ソードアート・オンライン ~闇と光の交叉~   作:黒ヶ谷・ユーリ・メリディエス

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 どうも、おはこんばんにちわ、黒ヶ谷・ユーリ・メリディエスです。

 今話は多作品要素が今までより絡んできます。具体的にはキャラが。あと、現時点では居ない筈のキャラも居ます。お前ら世界が違うだろという突っ込みは無しで(笑)

 さて、キリトとユウキにとっては二度目となる第一層攻略会議です。

 一回目ではキリトがキバオウと言い争って黒髪リーファに頬を叩かれてぶっ倒れたシーンですね。今回はあの時よりキリトはまだ精神的に余裕を持っています。

 ではどうぞ!



第二章 ~第一層攻略会議・再び~

第二章 ~第一層攻略会議・再び~

 

 このデスゲームが始まってから三週間、前回よりも多くの変化があった。

 始まりの街を中心に、ある大きな集団が形成された。《アインクラッド解放軍》。この時期では《隊》だった筈だが、規模が生き残りの殆ど、五、六千人なのだ。前線で戦う者、後方支援専門の生産職の者、生産で必要な素材収集の部隊の者。様々な役割を自分で選択したのだ。

 俺がユウキに託した情報で、死が怖い者、前線で戦いたくない者は後方支援やその援助に回る、ということも載せていたのだ。無論、前回の反省を活かしてである。

 前回は、サチのように怯えてでも戦う者が多かった。それはかつてのアスナ然り、シリカ然り。生きる意志の弱い者、戦闘が怖い者はすぐに死んでしまう。

 なら、少しでもそれを抑えるべく、その情報も載せたのだ。情報は最大の武器。それを認識させる為に。そしてパーティーを組んで慌てず戦えば負けはしない。その認識も生まれた。

 今では、ほぼ全てのプレイヤーは何かしらの動きをしている。軍に所属するのは大体約六千、独立しているが、パーティーを組む者約三千。ソロ百未満。死者九百近く。

原作はこの時点で、既に二千人の死者が出ていた。その半分以下という事は、それなりの効果はあったのだろう。全体的に明るい雰囲気になっている。

 俺が確認する限り、ソロプレイヤーは三十いるかいないか。これも二層、三層になれば俺だけになる気がする。前回の最終決戦でも一応ソロプレイヤーがいるにはいたが、それは入るギルドやパーティーが無かったというのもある。前回のギルドは互いの勢力争いでギスギスしていて、自由を好むソロプレイヤーは束縛を嫌った為、当然の事ながら入らなかった。俺は色々悪い噂があったので、ケイタ達が死んだ後は一切入らなかった。俺が作ったギルド《凛々の明星》も、結局俺一人だったし。

 しかし今回、俺は前回以上に己が身を犠牲にしてでも、多くのプレイヤーを生かすつもりだ。今回ばかりは、たとえリー姉やユウキに止められてもやめるつもりはない。なるべく早くにマッピングをし、多くのプレイヤーが居心地が良いと感じるギルドが出来るように尽力する。そうすることで犠牲者を減らすのだ。まぁ、俺としても、ユウキを残して死ぬつもりはサラサラ無いが。

 そんなわけで迷宮区全マッピングを終えた今、流れ星を放つ、後の【閃光】様を見ることなく攻略会議が開かれるのだった。

 

 2022年 11月28日、時刻は午前九時。迷宮区前の街【トールバーナ】。

 そこのステージ広場で開催されることになった。

 ステージに集まったのは七二人。前回が四十八人ときっかり一レイドだったから、かなり集まった方だ。

 この中にはコペルやクライン達はいたが、アスナは見当たらない。まさか死にはしていないと思うが……というかそう思いたい。その話は既にしているので、きっとユウキがなんとかしてくれている……筈だ。多分…………

 

「はーい! 皆、今日は集まってくれてありがとう! 知ってるだろうけど、俺はディアベル! 職業は気持ち的にナイトやってます!」

 

