カールスラントの魔術師はISと翔る(かける)   作:ミヤフジヨシカ

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8翔

 

 

IS学園のとある林の中

 

 

イチカと箒が懐かしき再会を果たしていた時、ここでもまた懐かしき再会を果たしていた。

 

 

「はろはろ~久し振り、ちーちゃん!」

 

 

不思議の国のアリスのようなドレス、の様な服を着ている束。

360度、木々で埋め尽くされている林の中ではあまりにもミスマッチであり、アンバランスだった。

 

 

「あぁ……

お前と話すのも、あのモンドグロッソ以来だな。」

 

 

林の中からすぅっと現れた女性。

イチカ達のクラスの担任、織斑千冬だ。

こちらも黒のスーツにハイヒールと、束と同じ位場所と服装があっていなかった。

 

 

「さてと、ちーちゃんは束さんに聞きたいことあるんでしょ?

でなきゃ、わざわざステルスミッションやってる束さんに会いに来るわけないしぃ。」

 

 

クスクスと笑う束にどの口がステルスミッションだ!といいたいが、束は自身の周囲を特殊シールドで覆っており、普通の人がみても束には気づかないのだ。

 

 

「……当たり前だ。」

 

 

対して、織斑千冬の表情は暗く、まるで今にも泣き出しそうな女児のようだった。

 

 

「ちーちゃんだってもう気づいてるんでしょ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いっくん……イチカ・ハルトマンが織斑一夏だって。」

 

 

束の言葉をトリガーに、遂に織斑千冬はぽろぽろと涙を流し始めた。

そこにいるのは世界一のブリュンヒルデではなく、ただの織斑千冬という束の心からの親友だった。

 

 

「あぁ!

一夏が生きていた。

何年も何年も探し続けてやっと会えたんだ!

声も姿も変わったって、アイツはたしかに私の弟なんだってすぐにわかったさ!」

 

 

「だったら、直ぐにでも言えば良かったじゃん。

 

生きていてくれてありがとうって。

 

今までごめんねって

 

ちーちゃんなら言えるでしょ?

大切な家族なんでしょ?」

 

 

束の言ったことは紛れもない束自身の気持ちだった。

親友と大切な弟分のイチカを仲直りさせたかった。

 

勿論、それは千冬だって同じだ。

本当は今すぐにでもイチカを抱き締めて、ありがとうとごめんねの二言をまず伝えたい。

 

 

「……今さら私が姉など言える権利何てない。

私はずっとイチカの気持ちに気付いてやることが出来なかった。

あの日のモンドグロッソだって、政府の陰謀で誘拐の話を知らなかったとはいえ、私は一夏からしたら『弟より連覇を選んだ』存在なんだ……」

 

 

織斑千冬にとって、一夏と秋十は大切な弟だった。

両親が蒸発し、高校生でふたりを養うのは大変だったが、弟のことを思うと疲れも感じなかった。

小学生になり、秋十は天才といっても良いぐらい頭よく、一夏は普通の人からしたら優秀ぐらいだった。

当時の千冬は大量のアルバイトにISの勉強、ふざけた親友の相手に学業と、いくら弟のためなら疲れも感じないとはいえ、精神的にかなり追い詰められていた。

だから、秋十が一夏を虐めの対象にしているのに気がつけなかった。

実際、千冬のいる前では仲よく見えるよう秋十が演技していたのだ。

テストでも、秋十が有ること無いことを千冬に告げて、一夏が不出来だと思わせていた。

例としてあげるならば、殆んどのクラスメイトが半分もいけなかった難しいテストを、このテストはクラス全員が満点取れるとても簡単なテストだと、嘘をついたりだ。

精神的に追い詰められていた千冬は、それに気づけないで一夏に酷いことをいってしまったのだ。

真実を全て知ったのはあの日、一夏が誘拐されたモンドグロッソ決勝の日だった。

政府が連覇のため誘拐されたことを告げずにいたのだ。

結局、千冬が誘拐のことを知ったのは表彰式が終わった後、一夏は見つからず泣いていたところを束から今までの真実を伝えられたのだ。

 

 

それからは秋十に一夏について問い詰め、自身の可能な限り一夏を探し、今まで生きていた。

今さら再会しても、私は一夏に合わせる顔がない。

そう千冬は思っているのだ。

 

変なところで姉弟でにているんたから。

それが今の、束の心の中での感想だった。

お互いに気になってるくせに、自分の中で勝手に理由をつけて近づけないでいる。

イチカだって、何にも思っていないと本人は思っているが、それでも気づかないふりをして心の何処かでまた話したいと思っているにちがいない。

そう束は考えている。

 

 

「それで、それが話さない理由にはならないよちーちゃん。

ちーちゃんは悩んで、後悔して、反省して、謝りたいと思っているんだから。

何処かの自称天才さんとは違ってね。」

 

 

「いや、しかし………」

 

 

なお、渋り気味の千冬

 

 

「あぁぁもぅ!

私がいつか舞台を作ってあげるからきちんと本音で語り合いなよ!

いっくんはきちんと話せばきっと理解してくれるんだから!

いい、わかった!?」

 

 

普段の束とは違うので千冬は少し気圧されてしまった。

そんな中でも、もし一夏とまた話せるなら……

そう思ってしまった。

 

 

「話せる………だろうか?」

 

 

涙は引いていたが、その顔からは不安が残っていた。

 

 

 

「大丈夫!

いっくんを信じてよ。

なんたって

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちーちゃんはいっくんのお姉ちゃんなんだから。」

 

 

 

 

カタワレ時がおわり、空に星が瞬いた。

 

 

 






旧版とは違い、千冬さんはアンチではありません。
何故かと理由をもうしますと、アンチ版千冬を書いていたとき、私のなかで、「書きたい物語と違う」と感じたからです。
元々、千冬さんも好きな私にはアンチ版千冬さんは合いませんでした。
元々の妄想では、千冬さんとは仲直り案が主軸だったねで、旧版のアンチ版は書いていて違和感が拭えませんでした。
なのでリメイク版ではすれ違いからの仲直りでいきたいと思っています。




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