『無音』   作:閏 冬月

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第20小節 酒に酔わぬ、酒で酔う

宴会が始まって、2〜3時間程が経とうとしていた。

ここには妖怪や妖精の人外が大多数である。かなりの酒豪揃いなのだ。

そのため、宴会はまだまだ続きそうである。

 

「お酒が飲めなくてよかったと感謝するところだよ……」

 

お酒を飲むことが出来れば、その辺りに転がっている酒瓶のように、私も転がっていただろう。

酔うという言葉には、お酒を飲んで酔うという意味もあるが、ある特定のものを好きになるという意味もある。

私はお酒には酔いたくない。そう考える。

この宴会の席の中には、お酒で酔っている人たちもいれば、お酒に酔っている人もいる。

お酒に酔っている人でも、お酒だけに固執することはなく日常を楽しんでいる者が殆どだ。

 

「もうつまみはないのかー?!」

 

あそこで数々の妖精や天狗を酔い潰している鬼は例外として。

いやまあ、あの人もあの人でちゃんとした楽しみ方は知っているはずだ。

 

「彩葉〜」

 

お酒が飲めないため、正座でお茶を飲んでいるところに桜花が転がり込んできた。

声がいつもとは違い、匂いもお酒くさい。

桜花、酔っている。

 

「彩葉ぁ〜、撫でて〜」

「はいはい」

 

私は桜花の甘えた言葉に従い、頭を撫でた。

綺麗な黒髪は、さらさらとしていて撫でている私も気持ち良い。

私の少し跳ねた茶髪はここまでさらさらとはしていないだろう。

そういったところは羨ましい。

私だって乙女なのだ。そういう自分の外見なんかは気にする。

 

「すぴー……、すぅーすぅー……」

「……? 桜花?おーい、桜花ー?」

 

返事がない、ただの屍のようだ。

というおふざけは置いておいて、桜花は私の膝の上で寝た。寝顔は可愛いため、こうやってずっと寝かしておきたいというのも本音ではあるが、博麗神社が会場となっているため、後片付けは霊夢さんと桜花+私。

寝ていたら霊夢さんからのお叱りを受けることはほぼ確定だろう。

 

「まあ、今はいっか……」

 

私は、寝息をたてながら気持ちよさそうに寝ている桜花の頭を撫でた。

 

「ねえねえ!何してるの!」

「わわっ!?フランさん?!」

 

495年間、地下に閉じ込められ、20年前にやっと日の目を浴びたら死んじゃうからなんと言えば良いのか。

まあ、とりあえず、フランさんが背後から私に抱きついてきた。

吸血鬼ということもあり、私は少しだけ身構えてしまう。

そんな私を知らず、フランさんは桜花のことを見た。

撫でられて気持ち良さそうな桜花。フランさんに見られていることを知らない。

 

「へぇ〜、羨ましいなぁ〜」

 

このお方、なんと仰られましたでしょうか?

 

「ねえ、私も撫でて!」

 

フランさんは顔を赤らめることなく、なんの躊躇いもなく私の足の上に寝転がった。

早く早くと催促するように、羽をパタパタさせる様子はとても可愛らしい。

 

「フランさん、帽子を外して下さい。じゃないと撫でれませんよ?」

「わかった!」

 

そう言って、フランさんはいつも被っている帽子を外した。

私はフランさんに攻撃されないように、ゆっくりと優しく撫でた。

フランさんの髪はふわふわとしていて、この髪の中に顔を埋めたくなる。そんなことをすれば、私の血が吸われ干からびることは確定事項となるため絶対にしないが。

 

「すぅー……すぅー……」

「えっ? フランさんまで?!」

 

2人も膝の上で寝られた私はどうすることも出来ず、寝られるがままになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宴会が終わる頃には、私も眠りについていた。

次の日、フランさんと桜花に抱きつかれながら寝ていた。

 

フランさんは紅魔館の方々に引き取られ、桜花は霊夢さんに怒られていた。

その後、宴会の後片付けに私が巻き込まれたことは言うまでもない。





今年も今年で、初詣編を書きたいと考えています。

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