異世界西遊記 作:越後屋大輔
~トロワside~
百年振りに洞穴から出られた。向こう側には赤い上衣と黄色と黒の縞模様のタシットを身に付けた男の人がいる、あの人が助けてくれたのか。陽に照らされた地面を踏みしめた途端にあの日の記憶が一気に押し寄せて、涙が溢れた、ちゃんとお礼言わなきゃいけないのに泣き声しかでてこない、顔から液体を全て垂れ流すみっともない私を彼はなにも言わずに只、頭を優しく撫でる
いつの間にか眠っていたらしい、目を覚ますとベッドの上にいた。柔らかい布団も高い天井も百年振りだ。ドアがノックされたので返事をする、さっきの男性が部屋へ入ってきた、よく見るとサルの獣人のようだ。
「あなたが助けてくれたのですね」
「そういうことになるかな、ところでお腹空いてない?パンとサラダと水しかないけど」充分、いや百年同じ果物ばかり食べてた私には過分とも思えた。あ、私まだ自己紹介してなかった。
「エルフで見習いシスターのトロワといいます。よ、よろしくお願いしばしゅ!」なにをよろしくするのか、しかも噛んでるし。
「トロワさん、か。こちらこそよろしく」
~主人公side~
寝息をたてる少女を連れて森をでたのはいいがはてさて何処へ行ったらいいものか、とりあえずカカンザの街へ戻るとしよう。あそこは知り合いも多いし、アパートもまだ引き払ってないしな。
部屋へ連れていきベッドに寝かせる、いつ起きてもいいように簡単な食事を用意しておくか。それとしばらく戸口で門番だな。
起きた頃を見計らってドアをノックする、返事が聞こえたので部屋へ入る、さっきより大分落ち着いたようだ。改めて見てもまだあどけない少女だ、人間でいえば12、3才ぐらいか。耳こそ尖ってるけど顔立ちは整っていて将来はいい女になりそうな…いかん、今はそんな場合じゃない。
「目が覚めたかい?」少女は取り乱すこともなく素直に答える。賢い娘でもあるようだ。
「エルフで見習いシスターのトロワといいます。よ、よろしくお願いしばしゅ!」噛んだ、可愛らしい一面もある、こういうところは年相応の少女だな。一度パンを手にして慌てて戻すトロワさん、奥ゆかしい態度も好感が持てる、駄女神とは偉い違いだ。
「トロワさん、か。こちらこそよろしく」
「敬称なんていりません、トロワでいいです」
「じゃあトロワちゃんで」その後2人で食事をとりながら今後のことを話し合う、早速明日はチョヤの森に埋まってる爆弾を除去しに行くことになった。
翌日アパートを正式に引き払ってトロワちゃんの旅支度を整える、助けられたうえに服までもらう訳にはいかないと遠慮がちなトロワちゃんだったが女の子を着の身着のままにしてはおけない。半ばこの為に稼いだようなモンだしな、当面必要になるだろうコートや靴、肌着、ズボン等々選ばせて、2人分バックパックその他必要なモノを購入しチョヤの森へ戻る、ここからがホントの冒険のはじまりだ。
前回既にエルフ少女の名前は判明しましたが、主人公は敢えてスルーしてます (笑)。