ソードアート・オンライン ~闇と光の交叉~   作:黒ヶ谷・ユーリ・メリディエス

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 どうも、おはこんばんにちは、黒ヶ谷・ユーリ・メリディエスです。

 前話の予告に書きました通り、この章ではとある騎士が登場します……が、本作では騎士というのは二人居ますよね、果たしてどちらでしょうか? にふにふ。

 とは言いつつも、実は最初は現実での道場風景、それを直葉視点でお送りいたします。しかも何気に仮想世界では無く現実での戦闘回です、割とガチって書いてます。

 何回か書いた覚えがありますが、桐ヶ谷道場は一応門戸を開いているので原作と違って和人と直葉だけで無く、中学生以下の門下生達が居ます、設定として二十人くらい。で、木綿季と直葉はそこの師範代、和人は師範、千冬と束は他門に通っている事もあって師範代などには就いていないです。

 何で木綿季と直葉が師範代なのか、そして和人が何時師範になったのかは文中にチラッと出ます。ま、重要とまではいかない設定ですが、一応。

 あと、割とサラッと木綿季がとんでもない事をしでかしてますが、まだまだ序の口なので苦笑で流しましょう☆(笑)


 ではどうぞ、割と最初から戦闘回、その後は黒くない陰謀回です。



第五章 ~遭遇~

第五章 ~遭遇~

 

 一週間も瞬く間に過ぎ去り、今日は桐ヶ谷道場を開けて門下生達と剣道を嗜む土曜日。この日ばかりは何時も閑散としている桐ヶ谷家も、幼い子供達や中学生くらいの男の子達の歓声で賑わい、活気を得る数少ない日となる。

 

「すぐはせんせー、おはようございます!」

「「「「「おはようございます!!!」」」」」

「はい、おはよう! 皆元気が良いねぇ」

 

 小学生くらいでも剣道に興味を持って来てくれている子もおり、その子達からは師範代だからか名前で先生と呼ばれているあたしは、今年の全国中学剣道大会で一本も取られずに全制覇を果たした覇者として有名になっている。剣道に興味がある子なら必ず聞いた事はあるというくらいの知名度らしい。

 ちなみに、今は眠っている和人の事も知っている人間からは、武の姉、智の弟と揶揄されているとか何とか……当たらずとも遠からずなのだが、何気に武の方も弟が上なので何とも言えなかったりする。それ以前にあたしより上の人はまだ居るし。

 

「おはようございまーす」

 

 そんな事を考えながら門下生およそ二十人ほどと準備運動をしていると、少し遅れて既に袴姿の木綿季が、珍しく顔を出してきた。

 

「桐ヶ谷流師範代紺野木綿季、入りまー……」

 

 

 

「「「「「ゆうきせんせーだぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああッ!!!!!!」」」」」

 

 

 

「うぉわぁッ?!」

 

 彼女の姿を見ると同時、入念に体を屈伸させていた門下生全員が顔に笑みを浮かべながら大きな歓声を道場中に轟かせた。

 不意打ち気味にそれを喰らった木綿季はあまりの大きさに目を見開き、どたどたと駆け寄って来る少し背丈の低い男の子達相手にしどろもどろになっていた。

 

「ゆうきせんせー、すっごいひっさしぶり!」

「ホントホント、SAOから戻って来てかなり経つのにどうして来なかったの?!」

「俺達二年も待ってたんだぜ?! もっと早く来てくれたって良いだろ!」

「あ、えっと、ボクも色々と忙しくてね? ほら、師範はまだ目覚めてないから、その為に色々と動いてて……ボクも、ちょっと動ける状態じゃなくて……えと、ごめんね?」

「「「「「来てくれたから良い!」」」」」

「あ、そ、そう……?」

 

 物凄く元気な男の子達の勢いに完全に呑まれてしまっている木綿季は、何だか勉強を見ている時の様子と完全に違っていて、見ていて面白かった。

 ただ門下生全員にあたしよりも高い好感を向けられているのはちょっとだけ嫉妬するが。

 そりゃ帰って来てからも全然来ないからその分だけ嬉しいのは分かるけど……

 

「…………喜ぶのは分かったから、早く準備運動済まさないと最初の素振り百回上乗せするよー?」

「「「「「ごめんなさい直葉師範代!!!」」」」」

 

 《せんせー》呼びから唐突の師範代呼び、これぞ子供達の処世術かと何となく感慨深く思った。

 

「うわぁ……直葉はちょっと鬼指導になった?」

「まさか。百回なんて五分もあったら終わるでしょ」

「元の回数が二百回じゃなかったらねー」

 

 桐ヶ谷流道場の剣道では、まず素振りを二百回するようになっている。まぁ、その前に準備運動として腕立て伏せや反復横飛び、腹筋をそれぞれ三十回ずつやってもらい、よく柔軟と屈伸を繰り返してから素振りに入るのだが。いきなりやると腱が切れたり、筋肉を傷めたりするからだ。

 ちなみに雑巾掛けは全員でする事になっている。

 それを分かっている木綿季は口元に片手を当て、割と必死な形相で準備運動を済ませていく門下生達を見てクスクスと微笑んでいた。

 

「……何かさ、木綿季、吹っ切れた? 藍子さんからも言われてたけど、暗かったのに今はちょっと明るいね」

「ん……ちょっと、ね。色々あったんだよ、ここ数日で」

 

 数日前の見舞いの時は変わらず暗かったので、本当にこの数日で何か変化があったのだろう。少し前に藍子さんから物凄く暗かった話を学校で聞いたので心配していたのだが、まさか本当に一日で立ち直って、しかもここまで持ち直すとは……一体何を知ったのやら。

 ……そういえば、さっき和人を目覚めさせるために色々と動いているとか言っていたが……それの事だろうか……?

