最弱無敗の神装機竜~紫の機竜使い~   作:無勝の最弱

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第2話

「これより、リーズシャルテ・アティスマータとルクス・アーカディアの機竜対抗試合を開始する。両者、準備を」

 

審判役の教官が告げる。

 

「――来たれ、力の象徴たる紋章の翼竜。我が剣に従い飛翔せよ、《ワイバーン》」

 

契約者の声を認識した刀身の銀線が、青白い光を帯びた。

キィン。と、光の粒子がルクスの前に集まり、蒼の機竜が姿を現す。

 

接続開始(コネクト・オン)

 

さらに呟くと、機竜の装甲が開きルクスの体を覆う。

 

遺跡より発掘されし古代兵器。

多大な戦力を秘めたその威光はしかし、対面から発生した巨大な威圧感にのまれた。

 

「そのもう一つの剣は飾りか?」

「ッ……!」

 

いわゆる汎用機竜と呼ばれる三種は飛翔機竜(ワイバーン)陸戦機竜(ワイアーム)特装機竜(ドレイク)であるがリーズシャルテが纏っていたのはそれらとは全く違うものだった。

 

ルクスの《ワイバーン》より巨大な赤の機竜が、そこにはいた。

 

「新王国の王族専用機。神装機竜―《ティアマト》。この機竜は、そこいらのとはわけが違うぞ」

 

緊張が場を支配する。そして――

 

 

模擬戦(バトル)開始(スタート)!」

 

 

 

 

 

「ほう、今のを剣捌きだけで避けるか。プライドが傷ついたよ」

「な、なんて真似を――!?」

 

先手を取ったのはリーシャだった。

機竜息砲(キャノン)の射線をわざとずらして発射して気をそらし、ルクスの意識の向いた反対側から《ティアマト》の特殊武装《空挺要塞(レギオン)》をぶつけて射線上に押し出す。ルクスはこれをブレードにエネルギーを集中させ、盾とすることで撃墜を防いだが、もし直撃していたら命にかかわる威力の砲撃だったことにルクスは戦慄を覚える。

 

「さあ、踊りは得意か?ルクス・アーカディア」

 

 

 

「始まったか……」

「Yes,ですがやはり無謀なのでは?ルクスさんの機体は汎用機竜のようですし」

 

俺は闘技場の観覧席中段あたりからルクスと王女様の試合を眺めていた。

そして俺の隣から聞いてきたのはアイリちゃんの同居人のノクト(呼び捨てでいいと言われたので)だ。

 

ノクトが言いたいのは、ルクスの機竜は飛翔型汎用機竜の《ワイバーン》。それに対して王女様の機竜は神装機竜《ティアマト》。機竜の性能差は歴然、これでルクスが勝つことを想像する方が難しいだろう。

いかにルクスが『無敗の最弱』と呼ばれる機竜使いでも……ということだ。

 

『無敗の最弱』―旧帝国時代の公式模擬戦において付けられたルクスの異名。一度の攻撃もなく、ひたすら敵の攻撃をかわし、防ぎ続ける戦闘スタイルだったのにもかかわらず、最多出場とただ一度の敗北もなかったのが由来。

 

そんなノクトの疑問に答えたのはアイリちゃんだった。

 

「大丈夫ですよ。兄さんなら負けません」

 

そう彼女は自信ありげに答えた。

 

「ですが、いかにルクスさんが『無敗の最弱』――防御に長けていることは知っていますが機竜の性能が違いすぎます」

「確かに性能差は歴然ですよ。でも、大丈夫です」

 

ノクトの反論を肯定しても揺らぐことはなった。

隣で聞いていたはずの俺は少女たちの会話に()()()()()()()があったのをあえて指摘せず、目の前の試合をただ見ていた。

 

 

 

(な、なぜだ。攻撃は当たっている、当たっているはずだ。なのに――勝てるイメージが全く湧かない!?)

 

リーズシャルテが特殊武装《七つの竜頭(セブンスヘッズ)》まで持ち出し、《空挺要塞(レギオン)》も加えた猛攻をかけ始めて5分が経った。

たかが5分と思うかもしれないが、神装機竜はその性能故に使用者の負担が大きく、5分も全力稼働させれば、使用者にかかる負担は相当なものになる。

通常、神装機竜の本気を汎用機竜で受ければ数十秒も持たないはずなのにだ。

 

(あと、三分か……!)

