ソードアート・オンライン ~闇と光の交叉~   作:黒ヶ谷・ユーリ・メリディエス

63 / 65
 どうも、おはこんばにちは、黒ヶ谷・ユーリ・メリディエスです。


 今話も連日投稿出来て嬉しい限りですが、これから来週に掛けてテストの再試が始まるので不定期となります。構想は浮かんでいるんですが、時間がね。タイピング速度は中々でも気が乗っていないと上手く書けない。


 さて、今話はオールリーファ視点です。原作でもリーファ視点でしたね。

 今話の文字数は約一万五千、前話より一万文字少ないですがそこそこ内容を詰めております。また、あまり臨場感は無いかも知れませんが、タイトルからお察しの通り戦闘回です。


 ではどうぞ。




第十章 ~襲撃~

 

 翡翠色に輝く街《スイルベーン》よりナツと共に飛び立ってから約三十分を経て、領都から北に向かっていたあたし達は大きな山の麓近くまで辿り着いていた。古森を抜けた辺りには山を抜ける為の洞窟があり、今はその近くまで来ている所だ。

 そこであたしとナツは、五匹の飛行型モンスターと戦闘をしていた。

 

「はぁッ!!!」

 

 気合一閃と、この三十分でかなり随意飛行を体得しているナツが凄まじい速度で飛び掛かり、右手に握る真っ白の片手剣を素早く振るう。その一撃は《イビルグランサー》というトカゲ型Mobの頭部を胴体から切り離し、一撃で絶命させるに至る。

 

『ギシャッ!』

 

 同胞を殺された怒りからか、反撃とばかりに残るイビルグランサー四匹がナツに対してそれぞれアクションを起こした。二体は近付いて突進攻撃を仕掛け、もう二体は詠唱を初め、すぐに完了させてから紫色のオーラを高速で飛ばす。

 ナツは迫る二体を軽やかな動きで躱し、すれ違い様に一体の胴体を逆手持ちにした白剣で串刺しに貫き、致命傷を与える。そこから更に抉るかのように剣を振るい、HPを全損させて絶命させ、蒼い結晶辺へと変貌させた。突進をいなされた一体は哀しげに、そして怒りの籠った方向を響かせる。

 そんなナツに二つの紫色のオーラが迫り、当たる。初撃は当たっても特に変化を齎さなかったが、二撃目は変化を齎し、ナツの周囲に紫で縁取られた緑色の円環が上から下へと向かいながら出現し、彼の白いコートや胸当てなどの色がくすんで見えるようになった。

 《イビルグランサー》が使えるのはカースと呼ばれる、所謂呪い系魔法で、当たった相手のステータスを一定確率で二割ほど減衰させるものだ。これは解呪魔法を使うか、《状態異常耐性》スキルあるいは《呪い耐性》スキルの熟練度の高さに反比例して短くなる自然回復を待つ事で、解除される。アイテムも解呪用のものはあるが、基本的に戦闘中は解呪魔法を、街が近いなら圏内に入って自然回復を待つのがセオリーとなる。

 HPとMP最大値は下がらないのだが、STRやMENなどは下がるし、更にはHPとMPの自然回復量、アイテムや回復魔法などでの回復量まで減退されているので戦闘中は致命的な状態異常となる。更に殆どのプレイヤーは知らないが、ステータスウィンドウにある筋力値、敏捷値はSTRやSPDなどを計算式に当て嵌めて算出された数値なので別枠として扱われるようで、呪い効果の対象にキッチリ入っている。

 なので実質、全ステータスは四割は減衰すると言って良い。効果に対してかなり苦戦する原因はここにあるのだ。

 

「だーくそっ、また呪いかよっ?!」

 

 あたしは傭兵で基本がソロだったので、こういう状態異常系の対策は万全にする為に《状態異常耐性》スキルを完全習得しており、あたしに何かしらの状態異常を付与出来るとするなら、それは確定系のスキルか、あるいはダンジョンの奥底に潜むボスくらいのもの。

 なので割とあたしは相手のカース魔法を無視して斬り掛かり、魔法を放った後で隙だらけの気色悪い薄桃色の表皮を持つトカゲを一太刀の下に切り捨て、欠片へと爆散させる。

 その傍らで、呪文を口ずさみ、悪態を吐くナツに掛かった呪いを解呪した。チリッとMPバーが削れるが、あたしの装備に付与されている自然回復量増強によってすぐにフル回復するので、それを無視して近くを飛ぶトカゲに視線を移す。

 ナツが呪いに掛かってあたしに解呪されるのをもう二回繰り返した所で、無暗に逃げ回っていたトカゲ五匹の殲滅を終えた。

 要した戦闘時間はおよそ二分。ソロで戦っていた時の方が短かったのはナツとの連携が出来ていないのと、彼の回復及び解呪をあたしがしていて、攻撃魔法を使っていなかったからだろう。近接攻撃を主として行っていたにしても少し掛かり過ぎかなと反省した。

 まぁ、解呪呪文は《回復魔法》スキルの中でも熟練度を上げなければ習得出来ないもので、ナツはスキルの熟練度が今日始めたばかりで低いので、致し方無い部分もある。そう考えれば多少は妥当とも言えるかも知れない。

 

「はい、お疲れ様、ナツ」

「お疲れ様です……何か、足引っ張ってしまった気がする」

 

 互いの健闘を称えあう意味でハイタッチすると、ナツが微妙な表情でそう言ってきた。どうやら解呪をあたし頼みにした事は気になっていたらしい。

 こういう自身の悪い所を見つけ、反省しようとするのだから、門下生の中でも特に可愛がってしまう。仕方が無いなぁ、と思って色々と世話を焼いてしまうのだ。

 