 

「それって、和人を目覚めさせる目途が立ったの? というか原因が分かったの?」

「一応は。でも正直、まだ目覚めさせられないよ……」

 

 そう言いながら彼女は壁に掛けている木刀へと向いたが、そちらへ向く瞬間の彼女の横顔は恐ろしかった。冷徹で冷酷で、まるで悔やみながら誰かを憎悪するかのような冷たい表情をしていたからだ。

 あんな表情をする木綿季、見た事が無い……

 

「……二年越しに、師範代同士で勝負してみる? 現実の剣士と仮想の剣士、どっちが強いか」

 

 そう思っていると、壁に掛けている木刀を掴み取った木綿季がそれを青眼に構え、片頬に笑みを浮かべながら言ってきた。

 僅かに肌が温まっている様子を見るにどうやら既に家の方で準備運動を済ませているようだったので、あたしはそれにごくりと唾を飲み下しながら頷く。

 

「分かった……門下生が全員準備運動を終えたら、一戦交えようか。言っておくけど、全国の中学最強のあたしを簡単に下せると思わないでよ」

「そっちこそ、数十のボスの屍を築いたデスゲーム最強ギルドの副団長を、簡単に下せると思わない事だね」

「言ってくれるね……」

 

 ゲームは所詮ゲーム、かつてならそう言えただろうが今はそんな事口に出来ない。

 《SAO》内部の出来事について公表こそされていないが、ネットの書き込みなどで嘘か真か幾らかの情報は拡散されているし、あたしの幼馴染達には《SAO事件》に巻き込まれ、そしてその最前線を生き抜いて生還した人達ばかりだから、真実を知る機会は多かった。皆も好き好んで話はしないが、どんな事が楽しかったとか、綺麗だったとか、《料理》が全体的に味気なかったとかは話してくれた。面白おかしかった。

 その中で、必ずと言って良いほどに出る話……それが団長と副団長、つまりは弟の和人と恋人の木綿季二人の強さだった。

 和人はあの世界でもやはり最前線に立ち、あらゆる艱難辛苦を左右に持つ剣で跳ね除け続けた最強の剣士だったらしい。何度も何度も死に目に遭いながら、その全てを実力と奇跡の連続で生き抜いた剣士だったと、そしてとんでもない大馬鹿者だったと言っていた。普段人を罵倒しない珪子ですら大馬鹿と言っていたのだからよっぽどだろうと思う。

 木綿季は、唯一彼の動きに合わせられる人物だったという。彼女と和人のタッグが居ればボス攻略なんて簡単に終わると思える程の息の合い様は凄まじいの一言だったらしい。

 これが昔のテレビゲームだったなら一蹴出来たのだが、木綿季はVRMMOという自らの感覚でアバターを動かして戦う異世界を生き抜いた剣士なのだ、しかも女性最強の剣士。更に言えば桐ヶ谷流道場の師範代で、あたしよりも先に師範代に抜擢されている。勿論選んだのは和人だが、コネでは無く実力からの判断だ。千冬さんよりも強いと決闘から示された為に師範代に抜擢されたのである。あたしがなったのも同じくだが、和人は当時居なかった。

 そして木綿季は、剣道だけでは無い、桐ヶ谷流の一刀流剣術も学んでいる生粋の剣士なのだ。あたしと千冬さんは剣道寄り、木綿季と束さんは剣術寄りの門下生なので、師範代は二人居るのである。それを纏めているのが師範の和人、彼はアメリカから帰国して十歳になる誕生日の日、祖父が亡くなった日に桐ヶ谷流の全てを会得して免許皆伝となっているため、師範にも相応しい実力者なのだ。

 和人の計らいにより、あたしも木綿季も桐ヶ谷流剣術を学んでこそ居るが、その進度は木綿季の方が圧倒的だ。随分と休んでいたので今は逆転しているがSAOで生き残った我流剣術は恐らくあたしが会得している桐ヶ谷流の上を行く、楽には勝てないだろう。

 

「それで、剣道と剣術どっち……かは、聞くまでも無いか」

 

 この質問は、木刀を向けられている時点で愚問だった。あたし、木綿季、千冬さん、束さん、和人の五人の間の取り決め。竹刀であれば剣道の、木刀であれば剣術のルールに従う事だ。

 剣術のルールは至って単純。木刀を弾かれる、もう戦えない状態で倒れ伏す、気絶する、これだけである。勿論降参も含むが、今まで一度も誰も降参した事は無い、したら負けだとどこかで思っているからだ。

 気付けば、全ての門下生が準備運動を終えて脇に寄っていた。誰が指示した訳でも無い、木綿季から発せられる凄まじい闘気が自ずとそうさせたのである。

 あたしたちはそれぞれ道場の中央へ移動し、互いに木刀を構えた……直後、試合の合図も無く、唐突に試合は始まった。

 

「参るッ!!!」

「くッ……!」

 

 一際強い大音声で畏まったような言葉と共に、一歩大きく木綿季が踏み込んできた。たった一歩、されどその一歩でおよそ四メートルはあった間合いを一瞬にして詰めて来た。大上段からの唐竹を、あたしは木刀を掲げ、左手を峰に添える事で防いだ。

