異世界西遊記 作:越後屋大輔
国境を越えて次の国へやって来た。爆弾は片田舎の無人地帯にあったので、いつも通り処分する。関所に着いたときは陽も落ちてきたのでスープーで一晩過ごすことにした。ベッドで一休みしていると人影が見える。
「オイ、様子はどうだ?」
「大した連中じゃなさそうですぜ、ドワーフの爺ぃにエルフのメスガキ、獣人の男女が一人ずつ」
「あいつらギルドに金属や魔物の肉売って大金手にいれてました、暗くなったらかちこみやしょう」
「よし、手前ぇらオレの後につづけ」野盗の一派か、俺達にケンカ売るとはね、しょうがない、サクッと凝らしめてやるか。体毛を蛇やスライムに変えてスープーの車輪の下に隠しておく。
「ギャアアアアア、助けてくれぇ」蛇に怯え腰を抜かす野盗達、逃げようとした奴等にもスライムがまとわりつく。
「ヒイイイイィなんだこれ、冷たい‼」パニックに陥ってる奴等にとどめでマンティコアに化けて噛みつく振りをする、野盗全員泡を吹いて倒れる。
「真夜中に何の騒ぎじゃ」オッサンには事情を説明しておこう。
「もぅやっと寝込んだのにぃ」寝付いただろ!お前は起きなくていい。ア、化けたまま元に戻るの忘れてた、2人迄気絶しちゃったよ、トロワちゃんは目を覚まさないな、この娘意外に大物かも知れん。
関所で出国の手続きを済ませ、駐在していた役人に罪人共を引き渡してから次の目的地へ向かう。これが俺達の日常である。最初の頃は流石に用心もしたが余りにもワンパターン過ぎて近頃じゃ飽きてきた、まぁ平和に越したことないけど。
世界の最西端にある贅を凝らした城、その玉座に腰を降ろす魔王、苦虫を噛み潰したような表情をしている。実際不機嫌なのだ、その理由は
「オレが百年前に仕掛けたかが、イヤ呪いの円錐を解除している輩がいるらしいが?」質問に部下の一人が答える、
「ハ、ハイ魔王様。得たいの知れぬ一行が次々に処分しながら旅をしているとかで…」
「何故だ?!埋めた場所はエルフのシスターにしかバレんはずだし、女神を信仰するあの森のエルフは皆殺しにしたはず」
「その、これは下っ端の戯れ言かもしれませんが…」
「なんだ?言ってみろ!」
「ではおそれながら…あの時、エルフのガキ一匹殺り損ねたと、それも誰かに庇われていたとも」
「何だと!女神以上の力を得たこのオレに恐れをなさずガキエルフを助けようとする愚か者がこの世にいたというのか!」
「お怒りはごもっとも、しかし今はお静まりくださりませ」
「ふんっ!そいつらいずれこの地にも来よう、その時は血祭りにあげてやる、ハハハハハ」部下達は恭しく頭を下げながら腹のなかには不満を抱えていた。
「ホンの少し、異世界の知識があるだけで大した実力もないくせに偉そうに」奴らとてその知識にすがりつき好き勝手な事をしてきたのだがしっかり棚にあげて文句だけは立派だった。
この世界にスライムは存在しない、または認識されていません。どっちにしろ野盜には未知の生物ですね。
当初はもっと長い話にする予定でしたが、後2~3話で終わりにします。