最弱無敗の神装機竜~紫の機竜使い~   作:無勝の最弱

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感想にあったレン・フェルテと天宮蓮君は同一人物です。

天宮蓮の名前は元々の世界での名前。
レン・フェルテは『最弱無敗の神装機竜』の世界での名前です。

今後の話では、地の文は基本的に「天宮蓮」または「蓮」を使い、会話文等には「レン」か「レン・フェルテ」を使うといった感じに使い分けていきます。

脳内補完をお願いします。

あと、第2話で紹介した《ヴリトラ》の神装ですが、名前を変えました。
《深潭獄》(ディバイン・ジェイル)だと、セリス先輩の《支配者の神域》とごっちゃになると思って思い切って変えることにしました。
すでに第2話のあとがきの部分は改稿済みです。

本当に申し訳ありません。


第5話

「おいルクス!どういうことだ!?」

「す、すみません…」

 

騎士団(シヴァレス)』の入隊試験の翌日の昼休み、リーシャはルクスに大声で詰め寄っていた。

 

先日行われたリーシャとの決闘を経て蓮とリーシャは無事『騎士団(シヴァレス)』メンバーに認められ、入団の運びとなった。先に試合をしていたルクスは1対3であっても終始いつものスタイルで戦っていたので、却下された。リーシャが詰め寄る理由はここにあった。

とはいえ、王都に演習に行っている三年生が戻るとまたごたつくだろうとシャリスが言った。その理由は言うまでもなく、男嫌いで有名だという『騎士団(シヴァレス)』団長のセリスティア・ラルグリズなのだが。

 

「リーシャ様。少々うるさいから静かにしてくれ」

「だが――!」

「場所をわきまえてくれと言っているのよ、彼は」

「ルーちゃんが困ってるよ、リーズシャルテ様」

「しかしだな……」

 

ルクスが怒られるのは当然として何も言わないでいたが、さすがに場所が悪いので注意した蓮だったが、おさまらぬリーシャを見てクルルシファーとフィルフィが援護に入ってやっと静かになり始めたので、収拾に取り掛かる。

 

「まあ今回はルクスが悪い。文句は?」

「ないです」

「…ルクス、確か今日の雑用はなかったな?」

「え?そうだけど……」

 

どうしてと言わんばかりに首をかしげるルクス。

蓮は答えることなく、ニヤけ顔で振り向く。

 

「だってさ、リーシャ様?」

「な、なぜ私に振るのだ?」

「だって最近授業中に――」

「うわー!?言うな!絶対に言うな!!」

 

どうやってルクスと一緒に街に…そ、その……デ、デートにさ、誘えば…

 

――とか言ってたのに、と続ける前にリーシャがわめき散らして続きは言えなかった。

 

「リ、リーシャ様?どうしたんですか?」

「お、おいルクス!」

「はい!」

「た、確か、今日の雑用はないそうだな。わ、私にきょ、今日は付き合え…」

「え?」

「追加の依頼だ!あとで工房(アトリエ)に来い!」

 

それだけ言い残して足早に去っていくリーシャをルクスは呆然と見つめ、蓮に何があったのかわからないといった表情を向ける。

 

「ちゃんと依頼はこなせよ」

 

蓮からの返答はそれだけだった。

 

 

 

 

「さて、今日のところはこんなもんか」

 

夜の自室(男子一人で使っている)で俺は最近の日課になっている自習をしていた。

ルクスは確かフィルフィと同室になったって言ってた。ただその時のルクスの表情は非常に困ったという顔をしていたが、あの後いろいろ苦労しているらしい。

なんでも二段ベッドの上で寝ているはずのフィルフィが時々下で寝ているルクスと添い寝の状態になっていたりとか…etc. うん、苦労は理解できなくもない。

 

うん、リア充爆発しろ。

 

「やれやれ、王女様ももう少し素直になったらどうかと言うか、何と言うか――ん?」

 

ランプを消し、いつも通り《ヴリトラ》を窓際の壁に立てかけようとしたときだった。消灯の時間を迎えているというのに外を歩く見覚えのある人影が見えた。

 

「こんな時間に何してんだ?」

 

どうせ暇だし、少し様子を見に行ってみるか。

 

 

「お嬢様がこんな時間に出歩いているのはどうかと思いますよ」

「――っ。あなたこそ、どうしてこんな時間に起きているの?」

「こちとらいきなり学園に編入した者なんで自主勉を。終えてふと窓の外を見たらちょっと気になったのでね。それで、クルルシファーさんは?」

 

学園内に明かりがないが、月明かりが照らしてくれている。

自室から見えた見覚えのある人影はクルルシファーさんだった。

 