 ガァンッ! と木刀同士が衝突した音と共に衝撃が腕に駆け抜け、双方が弾かれる。

その衝撃を利用して膝を軽く曲げ、勢いを付けて右回転の横薙ぎを放った。遠心力と捻転力を合わせたコレは和人が教えてくれた返し技の一つである。《絶剣技》三ノ型・影月燕舞と言うらしいこれは、相手の勢いを利用してこそ真価を発揮するという。剣道では背中を見せるのは良くないので剣術勝負でないとちょっと使えない技だ。

 その一撃は綺麗に木綿季の右脇へ入った……かのように思えたが、咄嗟に弾かれた木刀を右肩へ引き寄せ、峰に左手を添えてこちらの一撃を的確に防いでいた。

 

「よく、分かったね……!」

「そりゃあ、同じ技を習ったからね……!」

 

 同門にして同じ師を持つ剣士であるあたし達は、やる事も手札も分かっている状態だ。分からない事と言えば互いに生きる世界を違えていた間の成長だけである。

 ギリギリ……と板張りの道場に鍔迫り合いの音が響く。板張りの床はあたし達が踏ん張ろうとする力でみしみしと軋みを上げ、交えている木刀も悲鳴を上げるかのようにギシギシと唸りを上げていた。

 これでも何年も一日と欠かさず鍛錬を続けていたのだが、どうやら木綿季の執念は半端では無いらしく、およそ四ヵ月前まで寝たきりだった人間とは思えないくらいの力強さで対抗してきた。拮抗するとは多少予想していたが、物凄い剣圧に、木刀が弾かれそうになってしまう。

 

「負ける……かぁぁぁああああああああああああッ!!!」

「ぐ……ッ?!」

 

 気合一発とばかりに大音声を発しながら木刀を両手で握り、あらん限りの力を込めて横に振り抜こうと全体重を掛ける。いきなり圧力が増して木綿季も対応しきれなかったようで、ズリズリと裸足が木の板を擦る音を立てつつ少しずつ横に動き始めた。

 

「なん、のォッ!!!」

「く……?!」

 

 そこで、木綿季が木刀を握る右手首を返し、それによって鍔迫り合いをしていたこちらの木刀がギャリッと弾かれて大きく横に振り抜かれた。

 だが、これも想定の範囲内だ。

 そもそも木綿季を相手に、こんな力技で勝てると思っていない。

 大きく横へ振り抜かれた木刀は軌道を変え、両手持ちの大上段へと構えられる。これが一撃目を囮にした本命の第二撃を放つ技、本来なら桐ヶ谷流の技では無いこれは、門下生である篠ノ之束さんやその父親の篠ノ之龍韻さんより和人が伝授された篠ノ之流、その奥義の一つだ。

 その名も、《二閃一断》という。抜刀からの横薙ぎである一撃目を囮として、すぐさま大上段からの唐竹へと移して斬り落とす必殺の二撃目を放つ技である。この二撃目を如何に素早く繋げるかが肝であり、和人はコレを剣術の摸擬戦中に放たれてすぐさまものにしたため、伝授された。それをあたしが伝授されたので、使えているのである。

 当然ながら木綿季も伝授されているが、いきなりの対応は出来ないだろう。この一撃で昏倒、あるいは木刀を叩き落とせればあたしの勝ちだ……ッ!!!

 

「お……ぉぉぉああああああああああああああああああッ!!!」

 

 長年の剣道で鍛え上げた肺活量で、腹の底から大音声を上げた。道場の板張りや窓の桟が震え、喉やら肌やらがびりびりと震えるのを感じつつあたしは大上段から神速の打ち込みを放った。

 

「はッ!!!」

「な……に……?!」

 

 その全力の一撃を、木綿季は両手首で交差させた手の甲で綺麗に見事なタイミングで挟み込み、止めてしまった。手の平では無く手の甲による挟み込みのため、木刀は手放していない。

 

「ぜらああああああああああああああああああああああああッ!!!!!!」

「が……ッ!」

 

 あたしが余りにも予想外のタイミングでその技を使われたため、価値を確信していただけに思考が停止してしまい、大きな隙を晒してしまった。

 その隙を突いて、木綿季は挟み込んだ木刀の刃を手の甲で滑らせて懐に飛び込んできて、鍔元で真上に木刀を押し上げた直後、彼女が持つ木刀の柄を両手で持ち、その柄先を思い切り突き込んできた。ガンッと鈍い音と共に額に木刀の柄先が叩き込まれ、一瞬目の前が真っ白になる。

 今のは桐ヶ谷流剣術の奧伝、《守りの刃止め》、《攻めの刃渡り》という連続技である。技の内容はあたしが喰らった通り、武器を手放さずに交差させた手の甲で相手の一刀を挟み込んで止め、刃に手の甲を滑らせて相手の懐に入り、柄先で穿つという連続技だ。

 失敗すれば両手首を痛めるし、最悪剣を持てなくなるという正に肉を斬って骨を断つ大技だが、この土壇場で成功させるとは……!

