帝国で斬る!   作:通りすがりの床屋

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前回のあらすじ

三獣士終了のお知らせ


どうでもいいことですが帝都宮廷使用人戦闘課の名称は『シルバーバレット』です
オリジナル勢力
帝国側ばっか増えてんの



延長戦を斬る! (前半)

 

竜船でアカメとクロメは結局、手を出すことはなかった

それでも、二人が竜船を降りた後に良識派の文官を殺すのではないかと思ったブラートは追跡する

故に、任務は失敗する

可能性が低いことに変わりはないが、彼が残っていれば結果は違ったかもしれない

良識派の文官のご老人もセレモニーが無事に終わり陸地に戻ってこれたことで気が緩んでいたのだろう

心なしか穏やかな表情で――――首が落ちた

 

「セイ……コウ……コウ……」

 

幽鬼のように現れた下手人は護衛に気取られるより早く護衛対象であった老人を殺した

その事実に気付いた乗客、降りているので乗客だったと言うべきだろうか

彼等は自分のことでもないのに大声で叫ぶ

人の死がそんなにも恐ろしいのか恐怖は伝染する

セレモニーの最後は阿鼻叫喚で彩られる

護衛達が下手人を取り押さえようとしたときには既に姿を晦ませていた

一部始終を見ていたタツミも混乱していた

だが、同時に理解した

任務は失敗したのだ

気を抜いたところを狙われた

いや、気を張っていたところでタツミは間に合わなかった

悔やんで見上げた空は快晴なり

 

※ ※ ※

 

騒ぎから任務が達成されたことを知る

 

(お疲れ様、ヘンター)

 

クロメの勝因は使用人、護衛、いるかもしれない仮想敵(ナイトレイド)の注目が自分達に集中していたことだ

文官を守る壁が有象無象(肉盾)のみになっていた

暗殺はヘンター単独で事足りた

 

「なんだ。あのジジイ殺られたのかよ」

 

「うわぁ……侍女長に怒られるですよぅ……」

 

使用人の二人は反応は薄く、現場に戻るつもりはないようだ

ブラートは仏頂面のまま来た道を引き返した

骸人形に犯行を行わせたクロメは愛する姉の手を引き、堂々と帰路に着く

アカメは少し困ったように眉を下げているが、可愛い妹にされるがままだった

寄り道して甘味処にでも寄ろうと鼻歌を歌う

 

※ ※ ※

 

今回の任務の失敗、負った痛手の報告

ナジェンダは煙草をふかす

ナイトレイドの名を騙る偽物がエスデス軍直属の三獣士と、あのアカメだと(あらかじ)め知っていれば、もっとうまくやっていた

後悔を煙と共に吐き出すが、次から次へと湧いてくる

竜船での任務は失敗したが、生きている限り取り返しがつく

今回の失敗もタツミの成長の糧になってくれるはずだ

村の方は任務に成功したがレオーネを失った

死んだ人間を取り返すことは不可能だ

どんな帝具でも『死』だけは防ぐことが出来ない

タツミがレオーネの死を知ったとき、案の定激昂したがブラートが宥めた

拳で

タツミも二重の意味で身の危険を感じ取ったのか落ち着いた(青褪めた)

ラバックは現場にいながら何も出来なかったと強く責任を感じているようだが、放っておいても勝手に立ち直るだろう

普段の行動(懲りない覗き未遂)から、強かで逞しい男であることをナジェンダは知っている

自分も感傷に浸っている場合ではないなとすっかり短くなった煙草を灰皿に落とす

煙草を吸い終えるのを見計らったかのようなタイミングで扉がノックされる

ナジェンダは短く入れと言う

一拍置いて入室したブラート

 

「ボス。話がある」

 

真剣な顔をしていた

 

「どうしたブラート」

 

ナジェンダは思考を切り替える

それくらいの余裕が出来ていた

兄のように慕っていたロクドウが死んだときなど三日三晩泣き腫らしたものだが、レオーネの死で受けたショックがそのときに比べて軽いことに内心で自嘲した

そんなナジェンダの内心を知ってか知らずかブラートは話し始める

 

「シナズの話を聞いたところ三獣士の一人に俺の元上司が混ざってた」

 

「それがなんだ?」

 

ブラートが元上司の仕出かした事に、責任を感じている……とは違う

 

「俺の元上司は爆発で死ぬ程やわじゃない」

 

「生きていると言いたいのか」

 

死体をシナズは確認していない

可能性としては有りだ

仮に生きていたとしても重体だとナジェンダは思っている

 

「リヴァ将軍は紳士なフリして結構頑固な性格でな。やるって決めたからには曲げねぇ。必ずリベンジに来る」

 

薄々、ブラートが言わんとしていることを察すナジェンダだが、先を促す

 

「結局、何が言いたい」

 

「そのときは俺が出る」

 

やさり、予想通りだった

ブラートはそういう男だ

 

「馬鹿を言うな。敵が一人で来る保証はないだろう」

 

「ない。ないが漢の魂がそうあるべきだって叫んでんだ。リヴァ将軍も一人で来るさ。俺を信じてくれ」

 

ブラートの言っていることは無茶苦茶だ

理論的ではない

言いすがろうとするナジェンダはブラートの目に見て黙る

ブラートの目には迷いはない

制止を聞いて止まる気もない

新しい煙草に火を付ける

 

「…………」

 

長考の末、ナジェンダが絞り出した言葉は

 

「シナズがビマクに接触し、狙われていたことを伝えた。なのに、何を考えているのかビマクは村に滞在している。この機を逃せばビマクは次いつ出てくるかわからん。奴等が狙うなら、今だ。必ず、生きて帰ってこい」

 

「おぅ!」

 

リヴァが一人で出てくる可能性は低いが、重態であろうリヴァが出てくる可能性はもっと低い

無駄足になることを祈るしかない

祈らずにはいられない

エスデス軍は三獣士だけではない

最近、迎えいれられた二人をナジェンダは知っている

 

「アカメとクロメが出てきたときは」

 

「分かってる」

 

ブラートは背を向ける

その頼もしい背中は激しく燃えているように見えた

賢明なアカメはブラートに正面から仕掛けることはない

だが、クロメの行動は合理性に欠くことがある

ナジェンダは言いようのない不安をまた胸に抱く

 

※ ※ ※

 

ブラートの読み通りリヴァは健在だった

体のあちこちに痛ましく包帯を巻きつけている

されど、その眼光は獣の名を冠すに相応しいと言わざるおえない

 

「待っていろ」

 

その言葉は誰の耳にも届くことはなかった

 




原作通りになるかどうかは次回をお楽しみに
既に状況が原作通りじゃないけどね!

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