「別に気にしなくても良いわよ、そこまで大変じゃなかったし、解呪魔法で消費するMP量は装備で強化された自然回復量で補えるからね。それにナツはダメージを受けてないんだから」

 

 解呪魔法よりもHP回復魔法の方がMP消費量が上なので、それを考えると今の方がまだ嬉しかったりする。

 取り敢えず呪いによる効果の説明をして、その危険性を理解したナツは呪い状態の時は回避を優先してあたしの解呪を待ってくれていたので、HPを回復する事は無かった。もしもあったなら、もう少し時間が掛かっていたかも知れない。

 

「まぁ、自分でHPの回復くらいは出来るようにして欲しいかな。詠唱も短いから自己回復程度なら簡単だし」

 

 ほらテキスト、と言いながらメニューウィンドウのスキル欄を開き、詠唱の復習をしなさいと促す。ナツがそれに頷いて左手を軽く振る姿を見ていると、彼の背中から映える翡翠の翅が明滅し始めたのを見た。

 淡い燐光を散らしながら震える翅が明滅するのは、その翅に溜めていた陽光や月光の力が底を尽き、浮力を喪い掛けている事を意味する。明滅し始めは残り時間三十秒の合図だ。

 

「翅も限界ね……一旦降りるわよ」

「あ、はい」

 

 あたしはグライドを併用して戦闘を行っていたのでまだ余裕があったが、ナツは流石にそんな事は出来ないので翅が限界。一人が飛べてもパーティーメンバーが飛べないのでは移動しようにも出来ないので、すぐに降りて月光による翅の回復を少し待つ事にした。

 

「ふぅ……」

「ん? 疲れた?」

 

 地面に降り立ち、首や肩、腰を捻ったりして伸びをしているナツの様子を見て軽く問えば、彼はまさかとばかりに片頬で笑み、首を横に振った。それにあたしも片頬で笑みを浮かべつつ、してやったりと胸中で呟く。

 

「そっか。でも残念、ここから暫くは空の旅はお預け」

「え? ……あー、高度制限ですか」

「そ。あのルグルーの山脈は高度制限が設けられてるから……ほら、あそこにある洞窟を抜けるしか方法が無いのよ」

 

 そう言って、あたしは百メートルほど先に見える少し大きめの洞窟の入り口を指示した。もう山脈は目の前、後はこの《ルグルー回廊》と呼ばれる洞窟を抜けるだけである。

 

「洞窟ダンジョンかー……リーファさんって、あそこに入った事は?」

「一応《アルン高原》まで抜けるルートはマッピングを終えてるわ。普通のプレイヤーならこのルートは避けるんだけど、一応傭兵として必要だと思ってね」

 

 普通避ける理由は、この《ルグルー回廊》と呼ばれる洞窟を抜けるルートが、合計で《アルン高原》へ向かう三つのルートの中でも最短ながら最難関を誇るからである。

 この回廊の中にはトラップは殆ど無いものの、嫌がらせのようにオークなどの亜人モンスター、サソリなどの甲殻モンスターが犇めいており、更に洞窟なので戦闘音が遠くまでよく響く。結果、一度でも交戦してしまうと、街に辿り着くまでには二十回はザラの連戦を経験する事になるのだ。更に言えば一体一体の攻撃力も然るものながら、耐久力も中々侮れない。

 特に甲殻類モンスターは打撃攻撃の棍系で無ければ基本的に目に見えるダメージを与えられず、あたしのような片手剣は弾かれる事が多い。更には甲殻に高い魔法耐性があるのか、魔法攻撃に対してもべらぼうに強いと来ている。幸い足は遅いので振り切れるが、仲間を呼ぶアクションを有しているので、逃げる先に回り込まれている事が多く、それで逃げ場所を失ってやられてしまう……という事が普通にある難関ルートなのだ。

 しかも嫌がらせのように分岐ルートが途轍もなく多く――結局は街に行き着くのだが――選んだ道によって歩く距離が異なるし、中にはモンスターハウスの如し部屋に通じている場合もある。

 なので安全なルートを求める商人や交易商などは、ケットシー領の近くにあるルートを通る。あちらは少し距離はあるが、モンスターはケットシーのテイミングを考慮しているためか比較的弱めで、数も《ルグルー回廊》ほど多くは無い。シルフはケットシーから飼い慣らした使い魔達の助力を何度か受ける事があり、交易に関しても似た事情があるため、古くから交友があるのである。

 だから《ルグルー回廊》に最も近いシルフはこちらでは無く、ケットシー領近くのルートで《アルン高原》へ向かうのがセオリーとされている。

 だが今のこの世界の事情で、他種族の領都に近付く事はあまり良くないとされている。

 あたしは《スイルベーン》が気に入っていたからあそこに長期滞在していたのでシルフからの依頼しか受けていなかったが、それでも傭兵の端くれなので交易商や情報屋達と幾らかのコネクションは持っている。フレンド登録はしていないが、顔馴染みとして話せる程度には知り合っている。

 各種族の領都や中立域を流れている者達から細々と得て繋ぎ合せた情報によれば、他種族の領地に入ったプレイヤー達はその大多数が忽然と姿を消すという噂が流れているらしい。それはどこの種族の領地とかでは無く、全種族の領地で起こっている事で、そして暫くしたら何事も無かったかのように忽然と姿を現すのである。

 それを気味悪く感じている交易商はあたしのような傭兵を雇って移動したり、独自のルートで移動する事で難を逃れているらしい。情報屋も似たようなものだという。

 あたしも一応傭兵なので交易商から護衛の依頼をされて付いて行った事もあるが、確かにその帰りは嫌な予感がしたから出会うモンスターの全てをスルーし、シルフ随一の速度を以て速攻で《スイルベーン》へと戻った過去がある。あの時は確かサラマンダー領だったから、それでPKされる危険性を懸念して帰ったのだが、今思えば噂が自分に降りかかる事を予感していたのかも知れない。