 

「桐ヶ谷流体術、初伝……!」

「し、ま……?!」

 

 真っ白になった視界の中で聞こえて来た声と共に、木刀を持つ右手首を恐らく左手で掴まれ、軽く足を払われて体勢を崩されてしまった。

後ろへ押されながら、がくん、と足から力を喪って倒れ込むと同時、鳩尾辺りに何かが添えられ……

 

「《火車落とし》ッ!!!」

「か、は……ァッ!!!」

 

 背中が板張りの床に叩き付けられるのと全く同時に、鳩尾からも何か固い感触のものが突き込まれ、同時攻撃によって思い切り肺から息が吐き出されて眩暈を起こす。漸く視界が回復したかと思えば眩暈によって前後不覚気味になるし、鳩尾に強烈な一撃……見えた視界では右腕の肘鉄を全体重を掛けて叩き込まれたので、まともに手足も動かせなくなっている。

 そんなあたしの首筋に、全体重をあたしの体に乗せたまま、木綿季は木刀の刃を横にして迫って来た。

 

「はい、直葉の負け」

「けほっ……参り、まし……た……」

 

 手足も碌に動かせないし、木刀も手放してしまっているので負けは確定だ。手放していなくても木刀を突き付けられていてはどちらにせよ同じ事だったので、あたしは素直に負けを認める事にした。

 

「「「「「す……すっげぇぇぇぇぇえええええええええええええええええッ?!」」」」」

 

 その途端、息を潜めて観戦していた子供達が一気に歓声を上げた。今の一戦の感想を爆発したかのように口々に言い合って興奮している様は、見ていてとても微笑ましいものだった。

 ……でも……

 

「……物凄く、お腹、痛い……」

 

 これで初伝、つまるところ一番弱くて基礎的な技なんだから、桐ヶ谷流ってどんだけ危険な技があるのか凄く気になった。和人が意図して初伝までしか教えてくれてないけど、これはこれで良かったのかも知れない。下手したらこれは一撃で瀕死もあり得るし、武器や体重によっては即死もあり得る。

 

「あー……ははは…………ごめん。手、貸そうか?」

「……うん。隅の方まで連れてって……」

「ん、分かった」

 

 全然動けないのでそうお願いすると、木綿季は人一人の重さなんて何とも思っていないかのようにひょいと軽くあたしを背中に担ぎ上げ、おんぶしてしまった。全然重いと感じさせないその動きに、木綿季はどれだけ筋力があるのだろうとちょっと思ってしまった。

 あたしですら少し背の低い男の子でも担ぐのがキツイのに、二年近くも眠ったままだった木綿季が楽勝って……

 何となく……何となく、滅茶苦茶負けた気分だった。

 …………ぐすん……

 

 ***

 

 およそ二年ぶりの直葉との剣術試合を通して、やはり腕が鈍っている事を如実に感じ取った。あの死の世界からほぼ四ヵ月が経過している今まで対人戦を……いや、戦いそのものを抜いて過ごしていたのだから、幾ら日々の鍛錬だけはこなしていたとは言えど腕が鈍るのも当然だった。

 基本的に現実の命の取り合いに於いて、アニメなどのような必殺技の連発など愚の骨頂である。相手に自身の手札を見せる事もそうだが、相手を不意打ちで殺すために放つのならともかく、競い合いに技を見せるというのはそれだけ自身が弱い事を示すともボクは考えている。

 直葉との試合に於いて、彼女は技を一つ、ボクは初伝と奧伝を含めて三つ放った。これだけでもボクは弱い、技を、それも秘めたる奧伝を二つも――連続技なので実質一つだが――放ったのだ、つまりそれを使わせるだけ直葉の爆発力は途轍もなかった事になる。 どうにか和人さんにすら反則だと言わしめた自慢の反応速度で対応出来たが、奧伝を使ってしまうとは迂闊だったと猛省している所である。師範たる彼が居れば説教処では無い。

 直葉であれば、むしろ奧伝を使いこなせた事を褒めるだろう。

 だがボクは違う。ボクは桐ヶ谷流の一刀流剣術を正当に学んでいるだけで無く、彼が前世から受け継いできた秘奥の絶技をも継承するべく鍛えられているのだ。《絶剣技》と呼ばれるそれは、直葉が使ったあの技がその一つに当たる。彼女の場合は普通に剣術勝負で使えていた方が良いだろうという理由で教えられたのだが、自分の場合は和人さんの一番の愛弟子として鍛えられているためだ。

 第一層でユーリさんが使ったあの《裂華螺旋剣舞》は、上から数えて三番目の強さを持つ絶技。あの時の彼は三十八連撃を超神速で叩き込んでいたが、今のボクは仮想世界でも十六連撃までしか叩き込めない、そもそも《ジ・イクリプス》の動きすら再現出来ていないのだから当然なのだが。

 SAOに入る前も、入った後も学び続けたが終ぞ放てた事は無い破ノ型。更に二つも上の技があり、更に奧伝にあたる終ノ型は自分自身で形にしなければならない大技だという。《絶剣技》の終ノ型を除く全ての技を会得したその時、初めて終ノ型の輪郭を見る事が出来るのだとか……

 一応幾つか会得はしているものの、それは数字の通りでは無い。理屈から現実でしか出来ない技もあるので仮想世界で出来ないのは流石に仕方ないのだが……

 

 

 

 ――――まだまだ……か

 

 

 

 午後三時を過ぎ、門下生達と共に雑巾掛けをして来てから帰宅したボクは、袴姿のまま庭先でジッと木刀を青眼に構えていた。それをゆっくりと上段に持ち上げ、大上段に構えた直後に唐竹の一撃を神速を以て振るう。

 視線の先にあった木の枝が、ピシッと音を立てて落ちた。断面は綺麗……

 いや、端っこだけ一ヵ所ささくれていた。

 

「……やっぱり、まだまだか……」

 

