特殊能力を持つ丸山紗希のお話。
この話では、なぜか西住まほが居酒屋の店主となっています。
世界線の交差する場所で、観察者として振る舞う、西住まほです。

一部ブギーポップは笑わないの要素が入っている、気がしますが……15年以上呼んでいないため記憶があやふやです。エッセンスだけ使っているので、ストーリーには絡んでいません、ご了承ください。

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・丸山紗希:
大洗女子学園の1年生、戦車道履修者、ウサギさんチーム(M3リー中戦車)の副砲装填手。世界線に干渉し、世界の歪み、本来あるべきでない未来に進んだ登場人物をあるべき道に戻す能力を持つ。

・西住まほ:
黒森峰女学園の3年生、機甲科隊長。高校戦車道の頂点に君臨する西住流戦車道の継承者。
のはずだが、この作品ではなぜか居酒屋『鮨住』の店長をやっている。
作中世界の様々なifが交錯する世界線の交差点に店を構え、様々な世界線からはみ出た者が客として訪れる。
丸山紗希もその1人であり、その目的は……。


丸山紗希 ~大洗を救う世界線を探す者~

「へいらっしゃ……い……?」

 居酒屋鮨住の大将・西住まほは、引き戸を開け暖簾をくぐってきた客を二度見した。

 様々な世界線の四つ辻近くにあるこの居酒屋には様々な客が訪れるが、稀に見る珍客に──不愛想な大将には極めて珍しいことだが──目を丸くし、口をぽかんと開けた。

「お嬢さん、ここは居酒屋ですよ」

「分かってます」

「あの、お酒を出すわけにも……」

「同じことをオレンジペコさんやアンチョビさんや梓さんにも言っているのですか」

「いや、まぁ、その……」

 からし蓮根が2切れ乗った小皿が出される。お通しだ。

「ご、ご注文は」

「アブサン」

「は?」

「アブサン」

「いや、その、ここはいざかやなのでそういうのはちょっと」

「……『あり』ます」

「え? あ……本当だ」

 大将が珍客から視線を逸らすと、居酒屋に置いてある筈の無い酒が『あった』

『ABSINTHE』と書かれたラベルの瓶を手に取り、グラスに注ぐ前に、尋ねる。

「かくざとうはつけます? みずわりにします?」

「要らない、ストレートで」

 コポコポコポ……グラスに、ライムグリーンの──ヴェルレーヌやゴッホ、ロートレックを滅ぼした──魔酒が注がれていく。

「へいおまち、つよいおさけですからきをつけて」

「ありがとう」

 珍客は大将の言葉を無視し、68度の強烈なリキュールを一気に呷った。

「あ、おきゃくさん、ちょっと!」

「……ふう」

 背丈が澤梓やアリサとさして変わらぬ小柄な少女は顔色1つ変えず、独特な香気を放つ酒の匂いのするため息をついた。

「ズブロッカのストレート。ひともじのぐるぐる、ゴホンガゼ」

「は、はい!」

(なんて注文だ……そんなものある筈……いや、当然……?)

「『あり』ます。大丈夫です」

冷蔵庫を開ける──その通りだった。

 クマバチ酒、百年の孤独、老酒(ラオチュウ)、馬のレバ刺し、山伏茸の味噌汁、西瓜の皮の浅漬け……想像を絶する注文に、大将の額から汗が流れ落ちる。

 顔色一つ眼の色一つ変えずそれらを呑み食べ終えた珍客が、お茶を所望した。

「肥後の釜炒り茶、青柳です」

 湯呑みに両手を添えて茶を一口飲んだ彼女が、本題に入った。

「"ニュルンベルクのマイスタージンガー" 第一幕への前奏曲を」

「……お客さん、どの盤を」

「ナツィオナル・テアーターの再建記念」

「テルデックの、カイルベルト/バイエルン州立歌劇場、1963年のライブ録音」

 薄茶色髪の少女が唇を引き締めて小さく頷く。

 大将は店の奥の棚からレコード盤を取り出し、年代物のブラウン製レコード・プレイヤにかけて針を落とす。

 少しだけゆったりとしたテンポの荘厳華麗な前奏曲が、くすんだ居酒屋の隅に鎮座するシーメンス・クラングフィルムのスピーカから流れ始めた。

 