 ディアベルが開始の宣言と共に行ったその言葉に、周りから「本当は勇者って言いたいんだろう!」等と好意的な野次が飛ぶ。

 ディアベルは今現在、蒼い髪に白銀の軽鎧、片手剣とカイトシールドを装備している。確かにナイトというより勇者も似合う格好だ。前回同様、爽やかな男である。

 

「そしてボクは、知ってる人も多いと思うけど、ユウキだよ! 全体的な指揮を担当してます! よろしく!」

 

 隣に立つ藍色の髪に紺色のクロークの少女剣士、ユウキの笑顔に男全員の顔が緩んだ。

 まぁそうだろうな。あの顔と潤んだ瞳、そして不意打ちの告白に俺は堕とされたのだ。

 

「――――実は昨日、ボス部屋前までの全てのマップデータ、その情報が載せられている鼠の攻略本を見つけた! 【第一層ボス編】の攻略本だ!」

 

 ディアベルのその言葉に、一瞬静寂に包まれたが、すぐさま鬨の声が上がった。

 そのマップデータは一昨日、俺がアルゴに接触できた時に渡したマップデータだ。まだ誰一人も迷宮区のマッピングはしていないと聞いたが、ディアベル含めた全員が驚愕しながら見ているのを眺めると、どうも事実らしい。ディアベルあたりはしてそうなもんだが、軍の統括で色々と忙しくて出来なかったのだろう。ユウキは多分人命救助優先だ。

 ちなみに、俺は今回あの攻略本の類は持っていない。いや、必要ない。あれの情報のほぼ全てが俺を元にしているからだ。俺がアルゴに情報を渡し、それをアルゴが編集する。

 つまり、アレは俺とアルゴの合作になる。その証拠として、あれの裏表紙は【ベータ版&現行版情報提供者:Kirito 編集者:Argo】とある。

 あれは俺が指示したのだ。かなり渋っていたが、どちらにせよいずれはバレる。なら好印象を与える要素を少しでも増やしておいた方がいい、とユウキが判断したのだ。

 ついでに言うと、俺はボスの偵察は完全に済ませている。当然、武器を刀に変えることも確認済みであり、それも攻略本に載っている。スキルの軌道や名前、対処法も全てだ。俺は完全に記憶しているので、ディアベルに近づいて見る必要が無い。

 

「さて! そろそろパーティーを組も――――」

「ちょお待ってんか! ディアベルはん!」

 

 ディアベルの声を遮るがなり声。俺と犬猿の仲、不倶戴天の仲だった男の登場だ。

 

「パーティーとレイド組む前に、これは言わしてもらわな気がスマン!」

「……キバオウさん、キミの言うこれとはつまり、ベータテスター達の……?」

 

 おや、どうやらここのメンバーの殆どがキバオウを知っているらしい。この世界で知らないのは…………周囲を見た結果、俺だけか。周りは全員、またか……という顔をしている。

 

「そうやでユウキはん! ここにおるんは基本が軍のメンバー! そりゃ、いくつか小さいグループ作って来とるプレイヤーもおる。ここで言うのはあれやけどなぁ…………こん中にも何人かおる筈やで! 自分らだけ上手い思いして、このレイドに入れてもらおと考えとる、薄汚くて小ざかしいベータテスターが!」

 

 なんとなくだが、若干セリフが変わっている。大部分は同じだが、憚っているあたり、少しは悪いと思ってるらしい。

 キバオウはそのまま周りを見渡し、最後に席に座ったままの俺を睨めつけてきた。どうやら、攻略本を見に行ってない事から俺をベータテスターと思ったらしい。まあ、俺はこの世界を作った張本人なので、ベータテスター以上に酷いけど。

 そう他人事のように思っていると、突如として怒りの矛先が向けられた。キバオウが俺に指を突きつけて、周囲の視線を一気に俺に向けさせる。

 

「あんさん! この攻略本のベータ版の情報提供者なんや! ベータテスターやろ! 今まで集めてきたコルやアイテムを全部出してもらおか! 今まで死んだ約九百人、そいつらビギナーを見捨てた慰謝料としてなぁ!」

 

 なんと、矛先を俺だけに限定しやがった。他にもおるだろうに……

 

「なんや! なんか言うたらどうなんや?!」

「ちょっと待ってよ!」

 

