ソードアート・オンライン ~闇と光の交叉~   作:黒ヶ谷・ユーリ・メリディエス

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 どうも、おはこんばんにちは、黒ヶ谷・ユーリ・メリディエスです。

 今話は殆ど説明会みたいなものですかね。《キャンペーンクエスト》を始める前にギルドを作ったという設定になっています、やはりプログレッシブのその辺のは私には無理でした。

 キズメルさんとても好きなキャラクターなんですが、あそこら辺のお話の設定や絡みは再現し辛い。ついでに言えば既に原作乖離しているし、設定上三度目ともなると流石に今更書く訳にもいかなくなりました、一回目と二回目の関わり方はほぼ触れてませんからね。

 キズメルファンの皆様、誠に申し訳ありません。出して欲しいというリクエストや意見が多ければ、新生アインクラッドで別のイベントキャラとして番外編で登場させようと思います。

 番外編なら余程の事でも無い限り自由に書けますからね。ご希望の方は活動報告の《ちょい不定期更新になります》へコメントして下さい。感想欄は出来るだけ避けて下さい、規約に引っ掛かる可能性があるので。

 ではそろそろ……最初はアスナ視点です。どうぞ。




第四章 ~《十六夜騎士団》~

第四章 ~《十六夜騎士団》~

 

 キリト君がユーリ君になって、もう五日が経った。その間に二層はすぐにクリアされ、三層へ登る事になった。

 現在、攻略組は二層ボス撃破の勝利に浸っていた。

 三体いたボスのLAボーナスは、第一層の時同様ユーリ君だった。と言っても彼もユウキに言われてその後に気付いたらしいので、キリト君の記憶も持っていると言ってもそこまで鮮明という訳でも無いらしい。

 ちなみにユウキはキリト君の奥さんだけど、ユーリ君も同じだと言って接してる。あの包容力って凄い。

 

「ユーリさん、無理し過ぎだよ」

「これくらいが普通だと思うんだが……もう少し抑えた方が良いか?」

「うん……キリトさんみたいに無理されると、不安になるから……」

「…………わかった」

 

 ボス戦直後、みんなが嬉しそうに沸き立ってる中でも所構わず仲良しなとこを見せ付ける二人。まだ春が来ていない私達からすれば何だかなぁと思うけど、もう見慣れた光景なので別に良いと思っている今日この頃だ。人前だからか、それとも深い事情があるからなのか、この二人って一般社会で普通とされているカップルと雰囲気が違うし。

それはともかく、彼女の不安も分からないでもない。彼はある意味、キリト君と同じように無茶をする事が多いようだった。自分よりも他人優先な行動が多く、自分の事は二の次な事が殆ど。ユウキはこの五日間、ずっと彼と一緒にいて同じ言葉を繰り返していた。この会話も、既に十回以上重ねている。

 でも、少々心配のし過ぎでないかと思う。確かに第一層で死に掛けてるけど、そう何度も死に掛けはしないだろう。ユーリ君はキリト君でもあるのだから、剣の腕は健在だ、リアルでも剣術道場の師範をしているのだし彼女はその門下生であると同時に一番の直弟子なのだから、もう少し信用しても良いのではないかなと思う。

 しかしユウキはそうは考えないらしいし、ユーリ君も何か分かっているらしい。二人だけの共通認識があるようで、それは私たちには分からないもののようだ。

 それがなんだかつまらない。

 その思いはシリカちゃんたちも同じらしく、ふくれっ面で二人を見ていた。

 

「あのお二人、仲が良すぎですよ……一体何が違うんでしょう?」

「そういえば、あたし達が会った時にはもう仲良かったわよね。昔からそうなの?」

 

 リズベットが疑問を呈した。

 私、リズベット、フィリアさんが会った時は彼が小学二年の時。二人が会ってから一年近く経っていた時で、その時には既にカップルとなっていた。小学校では既に『最年少バカップル』という二つ名があったらしく、それほど仲が良かったらしい。