 

 彼女は自動的に現れる。

 

 世界線での異変を察した時に、漆黒の世界に浮かび上がり──正しき世界線へと戻す。

 

 然しながら、彼女は、知っていた。

 

 自動的では済まされない──能動的にならざるを得ない──大きな異変が『ある』と。

 

 

「会長、申し……申し訳ありませんっ!」

 磯部典子ほか5人のバレー部員が、生徒会室の絨毯に頭を擦り付け土下座する。

 表情は見えないが、止めどなく溢れる涙が絨毯を濡らしじわじわと色を変えていた。

「いーよ、今年いきなり素人2人加えた急造チーム……全国大会の準決勝に進出できただけで十分だよ」

「申し訳……もうしわけ……ううう、うええっ」

 角谷杏は、泣き崩れる6人の前にしゃがみ込み、1人ずつ優しく頭を撫でて回る。

「会長……、茶道、書道、華道、香道、弓道、長刀道、合気道、仙道、忍道、剣道、サッカー、バスケットボール、ソフトボール、ハンドボール、ポロ、ホッケー、ラクロス、柔道、レスリング、風紀、吹奏楽、合唱、ロボット、小説、詩歌、アニメ、漫画、模型、鉄道、ハッカー……いずれも、優勝は有りません」

「バレーが最後の望みだったけど、ごめんね。……無理させちゃった。ごめん」

 参加できそうなありとあらゆる大会に無理やりにでも参加したが……結局、バレー部のベスト4が最大で最後の収穫だった。

 これでは……廃校の撤回は不可能。

 

 大洗女子学園は、8月31日をもって廃校が決定した。

 

「──以上、文科省からの通達通り、本校は夏休み終了後廃校となる。また、週明けの終業式に続いて閉校式を行う。

 転校手続きや引っ越し等、詳細については各教室にてパンフレットを配布するのでよく目を通しておくように。

 質問がある場合は、各クラスの学級委員にてとり纏め、生徒会宛てにメールで送付する事。皆からの質問には誠意をもって回答するように努める。以上」

 河嶋桃が事務的な説明を終えると、体育館に集まった普通科の生徒は一言も声を上げず、黙って立ち上がり順番に外に出ていく。

 誰の顔も凍り付き、視線はどこも見ておらず、顔は青ざめていた。

 春の時点で生徒会より『廃校検討』の通達が有った時点では、撤回を求める声や署名運動、実績作りのための部活動や必修科目のテコ入れを行う動きもあったが……日が経つにつれ、無駄な足掻きだ、と、皆が気付いてしまっていた。

 Xデイは、来るべくして来てしまった。

 

 体育館で、角谷杏と河嶋桃が抱き合い、泣いていた。

 絶対に人前で涙を見せない会長が、童女のような烈しい鳴き声を上げる。

 せめて、2人一緒の高校に転校したいが……友達同士、部員同士、ライバル同士、みんなバラバラに転校していくのに、生徒会だけが横車を押すわけにもいかない。

「かっ、かーしま、泣けるだけ泣け。ぐずっ……涙が枯れたら、私たちも等しく裁きを受けよう……うう、ううっ、うえっ……うえええっ」

「分かりました。会長……う、うわあああああああああ!!!!!!」

 

 