「ちょっと夜風に当たりに、ってとこかしら」

「そうすか。――おい少し黙ってろ」

「急にどうしたの?」

「あり?口に出てたか?」

「しっかりとね」

 

《ヴリトラ》が起こされたことに抗議していたので言ったんだが、口に出てたか。

 

「ねえ、一ついいかしら?」

「……?俺にですか?」

「そうよ。あなたが機竜の意思を理解できるというのは本当なのかしら?」

「ああ~それか。答えはイエスであり、ノーだ。確かに俺はこいつ――《ヴリトラ》の意思がわかるし会話もできる。けど他の機竜はさっぱりだ」

 

実際にルクスの《ワイバーン》に触れたりなんだりしてみたが、何も聞こえなかった。

《ヴリトラ》に聞いても「他はアイツだけだ。それ以外は知らん」とだけ。多分、《ヴリトラ》の言うアイツは一択しかないけど。

 

「そう。ごめんなさいね、引き止めてしまって。私はそろそろ戻るわね」

「ああ。あ、ちょっちまってくれ、俺からも一つだけ聞いてもいいか?」

「いいけど、何かしら?」

「その(デバイス)、神装機竜だよな?名前だけ教えてくれないか?」

 

クルルシファーの機攻殻剣を差した剣帯を指さして、蓮が聞く。

彼女は少しだけ不思議そうな顔をしたが、答えた。

 

「ええ、この子は《ファフニール》。わたしの相棒よ」

「つまんないことを聞いて悪かったな。この前、練習で見た時に気になったからさ。んじゃ、そろそろ戻りましょうか、クルルシファーさん。また明日」

「ええ。おやすみなさい」

 

くるりと背を向けて歩き去っていく少女。俺は何を思ったわけでもなくただぼうっとその姿を見つめていた。

 

「……俺も戻るか。――忘れかけた思い出に 燈灯(あかり)が灯りだす………」

 

クルルシファーさんの姿が見えなくなった後、俺は前の世界で好きだった楽曲を口ずさみながら自室に戻って寝た。《ヴリトラ》は気にせず寝ていたがな。

 

 

 

 

それから数日――ようやく学園の生活に蓮とルクスが慣れ始めた頃に事は起きた。

 

「今のは警報の鳴らし方だ。何かあったのか?」

 

授業が終わった後、のんびりと自室に向かう廊下で蓮はいつもと違う鐘の音を聞き取っていた。遠くに慌ただしい足音が聞こえ始めたから警報なのは間違いない。

 

とりあえず、第四機竜格納庫に向かう。普段はリーシャが工房として使っているが、有事の際はそこに集まる決まりになっている。

余計な胸騒ぎがしていた。

 

 

「……以上が現在の状況だ。王都に救援の要請は出したが――」

 

ライグリィ教官の状況説明の内容はこうだ

先の警報は幻神獣の出現によるもので、確認された幻神獣は大型の一体。すでに学園のあるここ城塞都市と遺跡の間にある三つの砦のうち一つを突破され、今は残された二つの砦に常駐していた機竜使いが迎撃に当たっている。しかし、もし突破された場合に備え、『騎士団(シヴァレス)』メンバーで迎撃部隊を編成しておく、とのことだ。

 

だが、王都に救援を要請したライグリィ教官の話に「ホッ」と言う声が幾人の女生徒から漏れたのは問題だった。

 

「まいったね、平和ボケもここまでくるとは」

「そうね。さすがに嘆きたくなるわ」

「うん。あまり言いたくないけど、その通りだね」

 

ただでさえ機竜使いの人手不足だというのに王都からの援軍がすぐに到着するとは考えにくい。城塞都市(クロスフィード)の占める防衛の役割は大きいとはいえ、やはり、すぐに動けるわけがない。

 

蓮もクルルシファーもルクスもそんなことがわからないはずがなく、彼らの呟きは正しい現状把握だった。

しかし今回、この三人は待機だった。『騎士団』はこのような事態の時には積極的に動かないといけないが、蓮は入ったばかりで、クルルシファーは留学生であるがゆえに、ルクスはそもそも『騎士団』に入っていないからこその人事だった。

 

「おい、ルクス。それじゃ、行ってくるぞ」

 

リーシャ達出撃組は戦場へと飛んで行った。

 

 

 

「……なあルクス、気にならないか?」

「蓮?」

 

リーシャ達が学園をあとにしてからもうすぐ半刻、クルルシファーは先程様子見に出ている。

いまだ戦闘の音が遠くに聞こえる中、蓮はルクスに問いかける。

 

「タイミングだよ、タイミング。『騎士団(シヴァレス)』主力の三年生がここを出ている今、戦力は半減のレベル以上。短期間の幻神獣(アビス)の連続出現。偶然で片付けちまえばそれまでだが、偶然が過ぎるんだよ」

「確かに……―――ッ!?」

「ルクス?」

「もしアレが…いやでも、まさか――」

 

弾かれたように顔を上げ、うわごとをただただ漏らすルクスだったがそれはすぐに中断させられることになった。

 

ドオンッ!

