『無音』   作:閏 冬月

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第24小節 くゆらせ登る紫煙

「…………」

 

小鳥のさえずる声が聞こえる朝。とても気持ちいい目覚めだ。

しかし、昨日は確か魔理沙さんといた。そして、能力を発現したというか借りることに成功した。そのあと、いろはさんと意識を交代して魔理沙さんと何か話してたあと……。何をしていたんだったか…。

ああ、沈んだんだ。

いろはさんも限界で、魔理沙さんが帰った直後、糸の切れた操り人形が如く、意識が崩れたのだ。

確かその時は床で寝ていたような気がする。

 

ならば、なぜ私は布団で寝ている?

最近は夜になると急に冷え込む。そのため、布団は私の生命エネルギーを吸い取るように私を掴んで放さない。胸を張って誇らしげに高々と宣言しよう。

とても外に出たくない。

しかし、なぜ布団で寝ていたのだろうか? そしてなぜ、鼻腔をくすぐる朝食の匂いが漂っている?

 

疑問を打ち出せばまたすぐに疑問が重なる。その答えは一向に出てこない。

それは階段の下に行けば、手に入れることができるのは知っている。しかし、出たくないのだ。

 

出るか出まいかの葛藤を繰り広げていると、ギシギシと木製の階段を上る音が聞こえてくる。

ここに来る人なんてごく一部だ。霊夢さんや魔理沙さんに違いない。きっとそうに決まっている。

 

「お、起きたか」

 

それは、変質者だった。

 

「変質者じゃねえよ?!」

 

全身の関節という関節をフルに活かし、尚且つ自分の込めることが出来る力で枕を変質者へと投げた。

 

「落ち着け、朝飯作ってやったんだから少しぐらいは感謝しろ」

 

変質者は余裕を持って左手で掴んだ枕を、こちらへと軽く投げてから、階段を降りていった。

 

「……何者なんだろ、あの人」

 

 

 

 

 

 

 

 

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「食いながらでいいから聞いとけ」

 

私は首をゆっくりと上下させる。まだ疑わしいのだ。

ちなみに、朝食は山菜のサンドイッチである。美味である。

 

「俺は蒼月 空。一回会ったことがあるが、覚えてるか?」

 

残念というか喜ばしいことにこの変質者と会った記憶はない。頭を左右へと動かす。

 

「マント着て、お前に失望だって言った」

 

それは覚えている。

 

「それが俺」

 

なるほど、変質者らしい服装だ。

 

「お前さっきから変質者変質者うるせえから言っておく。俺は変質者じゃねえ」

「考えていることが読まれてる?」

「まあな。俺の能力は能力の模倣。考えを読んでるのは覚り妖怪の能力の模倣だ」

 

この男が変質者ではないことと、妖怪であることはなんとなく把握した。

しかし、なぜここへこの男が来たのか。

 

「それは、依頼されたから」

「誰にですか?」

「それは……、お前には言えねえな」

「変わったらいいんですよね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ぎょっとしたのか、男、蒼月 空は身を引かせる。

変わったことがすぐに分かったのか、体勢はすぐに戻る。

魔理沙でも初めてのときは数分かかったというのに、割と冷静らしい。

 

「で、誰に頼まれたんですか?」

「処刑人、夕顔 禊だ」

 

それはなんとなくは分かっていた。

彩葉には見せたくない、話したくないけれども私には話さないといけない人物と言えば1人しかいない。

 

「それで、どんな依頼をされたのですか?」

「空音 いろはの補佐をしろ、って言われただけだ」

 

補佐? 何故私に助力する立場でいけないのか。何かを成し遂げるのであれば私より力の強いこの人に頼めばいいだけの話。それであるのに、何故私なのだろうか。

その前に1つ、私が何をする?

 

「俺たちが存在しているこの幻想郷は博麗 霊夢や八雲 紫が作り出した紛い物の幻想郷。空音 いろは、お前にはこの幻想郷を壊してほしい」


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