最弱無敗の神装機竜~紫の機竜使い~   作:無勝の最弱

8 / 33
第7話

あの戦いの後、ベルベットをはじめとした反乱軍は一人残らず拘束された。今頃は取り調べでも拷問でも行われているのだろう。

そして、ベルベットが使った笛。あの笛にはやはり幻神獣を操る能力があり、今は学園で預かっているとのこと。

 

もう一つ、ルクスの入学と『騎士団(シヴァレス)』の入隊が正式に決定した。まあ、三年のセリスティア・ラルグリズが戻ってくればごたつくのは確定的だったが。

 

 

「待てー!!!!」

「なんで僕はこんなことになってんのさー!」

 

ベルベット率いる反乱軍との戦いから数週間後の休日。

蓮は昼寝でもしようと外の木陰で寝っ転がっていた。と思ったら聞こえてくる女生徒の叫びとルクスの悲鳴。

BGMになどなるはずもない。

 

「ああ~そう言えばレリィさんが前に言ってたっけな。確か『ルクス君争奪戦』だったかな、俺には関係ないけど」

「あら、こんなところで何をしているのかしら」

「昼寝だよ。クルルシファーさんは今やっているイベントには興味ないのかい?捕まえられれば一週間、ルクスに好きなだけ()()できるのに」

 

振り返るまでもなく声の正体はわかった。蓮は返事をしてから起き上がるとそこにいたのは蒼髪の少女、ユミル教国からの留学生であるクルルシファーだった。

 

「面白そうだけど、興味はないわね」

「クルルシファーさんなら捕まえようとすれば捕まえられるんじゃないですか?わりかし余裕で」

「そうかしら?随分と私を買ってくれているのね」

「この学園に入ってからいろいろ見てきましね。あなたってヤリ手側の人間っぽいですし」

 

ゴーン ゴーン

 

『終了時刻よー!今、赤い依頼書を持っている人が―――』

 

鐘の音が響くと同時にレリィの愉しそうな声が聞こえてくる。

続いて響く女生徒たちの悲鳴。

 

「終わったようね」

「みたいですね。さ~て、安眠妨害のはらいせに早速からかいに行こうかな」

「少し待ってくれないかしら?あなたに聞きたいことがあるの」

「ん?何ですか?」

「あなた、別の世界から来たんでしょう?」

「……聞いていたのか」

「盗み聞きしていたことは謝るわ。けど、意外にあっさり認めるのね」

 

唐突な話題に蓮の表情がこわばる。周囲を見渡し、誰もいないことを確認してから口を開く。

 

「まあな。俺にも何が何だかさっぱりだから考えてもしょうがねぇ。あ、まだ自己紹介をしてなかったな。俺の本名は天宮蓮だ。改めてよろしく頼む、クルルシファー・エインフォルク嬢」

 

この世界で俺はレン・フェルテと名乗っている。今の俺の身分は新王国の貴族であるフェルテ家の養子だ。

この世界に来て一年がたった頃、ナルフ宰相の手引きで俺はフェルテ家に養子として引き取られた。フェルテ家は中級貴族だが、その当主であるエンバルケス・フェルテ侯爵はラフィ女王やナルフ宰相と懇意にしているらしい。それで俺の監視役をフェルテ家に打診したら、快諾された。というのが経緯らしい。どこかの養子にしようとナルフ宰相が動いた理由は多分、《ヴリトラ》だろうけど。

 

フェルテ家での暮らしは予想していたような息苦しさとは無縁だった。使用人含めて全員が普通に親しく接してくれていたし、俺の義父となったエンバルケス・フェルテもその妻のクレア(時折、着せ替え人形にされるほどに気に入られた)も同様だった。

 

閑話休題

 

「いいのかしら、そんなことまで私に話してしまって?」

「構わないさ。調べたところで何も出て来やしないからな。それに、あんたとは長い付き合いになりそうな気がしてな」

「…ふふ。あなた、やっぱりおもしろいわね。そんな理由で教えるなんて」

 

口に手を当てて笑うクルルシファーさんに俺も緊張を解く。

 

「さって、俺はルクスのところに行くとするよ」

「ええ。引き止めて悪かったわね」

 

クルルシファーさんに背を向け、校舎に向かって歩き出す。

さて、誰が勝ったのかな~?

