ソードアート・オンライン ~闇と光の交叉~   作:黒ヶ谷・ユーリ・メリディエス

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 おはこんばんにちわ、作者の黒ヶ谷・ユーリ・メリディエスです。

 まぁ、内容はタイトル通りですね。原作をトレースしていますし、分かる人には分かる部分も含めてます。そこまで見応えは無いかと。基本、SAO編はまだまだ書き出しだったので心情描写が未熟で、読み応えは薄いと思われます。

 こういう流れでこうなったのだ、と事実としてあったという風な認識で良いですし、原作知ってる方はそっちで補完して頂いても結構です。

 ただ、ちょこちょこ原作に無かった階層での戦闘、描写を入れてますし、今作のキリトの今後に関わる描写が時折入っているので、完全パクリではありません。それでも被りが多いのはこの城のお話が始まったばかりだから。

 進むにつれて今作独特の要素が入ってくるので、最初は退屈でしょうが、どうかお付き合い下さい。

 それでは第七話、ちょっとした前哨戦です。


第七章 ~複数のユニークスキル使い~

                  第七章

            ~複数のユニークスキル使い~

 

「諸君、今回のボス攻略に参加してもらったこと、心より感謝する」

 

 私の目の前では、《血盟騎士団》の《ヒースクリフ》団長がレイドに参加する皆に挨拶をしているところだ。

 五十層のボスは全滅する可能性が高い。それをキリト君に指摘され、まさかと思いつつ偵察に行って、その理由が分かった。

 ボスは多腕型、しかも腕が数十本もある大型ボス《ザ・センジュカンノン・ブレイダー》という名前だった。かなりどうかと思うネーミングだが、名前にある通り、数十本の腕全てに片手直剣を装備している。

 偵察部隊は五分も持たなかった。ソロで三十分戦い続けたキリト君によれば、ボスの剣は破壊可能でも数秒で復活する、腕全てを使ったソードスキルは剣を破壊しないと止まらない、剣一本一本が独立している為に仰け反りや硬直が狙えない、などの情報を得たらしい。

 今までと戦い方が全く違う上、クォーターポイントのボスは恐ろしく強い。かつて二十五層のボスをソロで倒した彼でさえ無理と言っていた。それだけ強力なのだろう。

 しかし朗報もある。なんと、ヒースクリフ団長が《神聖剣》を、キリト君が《二刀流》や《魔聖剣》等の複数のスキルを習得していたらしい。

 《神聖剣》は片手剣と盾装備で、防御力に途轍もないボーナスが付く。

 《二刀流》は片手剣二本同時装備可能になり、ソードスキルも二刀のものが使えるらしい。攻撃力、クリティカルにも膨大な補正が付くとか。《魔聖剣》も似た感じらしいが、全ステータスの強化、攻撃力に絶大なボーナスがある等、ゲームバランス崩壊気味のスキルなのだとか。

 他にもあるらしいが、今回は関係無いとのことで、それ以上は話さなかった。キバオウがそれに対して、公開せんかい! と怒鳴っていたが、そもそもスキル構成のことを聞くのはマナー違反。それを団長やディアベルさんにも指摘されて渋々引き下がっていた。相変わらず、キリト君とは不倶戴天の敵な間柄のようだ。

 

「さて、それでは諸君。行こうか」

 

 団長がそう言って大きな深い青の結晶――《回廊結晶》を使った。これはある地点を記録しておけば、結晶を使用した際に記録した地点まで転移出来るという、宝箱からしか手に入らないレアなアイテムだ。

 目の前に薄く、水面のような波紋を描く光の歪みが出現。

 そこに団長とキリト君が並んで入る。今回のボス戦は、団長の《神聖剣》で護り、キリト君の《二刀流》と《魔聖剣》で攻める方針になったのだ。しかも、二人は攻略組の顔と言える。団長は攻略組最大のギルドのリーダーとカリスマ性で。キリト君は圧倒的な実力と、ギルドを率いる団長とは正反対のソロのリーダーとしての存在感で。

 キリト君がリーダーをするのにはもう一つ意味がある。彼は今十三、ユウキとリーファは今年十四、私は十六歳だ。攻略組で最年少なのが彼なのだ。圧倒的に年下の彼が死地で奮戦すれば、自ずと士気が高まるだろう、という事を狙っているらしい。

