味な未来。

 

「姉様」

 

「お姉ちゃん」

 

今まで溜め込んできた、感謝の気持ちを全て込めて、

 

二人は伝えた。

 

「「私達の作るライブ、見てくれますか?」」

 

「……もちろん」

 

「……喜んで」

 

抱き合い、その言葉を受け止めるダイヤと聖良。

 

百万ドルの夜景を背に、今ルビィと理亞のライブが始まろうとする————

 

その瞬間、

 

 

 

 

 

 

「…………来たわね」

 

周囲の気温が著しく下がるのを感じ、未来とステラはその場で身構えた。

 

夜の街に集まる雪のような物体。その正体は————

 

「クハハハハ……!!ハハハハハハ!!」

 

銀色の鋭利な身体。腕から伸びる剣。

 

暗黒四天王豪将、グローザムが函館の街に現れたのだ。

 

「さあ出てこいウルトラマン共……!まとめて砕いてやるわ……!!」

 

ああ、タイミングが悪すぎて心底頭にくる。どうして奴らはこうも大事なものを壊しにくるのか————

 

「未来!!」

 

「ああ!!」

 

頭に血が上った二人は、重要なことを忘れたまま————メビウスブレスとナイトブレスを腕に出現させた。

 

「……えっ?」

 

「待って未来くん、今は————!」

 

聖良と理亞の視線が二人に集中する。

 

地面を蹴り、凄まじい閃光と共に未来とステラは————

 

 

 

 

「セヤァ!」

 

「デュア!」

 

ウルトラマンの姿へと、変身を遂げていた。

 

 

◉◉◉

 

 

函館の街に二体の巨人と一体の宇宙人が対峙する。

 

今までウルトラマンを狙って本州へと降り立っていた怪獣達だが、今回は違う。

 

街の人々は初めて目の当たりにする光景に、戸惑いと恐怖の念を感じていた。

 

((はああああッッ!!))

 

右腕にブレードを伸ばしたヒカリがグローザムへと斬りかかり、メビウスもまた背後から殴ろうと迫る。

 

銀色の剣で光の刃を受け止めた後、グローザムは周囲に冷気を発生させて二人を後退させた。

 

「ほう……メビウスまでいるとはな。これは思わぬ収穫が期待できそうだ」

 

(余裕こいてんじゃ……ねえぞッ!!)

 

メビウスも同じくブレスから刃を伸ばして攻撃を仕掛けるが、周囲に広がる寒さの影響か関節が上手く動いてくれない。

 

(ぐっ……!!)

 

鈍くなる赤い巨人をグローザムの斬撃が襲い、火花を散らして地に伏せてしまった。

 

「ウアッ……!」

 

(まだよ……!)

 

ヒカリの身体に七色の輝きが巻き起こり、やがてそれは鎧の形となって装着された。

 

グローザムの剣を確実に防ぎつつ、重い一撃を拳で与えていく。

 

「なに……!?」

 

(はあッ!!)

 

奴の腹部に一発お見舞いした後、ヒカリは素早くブレードを再展開し、その胴体を斜めに一刀両断した。

 

低い音が響き、グローザムの身体が二つに割れる。

 

「……フフフ……ハハハハハハ……!!」

 

(なっ……!)

 

『これが……奴の……!』

 

真っ二つにしたはずの身体が一瞬で再生し、再びこちらへ襲いかかってきたのだ。

 

「無駄だ。俺の異名を知らないのか?」

 

不死身のグローザム。

 

ウルトラ大戦争でも多くの宇宙警備隊員を倒し、恐れられた氷結の悪魔。

 

何度攻撃を与えても回復し、切り刻んでも元の身体に戻る。

 

(そんなデタラメな……!)

 

「さて……」

 

グローザムはメビウスとヒカリの足元に向かって冷気を吐き出し、その両脚を氷漬けにしてしまった。

 

(ぐあっ……!!)

 

(しまった……!)

 

「メビウスは楽勝で始末できるとして————」

 

振り返り、身動きの取れなくなったヒカリを見やるグローザム。

 

「お前の鎧は厄介だな。……このまま全身氷漬けにしてしまおうか」

 

両腕から鋭い刃を伸ばし、二人の巨人に突きつける。

 

((なめるな……!!))