 

「……彼に頼んでみようかしら」

 

 

 

 

 

「良かったな~ルクス、幼馴染みに捕まって。王女様に捕まったら()()()()()()(ここ重要)まっしぐらで確定だっただろ。さぁさぁ、甘~い時間を見物させてもらうわ」

 

学園の食堂で隣同士に座って一つのデザートを2人で食べているルクスとフィルフィ、その二人をテーブルの対面で恨めし気に見つめるリーシャ様を見つけた。

俺はさっそくリーシャ様の隣に腰かけニヤニヤしながらルクスをからかう。

 

「れ、蓮!?」

「ん、おいしい。はい、ルーちゃんも」

「え?……あ、ありがとうフィーちゃん、じゃなくて!」

 

顔を真っ赤にして抗議するルクスだが、フィルフィはどこ吹く風である。

 

「む~……」

「そうむくれるなよ、リーシャ様。誰だって実験台にされるよりはましだと思うだろ?」

「お前は私を何だと思っているんだ!?」

「優れた技術者であり、優れた機竜使い。『朱の戦姫』。王女様。人の機竜に勝手な改造をしようとするマッドサイエンティスト。懲りずに人の機竜に勝手な改造をしようとするマッドサイエンティスト」

 

ちょっと背が低い、子どもっぽい、いじりやすそう、わかりやすいツンデレ、は飲み込んだ。

 

「なんで二回も同じ――」

「大事なことなので二回言いました」

「貴様ー!」

「だってそうだろ?今まで何回《ヴリトラ》に機竜咆哮(ハウリング・ロア)で威嚇されたんだよ?」

「たかが3回だろ!改造したくなったんだ!おもしろそうだったから!だからいいじゃないか、なぁ、ルクス!」

 

2回の時点でいろいろアウトだろ。

いろいろ苦労したんだぞ。《ヴリトラ》の整備を王女様にしてもらうために二日を有したのだから。一応、フェルテ家にいる間に自分でもある程度の整備はできるようになったが、専門家がいるなら任せた方がいいからな。

今はどっかの王女様(おバカさん)のせいで俺が立ち会うなり、俺自身で整備するなりしないといけないことになってる。余計なことしやがって。

 

「僕に振るんですか!?え、えっと、やっぱり駄目だと思います」

「ダメ…だと思う、よ」

「ル、ルクス!?」

 

頼りのルクスにも言われて完全に意気消沈するリーシャ様(フィルフィの呟きは聞こえても無視したようだった)。

顔を下に向けて何かぶつぶつ言ってるけど気にはしない。

 

「じゃあなルクス。甘さと修羅の時間を三人でたっぷり楽しめよ」

 

ニヤニヤした顔でルクスを慌てさせた上に他の女生徒の気を引いてから食堂をあとにする。

もっとからかっとけばよかったかなぁ。

 

 

 

 

「――重なる答え もう迷わない~~~想いが一つになる………。ふう、意外と覚えているものだなぁ」

 

夜、自主勉を終えた俺は気分転換のためにベランダに出ていた。

 

この世界に来てもう4年になるが、メロディーをいまだに忘れてないと言うのはびっくりだ。趣味で歌詞を書き写したノートがこっちに飛ばされたとき一緒に飛ばされていたからそっちは問題ないけど、メロディーはそうもいかないからな。

 

やっぱり一人でいるときは楽だ。だから――

 

「……ほんと、盗み聴きは感心しないぜ。クルルシファーさん」

「だってベランダに出てみたら誰かさんが歌っている声が聞こえたのよ?気になるもなるわ」

「結構恥ずかしいんだよ。趣味がアカペラで一人歌ってることなんてよ」

 

今までも何度かしていたが、人前でやる恥ずかしさは何ともぬぐえないので一人なのを確認していた。

 

「別にいいじゃない。減るものでもないでしょう?どうせならみんなの前で歌ってみたら?」

「減るんですよ、俺の中の何かが。てか、冗談キツイですよ……それ…」

「安心して、明後日にもなればそういう流れができているだろうから」

 

ばらす気満々じゃねぇか!しかもその笑みのどこが安心してだ!

 

「それだけはやめてくれ!俺にできる限りの範囲で何でもすっから!」

 

合掌。絶対に嫌だ、俺はまだ死にたくない。

 

「あらそう。それじゃあ、一つお願いを聞いてもらおうかしら」

「実現可能な範囲にしてくれよ……」

「ええ、とても簡単なことよ。これから1週間、私の恋人になって欲しいの」

「はひ?」

「そういうことでよろしくね。詳しいことはあとで説明するわ」

 

恋人?俺がクルルシファーさんの?

 

「………………WHAT!?」

 

ワケガワカラナイ\(^o^)/

 

持ち主が絶賛混乱しているこの時の《ヴリトラ》はと言うと――

 

「zzz……」

 

気付きもせず、察しもせず、ただ寝ていた。

 




ということで、フィルフィに捕まえてもらいました。
クルルシファーさんを渡すもんか!

原作でルクス君があまりにもうらやまゲフンゲフン。
今作ではあまりラキスケは入れないつもりです(入れないとは言っていない)。だから期待はしないでNE!

そして現在、もう一つのオリ機竜の詠唱符に頭を悩ませています。《ヴリトラ》でも一週間ぐらい考えて3つ出来て、選ぶのに……うう。

修正点や感想を待っています!


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。