 それの効果は覿面らしく、全体的な士気は高い。ユニークスキルと名づけられたスキルが現れ、勝機が見えてきたからだろう。キバオウが未だにキリト君を睨んでいるが。

 二人に続いてあたし達も入る。出た場所は五十層迷宮区の最上階、ボス部屋の手前だ。既に二人は扉の前で準備を済ませていた。

 あたし達も急いで最終準備を済ませ、二人に向き直る。それを確認した二人は口を開いた。

 

「諸君、これから行うボス攻略は厳しいものとなるだろう。しかし忘れないで貰いたい。我らの剣、我らの戦いに、アインクラッドにいる全プレイヤーの想いが掛かっていることを」

「俺達はこれまでを生き抜いた、そしてこれからも生き抜く。自分の役割とはいえ、命を粗末にするな。例え勝てても、死者が出れば敗北と同じだ」

 

 二人が言いながら、団長は盾に差された白銀に赤十字の長剣を、キリト君は背中から黒と翠の二刀を抜き払って、天に掲げる。

 

「「俺/私達から言える事は唯一つ……誰も死なず、全員で生きて帰る事だ!!!」」

『『『『『おおおおおっ!』』』』』

 

 あたし達は二人の言葉に、気合を乗せた声で返した。誰もが、己の武器を掲げている。

 団長とキリト君は二人でパーティーを組んでいる。攻防を二人だけでこなす為だ。その補助をするのが私達だ。全員で気合を入れなおす。私達の失敗が二人の死に直結するからだ。

 二人は同時に大扉を開き、ボスの前に躍り出る。

 ボスは侵入者に気付き、その数十の剣を振るいだす。団長は盾でいなして防ぎ、キリト君は襲い掛かる剣を破壊し、逸らし、あるいは俊足で避ける。

 私達は事前に聞いていた弱点――背後に襲い掛かった。今回、二人はメインであり囮でもある。メインアタッカーの二人が欠けたのは少々痛いが、それでも副団長の私やその補佐の二人、ユウキにリーファもいる。クラインやエギルもいるので、頼れる仲間達と共に攻撃を仕掛ける。

 

                  *

 

 その戦い、いや、死闘は三時間にも及んだ。途中、あまりの強さに恐れて勝手に離脱する者が相次ぎ、戦線が崩壊しかかった。それを支えたのが団長とキリト君の二人。残りの皆や離脱したメンバーが戻ってくるまでの、実に一時間もの間、たった二人で一度も下がらずにボスの相手をし続けた。途中に攻撃をしながら。

 私達は二人の邪魔をしないように下がって見る事しか出来なかった。圧倒的過ぎた。入る余地が無く、下手に入ればどちらかが死ぬことは全員が理解していた。

 そしてボスを倒した時、全員のHPは危険域や注意域ばかりで、安全域のグリーンは誰一人としていなかった……団長を除いて。

 団長は注意域に入る、ほんの数ドット手前でグリーンを保っていた。それに驚嘆し、ユニークスキルって凄いのね……と思いながら見つめていると、不意に漆黒の閃光の如くキリト君が団長に迫っているのが視界に入った。

 彼は黒剣で《レイジスパイク》という、使い勝手の良い突進系ソードスキルを団長に向けて放った。団長は慌てて盾を構えて防ごうとするも、キリト君が微妙にずらした剣先が湾曲した盾の表面をすべり、団長に当たる――――

寸前。不可視の何かに阻まれ、盛大なエフェクトと轟音を当たりに撒き散らす。

直後、団長の頭の上に【Immortal Object】と紫色のウィンドウが表示された。

 団長に駆け寄ろうとしていた私はその表示を見て驚愕し、キリト君と団長を交互に見る。

 

「【不死存在】……? ど、どういうこと?」

「つまり、ヒースクリフはシステム的に守られてて、HPが絶対に注意域に落ちないんだよ。そして、そんな事が出来るのは一人だけだ。そうなんだろう? ヒースクリフ。いや――――茅場晶彦!」

 

 キリト君が団長に怒鳴る。怒鳴られた本人は驚愕の表情を浮かべたままだったが、やがて落ち着いたのか、いつもの無表情になってキリト君を見据える。

 

「……参考までに、どうやって気付いたのかな? これでも、私はまだあまりヒントを見せては無い筈だが」

「……あんたの目。あんたの、俺達を見つめる目は、俺達と対等じゃなくて、自分以下の存在として見ていた目だった。そして、この激戦で誰もがHPを黄色や赤色に染めてるのに、あんた一人だけが緑色だからな。それでピンと来たんだ」

「なるほど……」

 

 ヒースクリフはそう言って笑い、私達全員を一旦見回し、そして宣言した。

 