 8月15日。

 大洗女子学園艦は予定より2週間前倒しで撤収作業が完了。解体作業に向け最後の航海に出ていた。

 文部科学省学園艦事務局長・辻廉太は、無人となった学園艦の中で売却可能な物品を探す。

「全く、貧乏学校にもほどがある。碌なものが残ってない……」

 扉の閉ざされた格納庫に入ると、古びた錆だらけのⅣ号戦車が放置されていた。

「せめてⅥ号なら鉄くずではなく戦車として売れたのに……ま、材質がいい分だけ駐車場の三式よりは高いか。……もしもし? ああ君か」

 胸ポケットから携帯を取り出し、部下からの電話に応じる。

「ウサギ小屋で戦車が見つかった。おそらくM3中戦車……? ふむ、スクラップとしてなら売れるか。え、なになに? 崖の下の八九式も見つかった? それは要らん。クレーン代の無駄。鉄屑以下だ。……また何か見つかったら連絡くれたまえ」

 格納庫から出て、メモに戦車の名前を書きこんでいた彼のボールペンが止まる。

(? なんで彼女たちは、戦車道をしようと思いつかなかった──)

 一瞬だけ振り向き、ふ、と苦笑いして立ち去る。

「ま、ボロ戦車ばかりではどうせ1回戦負けだ。そもそも全国大会出場も断られるだろう。私としたことが何てバカな事を、ハハ、ハハハ……」

 

 

 なんだこれは。

 丸山紗希は、空き缶空き瓶お菓子の空き箱空き袋の転がる一時居住先のアパートの一室で、顔を赤くして寝転がる5人の友人を眺めながら、名状しがたい違和感を感じていた。

 世界が、違う。

 1人、2人単位での世界の変動ではない。学園艦全体が、違和感の中に包まれていた。

 誰かがいないのだ。本来いるべき誰かが。

「さきぃ、どーしたのぉ?」

 最初は絶対に飲み物に口を付けなかったが、最後は5本立て続けに缶を開けた澤梓が首を上げ、濁った瞳で彼女を見据える。

「のんでないの?」

「……飲んだ」

「あ、そ」

 また床に突っ伏す梓を尻目に窓の外の星空を見やり、ベランダに出る。

 自動的ではなく、能動的に──。

 紗希は、唇をすぼめて口笛を吹く。

 鮨住で繰り返し聴いた──"ニュルンベルクのマイスタージンガー" 第一幕への前奏曲を。

 

 

 3万人規模の莫大な世界線の揺らぎも、蟻の一穴から始まったことに変わりはない。

 大きな鋲付きの帽子をかぶり、全身を漆黒のマントに包んだ異様な姿となった紗希が学園艦に降り立つ。

 笑っているのか怒っているのか泣いているのか分からない複雑な表情で、真っ暗なグラウンドに両手を翳し目を閉じる。

 と、頭の中をニューロンと同数の世界線が一斉に浮かび上がってきた。

 暗闇が億千万の白糸で真っ白になり、何をすればいいのか分からなくなる。

 うず高く積もった針の山から1本だけシャープペンシルの芯を探し当てろ、そう言われたに等しい。

(一体、どうすれば──)

「今思ったことをしてみろ」

 誰かの声が聞こえる。背中から胸を貫く鋭い声が。

 振り返ると、大洗の生徒ではない──灰色の制服姿、茶色髪の少女が立っていた。

「誰だ。なぜ私が視える、なぜここにいる」

「私の店に能動的に訪れたのはお前だろう」

 ああ、分かった。

「……大将」

 冷たい表情の少女が、小さく頷く。

「総当たりだ」

『……アリガトウ』」

 目を閉じニューロンの速度を加速させる。

 大将が、1ドットずつ闇に溶けていくのを0.00000001秒の長きにわたり見送ると、また元の姿勢に戻り目を閉じる。

 無限に近い世界線の1本1本に分け入り──ゆらぎの元を探す、長くて遠い道のりを──。

 

 