 そういう事もあって、本来なら最難関で誰も通らないようなルートをあたしは選んでいる。ナツも地上戦ではALOトップに近い戦闘力を誇ると確信しているので、この《ルグルー回廊》を抜ける程度なら大丈夫だろう、中のマップはあたしが既に持っているから迷う事も無いので最悪最短を突っ切るだけで良いのだ。

 

「なるほど、マップがあるなら楽そうですね」

 

 そんな裏事情を知る筈も無いナツの楽観的な呟きを聞いて、あたしはちょっと顔を背けて含み笑いを漏らす。あの中に入ってどうなるかは分からないが、少なくとも彼が経験したダンジョンよりはちょっと難易度が高いだろうと予想し、そこで彼がどんな反応を見せるかを考えたからだ。

 とは言え、考え無しに突っ込まれて敵を呼ばれてはこちらまで巻き添えを喰らうので、そこは注意しておくべきだろう。

 

「あのねぇ、あの洞窟はそこまで楽じゃないわよ。あの《ルグルー回廊》と呼ばれる洞窟を抜けるなら、本当ならキャラバンみたいに十人以上の複数パーティーで万全の準備をして行くべきなんだからね?」

「……え」

「それに戦闘音がよく響く上に耳の良いモンスターがうじゃうじゃ犇めいてるから、下手に交戦すると数十回は連戦しないといけなくなるの。だからALOでは最難関ダンジョンの一つに数えられてるわ。マップがあるとは言え、それでも死ぬプレイヤーは後を絶たないから、下手に剣を抜いたり大声を上げたりしちゃダメよ」

「……マジですか? 他のルートは……」

「生憎と、他のルートは他種族の領地に入らないといけなくて、そうなると七面倒な事になる可能性が高くなる。それに……」

 

 そこで言葉を区切り、あたしはメニューウィンドウを出して、そこに記載されているALO標準時のその下、現実標準時の時刻を確認する。現在時刻は午後五時三十分だった。

 

「この《ルグルー回廊》は地下都市が中継地点として設けられてるんだけど、途中で休めるのはこのルートだけなのよ。他だとかなりの長時間ダイブしなくちゃいけないし、ここから別ルートへ移動するにしても中立域の町や村は遠いわ。そもそも敵どうこうだって、遭遇してもあたしとナツが全力で走れば問題無いでしょう」

 

 遭遇した敵全てを斬らなければならない原則など無いし、後を追ってくるモンスター達は次々と増えるので他のプレイヤーに当たったら《トレイン》というマナーレス行為になってしまうが、そもそもこんなルートを通るプレイヤーなんて殆ど居ないのだから気にしない。地下にある鉱山都市《ルグルー》にはそこそこのプレイヤーが存在するが、彼らは《アルン高原》から入って滞在しているプレイヤー達、こちら側に来る事は殆ど無いのである。

 なので、少なくともシルフ領側から《ルグルー》までの道は全力疾走したとしても、誰に迷惑を掛ける必要も無いのだ。

 それを説明してやると、何だか微妙な目で見られてしまった。

 

「何よ、その眼は」

「いや……リーファさんって、リアルとこっちじゃ性格違うなと思って……」

「……気のせいよ」

 

 実の所、昔レコンからも同じ事を言われていたりするのだが。曰く、リーファちゃんの時は直葉ちゃんの時の五割増しに気が強い、と。

 あたしはそれを、傭兵として気弱だと足元見られるからと返しておいたのだが、ナツにまで言われるという事は気が強いだけでなく性格も違ってきたのかも知れない。

 あるいは、現実でもこの性格だったがナツは見た事無かっただけか……

 この世界でのロールプレイは何がしか形で現実に跳ね返ると考えているので、もしかするとこちらで気を強く持って振る舞っている内にそれが素になってしまったのかも知れない。まぁ、別に無理して取り繕っていた訳では無いし、豹変とまではいかない程度の変化だから構わないのだけど。

 そんな事を話しながら数分の休憩を取った後、あたしとナツは洞窟の入り口までやって来た。中は真っ暗で見えないのだが、《幻影魔法》スキルの中にある暗視魔法を使い、ゆっくりと暗い所が何かに照らされているかの如く全体的に明るくなっていく恩恵を得てから、かつて己が記録したマップデータを頼りにあたし達は内部に足を踏み入れた。

 

「……分岐、多いですね」

「最難関ダンジョンの一種って言ったでしょ?」

 

 次はこっち、と内部に入ってから早十分経過した現在、十回目以上の分岐を見て辟易したように呟きを漏らすナツに言葉を返しながら、あたしはマップを頼りに洞窟を進む。あたし自身、昔の自分はこんなダンジョンをソロでマッピングしていたのかと思うと、よくやったなと呆れ半分感心半分の心境だ。

 

「よくこんな所のマッピングしましたね……あの世界の迷宮区より入り組んでますよ、ここ」

「昔はこういう未知の場所の探検を好んでやってたからね、苦とも思ってなかったんでしょ」

「なるほど。で、そのマップデータで商売を?」

 

 嫌味や皮肉では無く、純粋な興味で聞いて来ていると分かるナツに、あたしは苦笑を浮かべて首を横に振った。

 

「してないわよ、そんな商売。マップデータは情報屋に無償で委託して、無償で拡散してもらってた。それで多くのプレイヤーがそこに向かって、その結果得られた情報をあたしは代価として貰ってたのよ、傭兵にとって情報は本当に生命線だからね」

「……やっぱり、兄妹ですね」

 