 剣士たる者、心を乱してはならない。

 この戒律を出来るだけ乱さないよう努力してきたものの、やはり実力も相俟ってまだまだのようだ。若いからか経験不足からか、落ち着きを持つにはまだ足りないものがあるらしい。逆にこの衝動を解放した剣技を身に付ければ強くなるだろうかと考えるようになってきてもいる。

 …………和人さんにやんわりと叱られる未来しか見えない。まぁ、流派や剣技を興したり作ったりする程の剣腕は無いから、妙な癖が付くだろうし当然だろうけど。

 あまり根を詰めてもアレだし今日は良いかと自己鍛錬を切り上げ、シャワーをざっと浴びて汗を流して緩いシャツとズボン姿になってから自室に引き上げた。今日も今日とて姉は友達と遊びに外出、両親は仕事なので家に居ない。何気にうちって人が居ない事が多いなと思う今日この頃である。

 

「リンク・スタート」

 

 そんな事を考えつつ、《アミュスフィア》を被ってベッドに寝そべったボクは式句を唱え、妖精郷へと意識を浮上させたのだった。

 

 *

 

 光に包まれた視界が晴れた時、ボクは木造の一室のベッドで目を覚ました。言わずもながらALOの宿屋の一室である。

 ちなみに街の名前は《ルグルー》、シルフ領の古森を抜けた先にある《アルン高原》へと抜ける為の三つの道の一つ《ルグルー回廊》という洞窟の中にある、鉱山都市だ。レプラコーンやスプリガンが数多く居るここは、トレジャーは勿論、金属も豊富に取れるからプレイヤーの商人も数多い。当然ながら中立域である。

 昨夜、入浴後の午後八時から午後十一時までの強行突破でここまで来られたのは運が良いと言っても良い。まぁ、SAOステータスを引き継いだ超ステータスと高性能装備によるごり押しな部分もあるし、ユイちゃん達のナビゲートによって一切迷わずに進んだからでもあるのだが。かなりズルをしているが、気にしてはいけない。

 ちなみにユイちゃん達は《ナビゲーション・ピクシー》という扱いだが、本来ならベータ版からのプレイヤーのみが一体ずつ持つ特典らしいので、三体も持つ事になるボクは怪しまれる可能性大なので、彼女達には基本的に首の後ろからクロークの中、あるいは実体化そのものを控えてもらっている。目撃情報は少ない方が良いので、街中でもあまり喋らない方向だし、ダンジョン内でも首筋の後ろから囁き声でナビゲートを頼んでいるだけである。

 窮屈な思いをさせてしまっているのだが、これも仕方ないのだ。あまり目立つ行為を現段階でする訳にはいかないのだ。もっと後になってからなら良いのだが……

 ストレアもプレイヤーとして動けたら良いのだが、今のこの世界でプレイヤーアカウントを取るのはかなり拙い。彼女のリアル情報が無いからだし、SAOデータをコピーしている恐れから元MHCPという事を特定され、実験体にされる可能性があるからだ。純粋プログラムである彼女達の身の安全のためには暫く身を潜めてもらうしか無いのである。

 現在は午後三時半、何事も無く直行すれば余裕で《央都アルン》に到着出来る時間帯だ。

 

『こんにちは、ママ』

『こんにちは……』

『昨日ぶり、母さん』

「こんにちは、ユイちゃん、ルイちゃん、ストレア……窮屈で悪いけど、ごめんね…………今日もよろしくね……」

『『『任せて!』』』

 

 ボクは心の底から謝罪し、それを心優しく許してくれる愛娘達に感謝の念を抱いた。本当に、全ての事が片付いたら何かお礼をしなければならない……現実での彼女達の顕現を手伝って、少しでも早く実現させるというのもあるし、ALOで伸び伸びと活動出来るように根回しするというのもありだろう。

 首筋の後ろに隠れている三人の愛娘達に微笑みを浮かべながら、ボクは部屋を出て一回の帳場にいるNPCに鍵を返し、チェックアウトを済ませてから宿を出た。

 やはり土曜の昼だからか、プレイヤーの数がNPCよりも遥かに多い。それに圏内では無い中立域なためか争い事にならないよう配慮をしながら歩いている人ばかりで、これなら普通に歩いても大丈夫だろうと判断してから道を歩き出した。

 道中にあるNPC、プレイヤーを問わず武器屋や防具屋をウィンドウショッピング程度に見ては冷やかしを繰り返し、雑貨屋で幾らかの回復アイテムと状態異常系の回復アイテムを購入し、食べ物アイテムであるお菓子を幾らか購入した。それをこっそり三人に分け与え、完食した後、《ルグルー》を《央都アルン》方面に抜ける。

 《ルグルー》という鉱山都市は、洞窟の中にあるが実際は地下と言う方が正しい。それは地底湖の中心に存在し、《央都アルン》方面とシルフ・インプ領方面へと続く二つの大橋で中継されているからだ。故に街を抜けた後は長い長い石造りの大橋を抜ける必要がある。

 

『……お母さん……』

「……うん、分かってる……」

 

 そして、長く続く一本道というのは常にPK達の狩場となりやすい。特にそれが一人というのなら尚更に。

 ちなみにここの地底湖、ウンディーネによる水中戦闘の支援があっても倒すのはほぼ不可能とさえ言われる強さの水棲型ボスモンスターの水龍が生息しているので、泳いで逃げようとしても無駄である。それを事前に知っているボクはともかく、知らなければ襲われたら即座に湖に落ちて逃げようとし……即座にガブリ、直後にはリメインライト化しているだろう。

