カールスラントの魔術師はISと翔る(かける)   作:ミヤフジヨシカ

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魔導エンジン 出力安定……

 

各種武装 作動良好……

 

保護魔法 展開完了……

 

最終点検 全て良好……

 

 

 

空母うんかく飛行甲板にて私はストライカーユニットの最終確認を行っている。

使用するストライカーユニットは扶桑皇国宮菱製『零式艦上戦闘脚二一型』

この機体は格闘戦を主体とした機動戦特化型ストライカーユニットとして開発され、中高度までの上昇力も高く、航続距離も長い傑作ストライカーユニットだ。

 

今回の演習では主武装として九九式20㎜機銃改と25番爆弾(250㎏爆弾)を使用する。

九九式20㎜機銃改は今までの60発弾倉(ドラムマガジン)から125発弾倉(アサルトライフルでいうCマグ、もしくはキン◯マガジンと呼ばれるもの)を使用出来るよう改良された型だ。

弾速は従来の九九式20㎜機銃と同じく遅いうえ山なり弾道だが、20㎜の弾数が増え、継戦能力が上がっている。

機動戦、持久戦も出来る零戦と相性が非常に良く、弾丸自体の炸薬量もかなり多いため、私が好んで使う武装の1つだ。

25番爆弾はその名の通り、250㎏の爆弾で、今回使用するのは敵装甲目標を破壊するための鉄鋼弾ではなく着発式のペイント爆弾である。命中した箇所を分かりやすくするため、黄色のペイントが炸薬の代わりに充填されている。

 

 

「それではハルトマン中佐、発艦してください。」

 

 

航空管制室から飛行長(3佐、海外で言う少佐)の発艦指示が無線で連絡が入った。

私は自身のストライカーユニットに魔力を流していく。

オオカミの耳と尻尾が私の頭と尾てい骨の辺りから出現し、それを見ていたらしい航空機関連の整備員たちが遠くでざわついているのが感じられる。

スロットルを上げるように魔力を込めていけば、三枚のプロペラが答えるように回転速度を早めていく。

機体が動き始めた所で、ストライカーユニットに更に魔力を込め、一気に発艦速度まで加速させた。

栄魔導発動機の独特なエンジン音が飛行甲板にこだまし、海の湿気った風を浴びながら私は午後から崩れて曇った灰色の空を翔た。

 

 

「演習開始ポイントは艦隊より約50海里離れた洋上だったな。」

 

50海里をメートルに直すと約92.6キロメートル。

分かりやすく例えるなら戦艦大和の主砲の最大射程の約2倍以上だ。

零戦の最高速度で飛行させた場合、大体約11分程度で到着する予定になる。

実際は魔力の消費や機体の負荷との兼ね合いで300~400キロ前後で飛んでいる。

 

 

「それでは演習を開始してください。」

 

 

無線から先程と同じ飛く、うんかくの飛行長が演習開始の合図を連絡してきた。

空は更に崩れ、波も先ほどよりも多少高くなっていた。

今回の演習での私の勝利条件はうんかくに25番爆弾を叩き込むこと。

敗北条件はそれまでにIS13機を含めた機動部隊に撃ち落とされること。

私は25番爆弾を固有魔法『収納』で異空間に格納し、今後の作戦を考える。

まずは敵IS 13機をどう撃墜するか。

別に相手にしなくても良いのだが、敢えて戦ってその実力が知りたいのだ。

とりあえず、現在は高度3.000メートルを雲を這うように飛んでいる。

僅かに見える青空から敵機が降ってこないか警戒しつつ、こちらもいつでも戦えるよう水平線の奥まで目を凝らしていく。

5分後位だろう、先に見つけたのは私だ。

 

 

右40度、ヒトゴーマル、高角1度、反攻…………

 

 

目を凝らせば微かに見える青い色の機体、その数7機。

間違いない、アメリカ軍のIS編隊だ。

高度的には僅かにあちらのほうが高い。

確かアメリカ軍の主武装はM249軽機関銃及びM240機関銃だとブリーフィングで聞かされている。

ストライカーユニット式用の武装が未だ試験段階の為に既存の兵器を代用しているらしい。

 

私はフルスロットルで加速しつつ機体を右に旋回させた。

米軍IS編隊は雲の切れ間を密集体形で飛んでいる。

このまま直進すれば丁度米軍の右側面を奇襲する形にできるだろう。

米軍から死角となるよう上手く雲を利用しつつ、私は銃の安全装置を『ア(安全)』から『レ(連射)』へと変えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side 米海軍所属 メリア・サッチ海軍少尉

