フランちゃんは引きこもりたかった?   作:べあべあ

17 / 37
短いです


第17話 vs いろいろ 1

 しばらくして。

 幻想郷の空に赤い霧が発生した。

 霧は濃さを増しながらどんどん広がり、やがて空を覆い尽くした。

 日差しが届かなくなり、薄暗い上に、肌寒くなった。

 

 霧の発生から少し経った頃。

 紅魔館は賑やかになっていた。

 

(なんか騒がしい)

 

 地下の自室にいるフランは屋敷の異変を感じた。

 そしてすぐに分かった。

 

(今、やってるのかぁ。……こっそり行っても許されたりしないかな? ……うん、なんか普通に許されそう。やめとこ)

 

 見に行きたい気持ちを抑えて、部屋に籠る。

 やってみなければ分からないことだが、ぶっちゃけ勝つ自信しかない。

 手加減に失敗して万一勝ってしまった場合、面倒なことになる。

 

「うー」

 

 ごろごろする以外にすることが出来ずに、ひたすらごろごろ転がり続けた。本を読んで気晴らしも出来なかった。気が散って仕方がない。

 大きな音。

 

(うー)

 

 ごろごろ。

 

(あー)

 

 また大きな音。

 

(気になるぅー)

 

 ごろごろ。

 

(ぐぬぅー)

 

 音が止む。

 非常に長く感じる時をすごし、なんとか事が終わるまで耐えきった。

 ようやっと一息つけたフランだったが、我慢し続けたせいでフラストレーションが溜まっていた。

 

(もう関係ないし、外に出てもいいでしょ)

 

 フランはこっそりと外に出た。

 空には赤い霧がまだ残っていた。

 館の前の湖の上空を行く。

 

 夜空のお散歩。

 

(霧が濃くて、よく分かんないなぁ)

 

 上も下も霧だった。上は赤、下は白。

 

「今度は負けないわ!」

 

(――ん? なんか聞こえた?)

 

 周囲を見渡すが霧が濃くよく分からない。

 

「ちょっと聞いてんの!?」

 

 ほぼ真下に小さな氷の妖精が見えた。

 

「あたいを無視するなんて良い度胸ね! ボッコボコにしてやるんだから!」

 

(えええ)

 

 あまり強そうには見えない。

 

(妖精だし)

 

「……なにするの?」

「決まってんじゃん! これよ!」

 

 氷の妖精はスペルカードを提示した。弾幕ごっこ。

 その光景を見たフランの頭に何かがよぎった。

 

(なんか知ってる気がする。つまり、……強い?)

 

 この感じがした時は皆強かったことを思い出す。

 

「いいけど、名前教えてくれない?」

「チルノよ! あんたの名前は別にいいわ! あたいさいきょーだし!」

 

 フランは警戒レベルを上げた。

 

「チルノ……」

 

(やっぱり知ってた。最強とか言ってるしすごい強いのかも)

 

「行くわよ!」

 

 考えているフランに構わず始めるチルノ。

 下から上へとフランとの距離を縮め、氷結弾を放つ。大きな石つぶてのようなものだった。

 フランはそれを悠々と躱す。

 

(小手調べってわけね。――じゃあこっちも!)

 

 フランは魔力弾を適当に十程生成し、チルノへ放った。

 チルノはそれを慌てて避ける。

 

「あわわわ」

 

(……あれ?)

 

 演技には見えない避け方に疑念が湧いたフラン。

 

「…………」

 

 十五個ほどの誘導型の魔力弾を作り、放つ。

 ぎゅるんっ。

 

「あばばば」

 

 当たった。

 チルノは目をバツにして、湖に落ちていった。

 ぽちゃん。

 

「……なんだったんだろう」

 

 無かったことにして、フランは進むことにした。

 

 

 

 

 湖を超えると、森が広がっていた。

 当てもなくふよふよと飛んでいると、向こうからこれまたふよふよと飛んでいる何かが、フランの目に映った。

 

「あなたは食べてもいい人間?」

 

 フランは返答に困った。

 とりあえず頭が弱そうに思えた。

 

「人間に見える?」

「んー、見えない」

 

(また変なのだった)

 

「じゃあね」

 

 フランが去ろうとすると、呼び止められた。

 

「あ、今変なやつって思った?」

「……別に」

「さっきも似たようなこと言ってた人間に会ったわ。――でも今度はどうかな」

 

 スペルカードを持って両腕を天に広げY字バランスしていた。

 

「……やるの?」

 

(相手になる気がしないんだけどなぁ)

 

「これ見えないの? もしかして鳥目? あ、これもさっき言った気がする」

 

(面倒臭いからさっさと終わらせちゃお。どう見ても弱そうだし。……でもなんか見たことあるような? そう、確か……)

 

「名前、ルーミヤだったりしない?」

「ルーミアなんだけど。人違いね」

 

(……強いのかな)

 

「人間じゃないけど」

 

 突然、フランの視界が真っ暗になった。

 吸血鬼の視力を考えればあり得ないことである。

 

(闇? そういえば闇を操るとかなんとかだった気がする)

 

 ひょっとして無茶苦茶やばいかもしれないと、フランは焦り、百を超える魔力弾を生成しトルネードの如く周囲にまき散らした。

 暗闇はすぐに晴れた

 光が戻った視界には、ぷすぷすと煙を上げて地上へ落ちていくルーミアが映った。

 

「…………」

 

(もう帰ろ)

 

 フランは精神的に疲れた。

 

(スペルカードルール、やっぱあんまり合ってないのかなぁ)

 

 フランはしょんぼりしながら屋敷に帰った。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。