 しかし何故それほど仲が良いのか、そもそもカップルとなった要因は不明らしい。二人ともその辺は黙秘を貫いていて、その時の煙の巻きようと言ったら本当に年下かと思うほど。仲の良さも、母さん達が、自分達よりも夫婦らしい……と言って落ち込んでいたほどで、精神年齢で言えば私たちよりも上ではないかと思うほどだった。

 何から何まで規格外というか、よく分からない二人である。

 その二人に、ヒースクリフとディアベルが話しかけた。

 

「それで……この層に『ギルド結成クエスト』があるんだったかね?」

「ああ、そうだ。まあ俺とユウキはそのクエストをする前に、別のクエストをするつもりだけどな」

「それはもしかして、ベータの時もあった『キャンペーン・クエスト』かい?」

 

 キャンペーン・クエストは第三層から第九層まで続く、長編クエスト。色々と嬉しいアイテムを貰えるクエストで、物語形式の珍しいクエストらしい。失敗すれば二度と受けられないらしいが。

 ヒースクリフもそう思っていたらしいが、それにはユーリ君とユウキの二人が同時に否定した。首を横に振りながら言う。

 

「いや、それは一番後だ」

「ボク達はそれとは別のものをするんだよ。ボク達にとって、一番と言って良いほど大切なものだから……」

 

 ユウキが微笑みながら言う。その姿はまるで、何年も戦い続けてきた歴戦の兵のような笑みにも見え……今にも消えそうな儚い笑みにも見えた。

 ユーリ君は第一層LAだったらしい漆黒の黒革製のロングコートをはためかせながら階段を登っていき、彼の横に並んでユウキも上がっていく。それを私たちも追った。登りきって私たちを迎えたのは、霧が立ち込める森林だった。

 全員が上がってきたのを確認してから、先に上がっていた二人が口を開く。

 

「今俺の後ろに見える二本の道のうち、街道沿いに行けば主街区のズフムトってとこに着く。そこでギルド結成クエストを受けられる。森の方に行けばキャンペーン・クエストが受けられる。霧が深いしマップを見られないという欠点があるから迷いやすい、気を付けてくれ」

「キャンペーン・クエストは一度放棄すると二度と受けられない。それに二種類のストーリーがあって、目的地でバッティングするかもしれないけど、喧嘩しないようにね。ちなみにクエスト開始は森の中で金属音が聞こえる場所に着いたら分かるよ」

「それは了解したけどさ、わたし達はどうするの? ギルド、結成するんでしょ?」

 

 フィリアさんが私たちの言葉を代弁した。それにはユウキが答える。

 

「アスナ達には悪いんだけど、二時間ほど主街区で待ってて欲しいんだ。ボク達二人にとって、絶対にしなくちゃならないことがあるから。だからお願い」

「俺からも頼む。今の俺はユーリだが、同時にキリトでもある……ユウキの為にも、キリトの為にも、これだけは絶対にしておきたい」

 

 二人の真剣さを感じるお願いに、思わず私たちは頷いてしまった。

 

「…………わかった。ユーリ君、ユウキ、なるべく早くね?」

 

 私の言葉に深く頷きを返し、二人はすぐさま踵を返して森に入って行った。ただし、街道でも森に繋がる道でもなく、完全な獣道だったけど。でも二人には迷いが無かったから、目的地自体はベータ版で知っているのだろう。

 その後、リンドとヒースクリフがギルドを作ると言った。

 前者は《聖竜連合》、後者は《血盟騎士団》を。

あとシンカーという人も名乗り出て、ディアベルと一緒に《アインクラッド解放軍》を設立すると言う。彼らは攻略もするが、主に中層~下層プレイヤーの援助、犯罪者の取り締まりや未だ始まりの街で過ごすプレイヤーのために動くつもりらしい。それと情報屋のような、新聞を出すこともするようだ。リアルでそういった仕事に就いていたらしい。

 これは多分、あの二人が流した情報に基づいた考えなのだろう。

 あの二人は、戦うのが怖いなら生産職に就く事で、前線で戦う人たちの助けになると言っていた。ギルドに生産職の数が多いかどうかで、ギルドの質もほぼ決まるらしい。自給自足が出来て争いも少なくなるので結束力も高まり、他者に依存しないのでギルドの経営危機にも陥りにくいのだとか。

