※1月17日 誤字を修正しました。
「それでは、校内選抜戦Aグループ一番ペア対Bグループ二番ペアの模擬戦を開始する。互いに抜剣し、
校内選抜戦最終日の今日。
ついにルクスとセリスが激突するとあって、観客席は満員だった。残り数試合が残っているが、この戦いが大きな影響を与えるのは想像に難くない。
サニアが脱落したセリスのペアは蓮たちの予想通りシャリスだった。
ライグリィ教官の合図に合わせて機竜が展開される。
セリスとフィルフィはともに神装機竜の《リンドヴルム》と《テュポーン》を、ルクスとシャリスはともに《ワイバーン》を纏う。
「
ライグリィ教官の宣言の後、4人の機竜使いは飛び出した。
「おお、怖っ。あれが《
開始早々フィルフィの纏う《テュポーン》から放たれた《
ワイヤーの先端についた顎のような金属が瓦礫をつかんで投げたり、大地に突き刺してそこを起点にしたワイヤー巻きとりでの高速移動、そして敵の機竜をつかんで引き寄せ強制カウンター…etc. と、幅の広い武装だ。しかもそれが無数に、装甲の各所から放たれる。
「彼女と戦うときはアレがとても邪魔なのよ。ただでさえ、彼女の近接戦は読みにくいのに、遠距離戦を仕掛けてもあのワイヤーに捕まれば、ほぼ強制的に近接戦に持ち込まれるから」
そう、フィルフィの機竜操作は独特なのだ。習っていたという武術を使い、重量のある陸戦型の《テュポーン》から繰り出される拳の重さとその破壊力は火を見るよりも明らか。
そして武術と《
クルルシファーの呟きに隣でリーシャがうんうんと頷いていた。
リーシャは同じ遠距離タイプのクルルシファーよりも近接戦が弱い。おまけにリーシャの《
ドガァン!
蓮たちが話している中、フィルフィが演習場の大地を《テュポーン》の右腕で掴む、そしてその腕が赤く光った後、山が噴火したように爆発した。
飛び散った瓦礫と煙がセリスの視界を塞ぎ、その煙の中からワイヤーが飛び出てくる。
セリスはそれを難なく躱して《
直後、セリスの《
「《
リーシャはそこで視線を演習場内に移す。
蓮とクルルシファーも同じように繰り広げられる激闘に視線を向ける。
爆音や金属同士がぶつかり合う音が連続して響き合う演習場内。
模擬戦の残り時間が差し迫った頃、戦況が大きく動く。
「すまない、セリス。どうやらここまでのようだ」
ルクスと相対していたシャリスが《ワイバーン》を解除し、自身の敗北を宣言する。極撃を受けるとわかっていても注意を引きつけるために幾度となく攻撃を仕掛けた結果だ。
すでに武装のすべてを破壊され、装甲自体にも深い亀裂が走っていた。
「はぁ、はぁ…。ごめん、ね。ルー…ちゃん」
それとほぼ時を同じくしてセリスと戦っていたフィルフィの《テュポーン》の装甲が光を失い、使用者の疲労蓄積で解除される。
最初からただでさえ消耗の激しい神装機竜をフル出力で使っていたのだ。無理もない。
息も切れ切れに謝るフィルフィにルクスは最後の気合を入れる。
「私のパートナーとして、相応しい動きでしたよ。シャリス」
「ありがとう、フィーちゃん。後は任せて」
シャリスとフィルフィがそれぞれ退出のために歩き出し、それぞれに向けてねぎらいの言葉を掛けたセリスとルクスは向き合う。
これで一対一の構図だが、ルクスに臆する気持ちはなかった。いや、全力で戦ってくれた大切な幼馴染みの為にも、支えてくれた仲間の為にも負けたくなかった。
そんなルクスにセリスは問いかけた。
「何故あなたは戦うのですか?男性社会の再興の為ですか?それとも貴族子女たちが集うこの学園で功績を上げ、この国に再び関わろうとしているのですか?かつてこの国を支配した、旧帝国の生き残りとして――」