「確かに、私は茅場晶彦だ。そして最上層でキミ達を待つ、このゲームの最終ボスでもある」

「……趣味が良いとは言えないな。最強のプレイヤーが一転、最悪の敵か」

「中々良いシナリオだと思うのだがね……それと、最強は君だと思うのだが」

「き、きさまが……」

 

 その時聞こえたかすかな声、しかしはっきりと殺意が乗せられた声に全員が向く。《血盟騎士団》団員の一人で、団長を崇拝していた若い人物だった。

 

「貴様が、お、俺達の忠誠を……! よく、よくも、よくも、よくも……っ!」

 

 団員の男が剣を振り上げて飛び掛る。と同時。ヒースクリフは冷静に素早く『左手』を振り、現れたウィンドウを操作する。すると、ここにいる全員が何故か麻痺になって倒れ伏す――キリト君とヒースクリフ以外が。

 彼は周りを見て焦燥を浮かべ、ヒースクリフの前に、私達を庇う形で立ち塞がった。

 

「どういうつもりだ。ここで俺達全員を殺して、口封じでもするつもりか」

「いや、流石にそれはしないよ……ふむ、こうなってしまっては仕方が無い。九十五層で明かそうと思っていたのだが、こんなに早く見破られるとは流石に予想していなかった。私は最上層にある【紅玉宮】で君達を待つことにしよう。ここまで育ててきた諸君を見捨てるのは心苦しいが、なぁに、君たちなら大丈夫さ。だが、その前に」

 

 そう言ってヒースクリフは盾を左手から外し、差された長剣の柄を持って地面に勢い良く立てた。

 

「キリト君。君には私の正体を見破った報酬として、チャンスを与えよう」

「チャンス……?」

「そう、今ここで、私と一騎打ちするチャンスだ。私を倒せばゲームはクリアされ、生き残っている全プレイヤーが即時ログアウトできる。どうかな?」

「キリト君、だめよ! あの人は、ここでキリト君を始末する気よ!」

「そうだよ、だから受けちゃダメ!」

「キリトさん! ここで受けたら、キリトさんは……!」

「キリト――――ッ! ダメだ、引け――――ッ!」

「やめろ、キリト! ここでお前までいなくなったら、俺達はどうやって進めば良いんだ?!」

「……………………」

 

 私、リーファ、ユウキ、クライン、エギルを筆頭に、攻略組の全員が制止の言葉を叫ぶ。あのキバオウでさえ、涙を流しながら怒鳴っている。

 しかし――――

 

「……ここまで育ててきた? 見捨てるのが心苦しい……? 俺達なら大丈夫……?」

 

 俯いてそう繰り返す彼は、ギリッと離れていても聞こえるほど大きく歯軋りをし、顔を上げて怒鳴った。

 

「ッ……ふざけるなよ! 今まで……どれだけの人間が苦しんだと、死んだと思ってやがる! チャンスを与えるだと……? お前は何様のつもりだ、茅場ァッ!」

 

 キリト君は今までに無く憤怒していた。今までも彼が怒ったところを見たことはあったが、それらなんて比べるべくも無いほど、彼は憤っていた。

 

「……いいぜ、受けて立ってやる……!」

「キリト君?!」

「ちょっ、なんで?!」

「……ここで立ち向かわないと、俺は俺じゃいられなくなる。俺も……同罪だ。人を……殺した……だから、ここで自分の死に怯えるなんて、出来ない……!」

 

 そう言って、彼は二刀を向きながら茅場晶彦の前方十メートルの地点で構える。茅場はそれを見て、ウィンドウを操作、互いに危険域――たとえ一撃でもクリーンヒットを貰えば終わるくらいのHPに調整。

 その後、

 

     ――《Changed into Immortal Object》――

 

 という表示が出た。これで【不死属性】は解除されたのだ。

 そして、二人は構えた――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 はい、今回は可攻略組を成り立たせているギルドや戦力、ボス戦について、アスナ視点から語られました。

 第一巻はキリト視点オンリーでしたけど、アスナ視点で暴露から決闘への流れを見たらこういう風になるんだろうなと考えて書きました。とは言え、割と原作まんまだったりするので面白みに欠けるでしょうけども。

 それと一つ。キリトへの呼び方についてですが、原作にも出ているキャラクターの中で一人だけ最初から呼び方が完全に違う人が居ます。違和感があるかも知れませんが、ずっと続くのでご容赦下さい。

 それでは次話、ヒースクリフとのガチ決闘。
 流れは原作同様、されど戦いの場は五十層。キリトの中身は転生者、勝負の行方は何処へ行く?
 第八話を待っていて下さい。

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