 

不意に訪れた振動が格納庫を揺らし、ルクスを現実に戻した。

 

「…ッ!いまのは――」

「でかいな、それも王女様たちの向かった方向からだな。決着か、あるいはもっと厄介なことの前兆か……。ルクス、ライグリィ教官のところに行くぞ」

「うん。様子を見に行こう」

 

二人は格納庫を走った。

 

 

 

ライグリィ教官のところに行った蓮たちだったが、「クルルシファーが戻るまでは何とも言えない」と言われた。仕方のないことだったが、言う通りに待つしかないことが歯がゆい。

 

しかしその後、そんなに経たないうちにクルルシファーが戻ってきた。

 

「状況はどうだ?クルルシファー」

「正直言ってよくありません」

「何があった?」

 

クルルシファーの話によると――

 

リーシャたち『騎士団』メンバーは大型幻神獣との戦闘に入るが、突如として大型幻神獣が自爆し、大きな被害を受けた。

そこに砦の警備部隊長であろう男が現れたが、警備部隊長は突然リーシャを砲撃し、不意を突かれたリーシャの《キメラティック・ワイバーン》は大破した。その男は強化型飛翔機竜《エクス・ワイバーン》を纏っており、その機体には旧帝国の紋章。

そして、男が小さな黄金の笛を手に取り、笛を吹くと、およそ三十体の幻神獣、ガーゴイルが現れた。リーシャは神装機竜《ティアマト》を呼び出し、戦える者たちとともに交戦に入ったとのこと。

 

「…………」

「兄さん?どこへ行くつもりですか?」

「リーシャ様たちを助けに行く」

「もう一つの剣も使えない今の兄さんにできることなんてないんです。それでも行くんですか?」

 

報告を全て聞くまでもなくルクスの足は格納庫の外へと向かっていた。

だが、その歩みを止める人物がいた。アイリだった。

 

表情こそいつもと変わらぬが、声に重みがあった。行かないでほしいという願いの重さが。

それでも――声の意味も理解してルクスは歩く。

 

「それが僕のやることだから。だから、僕のすべきことをするために行くんだ」

「………。あの機竜の出力調整は、済んでいます。でも…十分以上の保証は、できません…」

「ありがとう」

 

うつむく妹が絞り出した声に頷きながら頭を撫でる。

少しの間を置いてルクスは蓮とクルルシファーの顔を見た。

 

「止めたって行くんだろ?付き合ってやるよ」

「………」

 

蓮はルクスの言いたいことは解ってますとでも言いたげに不敵に笑う。

クルルシファーは無言だった。

 

「クルルシファーさん、頼みがあります。リーシャ様達を救出するために《ファフニール》を起動させてください。僕への援護はいりませんから」

「前にも言ったけど、私はユミルからの命で、戦いに出向くわけにはいかないのよ」

 

クルルシファーはあくまで冷静に返す。

 

「僕は『黒き英雄』の正体を知っています。取引です。頼みを聞いてくれたら、教えます」

「………。わかったわ」

 

クルルシファーはわずかな間を開けて、頷いた。

 

「――来たれ、力の象徴たる紋章の翼竜。我が剣に従い飛翔せよ、《ワイバーン》」

「――降誕せよ。幾数多の憎悪を身に宿し蛇竜。怨恨放ち雷霆を弑せ、《ヴリトラ》」

「――転生せよ。財貨に囚われし災いの巨竜。あまねく欲望の対価となれ、《ファフニール》」

 

三人は機攻殻剣(ソードデバイス)を同時に抜き放ち、機竜を纏って飛翔した。

 

 

 

 




投稿が一週間遅れてすみません。
詳しい事情は言えないですけど、楽しみにしていただいたのにすんません。


さて、ようやくクルルシファーさんと蓮君が絡みました(絡んだという割にはうっすいですけど)。
レン君の部屋もしっかり一人部屋を支給されています。ルクスは?そこは原作通りレリィさんの強権(?)発動です。

《ヴリトラ》の神装の詳細についてはまだまだ先になります。
というか、出す予定も10話以降にする予定ですのでまだまだ先になります。
もしかしたら、どっかに欠片を書くかもしれないですがね。

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