 つまりはと言うと……ボクは街に居る時から、ずっと狙われていた。

 最初は気のせいかと思っていたし、すぐにそういった視線は消えるだろうと思って意味も無くウィンドウショッピングをし、わざと菓子を買って時間を潰していたのだが……どうやら相当しつこい事から見るにこちらの所持金やアイテムを狙ったPKらしいと推測した。

 感じる視線は、一つ。第六感とも言えるこの感覚は長い長いデスゲーム生活で身に着けたものだから、この数に間違いは無い、カンストの《索敵》スキルにも反応は一つだけだ。こんな大橋まで追いかけて来る反応が一つというのもおかしな話だが……

 

「……最初から、尾行している事には気付いている。姿を見せたらどうだ?」

 

 少し威圧的に、黒剣ルナティークを抜きながら振り返って言えば、うっすらと違和感を覚える橋のとある空間から一人のプレイヤーが姿を現した。

 そのプレイヤーは肩口ほどまでの緩いウェーブが掛った蒼い髪色で、柔和な瞳も蒼色をしていた、色からして明らかにウンディーネのプレイヤーが前衛向きの《隠蔽》スキルを鍛えている事に内心だけで眉根を寄せる。ちなみに表情には一切表してはいない。

 装備は、白銀の軽鎧に脛当てや籠手、左腰に瀟洒な白銀の片手用のブロードソード、左腕にはお伽噺に出て来るような標準的な大型のカイトシールド……一言で言えば、騎士が似合うだろう装いのプレイヤーだった。見た目からして青年、身長は一七〇センチほどで運動神経は良さそうだ。敵となったら負けはしないが、苦戦は強いられるだろうくらいの戦闘経験を積んでいると思われる。

 そう……敵となれば、だ。

 妙な事に《隠蔽》していたこの青年、全く敵意が無く、むしろこちらを称賛する程の友好的な気配を感じる。

 何だ、このプレイヤーは……?

 

「流石は【絶剣】ユウキだな。俺程度の《隠蔽》じゃやっぱり見抜かれるか」

「……二つ名を…………まさか、その装い……ディアベル……?」

 

 【絶剣】というのはSAOプレイヤーか、彼らのリハビリを担当した者、そしてその家族の三パターンしか知られていないが、その実態を知る者はやはりSAOプレイヤーに限られる。更にその蒼と白銀の騎士装は正に記憶にある《アインクラッド解放軍》のリーダーであるディアベルそのものだった。

 というか、容姿まで全く同じとは、一体……

 こちらの疑念をよそに、青年は自身がディアベルである事を首肯で認めた。浮かべられる笑みは、正に何度も見て来た彼の柔和なそれだった。

 

「ああ、そうだ。《隠蔽》なんて疚しい事をしてしまった事は申し開きも無いが、俺に敵意が無い事は分かって欲しい」

「…………元々、敵意が無い事は分かってた……だからこそこちらも威嚇程度で収めた……けれど、何故《隠蔽》なんて真似で接触を図ったの?」

「君の容姿がまるっきりSAOと同じだったから、本人かどうか調べる為さ……ちなみに聞くけど、君も《央都アルン》へ行くつもりだったりするかい?」

「……まぁ、こっちにはそこしか無いしね」

 

 残念ながら《アルン高原》には《央都アルン》か世界樹くらいしか存在しないので、こちら方面に行くプレイヤーはそこしか行くところが無かったりする。なのでディアベルの問いに素直に頷くと、なら歩きながら話そうと言われ、仕方なしに道中を共にする事になった。

 

「……で、本人と調べるのが必要だったのはどうして」

「単刀直入に言えば……ユウキ、君の力を借りたいからだ。SAOプレイヤーが未だに目覚めていない事は既にSAOプレイヤー達にとって周知の事実……勿論、キリト君の事も、そしてこの世界に彼らが居るであろう事も」

「……」

 

 それが分かっているからここに居るのだろう、と目で問われ、頷きも応答もしなかったが、雰囲気だけで分かったようでディアベルは一人納得した風に頷いた。

 

「何故この世界に彼らが居る事が分かったか……そこは恐らく、ユウキも同じ過程を踏んだのだと思う。とは言え、俺達は偶然この世界にSAOデータが流用されている事から推測したに過ぎないんだけどね。とある物好きなプレイヤーが我先にとこの世界に来てから妙に思って、リアルのお店の広告をしていたらしいエギルさんに伝わって、そこから更に拡散していったんだ」

 

 確かにエギルはリアルでお店を経営していたのは知っていた、だがよもや広告ついでにリアル情報をばらす真似までしていたとは……いや、エギルの決断でした事だ、その自由まで束縛する権利など無い。彼が決めた事なのだから何も言わないのが筋だ。

 しかしそこから広がったのか……しかも理由が偶然という奇跡、これは中々凄い事だ。

 もしかすると前世のSAOに比べ、キリトさんが大幅に人の希望となって支えていたからこそトラウマになっている人が大幅に減っているのかも知れない。だから気付いた人が居たのだ。

 

「……それで、何故ボクの力が必要だと?」

「勿論彼らを助ける為だ……俺達のリーダーは三人だけだった。茅場晶彦だったヒースクリフを除けば、君かキリト君くらい……だが彼が目覚めていない以上、君に頼るしか無い。俺達SAOプレイヤーのリーダーとなれるのは、もう君だけなんだ。俺では参謀程度が精々でね……あれだけの規模の軍を率いていながら攻略組のリーダーになれなかったのはそれが原因さ、第一層の時のようにね」