 あたしの言葉を聞いたナツが、ぽつりとそんな事を呟いた。どういう事かと目線で彼に問えば、彼は同じだったから、と言った。

 

「アイツはあの世界で《キリト》っていう名前のプレイヤーだったんですけど、リーファさんと同じ事を言ってマッピングデータは情報屋に委託して広めてもらって、その代わりに入った情報を貰ってたんです。だから兄妹で同じ事を言うんだなと思って……」

「……そっかぁ……一緒、だったんだ……」

 

 《キリト》というプレイヤーとしてあの世界を戦っていた事は眼鏡のお役人から、全プレイヤーの中でもぶっちぎりのトップレベルを誇っていると聞かされた事から知っていたが、その具体的な話はまだ特に聞けていない。数少ない弟の情報の中から、自分と知らない間に一致した行動があった事に、あたしは少し嬉しくなった。

 あたしと違って色々と才能に溢れていて、正に神童とまで言われた天才の弟。あたしよりもよっぽど女の子っぽい容姿で、一つ年上のあたし以上の剣腕を持ってて、料理も上手くて、留学する程に頭も良い。あたしなんて全く勝てない、非の打ち所が無いと思えてしまう凄い家族。デスゲームに囚われたかと思えば命懸けで一部を除いた殆どの人を救ってしまうし、かと思えば今も囚われてしまっている。

 あたしにとってはまるで雲の上の存在で、けれど同じところがあると知れて身近な存在にも思えて。

 本当……不思議な男の子なのだ。

 

「……リーファさん」

「……どうしたの」

 

 嬉しくて、けれど和人の現状を思い出すと悲しくて、よく分からない涙を浮かべそうになるのを黙って堪えていると、少し真剣な気配を帯びた声音で名前を呼ばれた。

 それに気づいて、あたしも感傷を振り払って真剣に聞き返せば、後ろを指差される。

 振り返れば、歩いて来た洞窟の闇が広がるだけ……

 いや。何かいる、何かが暗闇の中で光を発していた。

 それは二個一対の赤い光は不規則に揺れていて、目を凝らせば、薄ら暗から分かり辛いが赤色の被膜を持つ蝙蝠である事が分かった。

 

「ッ!!!」

 

 それが何なのか理解した瞬間、あたしは後ろ腰に何時も忍ばせている手の平サイズの小型ナイフを手に取り、抜き様に一本投げつけた。高速で飛翔するナイフは的確に赤い蝙蝠の胴体を貫き、一撃でその体を青白い結晶辺へと散らすが、元々アレは攻撃の類を一発でも受ければ死ぬ設定だから感慨も何も無い。

 

「ナツ、急いで走るよ!」

「え? え?」

「いいから今は走れッ!!!」

「は、はいぃッ!!!」

 

 事情を説明している暇も無いので現実の道場に居る時のように怒鳴れば、彼はびくぅっ! と肩を震わせてから慌てたようにあたしの後を追い始めた。慌てたように追い掛けて来る彼を横目に、マップで道は合っているかを頻りに確認しながら、あたしは今出せる全力で駆け続けた。SAOで高ステータスのアカウントを育てているナツより若干速いのは、恐らく装備のお蔭だろう、まるでジェットコースターのように周囲の壁が流れていくのはそれだけ速度が出ている事の証左だ。

 さっきあたしがナイフで墜としたのは《トレーサー》と呼ばれ、《追跡》スキルで習得する追跡魔法によって生み出される魔法生物。使い魔と異なり戦闘能力は一切無いが、術者と視覚の共有をする効果を持っており、アレで対象の追跡をしたり、偵察をしたり出来る。

 今急いで逃げているのは、あの《トレーサー》が赤色の蝙蝠だったからである。

 魔法の種類によって魔法生物の姿が、種族によって色は異なっており、ウンディーネの《トレーサー》なら水色の蝙蝠となる。

 別種で《サーチャー》と呼ばれる《隠蔽》スキルを使って隠れているプレイヤーを見つける魔法生物もおり、それはウンディーネだと魚、シルフだと小鳥、ケットシーは子猫、ノームは土竜になるという。ちなみに《サーチャー》でもインプは蝙蝠型だ。

 ただでさえ人が来ないこの高難度ダンジョンの中に、他プレイヤーに《トレーサー》まで付けるという事はあまり良くない思惑で接触を図ろうとしている相手と考えるのが普通。更に言えばさっきの蝙蝠は赤色、つまりはサラマンダーである。

 サラマンダーは近接戦に強いという単純明快な特徴を持つのでプレイヤー数が最多で、加えて言えば気性の荒い者が多い。領土が隣接しているシルフはよくPK対象として付け狙われたものである。だから自然と警戒心が湧き立つのだ。

 更に言えば、交易商や情報屋から聞いていた、ここ最近頻発しているという忽然と姿を消し、また忽然と姿を現す先ほど思い浮かべていた噂。それが妙に気になって警戒心が湧き立っていて、逃げなければと直感が激しく警鐘を鳴らしたのだ。

 何かヤバいというこの直感は、今まで傭兵稼業を支えて来たものであるため、あたしはかなり信頼している。それが奇妙な情報を得ている今となっては尚更だ。

 

「リーファさん、街です!」

「あそこまで突っ切るよッ!!!」

「了解!」

 

 走り始めることおよそ一分、それなりに進んでいたからかすぐに街が見えて来た。地底湖に周囲を囲まれ、《アルン高原》とシルフ両側に続く方にそれぞれ横に広い石橋が架かっている地下の鉱山都市《ルグルー》だ、あそこまで入れば、少なくとも後ろから追ってきているPKを撒く事が出来る。

 まぁ、そこの街で休んでいる間に《アルン高原》側に続く橋を封鎖されてしまったら、どちらにせよ戦う必要性が出て来るのだが。

 