「赤星さん、明日は決勝戦だね。プラウダは強いけど……勝とう!」

「はい、頑張りましょう! みほさん」

 みほさん、と呼ばれた少女が、赤星さん、と呼ばれた少女の車椅子を押す。

 解体場に向かう大洗艦の遥か北方、田子の浦の沖合に停泊する黒森峰学園艦。

 8隻のヒンデンブルク形硬式飛行船と、4機のフォッケ・アハゲリスFa223ヘリコプターが駐機する滑走路の隅で、2人は飛行船に搬入されていくティーガーⅠを眺めていた。

「みほさん……あの、ありがとうございます」

「?」

「足が動かなくなっても、通信手としてみほさんと一緒に戦えるなんて、思ってもみなかった」

「……ごめんね」

 西住みほが、車椅子のロックを掛け、跪いて赤星小梅の手を取る。

「すぐに救護が来ると思って、そのまま進んじゃった私が悪いんだ。こんなことになるなんて……ごめんなさい」

 小梅の右手を両の掌で握り締め、涙をこらえるみほの頬を、左手が優しく撫でてくれた。

「後ろからプラウダの戦車が迫っていたんです。みほさんの判断は間違っていませんでした。隊長とみほ副隊長、それに逸見さんたちが嘆願書を書いて、連盟にかけあってくれて……特例で大会に出られてるだけでも、私は幸せ者です」

「でも……でも!」

「泣かないで、みほさん」

 一度みほの手を離し両手を差し伸べて、彼女の頭を、動かなくなり、か細くなった太ももに抱き寄せる。

「私は生きている。試合に出られる。こうしてみほさんが車椅子を押してくれる。黒森峰は10連覇を達成した。

 11連覇に王手をかけている……何が悪いんですか? お願いだから、悪いなんて思わないで」

「うん……ごめん、ありがとう!」

 みほが顔を上げ、明るい笑顔を見せる小梅に、精一杯の微笑みを返した。

『カテルトイイネ、ゴブウンヲ』

 

 

 否──おお友よ、こんな世界線ではない。

 

 そうではなくて、もっと楽しい世界線を見い出そう。

 

 そして、もっと、喜びで、いっぱいの──世界を!

 

 

 どこだ、どこだ、どこだ! どこだ! どこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだ!!

 世界線、世界線、世界線、世界線世界線世界線世界線世界線世界線世界線世界線世界線世界線世界線世界線世界線!!

 

 千数百億個の世界線を常人の数万倍のスピードで駆け巡り、針の山に紛れたシャープペンシルあるいはカーボン抵抗器の切れ端を探し求める。

 顔の全ての穴から血が垂れ、指先はボロボロに擦り剥け、足は腫れあがり帽子もマントもずたぼろになる。

 

 手足の痛みと激しい頭痛と眩暈と焦燥と不安とで折れそうになるたびに、後ろから声がかかる。

「世界線そのものに干渉できるのはお前しかいない。──を救えるのはお前だけだ」

「──?」

 

 ──とは、誰だ。

 思い出せ、誰かがいない。誰かが足りない。この世界には誰かがいないのだ。

 友達は何人いる? 5人いる。

 バレー部員は4人。大会前に急きょ復活が決まり、全校生徒から数名が追加招集された。その中に友達の山郷あゆみも入ってた。

 華道全国大会には五十鈴華先輩が出た。ロボットコンテストには冷泉麻子先輩が出た。武部沙織先輩は生徒会の命を受けて香道を学び全国大会に出た。

 鼠色の戦車の前で、誰かが何かを叫んでいた。もじゃもじゃ髪の先輩──秋山優花里だ。

『戦車道! 戦車道を一緒にやる人はいませんか!?』

 彼女の叫びも虚しく、だれも立ち止まろうとしない。生徒会も、手を差し伸べなかった。

 

 生徒会……生徒会。

 

 世界線を手繰る手を止める。

 廃校の宣言をしたのは誰だ? 片眼鏡の河嶋桃先輩だ。

 傍らにいたのは誰だ? 生徒会長の角谷杏先輩だ。

 

「──が、いない」

 

 刹那、私の身体は音速を超え生徒会室に飛び込んだ。

 

