カールスラントの魔術師はISと翔る(かける)   作:ミヤフジヨシカ

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お久しぶりです、ミヤフジです。
携帯新調及びアカウント新調して新規にリメイクを始めました。
旧版を読んで頂いた方には大変申し訳ありません。
無事部隊配属も決まりある程度(気力と妄想が続く限り)定期的に投稿出来たら良いなと思います。





プロローグ
プロローグ1


 

あぁ、またいつもの夢だ。

目の前に広がる光景を見て、私はまたそう思う。

何度も何度も寝るたびに見続ける夢。

もはや記憶から消えないであろう思い出(トラウマ)。

目の前では幼い少年が両手両足を縛られて、多数の目出し帽を被った大人達に殴られ、蹴られ、ゴミの様に扱われている。

唇を切り、目は腫れ上がって所々青あざすら出来ている。

その中でも、少年は何かにすがりつく様に大人達の暴力に耐え続けている。

やがて1人の男が目出し帽越しにもはっきり分かるぐらいニヤ付きながらある事を告げる。

 

 

「――――――」

 

 

ここからでは聞き取れないが、その言葉を聞いた幼い少年はその顔を絶望に染める。

 

 

ザァァァァァ………………

 

 

一瞬のブレ、まるでテレビの砂嵐の様に目の前が歪み、目ていた光景が変わる。

歴史ある石作りの町並み、現代より幾分古さを感じさせる都。

その町のあちこちから火の手が、煙が立ち上り、幾人もの悲鳴がこだまし、放たれる血の様に紅い光線に、空には異形の怪物の姿。

 

 

また景色が変わる。

 

 

今度は小さな島に出来た基地の光景。

11人の少女と1人の少年が暮らす場所。

世界を滅ぼすであろう怪物と戦う戦乙女達。

その中でも選りすぐりのエース達が集まった史上最強の航空部隊。

 

夢だと思いつつも、彼は手を伸ばす。

もはや戻れぬあの場所へと。

 

 

「エーリカ姉さん…………」

 

 

ぽつりと…………私の口から声が出る。

全く意図してない、自然と出てきた言葉に私ついは顔を歪める。

そろそろこの夢から覚める頃だ。

何度も何度も見てきた夢だ。

もはや何処で終わるのかハッキリ覚えている。

失いつつある意識、この場合は起きつつある意識の中、最後にいつもの言葉を口に出す。

 

 

「…………また会いたいよエーリカ姉さん、みんな…………」

 

 

その言葉とともに、私の頬に一筋の雫が流れ落ちる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫かハルトマン?」

 

 

夢から起きて見ると、こちらを心配そうに見つめる同僚兼部下兼恋人の姿が目に入った。

銀髪オッドアイと言う特殊な姿の彼女。

普段からうなされている彼の事を心配している彼女は何故か彼と同室になる様先日上司に頼んだらしい。

 

 

「…………大丈夫だ、問題ない。」

 

 

「いや…………それはふらぐ?だと前クラリッサが言っていたのだが…………」

 

 

たわいもない問答。

それだけでも私には十分嬉しかった。

自分を認めてくれる存在、彼女が『あの世界』とは違う『この世界』で何よりも、誰よりも大切だった。

 

 

「大丈夫さラウラ、お前が居てくれるからな。」

 

 

私の名前は『イチカ・ハルトマン』

 

 

かつては『織斑一夏』と呼ばれ、周りからは姉、弟の付属品、そして織斑の面汚しと呼ばれた、平凡で才能のない単なる『異世界渡航者』である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「それじゃ、今回の任務の最終確認をしよう。」

 

 

あれから数時間ほどたった午前九時半。

今現在、イチカ・ハルトマンと同僚兼部下兼恋人のラウラ・ボーデヴィッヒは、地中海をイタリア方面、詳しくはジブラルタル沖合を目指して飛行していた。

飛行していた…………と書いているが、イチカとラウラは別に飛行機にもヘリコプターにもロケットにも乗っているわけではない。

 

 

『IS(インフィニット・ストラトス)』

 

 

元々宇宙飛行様に作られたパワードスーツだったが、そのあまりの性能の為、その大半が軍事利用されている決戦兵器。

ISを倒せるのはISだけと言われる程に攻撃力、防御力が高く、通常兵器は役に立たないほどのこのパワードスーツだが、勿論欠点もある。

まずISの心臓たるISコアが世界に467個しかない事。

そして一番の問題が『女性にしか使えない』事。

このせいで世界中で『女尊男卑』の風潮が大多数を締めており、男達は言われの無い罪で捕らえられる事もあった。

このISを作ったのは何を隠そう、イチカ・ハルトマンがまだ『織斑一夏』だった頃の姉、織斑千冬の唯一の友人である篠ノ乃束(しののの たばね)なのだ。

ただでさえ天才の姉と弟と比べられていた一夏だ。

天災たる篠ノ乃束が作ったISのせいで変わった世界、しかもそのISを使って姉の千冬は世界一になったことにより、姉と同じく天才だった弟を除いて、酷かった一夏への虐めはより酷くなった。

それでも一夏は姉を信じた。

例え褒めてくれなくても、何時か自分を見てくれると信じてひたすら家事の合間に勉強した。

 

 