「……」

 

 確かに、ディアベルは人を惹き付けて率いる能力に長けている、だがずっと率いる事には向いていない。一時的、且つ一定期間内だけ人を纏め上げるのが上手いのだ。

 だからこそ今までのボス攻略で指揮をしていた自体は少なかった、攻略会議ではアスナと共に視界を担当していたりした。当てられた役割はキチンとこなし、死人を出していないだけ凄いのだが。

 

「ALOに来ているプレイヤーの人数は?」

「各攻略ギルドのメンバーと中層、下層域の支援メンバーを合わせて、およそ五千人だ。実際に攻略に出られるのは三百人ほどかな」

「よくもまぁ、そこまで……」

 

 流石に予想していた人数と桁が一つ違っていて、驚き呆れてしまった。

 このALOにも一応パーティーやレイドはあるらしいが、《グランド・クエスト》はやはりその難易度故か、挑戦中は退場した者は入れないものの一度に入る人数制限は無いらしい。つまり四十八人の一レイド制限を超えた巨大レイドを率いる事も理屈の上では可能であるという事だ。

 

「それで、どうかな……」

「…………確かに、戦力としては十分だと思う。けどボクにもボクの考えがあって動いてるんだ、悪いけど、少なくとも今はまだそっちに行くわけにはいかない。今は《何処にも所属していないソロプレイヤー》として動く必要があるんだ。ディアベルも、ボクと知り合いという事は黙っていて欲しい」

「な……何でだい?」

「……キリトさんを救い出す、その切り札を発動する為に。上手く発動すれば皆助かるけど、そのための前準備として色々と動かないといけないんだ……だからそのために、今はボクを一人で活動させて欲しい。勿論その前準備が失敗すればそちらに合流するよ。これが成功すれば、戦力は最低でも倍以上になる」

「そ、そんなにかい……?!」

 

 ボクが考えているシナリオ通りに事が運ぶ可能性は限りなく低いが、ゼロでは無い、だからこそボクはそれに全力を注いで成功確率を上げようとするのだ。そのために、ボクは一人で居なければならない、今から彼らと共にいると絶対に成功しないのだ。

 

「だからディアベル、他の皆には悪いけど、暫くは合流出来ないと伝えて。時が来ればこっちから連絡を取る」

「わ、分かった……」

 

 唖然としているディアベルとフレンド登録をした後、ボクは急いで《ルグルー回廊》を抜けるべく大橋の上を神速で走り、洞窟内に棲んでいる手斧を持ったオーク達を斬り裂いて経験値を稼ぎつつ洞窟を抜け、《アルン高原》へと抜けた。

 疾駆した勢いそのままにカタパルトよろしく洞窟の崖から大きく飛び出し、そのまま蝙蝠のような大小二対の翅を出現させた後、強く空気を叩いて更に加速した。微妙に高度を上げながらシステムで規定されている最高速度で空を飛んでいると、欠ける事の無い蒼い満月が妖精郷を美しく照らしていた。

 当然ながら雲より遥か高くに位置する世界樹の枝などは闇に包まれている。高過ぎだろう、アレは。

 

『……あそこに、パパが……』

『…………お父さん……』

「恐らくだけど……ね……」

『でも……父さんの何かを、感じるよ……』

『『うん……』』

 

 ストレアの言葉に応じるユイちゃんとルイちゃん……やはりこの子達も、あそこにキリトさんが居ると……父が居ると感じているのだ。

 

 

 

 ――――キリトさん……まだ、待たせてしまうけど……何時かきっと、必ず助けに行くから……!!!

 

 

 

 夜景に消える大樹の先を娘達と共に見上げながら、夜の妖精郷の空を神速で飛んだのだった。

 

 ***

 

「……ぅ……?」

 

 ふと、大切な何かが聞こえた気がして、頭を擡げる。ずっとずっと、黒いトリカゴに閉じ込められていて、時間感覚なんて狂い果ててしまった自分には、もう今日が何時で、あの浮遊城の終焉を見てからどれくらい経ったのかも、もう分からない。

 あの終焉の日。全てが終末の光に包まれた自分に待っていたのは、暖かな現実では無かった、虚構の世界だった。黒い黒い、トリカゴの世界だった。

 あの日からずっと、自分は男としての尊厳……いや、人間としての尊厳すらも疑われる事を繰り返された。一言で言えば、凌辱だ。真っ黒な際どいドレスに包まれていた肢体は相貌のパーツこそSAOでのアバターに似ていたけど、局部を見ていけば明らかに女性のそれで、男性のものでは無かった。

 女性アバターである自分は、男性からすれば劣情を催すのだろう。もう何度犯されたか分からない、もう幾度助けを求めたか分からない、嫌だと口にしたのか分からない……どれだけ涙を流したか、分からない……

 もう、大切な人の、声も……顔も……分からない……

 分かるのは、浮遊城の終焉と、仮想世界が何なのか……そして、自分のプレイヤーネームだけ……

 自分の現実は……もう、何も、分からない……

 自分は…………一体、誰……?