「僕はずっと考えていました。正しい道を歩んでいるのか、当時の僕がどうするべきだったのか、何ができたのか、あれ以上のことができたか。でも――」
ルクスはセリスの目を見つめ、はっきりと言い切った。
「僕は今の自分に何ができるのか。他ならぬ僕自身の判断で最善を希求し続ける。そのために戦おうと、今は思っています」
「……わかりました」
セリスはそれだけ答えて槍を構える。
残り時間は少ない。勝負どころはここだ。
「勝負です。ルクス・アーカディア!」
叫んだと同時、《リンドヴルム》の肩口に連結された主砲、今までの激闘の中でも温存していた特殊武装《
ルクスはエネルギーの充填前に、《ワイバーン》でセリスにとびかかる。
直後、《
「――ッ!?」
ルクスが自身の失策に息を呑む。
そしてルクスが予感した通り、セリスは《支配者の神域》でルクスから限界まで離れる。
「《
セリスがその名を告げ、光弾が撃ちだされた。
その瞬間――
「――グ、ォオオオォォォォォオオォォオオオオン!」
天災を告げるかのごとく、聞いたことのない異音が空間を揺らす。
直後に地鳴りが響き始め、演習場と観客席が激しく揺れる。
ゴバァッ!
演習場の大地から柱のような触手が数十本現れる。
「なっ――!」
戦闘中の二人が息を呑む暇もなく、触手が《リンドヴルム》に襲い掛かり、その体勢を崩す。
直後、演習場の中央で《
演習場での異変の少し前、学園の図書室にアイリはティルファーとノクトを連れて訪れていた。目的はこそこそ動いていたネズミの処理。
「ふふ、手こずらしてくれたけど、これでようやく――」
「立ち入り禁止の場所で、探し物ができる――ですか?サニア先輩。いえ、ヘイブルグのスパイさん」
サニアが目を丸くする。
それでも反論の言葉を出そうとする前にアイリが畳みかける。
「あなたの出身からいろいろ調べましたよ。ですが、あなたに関する情報は少なくてなかなかつかめませんでしたが、最近になって大きな動きを見せてくれましたね」
そう言ってアイリがポケットから取り出したのは、皺のよった古そうな紙だった。それをサニアに見せつける。
サニアが書き記したヘイブルクあての密書だった。
「学園長や執政院にも、既に報告しています。何を画策していたのか言いたくなければ、王都の監獄で、是非ゆっくりと」
「……フン。少しは頭が切れると感心したが――見込み違いだったか」
サニアは普段の知的そうな雰囲気を消し、不敵な笑みを向ける。
すでにノクトとティルファーの呼びかけで《
その様子に緊張を高めたノクトとティルファーは
「見破ったお前たちに敬意を表し、何を画策していたか教えてやろう。私の使命は、お前たちを皆殺しにし、新王国の戦力を――ここで壊滅させることだ!」
サニアは叫ぶと同時に
呼応するようにノクトとティルファーもそれぞれの機竜を纏う。
ィイィィィィイイイィ……!
「これは…っ!?」
「ちょ――っ!?」
突如鳴り響いた不協和音。その音をアイリ達は知っていた。
だが、
装甲に赤黒い血管のようなものが這い、装甲が軋みを上げ、
「さあ!つまらん選抜戦など終わりにして、本物の戦争を始めようじゃないか!温室育ちの貴族ども!」
異形の姿となった《ワイバーン》がサニアの狂叫に答えるように起動した。
短いですが、今話は以上です。
最近書きながら思うんですけど、セリスがムズイ!
何だよあの二極化セリフ!固いかと思ったらやばいラインぎりぎりもいいところのセリフまで言うとか!だが、そこが彼女の魅力の一つなんでしょうねぇ。
あ、もちろん作者はクルルシファーが一番です。はい!
修正点や感想等を待っています!