異世界西遊記   作:越後屋大輔

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第0話転生

~プロローグ~

 俺は昔から西遊記が好きだった。その名がつくものは手当たり次第チェックした。書籍、ドラマ、映画、アニメ。やっぱり万能でチートな孫悟空が余りにも魅力的だからだ。子供のころは将来は彼になりたいと思ってたし大人になった今でも(基準こそ違うが)正直羨ましいと思う。だからって、イヤだからこそが正しいのか。この頃はあんなことになるなんて思ってもいなかった。

 

 ある日の事俺は呆気なく死んだ。じゃあ何で語ってられるんだと言われそうだが。つまり一回死んで生き返った?訳だが、マァ順を追って説明しよう。

 

 俺は元々は歴とした会社員で勤務先へは自動車で通勤していたのだけど普段使っている車道の一部が崖下にあって、落石注意の標識も立てられてた。だがそんなのどうやって注意しろっていうんだ?

 ここまで聞いてお察しいただけた通り俺は落石事故で生涯を終えたのだが実はソコから先が長くなる。

 事故から意識を失って気が付いたら妙な場所にいた。地面はまるで雲のようだし、空は晴れているのか、曇っているのかもわからない。ただ、自分が死んでいる自覚はあった。あまりにもテンプレな状況である。「そういやネット小説とかで一時期流行ってたよね。こんな展開って」まさか、我が身に振りかかるとは、いや所詮作り話だろ。そんな事を考えていると目の前にリーゼントのおっさんが登場した。いかにも任侠な感じがするので逃げようとしたら、

 「ハァーイって、ちょっとどこへ行こうとしてるの?あなた自分が死んでるの分かるでしょ?お話しくらいさせてちょうだいな。」おネェかよ!勢いで突っ込んでしまった。

 「この度は御愁傷様。アラ、これは遺族に対してで本人に使う言葉じゃないわよねェ。でも『いらっしゃいませ』もおかしいし、いっそアメリカっぽく『nice to meet you』とかがいいかしら?」

 「それよりあなた誰ですか?そんなやー○んみたいな格好して、僕でなくても逃げますよ!」

 「これはアタシ流の近代ファッションよぉ、この金のネックレスとか色つきのサングラスとかオシャレでしょ?❤」駄目だこの人、何もかも間違ってる。

 「ゴメンなすわぁい、お話しが逸れちゃったわ、改めて自己紹介するわね。って言ってもアタシ自身は名がないの。簡単に説明するとあなた達がいうとこの神様よ。ヨロピク」

 「全世界の宗教家が知ったらショックで首くくりそうだな。んでその神様が死んだモンに何の御用ですか?」

 「お願いがあるの、元の世界であなたは死んでしまったけどこの後、天国や地獄といった所謂死後の世界じゃない別の世界で生き直してもらいたいの。といっても転生して赤ちゃんからスタートせずに死んだ年齢から」

来たよ、テンプレパターン。そんなのにのってたまるか。

 「だったら元の世界に帰して下さいよ。大体僕が死んだのもあなたのせいでしょう?」

 「それは違うわ、今回は複雑な事情があるのヨォ」

この強面おネェの自称神様が言うには世界の人間一人一人の生死は彼らが存在する前からの決定事項の一つであって変更はできないらしい。いくら神様であっても好き勝手に人間の寿命をいじくると自分達が消滅してしまうという。ある日その辺の事情も絡んだ事で友人である異世界の神様から相談されたのだそうだ。

 「友人によるとそこの世界は間もなく終焉の時を向かえるらしいわ。マァ、結局は自業自得なんだけどね。それでも人情として見放すのも可哀想でしょ?そこでアタシは考えたの、異世界の人間には各世界の決まりは適応されてないわ。なんせ前例がないからね、だからあなたが向こうで生きていてもなにをしてもアタシには何の悪影響もないわ。だからあなたに友人が神様をしている世界を彼女共々救ってほしいの。分かってもらえるかしら?」

 「しかし異世界とそこの神様を救えといわれても…僕に何ができると?」

 「もちろんアタシからいろいろ能力をプレゼントするわ、それに引き受けてくれるならその後の人生の幸せも保証付きよ。お金、権力、女全て思うがままにしてあげる❤」

俺は少し考えてみる。確かに魅力的な話しではある。その時ふと脳裏に子供のころの憧れが甦る。

 「だったら一つだけお願いしたい事があります。西遊記はご存じですよね。僕を主人公の孫悟空にしてもらえませんか?」

 俺の発言に一瞬固まる強面おネェ神様。自分でも変なこと言ってるのは分かってる。だけどこれを逃したら二度とチャンスはない。金も女も権力も欲しくはあるが逆に身を持ち崩しかねんし、大体神様に頼らなくてもどれも自分次第で手に入れる事が出来る。それなら神様にしか頼むしかない願いを叶えてもらった方がいい。おネェ神様も最後は理解してくれたようだ。

 「それじゃ文字通りの新世界でのリニューアル人生へいってらっしゃーい!」

 神様がポン!と手を叩くと俺は再び意識を失った。

 

 

 

 


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