 

直後、メビウスとヒカリは同時にお互いの足元へ斬撃を飛ばし、足枷になっていた氷塊を粉砕した。

 

グローザムから距離をとり、タイミングを揃えて光線を放つ。

 

「「ハァッ!!」」

 

「ぐぅ……!?」

 

メビュームシュートとナイトシュートの重ねがけだ。並の怪獣や宇宙人ならばこの一撃で勝利できる。

 

しかし————

 

(……嘘だろ)

 

粉々に砕け散ったはずの奴の身体がまたも集まっていき、元の状態へと再生していくのだ。

 

以前にも似たような力と対峙したことがある。

 

『インペライザーの時はバーニングブレイブの力で倒したけど……』

 

(……やるしかないだろ……!)

 

メビウスの身体から炎が放出され、ファイヤーシンボルが胸に刻み込まれる。

 

姿を変えるのと同時にエネルギーを凝縮し、巨大な爆炎が腕の中に出来た。

 

『(はあッ!!)』

 

メビュームバーストをグローザムめがけて放つ。

 

が、奴は口から嵐のような冷気を吐き出し、それすらもかき消してしまったのだ。

 

「ハハハハハ……!!何をやっても無駄だ!!」

 

(……こうなったら……)

 

左腕のブレスに手を添えたメビウスを見て、ヒカリは彼の肩を掴んではそれを制止させた。

 

(あの捨て身の必殺技をやろうとしてるんでしょ?やめておきなさい、また左腕が壊れるだけよ)

 

(じゃあどうすれば……!)

 

「カアッ!!」

 

メビウスとヒカリの間に向けて吐き出された冷気が街を凍らせる。

 

二人がなすすべもない姿を見て高笑いを上げるグローザムに、ヒカリは鋭い視線を突きつけた。

 

(……あなたを倒さないとね……あの二人が……みんなが……!!)

 

右腕のブレスから再びブレードを展開し、構える。

 

(楽しくクリスマスを過ごせないのよッッ!!)

 

今まで見てきた光景を思い出す。

 

夜遅くまで作詞をし、姉のために頑張っていたルビィと理亞。放送局での嬉し涙もそうだ。

 

あの美しい愛を、守りたい。

 

(諦めるもんか……ッ!!)

 

「ええい……!うっとおしい!!」

 

グローザムを羽交い締めにするメビウスだったが、未だ寒さの影響で上手く力が入らずに振り払われてしまう。

 

(……っ)

 

「もう遊びは終わりだ。まとめて始末してやる……!!」

 

まずはメビウスを始末しようと、膝を折る彼らに向かって剣を振りかざすグローザム。

 

『メビウス!!』

 

(未来ッ!!)

 

首元に向かって斬撃が繰り出されようとした時————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……!?なに……!?」

 

眩い閃光と共に現れた、()()()の巨人にそれは阻まれた。

 

赤い身体に額のランプ。特徴的な頭部のブーメラン。

 

(……え……!?)

 

「フンッ!」

 

力強い蹴りでグローザムを蹴り飛ばし、メビウスから退かせる。

 

間違いない。彼は————

 

(ウルトラセブン……!)

 

『セブン兄さん!』

 

駆けつけてくれたウルトラセブンの横にメビウスとヒカリが立ち並び、グローザムへと両腕を構えた。

 

「現れたな……!ウルトラセブン……!!」

 

憎しみ混じりの呼び声が耳朶に触れる。

 

かつての大戦争で戦った宿敵の姿を認識し、グローザムは一層その凶暴性を増していた。

 

「みんな、すまない。もうしばらく戦えるか?」

 

『もちろんです!』

 

『しかし、奴の再生能力……。勝算はあるのか?』

 

ヒカリの問いに頷いた後、セブンはその場から駆け出してグローザムのもとへと向かった。

 

「ヒカリ、ステラ!こいつを倒すには、君達の鎧の力が必要だ!」

 

『アーブギアの力が……?』

 

自らの胸に触れるヒカリ。

 

「勝利の鍵は……!空にあるッ!!」

 

頭部のアイスラッガーを外し、メビウスと共にグローザムと剣戟を繰り広げるセブン。

 

(……空……)

 

ふと先日セブンと話した内容を思い出し、ヒカリはとある案を弾き出した。

 

 

 

「……!」

 

「三人がかりなら勝てるとでも思ったか!?」

 

しがみついてきたメビウスとセブンを豪腕で吹き飛ばすグローザム。

 

函館の環境に加えてグローザムが発している冷気。ウルトラマンに不利な状況が揃っているのだ。

 

「死ねえッ!!」

 

セブンに向かって銀色の刃が向けられたその直後————

 