「って、なんか来てる?!」

「アレは……地属性魔法か!」

 

 あたしとナツの後ろから追い掛けてきて、頭上を通り過ぎた茶色の光は、《ルグルー》へ続く橋の途中で着弾した。

 その瞬間、粉塵が巻き起こると共に高さ五メートルに達する石壁が出現し、あたし達の進路にして退路を塞いだのだ。

 あたしは内心で激しく舌打ちした。

 

「くっそ……戦わないといけないみたいね」

「あの、湖を泳ぐのは……」

「無し。見たら分かるけど、水棲型の水龍が棲んでるから。ウンディーネの支援があってもほぼ倒すのは不可能なレベルの強さがあるから、あたし達じゃ入った瞬間に即死よ」

 

 そもそも、あたしはあまり人に知られていないがカナヅチなのだ、それなのに水中戦闘とか絶対にゴメンである。

 あたしの言葉を受けて、ナツは次に目の前に立ちはだかった石壁に視線を移した。それで何をしようと考えているか読めたので先んじて注意を促しておく。

 

「生憎だけど、この石壁は地属性の上位魔法で構成されてるから物理攻撃じゃ壊せないわよ。強烈な魔法攻撃を使えば別だけど」

「ならリーファさんの魔法ですれば良いんじゃ?」

「生憎と、これを破壊出来る程の威力の魔法もあるにはあるけど……そもそもこの地属性魔法、有効射程はそこまで無いのよ」

 

 有効射程がそこまで無い……という事は、逆に言えばこれを放って退路を断った連中は後ろまでもう迫っているという事になる。つまりこの石壁を破壊出来る魔法を唱える時間も無いという事だ。

 それを何となく察したらしいナツが漸く来た道へ向き直れば、丁度追い掛けてきていたらしいプレイヤー達が姿を見せた。

 しかし、それを見てあたしは眉根を寄せる。赤色の蝙蝠だったからてっきりサラマンダーで統一されているかと思えば、何と色取り取りの髪色をしたプレイヤー達で構成されていたのである。つまりはサラマンダーという単一種族に帰依しているのでは無く、領を抜け出した中立域のメンバーという事だ。

 まぁ、傭兵稼業をしているプレイヤーは少ないながらも他に居るし、あたしのように自分の種族の領地に滞在し続けている方が珍しい、それがソロなら輪を掛けて珍しいとされる。他の傭兵は大体複数人のチームを組んでおり、回復の得意なウンディーネ、偵察が得意なスプリガン、タンクに向いているノームや接近戦向きのサラマンダーといった混合パーティーも普通にある。

 だが、傭兵というにはその数がおかしかった。ざっと見ても四十人近い、傭兵でも流石にここまで大人数になるのはおかしい。

 となると、複数の傭兵の利害の一致か、あるいは……

 

「……PK集団、か……」

「……嫌な集団ですね、それ」

「PK推奨だから居てもおかしくは無いんだけどね」

 

 それにPKを好む者達が徒党を組むというのも珍しくは無い。領地に居るプレイヤーはアルフへの転生を求めて活動しているプレイヤーが多く、PKそのものに意義を見出すとすれば、それは他プレイヤーをキルした時に得られるコルや装備、アイテム類だ。狙ったプレイヤーによってはレアアイテムを奪う事だって可能なのである。

 だがシルフやケットシーを初め、大抵の領主は積極的なPKをあまり推奨はしておらず、むしろ無差別なPKをするプレイヤーは領地から追い出される対象となり得る。それを厭った者達は、自ら領地を捨てて中立域プレイヤーとなり、自然とPKを好む者同士で集まって集団を作るのだ。

 とは言え、自分達が死ぬかも知れないこの最難関ダンジョンの内部まで追って来るとなると、少々妙だとは思う。自分達が死んでしまえばデスペナルティとして、スキル値やステータス値の高さに応じて幾らかの減少が起こるので、PKプレイヤーはそれを厭ってここまで普通は来ない。

 そこまで考えて、そういえば、とあたしはある事に気付いた。あたしとナツは、何故か入り口からこの《ルグルー》まで来る道なりを進む間、一度たりともモンスターに遭遇していないのだ。過去に潜った経験上、少し歩けば必ず遭遇する程に犇めいている筈なのに一体も遭わないというのは、それは異常である。システムが規定してリポップを設定しているのに居ないとなれば、それはつまり、何者かが先に倒していたという事になる。

 

「……なるほど、嵌められたわ」

「え?」

「この人達、多分あたし達がここを通る事を予測してたのよ、先回りされたんだわ」

「ええ?! でも、一体どうやって予測を……」

 

 そう、そこが気になる所だ。あたし達が領都を出てここに来る事を予測出来る者なんて殆ど居ない。

 まぁ、逆に言えば犯人を絞り込めるという事でもある。あたしの予想では、自分の下を離れると後悔するとか言っていたシグルドが怪しいと疑っているが、たったそれだけでここまでの事をするかと思いもする。

 確かに腹立たしい気分は解消されるかも知れないし、ここで負ければあたしはシグルドの下に付く流れになりそうだが、傭兵は基本的に高い報酬を要求するのが常なのでリスクとリターンが釣り合ってない気がする。

 

 

 

 ――――というか、確かに四十人というのは多い人数だが、これだけであたしを止められると思っているのだろうか?