 あの二人、ベータ時代には最強二大ギルドそれぞれのトップだったらしく、その辺りの事はディアベル以上に詳しい。現に彼も、キリト君のギルド《凛々の明星(ブレイヴ・ヴェスペリア)》に所属していたらしい。彼の手腕をよく知っているため、彼がギルドを立ち上げれば攻略も安定するだろうと話している。

 その彼と、対等にギルドを率いていたユウキも合流して一つの攻略ギルドを立ち上げるのだから、尚更だという話らしい。

 確かにそう思う。そもそも私たちのギルドの団長&副団長となる二人がベータ時代も今のデスゲームでも最強なのだから、安定としてはばっちりだろう。これで攻略組で最年少組なのだから驚きの一言に尽きる。

 ギルドの特色は、リンドの《聖竜連合》はバランス、仲間を護る為に主としてタンクを育成するつもりらしい。

 ヒースクリフの《血盟騎士団》もバランス、しかしこちらは被らないよう主にアタッカーを育成するつもりらしい。団長となるヒースクリフ自身はタンク寄りのビルドだが、リンドのギルドがタンク寄りなのでそうする事にしたらしかった。

 私たちが所属する予定の《十六夜騎士団》もバランス。これはアタッカー、タンク、サポートの全てをバランスよくする予定なのだとか。レイドの際にメンバーと役割で困らないようにするためらしい。それに他にも目的があるようで、そちらにも対応するためだと聞いている。概要を聞けば何でも屋らしいのだが……

 《アインクラッド解放軍》については少々特殊で、ほぼサポートに回る予定らしい。主に情報収集や素材集めをして最前線組のサポート、中層~下層プレイヤーの支援を最優先で攻略は二の次らしい。

 以前この話をした際にはリンド他、何人かのプレイヤーが反論したが、その話し合いの場にいたキリト君とユウキの二人によって鎮まった。そういったギルドがあるだけで、死者の数は桁違いに減るし、攻略組も絶対に助かると言ったからだ。

死者の事を持ち出されては、このデスゲームに関してビギナーに対するレクチャーを行った事で一家言ある二人なので誰も反論できず、そのまま認められることになった。

 ちなみに、軍にはコペルも所属する。キバオウも一緒だ。

 私達はというと、一度全メンバーがヒースクリフによって勧誘された。しかし既に入るギルドを決めていると言って断っている。

 完全攻略方針の《血盟騎士団》より、基本的に自由な《十六夜騎士団》の方が知り合いも多いし落ち着くからだ。そう言ったら、あの冷静沈着を絵に描いたようなヒースクリフが若干落ち込んでいたから、少し笑えた。それでも諦めていない目をしていたけど。これはしつこそうだ。

 

「それにしても……あの二人が絶対にしておきたいクエスト、ねぇ……何なんだろ?」

「私に聞かないでよリズ。ディアベルさん、何か知りません?」

「え? うーん…………三層のクエストかぁ…………何かあったかな?」

 

 ディアベルに聞くも、キリト君と同じギルドに所属していた彼も思い当たらないようだ。一体何があるというのか。

 

「…………あ、もしかしたら《師弟クエスト》じゃないかな?」

 

 と、コペルという少年が言った。全員が彼に目を向ける。

 

「ねぇ、そのクエストって何?」

「えっと……師匠となるプレイヤーと弟子になるプレイヤーの二人で受けるクエストだよ。師弟になった二人は、互いの位置情報がわかったはず。それ以外もあるかもしれないけど、僕は知らないな。でもたしか、ベータ版でもあの二人は師弟だったよ。そんな噂があったから」

「ああ! そういえばあったね! 一度だけそんな話があがったんだよ」

「そーいえばオレッちもその話を聞いたことあるナ。ベータでも今でも結婚してて、そのうえ剣の師弟、と……とんでもないのがいるナ。っていうか、キー坊は本当に最年少なのカ?」

 