 

リーズシャルテは完全に焦っていた。確かに模擬戦の時間は差し迫っている。だが、今までの攻防でルクスの《ワイバーン》の武装は摩耗し、装甲も所々にひびが入っている。

しかし、リーズシャルテは解っていた。いや、その実力ゆえに解ってしまう。今のまま3分間全力の攻撃をし続けてもルクスは墜ちない、先に墜ちるとすれば負担に耐え切れず自滅する自分だと。

 

「くそっ……!」

「ねえ、一つ聞いていいかな?」

 

リーズシャルテが仕切り直しのために攻撃の手を緩めたタイミングでルクスは疑問を聞くことにした。

 

「……なんだ?」

「僕、君に何かしたかな?こうまでされる覚えは全くないんだけど……」

「それは、私に勝ったら教えてやる」

 

そう宣言し、機攻殻剣(ソードデバイス)で天を指す。

 

「神の名のもとにひれ伏せ!――《天声(スプレッシャー)》!」

「うぐッ……!?」

 

リーズシャルテが叫んだ途端、ルクスの体が《ワイバーン》ごと地面にたたきつけられた。

すぐに動こうとするが、何かに押しつぶされているように体が動かない。

 

「どうだ?《ティアマト》の神装、《天声(スプレッシャー)》を食らった気分は?」

(神装だって!?)

 

神装とは神装機竜の持つ特殊能力のことだ。

特殊武装以上に使用者に大きな負担をかけるが、その力は絶大。

リーズシャルテの持つ《ティアマト》の神装、《天声(スプレッシャー)》。その正体は「重力操作」。ルクスが動けないのはそのためである。

 

(神装まで使うなんて!?僕もやるしかない!)

「終わりだ!没落王子!――ぐッ……!」

 

ある覚悟を決めたルクスに《七つの竜頭(セブンスヘッズ)》による砲撃でとどめを刺そうとしたリーズシャルテが不意にバランスを崩す。

そして、ルクスは自分の体を拘束している重力が消えたのを感じ、背筋が冷えた。

 

(まずい!暴走したら彼女だけじゃない、多くの人に被害が!)

 

装甲機竜の操作方法は、自分の手足と力加減を使う肉体操作、機攻殻剣を経由した思念操作の大きく二つ。この二つを使い分けて、通常は操作する。

しかし、使い手の極度の疲労と負担により、そのリズムが崩れると機竜が想定外の行動――暴走が始まる。

神装機竜において一番危険なのはこの暴走で、時に使い手の命さえ奪う。

 

「こんなことで…私が負けるかぁぁ!」

 

リーズシャルテはすかさず機攻殻剣(ソードデバイス)を振った。ルクスの周囲にいた《空挺要塞(レギオン)》は次々落ちていく。いままで他の武装に分散させた意識と力を切断し、主砲《七つの竜頭(セブンスヘッズ)》に全エネルギーを向ける。

 

その時――

 

「ギィイイイイイエエエエェエェアァァァアエ!」

 

招かれてはならない闖入者の叫びがこだました。

 

 

 

「きゃあぁぁ!」

 

招かれざる――幻神獣(アビス)の襲撃に混乱を起こす生徒達。

ノクトは俺とアイリちゃんに「早く避難してください」とだけ言ってどこかへ行ってしまった。

 

「おい!君たちも早く避難を!」

「こっちの避難終わ――ってなんで避難してないの!?」

「アイリ?蓮さんも早く避難を、ここは危険です」

 

それから少し経つと、俺達のいる場所に3人の少女が近づいてきた。

ノクトともう二人の少女。あとで聞いた話だが、彼女たちはノクトの幼馴染みで、ティルファーとシャリスと言うらしい。学園内ではノクトと合わせて『三和音(トライアド)』と呼ばれている(ちなみに学年は一つずつ違い、1年生がノクト、2年生がティルファー、3年生がシャリスである)。

 

「敵は一体だけのようですね。なら、大丈夫ですよ」

 

現れた幻神獣(アビス)に単騎で攻撃を仕掛けたルクスを見ながらアイリちゃんは呟く。

そう幻神獣一体ならルクスは大丈夫だ。()()()()()()も整っているみたいだし。

 

 

 

襲撃して来た幻神獣(アビス)――ガーゴイルが翼を広げ光弾の発射体制に移る。狙いは観客席。

ルクスがさせないと剣を振りかぶる。が――

 