 

 

 

「ナツ、回復魔法は使える?」

「え、まぁ、低位魔法のヒールくらいなら……」

「ならそれを、あたしに掛けてね。アレの相手はあたし一人でするわ」

「は……はぁ?!」

 

 信じられないとばかりに目を剥いてあたしを見てきて、すぐに反論しようと口を開きかけたナツ。あたしはその先を予想出来たので先んじて唇に右手の指を当て、言葉を発そうとしたナツを留めた。

 

「シルフ最強のあたしを、あんまり舐めない方が良いわよ? 言ったでしょ? 前に喧嘩を吹っ掛けられたって……その数、一体どれくらいだったか分かる?」

「……じ、十人……くらい……?」

 

 しどろもどろなナツの答えに、あたしはふっと微笑みを浮かべた。指を除けた後、右手を左腰から剣帯で吊るす片刃の長刀の柄に掛け、一気に抜き払う。しゅらぁ……んと鈴を思わせる音を響かせながら、掛けて来る集団へと一歩踏み出す。そして長刀を青眼に構えた。

 構えながら、あたしは口元に笑みを浮かべる。ナツの答えが、あまりにも甘かったから。

 

「五人? そんな数じゃないわよ……あたしがかつて相手した人数はね……八十人よ」

 

 きっぱりと言い切り、背後で凄まじく動揺した気配を発したナツへ左肩越しに振り返り、笑みを向けてから前へ向き直る。

 

「シルフ一族が魔法剣士、シルフ軍教導官リーファが相手になるッ!!!」

 

 現実で道場の師範代をしているとレコンから知られてから、多少の間は空くが定期的にシルフ軍の近接戦闘訓練を見て来た経験があるあたしは、それなりに教導官としても他種族に名を知られている。

 シルフがサラマンダーには劣ると言えど、使い魔の力を以て勢力を伸ばしていたケットシーに匹敵する勢力をサラマンダー領に隣接してよくPKを狙われながら保っていたのは、こういう訳があったからだ。現実でも門下生二十余名を相手に教えて来たのだ、多少心得を教えれば元々プレイングスキルがあった戦士達の腕前はぐんと上がった。

 それを多少知っているのだろう、橋を渡って来ていた集団も少しばかりその速度を緩め、警戒したように構え始めた。

 

「ッ……!」

 

 その瞬間を狙って、あたしはシルフの特徴の一つである速さを以て、全力で距離を詰めていった。およそ十メートルまで狭まっていた距離は、その一瞬ですぐに先頭との距離がゼロへと変わる。

 先頭を走っていたのはセオリー通り、タワーシールドと片手棍を装備した重戦士タンクのノームだった。その左右にサラマンダーやオールラウンダーのインプ、スプリガン、シルフなどが並んでおり、彼らの後ろには術で支援するのかウンディーネとプーカを中心とした様々な種族のメイジローブを纏ったプレイヤーが居た。

 その速さに瞠目しているノームを一瞥した後、あたしは軽く飛び上がり、タワーシールドの表面を蹴り、次に角に足を掛けた。駆けた速度はそのままなので、角を思い切り蹴って後衛部隊へと上から突撃する。

 

「「「「「な……ッ?!」」」」」

 

 戦いは補給が出来るか否かで左右されるため、PK集団を相手した時には必ず回復役から潰すべきだ。それにALOの魔法は単追跡か多追跡かはともかく、放たれれば基本的に必中。距離を取られて詠唱され続けているとジリ貧なのは分かり切った事なので、回復されるのを止めるのと遠距離から魔法を浴びせられるリスクを排除してメイジ部隊を潰しに掛かったのである。

 それに、相手も自分達が回復出来ないと分かれば、離れた所で支援してくれるだろうナツにまで気を配る余裕も無くなる。その間にあたしは回復してもらい、戦い続けるという寸法だ。

 まぁ、あたし一人の方が戦いやすいというのもあるのだが。

 

「う、うわわッ?!」

「ちょ、嘘だろ?! こっち来たぞ!」

「前衛は何をやってんだよクソッ!」

 

 あたしが降り立ったのは丁度メイジ部隊の前で、戦闘の三人が狼狽えながら悪態を吐く。

 それに呆れながら、あたしは一瞬で長刀を袈裟掛けに振るい、メイジ部隊のリーダーらしいサラマンダーの左肩から右腰に掛けて、紅い斬閃を刻んだ。その一撃でサラマンダーの男のHPがぐぐっと削られ、残り三割となる。その残りも、返す刃で右薙ぎを放って消し飛ばし、男は赤いエンドフレイムを上げ、すぐにリメインライトへと姿を変える。

 メイジとして、魔法攻撃力やMP自然回復力を上げるのは確かにセオリーだが、もう少し物理防御力のVITを上げるべきだろうと内心で相手の初歩的な欠点に嘆息しつつ、余りの事に半ば放心状態にあるメイジ部隊の顔を見る。分かりやすくローブを纏って杖を手にしてくれているから、ALOで驚異的なメイジを取り逃がすという事は無さそうだ。

 

「さぁ……あたしに喧嘩売った事を後悔するのね。シルフ最強の異名は、伊達じゃないのよ……そこのシルフのメイジさんは、知ってるでしょう? ねぇ?」

「ひっ……!」

 

 にっこりと、微笑みを浮かべてメイジ部隊の中に居るシルフの女性へと顔を向ければ、怯えたように一歩下がられた。

 

「お、おい、何でそんな怯えてんだよ……たかが一人の女だぞ?」

「莫迦ッ、知らないから言えるんだよ……! この魔法剣士の教導は、確かに基礎的だったけど……基礎だからこそ、恐ろしく強いのよ……!」

「あら? あたしの教導について知ってるって事はあなた、元シルフ軍だったのね」

 

 道理で顔に見覚えがある訳だと胸中で納得の声を呟く。別に鬼教官という訳では無く、本当に剣の振りやスキルの反復練習を繰り返しさせただけでシルフ軍は強くなった。酷い教導の仕方はしたつもりは無いからその辺で恨まれている筈は無いのだが……

 まぁ、今は別に良い。

 

