カールスラントの魔術師はISと翔る(かける)   作:ミヤフジヨシカ

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注意
今回は『君の名は』のネタが含まれています。


7翔

 

 

 

 

カタワレ時の空の下に、私と箒は学園の屋上に来ていた。

既に数十分ほど、お互い無言のままに時が過ぎている。

いくら春の4月といえど、未だ夜になるにつれ気温は下がり寒くなる。

 

 

「それで篠ノ乃さん、私に何の用件があるのだ?」

 

 

流石にこれ以上は付き合っていられない。

私にだって仕事(事務処理)があるのだ。

 

 

「あ、あぁすまない。

どう切り出して良いかわからなくてな。」

 

 

何処か顔色が優れない彼女は遂には瞳に涙を浮かべ始めた。

 

 

「ハルトマン殿……いや、一夏。

姉さんから聞かされたのだが……織斑一夏、なんだよな?

ほんとに……ほんとに一夏なんだよな?」

 

 

束さんめ……また厄介ごとを……

だが、箒にはいつか伝えなければならないことだ、束さん経由で必ずボロが出る(既に出ているが)

箒なら信用出来る。

別段、一夏の時に親特別仲が良かった訳でもない。

ただ、束さんが作ったおにぎりを食べたり、束さんに連れられて箒と三人で遊びに行ったりとかだけだった。

可もなく不可もなく、箒とはそんな付き合いだった筈なのになぜ泣かれなければならないのかわからない……

 

 

 

「………はぁ。

確かに、私は織斑一夏『だった』。

だが、織斑一夏はモンドグロッソのあの日死んd………!?」

 

 

なんと、唐突に箒が私に抱きついてきた。

瞳から沢山の涙を流し、私の体を強く、強く抱き締めて。

まるですがり付く子供のように、箒は私の胸の中で泣いていた。

 

 

「一夏だ……ほんとに一夏だ。

また会えた、もう二度と会えないと思ってたのにぃ……」

 

 

 

そこから、私は箒の思いを聞いた。

私が死んだ知らせを信じれなかった。

ただ、ひたすらに『一夏』が生きていてと願って。

 

私はつい箒を優しく抱き締めていた。

今思えば過去の束さんは、私と箒が仲良くなれるよう色々してくれていた。

箒も、私と仲良くしようとしてくれていた。

しかし、あのときの私は『家族に認めて貰いたくて』

その他のことを切り捨てていた。

 

 

「…………久し振り、箒。

あの頃は辛く当たってすまない。」

 

 

「いぃ、そんなことはもう私はどうだって良い!

一夏が今居てくれているだけで私は良いんだ!」

 

 

箒は黒く艶やかな髪を揺らしながらそういった。

髪を結ぶ夕焼け色の組紐がカタワレ時の空を写すように美しかった。

 

 

「…箒その紐」

 

つい口に出してしまった。

箒はふっと顔を上げると、恥ずかしいそうに顔を赤らめた。

 

 

「あぁ……似合って……る、かな?

昔、一夏にリボンが似合ってないと言われてな…

それからずっと組紐なんだ。」

 

 

「いや、似合ってる。」

 

 

元々、箒は神社の巫女だったのだ。

和の雰囲気の箒には組紐のほうが断然似合っていた。

つか、子供の頃、いくら切羽詰まっていたとはいえ女の子に似合ってないはひどいぞ昔の私よ。

 

 

「ありがとう。

あぁそうだ一夏、これを。」

 

 

唐突に箒は自分たち髪を結っていた組紐をほどき、私の左手首に巻き止めた。

ほどかれた髪が、風に舞ってシャンプーの優しい花の香りが私の鼻をくすぐる。

 

 

「組紐を教えてくれた岐阜の巫女友達から教えてもらったんだ。

ものを繋ぐのもムスビ、時間を繋ぐのもムスビ

そして『人と人を繋ぐのもムスビ』だと。

私はもう、二度と一夏と離れたくないんだ。」

 

 

恥ずかしそうに、ハニカミながら笑う箒。

正直とても可愛い。

 

 

 

「………箒

それだと殆んど告白だぞ……」

 

 

「!?!?!?」

 

 

つい、思ったことが口に出てしまった。

恥ずかし過ぎたのか、箒はまた私の胸に顔をうずめた。

 

 

 

「………私は一夏が好きだ。」

 

 

あぁ、察してる。

私も昔のような鈍感じゃないんだ。

箒の思いも今までのことで気づいたさ。

 

 

「………箒すまないが」

 

 

「姉さんから聞いている……

 

恋人が……いるんだろ?」

 

 

消え入りそうな声で箒が聞いてきた。

ラウラのことだ。

それも束さんから聞いているのか。

 

 

「あぁ……私の大切な人だ。」

 

 

 

 

 

 

 

「……………一夏

私は諦めの悪い女だ。

例え一夏に恋人がいても、私はお前の側にいたい。

二番でも、三番でもいいから……

私を側に置かせてくれ………」

 

 

 

箒はそういって私の視界を遮った。

女の子特有の柔らかさが私の唇に押し当てられたのだ。

 

『キス』をされた

 

思考が止まり、体が驚愕で動かなくる。

たっぷり数十秒もおこなったそれのあと、箒は私から離れた。

 

 

 

「私も姉さんのせいで一夏の部隊に入ることになっている。

姉さんからも、一夏をサポートしてくれといわれている。

これから、よろしくお願いします。」

 

 

 

 

 

そうして箒は屋上から去っていった。

私は未だ動けなかった。

頭が色々ありすぎて混乱しているのだ。

だが、取り敢えず最初にする事は

 

 

「束さんにオハナシ、しなきゃいけないな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カタワレ時がおわり、空に星が瞬いた。

 

 

 

 





オリジナルを書こうとして
久々過ぎて、書き方を忘れました。


ちなみに、私のなかでは何故か箒の髪型が大人三葉の髪型でした。
正直ポニーテールより好きです。

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