ガーゴイルはその体をルクスに向けた。

 

「……ッ!」

 

大ぶりの一撃を回避され、完全な隙をさらしたルクスに合金の爪の一撃が入る。

機竜のシステムがダウンし、ルクスは自由落下を始める。

だが、その瞬間―――

 

「防御の堅い相手が隙をさらしたら、全力を出してでも一撃で仕留める。まったくもって同感だよ、化け物」

「ギ―――」

 

地上で《七つの竜頭(セブンスヘッズ)》を構えたまま、ルクスが告げた砲撃のタイミングを待っていたリーズシャルテの砲撃はガーゴイルを一撃で屠った。

そして自由落下するルクスを受け止め、地上に下ろす。

 

「まったく、一人で幻神獣につっこむ奴なんか初めて見たぞ」

「あはは、何とかなったからそれでよしってことにしてください」

「とにかくこれで――なんだとっ!?」

 

これで終わりと安心するには早かった。

安心したように顔を上げたリーズシャルテの瞳に映ったのはもう一体の幻神獣だった。

 

 

 

 

「な!?もう一体だなんて!」

「嘘ー!?リーシャ様も限界なのに!」

「そんな――!」

「兄さん!」

 

急に現れたもう一体の幻神獣―ガーゴイル―に今度こそ混乱するアイリちゃんと三和音の3人。

 

そして、俺は――

 

(ルクスと王女様は無理そうだ。他の教官たちも完全に不意を突かれている)

 

静かに息を吐く。

そして唱える。

 

「――降誕せよ。幾数多(いくあまた)の憎悪を身に宿し蛇竜。怨恨放ち雷霆を(しい)せ、《ヴリトラ》」

 

現れたのは紫の機竜。

 

接続開始(コネクト・オン)

 

声に気づいたアイリちゃんと三和音の3人が振り向くが、俺は気にすることなく飛び立ち、ガーゴイルの元に向かった。

 

 

 

「くそっ……!」

 

リーズシャルテは焦っていた。

ルクスの《ワイバーン》は解除されていた。《ティアマト》は動かそうと思えばルクスを抱えたままでも動かせる。だが、極度の疲労がたまった今では戦うことも逃げ切ることすらできそうもない。

 

「ギエェェ!」

 

襲いかかるガーゴイルにルクスはもう一つの機攻殻剣に手を伸ばそうと――

 

「《憎荒双剣(ヘイトレド・デュアル)》」

 

だが、そのとき襲いかかったはずのガーゴイルは横からの斬り上げを受けて、上空に打ち上げられる。

 

「ギェェアァァァ!」

 

狩りの邪魔をした存在に向けて怒りの咆哮を上げ、突然現れた謎の機竜めがけて再び突っ込んでくる。

 

「バースト」

 

現れた機竜はその左手に持った剣の先端に溜められていたエネルギーを発射。放たれた光玉はガーゴイルを直撃し、爆発。消滅させた。

突然現れた人物にリーシャは警戒を緩めなかったが、その人物――蓮が機竜を解除して振り向く。

 

「き、貴様は……」

「とりあえず、ルクスを医務室に運びましょう。リーズシャルテ王女」

 

 

 




いかがでしたでしょうか?

オリ主ものなのに最初のバトリが…って思わないでくださいね。そこはほら、原作沿いってことで許してください。

さて、今話については特に書くこともないのでここいらにしましょう。

感想等待っています!


あっと、ここいらでヴリトラの説明を簡単にさせていただきます。


ヴリトラ

蓮が使用する神装機竜。
蓮がこの世界に来て初めて出会った機竜。他の機竜と違って会話が可能で、蓮以外の人間でも普通に会話ができる。少々めんどくさがりな所があったりする。

飛翔型

出力   :A
近接戦闘力:A+
機動力  :B
制動力  :E
遠距離火力:B+
耐久力  :C

武装
機竜爪刃(ダガー)

特殊武装

《憎荒双剣》(ヘイトレド・デュアル)
 
 双剣の特殊武装。剣の形状はデートアライブの鏖殺公(サンダルフォン)をイメージしてもらうとわかりやすい。

《狂竜乱哮》(カオス・リフレクト)
 
 形状はクリスタル。背翼部に計20個が格納されており、使用時はそこから射出される。浮遊可能。

神装

《深怨の再臨》(フェアシェプレヒェン・カタストローフェ)
 
 ??????





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