「取り敢えず、あたし達の邪魔したんだし、武器を構えているという事は相応の覚悟はあるんでしょ?」

 

 長刀を青眼に構えながら言う。長刀からちゃきっ、と鍔鳴りがすると同時、相手の警戒心が更に強く巻き起こった。あたしを取り囲むように前衛組が動こうとしているが、あたしの目の前には自分達の生命線であるメイジ達がいるので、動こうにも動けないでいる。

 かつて八十人の男性シルフを相手した時よりも明確にビルドが別れているからこその弱点、その前にあたしは居る。

 

「……行くわよ?」

 

 ただ冷静に、冷徹に、そして冷酷に笑むと共に言い放ち、あたしは目の前の弱点達へと斬り掛かった。

 

 *

 

 時間にして三分と十五秒。

 それがおよそ四十人を超えるレイド級の襲撃者達を殲滅するのに要した時間だ。最後の最後まで足掻き抜いたサラマンダーの片手剣と盾装備の男がよく粘り、あたしの剣劇の殆どを盾で防いで仲間を護っていたので、少しばかり時間が掛かった。

 メイジ部隊そのものはおよそ三十秒ほどで全滅させたのだが、残る前衛組はやはりHP量と防御力が高く、技量も中々に高かった。魔法を使ってこなかったのは幸いだったが、恐らくフレンドリィ・ファイアを危惧して使わなかったのだろう。

 回復魔法を使おうとシルフやウンディーネ、スプリガンといった種族のプレイヤーは、詠唱の光が見えると同時に攻撃を仕掛け、詠唱をファンブルさせ続けたので、結局回復は一切させずに終わらせる事が出来た。

 相手の重厚な鎧や盾を足場に縦横無尽に飛び回り、神速で駆け回り、相手を翻弄し続けたあたしは、最後のサラマンダーで幾らか苦戦はしたものの結局ノーダメージだ。ナツの出番は一切無しである。

 

「ふぅ……んー! 久し振りに疲れる対人戦だったわね」

 

 左腰の鞘に長刀を収めた後、茫然としているナツの方に戻りながらあたしは伸びをした。あたし達の進路を塞いでいた石壁は、恐らくアレを作ったメイジが倒れたと同時に消失したのか、既に存在していない。

 

「……リーファさん、出鱈目です」

「え? そう? SAOで最強ギルドの一員だったナツやイチゴだったら出来るんじゃない?」

「いや無理ですよあんなの?! 幾らこの世界がリアルの運動神経の影響を強く受けるからって、俺はあんな大勢を前にノーダメージで倒し切るなんて事は出来ませんって?! 多分イチゴでも無理ですよ!」

「そうかなぁ……?」

 

 慣れれば出来ると思うんだけど、と言うが、それは多分キリトとリーファさんとユウキさんくらいです、と呆れ顔で返された。

 逆にあの二人も出来るのかと思ったが、キリトに関しては実際あの世界で殺人快楽者の集まりであるレッドギルドを相手にした事があるらしい。危ない事をするものである。そう呟けば、あなたが言いますかと返された。解せぬ。

 

「ふぅ……ともかく、これで地下に存在する鉱山都市《ルグルー》に到着よ。もうちょっとで入れたのにとんだ事になったものだけど、よくよく考えれば《アルン高原》への道を封鎖されなかったんだから良かったかもね」

「……それは確かに。それにしてもリーファさん、シルフ軍教導官ってどういう事なんですか?」

「……まぁ、昔に色々とあったのよ。傭兵として領主から依頼されたり、シグルドやその前任の軍部を預かる人から教導を依頼されたりね。原因はレコンが、現実であたしが道場の師範代をしてるって漏らしちゃったからなんだけどね。シルフがサラマンダーの次くらいの勢力を持ってるのは、あたしがシルフ軍のプレイヤー達を鍛えたからなのよ。素振りで型を覚え込ませたり、実戦訓練で何度も繰り返したりと基礎的なものだったから、嫌がる人は多かったけどね」

 

 正確にはまだ原因はあるのだが、そこは別に話す必要性を感じられないのでスルーする事にした。

 ちなみに、かつてその訓練を受けた中にはレコンやサクヤも居たりする。レコンの場合は飛行をどうしても慣れさせられなかったが、その代わり魔法の使い方や短剣での戦い方に磨きが掛かったので、シグルドのパーティーで有用なメイジとして重宝されるようになったのだ。

 これを聞いたナツは、キリトもSAOで同じ事をしていたと口にした。詳しく聞けば殆ど似たような事を自分のギルドの団員達にしていたらしい。とことんまであたしと和人ってしている事が似ているなと思った。

 この後、一先ず夕食と入浴を済ませてから続きをする事になり、午後九時にダイブするよう話し合ってからログアウトした。ログアウト時刻は午後六時過ぎだった。

 

 




 はい、如何だったでしょうか?


 今回はどちらかと言えば説明会的な感じでしたね、ALO古参組のリーファが色々と解説してくれています。

 冒頭で出た《イビルグランサー》というモンスターが使った呪い魔法についてですが、これは具体的な効果が原作には無く、大幅なステータス低下を齎すとだけ書かれていたので、オリジナル解釈で書いています。結果的に大幅低下だから良いよねと。


 さて、今話でリーファが傭兵として動いていた過去が一部明かされました。シルフ軍教導官、ぶっちゃけIS原作の織斑千冬みたいな立場ですね。そしてシルフ領主や軍部の前任とも関係があったりと、中々凄まじい人間関係を構築しております。

 また、交易商だとか、シルフがサラマンダーの次に、使い魔があるケットシーと同等の勢力を保っていた理由として、リーファを使いました。

 実はこの辺、まだ色々と今話で明かされてない設定があるのですよ、すぐに分かるんですがね。


 過去に八十人の男性シルフを返り討ちにしているリーファなら、四十人くらいの混合パーティーはへっちゃらでしょう。リーファ本人が考えているように、回復要員という弱点が丸分かりですし。

