異世界西遊記 作:越後屋大輔
今回途中まではゴノー視点になっています
ある日の夕方、我らの冒険者一行は近くの湖で一晩過ごそうと決めた。役人から今日の国境超え手続きの受付はとっくに終了していると聞かさたし、宿に泊まる必要もない、素早く仕度を済ませ帳が下りる前に寝入っていた。
月が空の真上に登った頃、ワシは女の啜り泣く声に目が覚める、17、8歳の娘が湖のほとりで泣いていた。湖上では10羽ほどの鴨が悲しげな声をあげていた。娘はボロではあるが質のいい生地のドレスを着ている、元はいいとこのお嬢さんなのだろう。これまでの経験上人を見る目は確かなつもりだ、ワシは彼女に声を掛ける。
「脅かしてスマンの、だがこんなところでアンタみたいな若い娘さんがどうしたものかと気になってな、ワシはしがないドワーフじゃ、役にたてるかわからんが話を聞かせてくれんかね」娘は驚いたがワシが精一杯優しく語り掛けると涙をこらえ話し始めた。
「私はジューダ王国国王の娘、プリムラ・マルス・ジューダです、信じられないでしょうがこの鴨は私の兄達なのです」
詳しく聞くと10年前兄弟妹の母であるお妃様は亡くなり王様は最近になって新しいお妃を向かえたのだがその正体は恐ろしい魔女であり、王国乗っ取りの為に王様を幽閉して、姫を追い出し王子様達を鴨に変えてしまったとの事。助けてやりたいが仲間にも相談せねばなるまい。
「国を追われる時に父から古文書を預かりました、書かれてる文字は読めませんが魔女を倒す手掛かりになるかもしれないと国境沿いのここまできたのですが、」
「今のアンタじゃ国境を越えられん、ということじゃな、待ってなされワシが代わりに行ってくるでの」
「えっそんな!出逢ったばかりの人を頼るなんて、それに…」鴨の鳴き声が激しい、ワシみたいな胡散臭いのに任せるなって言いたいんじゃろうな、国の運命がかかってるからか、妹が可愛いからか、恐らく両方じゃろ。
「朝になったら出発する、なぁに心配なら無用じゃ。仲間達も反対せんじゃろ」
オッサンから昨夜の話を聞いた俺達はどうせ通り道だし特に反対する理由もないので国境を越えて隣の国へ入った、古文書にも興味があるしな、よく見るとアルファベットすなわち地球の言葉で書いてあった、当然この世界の文字じゃない。英語かヨーロッパの公用語だと思うが俺には読めない、こっちに来てから異世界語は読み書きできるのに地球語の方が無理というのも変な話だが元々文系は苦手だ、
「街の人達から聞きました、その古文書を見せてもらえませんか?」この辺では見かけない黒い髪と目の男は古文書を見つめながらこの世界には存在しないはずのメモ帳を取り出すと書かれてる文字を複写し出した。
「少し時間がかかりますが内容がわかるとおもいます、僕の店にきませんか?」
こちらの方がしっくりきます。