 

「はーい、キリトちゃん、元気にしてたかなぁ?」

 

 ガシャン、と音を立てて黒いトリカゴ唯一の出入り口である柵が開いて……その奥から、半透明の綺麗な翅を二対生やした男達が、四人くらいやって来た。洋風のトーガを纏った金髪や緑髪、蒼髪、赤髪の男達は見覚えがある。何回も食らいに来た男達だ。

 逃げようとしても、両手足と首は紅黒い鎖に繋がれていて、体全身に力が上手く入らなくて動けなくて、結局男達の良いようにされてしまう。意識だけぼうっとしているのに体の感覚だけが異様に鋭くて、嫌なのに…………嫌ナの、ニ……

 

 

 

 ――――誰でも、良イ…………オ願いだカら……

 

 

 

「…………タす……ケ……テ……」

 

 

 

 ――――コノ地獄カ、ラ…………タス、ケ……………………

 

 

 




 はい、如何でしたでしょうか?

 道場風景は、戦闘中の技で気付いた方も居るでしょう、《るろうに剣心》です。直葉と木綿季はそれぞれ薫と弥彦の二人を半々にしてます。

 木綿季の道場の入り方はコミックス28巻に弥彦と全く同じのがあります。

 とは言え、門下生は別の巻で出て来た他門の門下生をモチーフとしています。確か二十巻くらいだったかな? 道場帰りに蕎麦食ってて薫に叱られながらも全然堪えてなかった三人組ですね。

 あ、ちなみに《火車落とし》だとか初伝だとかは完全オリジナル、奧伝の二つの技は《るろうに剣心》の《神谷活心流》の奥義です。拝借しちゃいました☆


 さて、次に登場した《騎士》とはディアベルさんでした。ヒースクリフだと思った人は惜しい、騎士と言えば騎士だけどあっちは《聖騎士》です(笑) 屁理屈だと思っても構いませんよ(笑)

 そしてディアベルの誘いを一時断る木綿季、張り巡らしている策はとんでもないですよ、ご都合主義満載という意味で。


 ……えー、そして、最後の最後に出て来た人物は当然お分かりと思いますが、名前呼ばれてる通りキリトです。相当打ちのめされております、何でかってもう文中にある通りです。

 ちなみに、キリト視点最初の「……ぅ……」は、SAO編最後の現実復帰したユウキと掛けています。ユウキは現実に復帰したけど、キリトは復帰出来ずに仮想世界にずっと囚われているという訳です、それを皮肉りました。

 ね? 本作主人公って、報われないでしょう? 原作アスナと立ち位置入れ替えただけでこれです。

 原作須郷は明日奈の抵抗する姿まで楽しむ趣向でしたが、こちらは結婚相手じゃないので容赦ありません。

 更に時間を考えましょう。

 主人公報われない病の真骨頂はまだまだですよ★(嗤)


 ……何気に、既に書き上げていたものより酷くなっていっていたりします。元は原作にかなり近く、むしろ原作よりマイルドだったんですが……今は見る影も無いですねー……

 ストレスってヤベェー……


 ではそろそろ、次話予告です。


 ディアベル達SAO連合への参入を一時断り、わざと一人を選んだユウキ。彼女の狙いは、どこにも属していないからこその公平さを使った交渉だった。自身の剣腕、前世から持つ情報、そして一縷の望みだけを胸に【絶剣】は央都へと到着する。

 現実では真夜中、されど妖精郷では朝となる時間に、紅蓮の将軍と紫紺の剣姫が相対する。

 それは、正史ではあり得ない形での邂逅だった。


 次話。第六章 ~震撼~


 お楽しみに。


 ※ちなみに、活動報告にて9月20日までのアンケートを2つ、10月1までのアンケートを一つしております。

 前者は割と謎が多いISキャラ《マドカ》の過去から未来まで決めるアンケートですので、是非とも奮って意見をご投稿下さい。

 味方or敵ルート3種と、死亡or生存エンド5種からのアンケートです、真面目に悩んでますので意見お願いします。返信の仕方は活動報告に書いてあります。

 現在はIS学園開始時から味方ルート&若干甘えん坊実の妹キャラエンドに2票入っております。ぶっちゃければ最良なエンドルートですね、元から憎悪無い設定です。まぁ、甘えん坊と言っても若干です、原作SAO直葉よりちょっと堅い程度で良いです。匙加減間違って甘々にしかねないですが(笑) どこぞの黒い鉄な雫さんみたく兄大好き人間にでも改造してやろうか(笑)

 いや、真面目に言うとそこまではしませんがね、キャラって大切ですし。マドカのキャラじゃないし、私もあそこまでは書ける気がしないので。


 後者は、否定意見を募集しております、クロス内容について詳細を記載しておりますので、これが嫌だというものがあればご投稿下さい。投稿意見の半数で否定があったものを含まず、本編を進行させる予定です。逆に否定が無ければ全部含んで混沌としますのでご注意ください。延期の可能性もありますが、多分しないと思います。

 現在一つも意見がありませんので、このままいくと全て適用となります。ドラゴンボールを始め、ハイスクールD×D、犬夜叉、ナムコクロスカプコン、無限のフロンティア、ゴッドイーター、バイオハザード4、キャラだけですがデビルメイクライ3ダンテなど無茶苦茶クロスしますので、一度は見ておいた方が良いと思います。クロス嫌いな人は多分後悔しますよ。和人がハイブリッドと化しますのでマジで何でもありになります。

 今ならまだ引き返せる段階です。

 純粋にSAOが良い! という方はコメント下さい。クロスを含まないIFとしても、意見があれば書くかも知れません、時間と投稿意見があればですが。


 コメントは活動報告返信にお願いします、小説の感想欄だとどうも規約違反になるらしいので。

 ではでは!


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