「デュアッ!!」

 

セブンの腕から放り投げられたアイスラッガーが飛翔し、グローザムの両足を切断する。

 

「……!?」

 

バランスを崩した奴はその場に倒れ込み、身動きの取れない状況となった。

 

再生するまでの数秒の隙。それを見てヒカリは地を蹴って走り出す。

 

「デヤァッ!!」

 

グローザムの身体を抱え、天高く飛び上がる青い巨人。

 

 

 

 

 

雲の上を突き抜けてもさらに上昇し続け、やがて宇宙空間へと到達する。

 

「何のつもりだ……!?」

 

付近に感じる凄まじい熱を察知し、グローザムは初めて危機感を覚えた。

 

「まさか……!貴様らァ……!!」

 

身体をばたつかせて暴れるも、頑丈な鎧に阻まれて剣が通らない。

 

そして巨大な灼熱の炎————太陽が近くなっても、ヒカリの身体はアーブギアによって守られる。

 

『(はああああああああッッ!!)』

 

太陽に向かって奴を放り投げ、間髪入れずに右腕のエネルギーを解放。

 

青色の光線が一直線に奴へと伸び、胴体へと直撃。その身体を一撃でバラバラに粉砕した。

 

「ぐっ……!ぁあああああああ!!」

 

重力で引っ張られながら太陽の熱で全身を焼かれるグローザム。

 

質量が小さくなったこの状態ならば、奴の再生が追いつく前に消滅させることが可能だ。

 

「馬鹿な……!俺は……!!不死身のはず……!!」

 

『その異名もここまでだな。……聖夜の報いを受けろ、グローザム』

 

「おのれ……!おのれええええええええッッ!!」

 

断末魔を上げながら溶けるように消滅していく奴の姿を眺める。

 

四天王の一人を……ここに討ち取った。

 

 

 

 

 

『さて……戻ろう、ステラ』

 

(……!ヒカリ、あれ……!)

 

ステラが示した方向を見る。

 

太陽の一部————見る限りまだごく微小だが、確かにセブンに言われた通り異様な雰囲気を醸し出している黒点が見られた。

 

『あれが……エンペラ星人の……』

 

 

◉◉◉

 

 

     ーーAwaken the powerーー

 

 

無事に迎えたクリスマスイベント当日。

 

AqoursとSaint Snow、みんなで手がけるライブを楽しみながら、未来とステラは何気ない会話を交わす。

 

「理亞ちゃんと聖良さんにも正体がバレちゃうなんてな……」

 

「誰にも言わないって言ってくれたし、まああの二人なら大丈夫でしょう」

 

キラキラとした衣装で舞い踊る少女達を眺めながら口を開く。

 

「それよりステラ……お前、また新しい任務頼まれてただろ?」

 

「ええ、そうね」

 

グローザムを倒したその直後、太陽の様子を報告し終えたステラは、再びセブンから指令を出されたのだ。

 

今度は時空波発生装置の捜索で、宇宙を担当しているウルトラマンジャックからの頼みだった。

 

なんでも怪しい宙域を発見したので、捜索の手伝いをしてほしいとのことだ。

 

「……またしばらく地球を離れることになるわね」

 

『俺達がいなくなっても……』

 

「ああ、わかってる」

 

聖夜の空の下、最高の笑顔でライブを披露している少女達を見やる。

 

未来は強く拳を握りしめ、徐々に近づいてくる決戦の予感を感じた。

 

エンペラ星人との戦いはおそらくもう目の前だ。

 

「千歌達は……みんなは必ず……!」

 

守ってみせる。

 

————終わりが近づく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして未来とステラの知らない場所。

 

宇宙船の中で、一人の宇宙人が不敵に笑った。

 

「……さて」

 

————残る四天王は、あと一人。

 

 




グローザムの倒し方はですね……これしか思いつきませんでした(笑)どこぞの魔法使いみたいな方法ですね。
バーニングブレイブも通用しないとなれば太陽の熱くらいしかないと思いまして。

解説です。

ついに残りの四天王はメフィラス星人のみとなりました。
メビウス本編でも他の四天王とは違った方法で戦いを挑んできましたね。
しかし今回ターゲットとなるのは……未来やメビウスとは限らないかもしれません。
付け加えると今作のメフィラス星人はウルトラ大戦争時にウルトラマンと相対した個体、という設定になっております。

次回からの10話分、戦闘シーンはお休みです。未来達にも束の間の平穏を。

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