 いつの間にかいたアルゴさんも話に混じって、やいのやいのと騒ぎながら街へ向かう。ボス戦での疲れを癒すのと補給を済ませるためだ。流石にあの二人ほど、私たちの精神は頑丈ではない。

 街に到着後、各々の目的のために三々五々と散っていく。私たちはキリト君達を待つ為に待機となる。私、シリカちゃん、リズ、フィリア、エギルさん、クラインさん、イチゴ君、ナツ君にアルゴさんも加わって談笑することで時間を潰すことにした。

 予定よりも早く、一時間後にユーリ君とユウキが帰ってきた。

 ユウキが満面の笑みを浮かべていて、彼女のその様子にユーリ君は苦笑していた。それでも喜んでいるらしい、雰囲気が明るく柔らかいものになっている。しかも何時に無いことに、手を握って歩いていた。

 そこでふと気付いた物があった。それは二人の左手の薬指に、今まで無かった物があったからだ。

 

「お帰り二人とも。ねぇ、その指輪……」

「あ、もう気付いたんだ? そうだよ。結婚指輪なんだ」

「指輪があったから早速な……」

 

 不敵な笑みを浮かべて言い放つユーリ君と、その彼に屈託ない笑みを向けるユウキ。

 二人だけの絆が垣間見える場面で、それを見て本当に最年少なのかなと思ってしまった。他の皆も同じだったらしい、微妙に引き攣った笑みを浮かべている。

 

「ふ~ン……それで、キー坊、じゃなかっタ。ユー坊達はいつギルドを作るんダ? なんならオネーサンも入ろうカ?」

「「「「「えっ」」」」」

 

 アルゴさんの思いもよらぬ言葉に、全員が驚愕の声を上げてしまった。あのアルゴさんがギルドに入るなんて、しかも自分から言い出すなんて思いもしなかった。

 

「なんだよその反応。オネーサンだけ仲間外れカ?」

「いや、嬉しいけど…………良いのか?」

「オレッちはキー坊とユー坊、あとユーちゃんがお気に入りだからネ」

 

 ちなみに、ユーちゃんとはユウキのこと。私はアーちゃん、シリカちゃんはシーちゃんなど、キャラネームの頭文字をくっ付けてあだ名を作るらしい。被ったらどうするんだろう?

 

「それに、キー坊たちが持つ情報量が半端じゃないんだヨ。正直情報屋としての自信が無くなりそうなくらいニ。だから寄生じゃないけど、一緒にいて情報屋として正しい情報を流したいんだよネ。あとは面白そうだからだナ」

「アルゴさんらしいね…………うん、ボクは良いと思う。むしろこっちから頼みたいくらいだよ」

「ユウキに同じだ。よろしく、アルゴ」

「よろしク。それにアーちゃん達も、これからよろしくナ」

 

 にぱっと茶色のフードの中で笑顔を見せながら言ってくるアルゴさんは、それはもう、心の底から楽しそうで、嬉しそうだった。

 この後、ギルドの方針とたった二つの掟を聞いて、ユーちゃん達らしいと感想を漏らすと同時に、二人の真剣な雰囲気に気圧されていたのは詳しく語るまでも無い。

 

         *        *        *

 

「それじゃ! 攻略組ギルド発足を祝って!」

『かんぱーい!!!』

 

 第三層主街区【ズフムト】の大きな酒場で、攻略組がギルド結成を祝って乾杯していた。

 ユーリとユウキが師弟クエストに行って出遅れたので、既に《血盟騎士団》《聖竜連合》《風林火山》《アインクラッド解放軍》は結成されている。クライン達はユーリ達と一緒にクエストをこなした。

 結成されたギルドは全て攻略組に属しているので、祝うのは全メンバーがギルドに所属してからとなった。

 一応出来たてで、戦闘をしてないし役割も殆ど振り分けていないので、今のうちにと有力プレイヤーを勧誘するメンバーも多かった。特にヒースクリフとキバオウだ。

 クラインは友人と作ったギルドなので、引き抜かれないように死守はするが勧誘は一切しなかった。

 《十六夜騎士団》は団長をキリト/ユーリ、副団長をユウキにしている。メンバーは細剣使いアスナ、短剣使いシリカ、フィリア、アルゴ、片手棍使いリズベット、斧使いエギル、曲刀使いイチゴ、片手直剣使いナツとなる。