 1枚だけ残された写真。大洗女子学園高等学校の校門の前でピースサインをする2人の生徒。

 バランスが悪い。河嶋先輩が左、角谷先輩が中央、右側──が空いている。

 ここに誰かがいたはずなのだ。誰かが。

 

 

「おかえりなさいあなた。ほら、杏子もおかえり、って」

 大洗町のアパートの一室。つましくも幸福に満ち溢れた空間。

 髪を後ろに縛った若い母親が、幼な子の手を握り父親に向かって振り振りをする。

「え、それは『行ってらっしゃい』ですって? そうね、ごめんなさい」

 初代林家三平みたく頭に手を当て、ぺろりと舌を出す。

「今日はあなたの大好きなオムライス作ったの。ケチャップで❤も書いちゃった♪」

 夫に肩を抱かれ、照れ臭そうにする──は、本当に幸せそうだった。

 

 ──が誰か思い出した。小山……柚子先輩だ。

 

「……なぜ、小山先輩がここに」

「ここはどこ? あなたは誰?」

 漆黒の空間。世界線のブラックホール。

 私は答えの代わりに、あの前奏曲を吹く。

「タカシと杏子はどこ? 帰して、元の世界に帰して」

『アナタハイマイテハイケナイセカイニイル』

「分かりません……あなたの言っている事が分かりません!」

『ワカルヒツヨウハナイ。カドタニアンズノトナリニモドリナサイ』

「杏ちゃんとは今でもメールでやり取りしてるの。大事な友達……退学した私と付き合いがあるのは杏ちゃんと桃ちゃんだけ」

『タイセツナトモダチノイルアナタノボコウガナクナッタノハシッテイルカ?』

「……どうせ学園艦の上にいるなら休みにしか会えないのは同じです。杏ちゃんと桃ちゃんがどこに行こうと、友情は変わらない。帰して、私を帰して!」

 怒りで肩を震わす彼女に指先を向け元の世界に戻す。

 無理だ。もっと遡らねば……。

 しかし、時間には限りがある。世界線に干渉し、正しい世界を『構築』するために揺らぎを『修正』できる時間はほんの瞬きの間。

 乱暴だが止むを得まい。世界線を遡れる時間的な限界点に到達した。

 私は、

 焦げ茶の髪を振り乱し豊かな胸を揺らして流血を伴う痛みの中芽生えた快楽に打ち震える彼女の中に体液を放とうとしていたこの世界に必要のない物体を消し去った。

 

 

「おきゃくさん、おきゃくさん、かんばんですよ」

「……」

「あんなむちゃなのみかたするから」

「……ニュルンベルクのマイスタージンガーを、マタチッチで」

「デンオン。1968年のN響ライブ、新宿厚生年金会館……らすとおーだーですからね」

「……はい」

 ひどい頭痛の中、私の脳内で夜道にへたり込んだ彼女の激しく泣き叫ぶ声と、釣られて泣き叫ぶ河嶋先輩、両手で二人を慰める角谷先輩の声がリフレインし続けていた。

 やりすぎだ。

 人のささやかな幸福を奪ってまで世界線を作り直すのはエゴではないのか。

 胃がむかつく。消化物が込み上げそうになる。

「お前が世界線を正したからと言って、廃校の危機が去ったわけではない。図に乗るな」

 大将の声が、むかつく胸に突き刺さる。

「まだなにもはじまっていないし、おわってもいないぞ」

『……ヨゲン?』

「よていだ」

 顔を上げ、天井をぼんやりと見上げる。

 鮨住を出れば……決勝戦が待っている。

 いや、桂利奈に呼ばれているんだ。映画を観ようって。

 スピーカから流れる曲が、穏やかな……ローエングリン、第1幕への前奏曲に変わった。

「大将、月は出ていますか?」

「出ている」

 良かった。迷わずに帰れそうだ。

 みんなの、ところへ。

 



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