 

 

それは一瞬でした。

7対1と言うこと(日本海軍のISも含めたら13対1)で皆すぐ終わるだろうと思っていたのですが、蓋を開けてみれば一方的な蹂躙でした。

敵は雲を使い私達に接近してきました。

勿論警戒はしていました。

敵はそれを全て掻い潜り、右下方から私達に奇襲をかけてきたのです。

最初の突き上げで2機撃墜判定を受けました。

そのうちの1機が私の小隊長機で、私達の隊は混乱してバラバラになってしまいました。

私が見たのは一方的な蹂躙でした。

突き上げを行い2機を喰った敵はそのまま左上方へ抜けていきました。

残された5機のうち、2機が敵を追いかけ機関銃を撃ちまくりますがまるで魔法にでもかかったかのように全部敵の右側にそれていきました。

 

 

「何…………あれ…………」

 

 

敵はまるで何処に弾が通るのかわかるかのように一発もかすることさえなく、逆に追いかけていた2機の味方がやられました。

上昇途中で急に失速したかと思うと、敵機はそのまま宙返りの要領で反転し、追い抜いてしまった2機をすれ違い様に撃ち抜いていったのです。

しかも、私達が使っている銃が豆鉄砲かと思うほどの大火力……

残るは私も含めてたった3機だけ…………

この時間僅かに数分です。

たった数分で4機の味方が落とされてしまいました。

 

 

「大丈夫よサッチ少尉」

 

 

 

「バルドー少佐…………」

 

 

私に話しかけて来たのはIS隊隊長のケイ・バルドー少佐。

まさしくアメリカ海軍最強のといっていいISパイロットです。

 

 

「敵に弾が当たらなかったのは機体を左に横滑りさせていたからよ。

二人がやられたのは多分失速反転の応用ね。

火力は恐らく12.7㎜以上…………恐らく20㎜機関砲クラス。

敵はかなり凄腕のパイロットよ。」

 

 

少佐の頬に汗が一筋流れます。

普段どんなにきつい訓練でも汗1つかかなかった少佐が…………です。

それに少佐はめったに部下や敵を誉めません。

そんな少佐がここまで言うあのパイロットに私は恐怖を感じてしまいました。

 

 

 

「大丈夫よ、落ち着きなさい。

サッチ少尉は私の2番機に付きなさい。

いい?絶対に私から離れないこと。」

 

 

 

ついに5機目の味方撃墜判定が出ました。

圧倒的な旋回性と圧倒的火力で瞬く間に撃ち落とされたのです。

この空域に残るは私とバルドー少佐だけ。

日本海軍の増援は哨戒線が離れているためあと10分以上は時間がかかります。

 

 

それでもバルドー少佐の目に諦めの文字はありませんでした。

 

 

「はい‼」

 

 

私も最後まで少佐に付いていきます‼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






オリジナルキャラクター

『メリア・サッチ少尉』


年齢16歳
IS学園一年

通常型ISの代表候補生からストライカーユニット型ISのテストパイロットに転身した経歴の持ち主。
改ジェラルド・R・フォード級原子力空母、コンステレーション級のネームシップ『コンステレーション』のIS航空隊第二小隊二番機としてIS学園に通いながらストライカーユニット型ISのテストに勤めている。
現在、ストライカーユニット型ISを使用しているのは
隊長のケイ・バルドー少佐とテストパイロット兼代表候補生のメリア・サッチ少尉のみとなっている。

捕捉 胸はシャーリー以上

捕捉2 今回の演習後、少佐の上申で第1小隊2番機となった。
少佐の副官を兼任する。





所属

アメリカ海軍
第7艦隊
第1任務部隊
旗艦 空母『コンステレーション』
IS第2小隊2番機



使用機体


グラマン製 『F6Fヘルキャット艦上戦闘脚』
性能 機密につき記載不可能

武装 M240(使用弾薬は7.62㎜NATO弾)


COLT M1911コンステレーション仕様

M1911ガバメントを元に下部フレームに20㎜レイル、サプレッサーアダプター、肉抜きトリガーやハンマー等、各所が改造されている。
グリップにメダルが埋め込まれており、コンステレーションのシルエットが掘られている。




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