 他のギルドに比べると、《風林火山》とどっこいどっこいの人数で、攻略組ギルドとしては少ないという印象だ。その代わりに最強プレイヤーが二人、しかも将来有望なメンバーばかりいる。アインクラッド随一の情報屋、鍛冶師、商人となるメンバーがいるので、このメンバーの将来を知るプレイヤーからすれば、ある意味最凶とも言えるギルドである。少なくとも、一回目のアインクラッドのプレイヤーが知ればまず間違いなくちょっかいをかけようとはしないだろう。報復が怖いからだ。

 今回、この三人も今までのSAOと同じ道を歩むらしく、それは攻略する者達にとって助かる道だ。なのでユーリもユウキも支援や協力は一切惜しむ気が無い。むしろ積極的に協力するつもりだった。

 そして、そんな有望株を狙わない馬鹿はいない。

 

「ユーリ君、君のギルドのメンバーはとても魅力的だ。誰か私のギルドに……」

「却下。寝言は寝てから言え」

「おいブラッキー。お前さんとこのメンバー、誰かくれへんか? うちのメンバーだけやとバランスが悪い」

「断る。というか結成直後に引き抜こうとするなよ」

 

 ヒースクリフとキバオウ、ユーリの前にあえなく撃沈。言い方こそアレだが、ユーリの言葉が正しい。

 ちなみに、ブラッキーというのはキリトについていた異名の一つで、黒一色がゴキブリを連想させると誰かが言い始め、ベータの頃からLAボーナスを取り捲ってるキリトを良く思わないプレイヤーが作った蔑称だ。

ちなみに、その蔑称を言い始めたプレイヤーは後日、ユウキによって制裁されている。キバオウにも喰らわそうと動きかけたが、その前にどこかに行ってしまったのでタイミングを逸していた。

 なのでとても不機嫌な顔だ。ギルドメンバー全員がそうだが、クライン達も同じ。

 皆がキリトとユーリを悪く言うのを許せないのだ。キリトは負の感情に押し潰されかけていて眠っているし、ユーリは新しいギルドのリーダーとして、そして何より、誰も死なないように手を尽くしている。自分を殺してまでだ。

 それを、ユウキが哀しげに見ているのを誰もが目にしている。少なくとも、それは年少組がするような目ではないと、見た者が思うほど。ユウキは今のユーリを見て、一、二回目のSAOでのキリトを思い出していた。人のために尽くし、最後は心を追い詰めて死んでしまったキリトを。今のユーリは、それの焼き直しをしている感じだと思った。だから哀しげに見てしまう。

 それを支えるのは、二人を昔から知っている自分達の役目だと、アスナ達は思っている。それに、二人にはこのSAOで色々と良くしてもらっているのだ。でなければ、今頃自分達は死んでいるか、精神を磨耗させて戦うかのどちらかだっただろうから。

 キリトとユーリ、その妻のユウキはとても強い。それは周知の事実だが、心の支えは必要。支えなければ、二人はいつか死んでしまうのではないか、そう皆が考えてしまう。第一層ボス戦でのキリトの行動、ソレに対するユウキの反応がそう思わせる。

 だからこそ、二人を失わないためにも、自分達もしっかりしなくてはと固く決意する、キリト達に理解ある者達なのだった。

 以降、アインクラッド攻略は《十六夜騎士団》《血盟騎士団》《聖竜連合》《アインクラッド解放軍》《風林火山》主動で為されていく。特に《十六夜騎士団》と《血盟騎士団》は【攻略二大ギルド】とまで呼ばれ、前者の団長キリトと副団長ユウキ、後者の団長ヒースクリフはトップスリーと呼ばれるまでとなる。