数年後、一夏は第二回モンドグロッソの姉の決勝戦会場で誘拐された。

誘拐犯は今でも不明、恐らく相手国の妨害とも言われている。

とにかく、一夏は誘拐され誘拐犯は織斑千冬の決勝戦辞退を要求した。

織斑千冬の決勝戦辞退が確認されるまで、一夏は誘拐犯に暴力を受け続けた。

それが1時間だったのか数分の出来事だったのかは一夏には分からない。

ただ姉に対する申し訳なさと自分に対する不甲斐なさに悔しく成りつつも、姉なら助けてくれると信じて耐え続けた。

 

 

しかし現実は非常だ。

 

 

織斑千冬は決勝戦に出場、見事連覇を果たした。

その事を目出し帽越しにもはっきり分かるぐらいニヤ付きながら伝えてくる誘拐犯に、始めは全く信じなかった一夏だが、テレビのインタビューに出ている姉を見て絶望した。

 

 

『今一番に会いたいのは最愛の弟ですね。』

 

 

インタビューに答えたのだろう姉の声に、一夏は確信してしまった。

 

 

最愛の弟とは自分の弟である秋十の事であり、自分は最初から織斑の中に入ってすら居ないのだと。

 

 

そこからの事を一夏はよく覚えている。

こちらに45口径拳銃を向け用済みだと言ってくる誘拐犯達。

そして建物を破壊しながらやってきたISとも似ても似つかぬ異形の怪物。

驚く誘拐犯達と紅い光線を放ってくる怪物。

誘拐犯にもIS操縦者が居たのか量産を展開して応戦するが時既に遅く、ものの数分で誘拐犯達は文字通り消滅した。

怪物は一夏に気づいて居ないのか、静かに佇んでいた。

怖い…………ただそれだけが今の一夏を支配していたのだが、不意にある点に気づいた。

怪物の腹、丁度戦車で言う砲塔部分をISに破壊されたのか装甲が剥がれ、中から綺麗な赤色の物が見えた。

形的には六面体のサイコロに近いだろう。

この状況でただ、一夏はその六面体に目が離せなかった。

綺麗だ…………その感情が一夏の中にあった。

異形の怪物から漏れでる何かの毒ガスなのかわからないが、少し意識がボヤける最中にもはや恐怖は一夏の中に無く、そして何故かあれを壊せばと本能的に一夏は理解した。

誘拐犯が落とした45口径拳銃、それを静かに拾った一夏は正確に狙いを付ける。

距離は目測5メートル。

初心者でもそれなりに当たる距離だ。

引き金を引き絞り、軽くない反動を何とか受け止めながら一夏は咄嗟に当たると確信する。

亜音速で放たれる45口径弾が紅い六面体を打ち砕いたのを見たあと、大爆発に巻き込まれ一夏は気を失い、そしてこの世から文字通り『消えた』

 

 

織斑一夏がイチカ・ハルトマンになった日の一週間前の出来事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「……チ…………イチカ!」

 

 

ここでイチカは現実に意識を戻す。

どうやら深く考え事をし過ぎていた様だ。

何せ2人の時以外は自分の事をハルトマンと呼ぶ恋人のラウラがはっきりと『イチカ』と呼んだのだ。

相当心配しているのがイチカにも分かった。

 

 

「済まない、考え事をしていた。」

 

 

「そうか…………無理はするなよハルトマン。」

 

 

どうやら恋人にはイチカの考え事を見抜かれたらしい。

相変わらずだな、イチカは余裕の出来た頭で思う。

ラウラには何時も隠し事をしても直ぐにバレるのだ。

将来尻に敷かれるかもなと思わなくも無いが、まぁラウラはそんなことし無いだろう。

多分…………

 

 

「もう1回言うぞハルトマン?

今回のミッションはジブラルタル沖合を航行中のフランス海軍所属、空母『シャルル・ド・ゴール』にて行われる英、仏、独三国会談の護衛だ。

既にフランスのIS部隊は旗艦シャルル・ド・ゴールにて護衛を開始している。

イギリスは既に出発しているから私達が最後になるだろうが、それについては予定通りだ。

今回はお互いのIS兵器を見せ合う事も兼ねているからと言う意味もあるからだろうがな。」

 

 

「相手側からは何機来る?」

 

 

「フランスから2人、イギリスは3人だ。」

 

 

2、3、2…………合計七機のISが一隻の空母を旗艦とする空母打撃群に集まる…………下手をすれば一国一都市を楽々殲滅出来るほどの数だ。

それだけ今回の会談は重要なものなのだろう。

 

 

「それで…………敵対勢力の目処は?」

 

 

「今現在は不明。

ただ最悪、ISが出てきても良い様に24時間三国のISでローテーションを組みながら警戒する様になっている。」

 

 

つまり8時間交代で空母の周りを飛んで襲撃に備えろということだろう。

少なくともドイツはイチカとラウラを交代で飛ばすようだ。

 

 

「もう少ししたらシャルル・ド・ゴールの通信圏内に入る。

行くぞハルトマン。」

 

 

巡航速度からさらに加速に入るラウラ。

それに続くようにイチカも速度を上げる。

海面スレスレを上手く編隊を組んで飛んでいく様は、傍から見たらとても美しかっただろう。

だが生憎、ここにはそんなことを思う人間は居ない。

海面から反射する日の光を浴びながら、イチカとラウラの足に装着された二脚一対の特殊なISだけが、ただただ一筋の閃光の様に突き抜けて行くだけだった。

 

 

 





最近はWoWsにもはまり始めているミヤフジです。
ゲーム事態は賛否両論ですが、軍艦を眺められて動かせるだけで私は満足です。

そういえば、ブレイブウィッチーズが始まるらしいですね。
501では無いそうですが、菅野さんが出るとしって大変楽しみです!


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