博麗神社で私はぐったりとしていた。
理由は簡単。桜花の遊びに付き合っていたら、すぐに私が音を上げた。
だって、普通に考えてみたら、一般人と特殊な訓練を積んでる人が組手をしたらどうなる?
一般人は即ゲームオーバーだよ。
加えて、私は幻想郷きっての平和主義者、幻想郷最弱を名乗る人。この呼称は、自他共に認めることだ。
まあ、その幻想郷最弱の私と幻想郷最強に近い博麗の巫女(見習い)が戦ったら?
やった結果、始まって1秒もせずに、私の視界に地面が映されていた。
それを何回か繰り返して、今に至る。
本当に、疲れた。
「ねえ、彩葉」
「どうしたの?桜花」
「彩葉の家に行ってみたい」「拒否」
改行入らずの拒否。
いくら何でも早すぎた。桜花の場合、泣く可能性がある。
そして、そうなった場合、全力で殴られる可能性も出てくる。それは痛いので、何としても阻止しなければ。
「えー、1回ぐらい良いじゃんかー」
あ、泣かなかった。それが一番の好都合なんだけれども。
一応言うと、博麗神社に来ているのは両親には内緒なのだ。両親はここのことを妖怪神社と呼んだり、来てはいけない場所No. 1にあげるぐらいに、悪印象だ。一度だけ、霊夢さんに聞いたところ、幻想郷で1番安全なのが人里で、その次ぐらいには、博麗神社は安全なのだそうだ。
横道に逸れてしまったけれど、要するにここに来てはいけないと、お母さんやお父さんから言われているけれど内緒で来ている。そして、現在、反抗期真っ只中ということだ。
「私の部屋、汚れてるしさ」
「私のところほどではないでしょ?」
ぐうの音も出ないほどの返答。
桜花は大の片付け嫌い。というよりかは子供。
そのせいもあってか、よく物を失くす。そして、霊夢さんに怒られる。
いつまで経っても治らない癖な気がする。
今はそんなことは関係ないわけで、現実逃避終了。
私は桜花に引きずられながら、神社の階段を降りていた。
おかげで踵が痛いし、服ごと引っ張られてるから首が絞まっている。
苦しい。
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「はぁ…。なんで桜花がここにいるんだろ」
現在自宅、自室。
桜花は興味深そうに、周りを見ている。
「ねえ、何か面白いものだったり爆発しそうなものってないの?」
「そんなもの私の平和な部屋にあってたまるか」
基本的には私は物を持たない主義だ。
私の部屋にあるのは、本棚、机、作業台、燭台のみだ。
そろそろ、燭台の数を増やして欲しい。
2つだけはさすがに無理がある。
ガラララッ
戸の開く音が聞こえた。
多分、お母さんが帰ってきたのだろう。
「桜花、誰にも見つからないような場所に隠れておいて」
「なんで?」
「桜花のこと、お母さんに内緒にしてるんだ」
怒られるから。
「分かった」
桜花は分かったと言っておきながら、十中八九、分かっていない。
桜花が屈託のない笑顔で返答をすることはそういうことだからだ。
「彩葉ー。ちょっと来なさい」
「はーい!」
外を見ると、雨がパラパラと降ってきた。
「桜花が帰る頃には止んでるかな」