 力の【黒の剣士】。守の【聖騎士】。速の【絶剣】とも呼ばれ、アインクラッド全体に大きな安心感と安寧を齎すのだった。

 しかし、攻略組には一つの問題が浮上していた。いや、問題ではなく、心配事があった。それは、本来の《十六夜騎士団》団長にあたる、ユウキの夫であるキリトの存在だった。

 キリトは第一層で先走ったリンドを庇って死亡し、『死にたくない』という想いを以てシステムに抗い、ユーリを目覚めさせた。そして現在のキリトの精神は、未だ眠りの中にあるという。いつまで経ってもキリトが目覚めないので、流石にギルドメンバーだけでなく攻略組全体が心配し始めたのだ。

 しかしユウキはそこまで気にしていない。心配もあるが、それ以上に彼と、ユーリを信頼しているのだ。どちらも同じ『桐ヶ谷和人』だと信じ、夫の目覚めを待っている。そして、ユーリもまた『桐ヶ谷和人』であり、自分が愛する夫だと想っている。だからこそ、ユウキは慌てない。

 それはユーリにとっても救いであった。自分はユウキにとっては紛い物となる存在。だから、自分は必要なく、ただ本来のキリト――『桐ヶ谷和人』を待ち望んでいるのではないかと。ユウキにとってはどちらも愛する夫だと言われ、ユーリは一つの決意をした。

 その決意が本当の意味で為されるのは、SAOから抜け出した後の事になる。

 そして、キリトが目覚めるのは、SAO開始から約半年と少しの後……そう、キリトにとって、生涯忘れる事の出来ない、あの出来事が発生する直前だった。

 

 




 はい、如何でしたでしょうか?

 この平行世界SAOは正直プロローグに近いので、割と流す所が多いです。大まかな流れは初回SAOでやってますし、ぶっちゃけ《十六夜騎士団》の活動や団長副団長となる二人の動きを描写する程度です。その動いた結果が後の物語に反映されるという形なので、あんまり面白くないかもですね。

 さて、《十六夜騎士団》についてですが、《血盟騎士団》と互角かそれ以上の勢力になる事は間違いないです。何せ団長が実力的にSAO最強なので(笑)

 更に互助組織としての一面も持つようにしているので、攻略に必要なレベル、スキル熟練度だけで無く、ポーション作成や探索系のスキルを取って後方支援に徹するメンバーも豊富という設定です。

 原作読んでて思ったんです、こういうギルドがあっても良いんじゃないかって。どうも商人同士の組合はあったらしいですし、アスナもダイゼンとか言うキリトとヒースクリフとのデュエルの際に儲けていた人を経理担当と言っていましたから、じゃあ後方支援部隊があってもいいのではと思って作ったんです。

 戦国時代を多少知っているなら分かると思いますが、戦いは補給が大切です、ゲームも基本的に回復を前提とした設定になっています。逆に言えばそれが無ければ難易度が天井知らずに上がります。

 つまりギルドの方で回復アイテムを作る人や鍛冶師、商人を味方に付けてしまえば、割と難易度は下がるのでは、という考えに行き着いた訳です。キリトも前世傭兵として戦場を駆けていたのなら補給に関しては最重要視していたでしょうし、ここに着目するのも当然だと思います。

 原作《スリーピング・ナイツ》もアスナが回復支援に入り、指揮を執った事もあってボス戦をクリアしていました。攻撃は最大の防御と言いますが、回復や支援も重要という事です。それを表すためにリズベットとかの参入について言及していた訳ですね。未来のマスタースミスが味方とか半分チートでしょう。

 特にSAOは結晶アイテムが手に入るまではポーションという時間経過型の回復アイテムでしか回復出来ないので、尚更ですね。


 今までお互いのフォローないし自分の力しか頼らなかったキリトとユウキですが、ここから他者の力も利用して人助けを行っていきます。


 という訳で次回予告です。


 ユーリとして過ごしていた日々は、唐突に終わりを告げた。《Kirito》が目覚めるきっかけ、それはかつて守れずに死なせてしまった者達との邂逅が近くなった事を示していたからだった。

 自らの過去を振り返り、今度こそ彼らを死なせない事を決意している《Kirito》が選んだ行動は、これまでとは違ったものだった。


 次話。第五章 ~《月夜の黒猫団》~


 ユーリの出番は一先ず終了です。短いっ!


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