 シルフは風魔法の他に、回復にも《ロスト・ソング》では長けている様でしたので、返り討ちにした八十人は全員が回復も担当出来る構想で書いています。倒せど倒せど復活する八十人を一人で相手ち続けて勝ったリーファ、凄いですな。

 実は戦闘でナツを加えるかどうか迷ったんですが、リーファの視点で色々と推測は立てていますが、台詞として、つまりナツには殆どリーファは語っていないので、魔法への対処が出来ないだろうと思いましたので、単独にしました。必中だとかは語ってませんしね。

 いちいち伝えている間に距離を詰められますし、原作キリトと違ってナツはスピード寄りなのでHP量は彼より少なめだろうと思いまして。切り札の幻影魔法も何か違うと思ったので、彼は見物人になってしまいました。

 街から山脈への移動中に話した事にすればいいかとも思ったんですが、リーファの見せ場が欲しくて、こうしました。


 いや、ここまでリーファが馬鹿強くなるとは思ってなかった。修正する前は原作同然だったのに、どうしてこうなった(笑) もうSAOに居ても良いんじゃないっていうくらい強い。

 皆さんも、リーファが嫌いという方は居ないと思うし、リアルで剣道してるんだからこれくらい強くても良いですよね?

 ぶっちゃけ原作でどうしてシグルドとほぼ互角という設定だったのか分からない。キリトとアスナ以外のキャラの強さが微妙に曖昧なので、色々と手を加えさせてもらいます。GGOでならハッキリ分かっているシノンも同様に手を加える気満々です。

 でも銃ゲーで強化って、難しいですね……

 よし、シノンも心情描写を駆使して精神的に成長させよう★(錯乱)


 ちなみに私の中での原作味方キャラの強さは以下の通り。

 二刀SAOキリト=ヒースクリフ>一刀SAOキリト≧二刀ALOキリト≧ユウキ≧一刀ALOキリト≧アスナ≧クライン≧リーファ=シノン=エギル>リズベット≧シリカ

 攻略組ではなかった原作リズ&シリカは、やはり一歩劣り、エギルは商人だったので純粋な攻略プレイヤーだったクライン達よりは下。

 リーファとシノンはそれぞれALOとGGOで古参のサバイバリティを加味。実際原作でもオールラウンダーですからね。

 アスナはほぼユウキや一刀ALOキリトと互角とは思いますが、あと一歩の所で越えられない感じ。

 キリトは時代と二刀かどうかによって強さが左右される、という印象です。多分SAO時代のキリトなら《ナーヴギア》と《メディキュボイド》の性能差を考えても、一刀だとしてもユウキに負けない気がする。

 原作キリトが反応速度で劣っていたのは《アミュスフィア》というハードで劣っていた事もあると思うんですよね。同ハードならキリトとユウキの実力はほぼ互角かユウキが微妙に劣り、対人戦の駆け引きの経験的に多分キリトがギリギリ上くらいかなと考察してます。

 《メディキュボイド》は《ナーヴギア》の数十倍のインパルスを発生させるらしいので、《アミュスフィア》ダイバーより速くて当然かなと思ってたり。

 ……ユウキファンにディスられるかな、これ。でも冷静に考察するとこうなると思うんです、SAOやALOキリトとどうなるかは意見が分かれるでしょうけど。


 ちなみに、本作のメインキャラの強さの目標は、原作SAO二刀キリトやヒースクリフを軽く完封してぶっ潰せる強さです(笑) 現状のリーファでもキリトはいける気がしていたり。


 ではそろそろ、次回予告です。


 四十もの襲撃者達を鎧袖一触した傭兵のリーファは、地価の鉱山都市《ルグルー》へと辿り着くと同時、ナツと一時別れを告げて夕食や入浴を済ませにログアウトする。

 現実へ戻り、シルフ最強のリーファから眠り続ける和人の姉として目覚めた直葉は、手際良く家事を済ませていく。

 そこで直葉に、ある人物から連絡が入った。


 次話。第十一章 ~反旗~



 第一次アンケート(第一&第二アンケート)についてご報告します。


 今話の投稿を持ちまして、“IS敵キャラ《織斑マドカ》について”のルートアンケートを締め切らせて頂きます。

 ご意見数は二つ。どちらも第一アンケート(1)、第二アンケート(2)ルートをご希望されていましたので、この二つの意見を反映させて頂こうと思います。

 コメントして頂いた白狐様、榛名黎様、ありがとうございます。

 どういうルートになるかは、いずれ上げようかなと思っている構想キャラ紹介の所で書こうと思っていますし、概要は活動報告を見て下されば分かると思います。

 ちなみにキャラ設定を上げるとすると、多分プロローグの話の前か後になると思います。また、随時追加していくと思いますので、定期的にご確認下さい。


 もう一つの“他作品クロス要素について”のアンケートは10月1日午前零時まで実施しております。実質九月末日までです。

 現在、意見は一つだけで、コメント欄の内容を確認した所、クロスしないで欲しいというものでは無かったので、現在活動報告に書いているクロス要素全てが関わる物語になる予定です。

 コメントが来る気配が無いので、全てクロスする前提で構想を立てて行っています。なので和人が将来的にチート化しますし、いきなり異世界要素が入ったりもするようになりますので、ご了承下さい。

 クロスが嫌だったり、SAO×IS要素のみの話を見たいという方は、その旨を活動報告のコメントとして送って下さい。別枠の物語として書く可能性があります。


 長々と失礼しました。残り一つのアンケート、奮ってご意見下さい!

 では!


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。