カールスラントの魔術師はISと翔る(かける) 作:ミヤフジヨシカ
『クラス代表選抜戦第二試合』
イチカ・ハルトマン対織斑秋十
第一試合を終え第二試合を目前とした現在、アリーナに居る観客のボルテージは最高潮に達していた。
今まで見た事が無かったような第一試合を、そして『男性操縦者vs男性操縦者』と言う対決。
一部では賭けが行われる程に高まった熱気を背景に、ついに第二試合が開始された。
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「クソ!なんなんだよ畜生!
あんなの俺は知らないぞ!?」
控え室で大声をあげている青年、織斑秋十は焦っていた。
自分より劣っていると思っていた愚兄が、自身より遥かに遠い高みにいたのだ。
愚兄、そう愚兄だ。
織斑秋十は一目見た時から、イチカ・ハルトマンが自身が何よりも嫌いな兄、織斑一夏であると直ぐにわかった。
見た目も、声も、雰囲気すら昔の面影はないが、それでも、『イチカ』が『一夏』だと直感していた。
「なんでアイツが俺よりも上に要るんだよ!
クソったれ!昔から何も出来なかった癖に天才の俺よりも!」
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「絶対にお前に勝って、俺が天才だと知らしめてやる!」
先程届いたばかりで、今だファーストシフトすらしていない自身のIS、『白式』に乗って、ただ憎い相手を叩き潰す事のみを考えて、織斑秋斗はアリーナに向かった。
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アリーナには既にイチカが待機していた。
視界に入っただけで切り伏せたい衝動に駆られる織斑秋十だが、まだ少しだけ残っていた理性を持ってねじ伏せる。
お互いに相対し、試合の合図を待っている
「よぉ、ハルトマン。
この前は随分と舐めた真似してくれたな。
天才である俺に向かってあんな事をして後悔するなよ。」
貴様は俺が絶対に叩き潰す!
そして二度と俺様に逆らえないようにしてやる!!
そう感情を暗に込めて挑発する織斑秋十。
「…………馬鹿だな。」
しかし、そんな言葉を無視して返してくるイチカに、更に頭に血が上る織斑秋十。
『試合開始!』
「くたばれぇぇぇぇ!!」
山田先生による開始の合図と共に、織斑秋斗は白式に唯一搭載されている武装『雪片弐型』を構えながら一気にイチカに突撃する。
ただ、憎い愚兄を叩き潰す。
それだけを考えている織斑秋十の突撃を、イチカはやすやすと回避する。
「このぉぉ!」
回避したイチカを追いかけようとする織斑秋十。
雪平弐型を上段に構え、一気にふり降ろす織斑秋十の攻撃を、またもや簡単によけて見せる。
中学に上がってから剣道をすっぱりやめていた織斑秋十の太刀筋は、憎い感情に任せてデタラメに振り回しているとしか思えないぐらい視にくく拙い物だった。
「はぁぁぁぁ!!」
もう何度目かも分からない突撃を繰り出す織斑秋十に、唯唯よけていただけだったイチカが遂に反撃に出た。
イチカは今まで持っていたAISMG42機関銃をしまうと、セシリア戦で使ったAISMG15130mm機関砲よりも遥かに巨大なモノを取り出した。
『AIS 37mmFlak 18機関砲』
30mmよりも巨大な37mm砲弾を放つ『対戦車砲』だ。
その砲身で、思いっきり織斑秋十を殴り飛ばした。
殴られた衝撃により、織斑秋斗はアリーナの壁に大音量を奏でて激突した。
大量の土煙と共にアリーナの壁に殴り飛ばされた織斑秋十。
土煙で見えなくなった織斑秋十に向けて、イチカは容赦無く37mm砲弾を撃ちまくる。
弾が切れたら装填してまた撃つ。
勿論、唯やられる織斑秋斗だとはイチカは思っていない。
煙に紛れて一気にイチカに向かって今までよりもずっと早く突撃する織斑秋斗。
「だから馬鹿なんだよ貴様は。」
土煙から姿を表した織斑秋斗に対して、イチカは固有魔法の『収納』で異空間に格納していた大量の兵器を展開する。
7.92mm、20mm、30mm、37mm、57mm etc…………
ありとあらゆる兵器を自身の周囲に展開させ、ただ猪の如くまっすぐ突撃してくる織斑秋十を見下ろしながら、イチカは呟いた。
『その程度か?存外弱いのだな、貴様のいう天才とやらは。』
それを合図に一斉に放たれる砲火の炸裂音。
7.92mmが、20mmが、30mmが、37mmが………………
曳光弾が、徹甲弾が、焼夷弾が、榴弾が、炸裂弾が………………
ありとあらゆる種類の弾が織斑秋十とそのIS『白式』に放たれる。
残っていたエネルギーを絞り滓残さず全て奪われ、撃墜された織斑秋十は、イチカに対する憎しみと怨念、そして天才(自称)の誇りを穢された悔しさから呟く。
『この!化け物め……』
その言葉と共に、織斑秋十はファーストシフトすることもなく永遠の眠りに…………
つくわけもなく。
先生方にさっさと気絶したまま保健室に運び込まれた。
君の名は
とてもよかったですね
あんな青春してみたかったです。