 どう対応したものかと考えていると、唐突な声に俺の思考は妨げられた。

 それは若い少女の声。その子の周りには歳若い少年少女や大人が結構いた。全員の顔に見覚えがある。

 

「キリトさんはこの騒ぎを知らずに巻き込まれた被害者の一人でもあるんだよ?! それに彼は私たちを『贖罪の為』って言って助けてくれた! 他にもいるでしょ?! 彼に助けられた人が!」

「ああ俺もだ! 俺も助けられたぜ!」

 

 そう言って割り込んできたのはクライン。どうやら今回は既に攻略組に入れるくらいの実力を持ったらしい。ユウキがいれば当然かもしれないが。

 そしてその手には、俺とアルゴ謹製の攻略本が握られている。

 

「俺は初日にキリトと会って、色々とレクチャーを受けた。別れ際には『突っ走ったプレイヤーを助ける』って言って、たった一人で外に出たんだぜ? それに、この攻略本だってキリトが殆ど情報提供したんだ。隠していれば独占できた情報を、人を助けて生かすために全部出したんだ! 自分が元ベータテスターだと責められるのも厭わずだ! それで一方的に責めるのはおかしいぜ!」

「そうだそうだ!」

「キリトさんの事を何も知らないで勝手な事言うな!」

 

 俺が助けた皆が俺を擁護してくれて、キバオウが歯を食いしばって俺を睨んでいると、ディアベルが入ってきた。

 

「キバオウさん、君の言いたい事も分からないでもない。でも確かに、この有力な情報が載ってる攻略本に、彼が元ベータテスターとして情報提供したことに違いはない。そして、敵は彼じゃなくて、ボスだ。皆で協力して、全ての原因の茅場に一泡吹かせよう。そうだろ、みんな!!!」

「「「「「おおおおおおおおおっっっ!!!」」」」」

 

 周りの喧騒がキバオウの怒りの声を掻き消し、全体の士気を上げた。流石ディアベル、上手く場を纏め上げた。

 

「それじゃ、仲の良い人たち同士で適当にパーティーを組んでくれ!」

「…………何?」

 

 俺が呆然としている間にも、当然と言うかなんと言うか、次々パーティー上限数の八人が組まれていく。そして、俺は取り残された。

 ここにいるのは七十二人。七十二人÷八人=九パーティー。

 しかし俺は親しい人間がいない。いや、ユウキがいるのだが人数きっかりのパーティーを組めるのに、何が悲しくて二人パーティーなんぞ作らなければならんのか。

 

「キリトさん、パーティー組もう?」

「そうだな。けど、あと六人は…………」

「あたし達も混ぜて」

 

 そう言ってきたのはリー姉だった。その後ろには見覚えのある女性。赤いケープを纏っているから顔がよく見えないが、間違いない。見つけられなかったがいたらしい、アスナだ。

 他にはエギルもいるし、さっき俺を擁護してくれていた数人がいた。

 

「……細剣使いのアスナよ、よろしく」

「俺はエギル。見ての通り、両手斧使いのタンクだ」

 

 前回でも顔見知りだった二人。エギルは今回、斧使いの仲間はおらず、ユウキがヘッドハンティングしていたらしいから来たらしい。アスナは命を助けてもらったのだとか。

 

「私は片手直剣使いのロニエって言います! よろしくお願いします!」

「私も同じく片手直剣使いのティーゼです! その節はありがとうございました!」

 

 アスナ達を見ていると、横から元気の良い挨拶が聞こえた。茶髪のロニエ、長い赤髪のティーゼは、ビシリッ! と音が聞こえるほど勢いの良い敬礼をしている。それも頭に手をやるのではなく、左胸に右拳を持っていく敬礼だ。

 というかこの二人、原作のアンダーワールドで出てくる人物ではなかったか?

 

「槍使いのエリーだよー! よろしくね、キリトさん!」

「俺は両手剣使いのジュリウスだ。あの時は助けてくれて、ありがとう」

 

 矢鱈活発な少女のエリーと、冷静沈着を絵に描いたような金髪の男のジュリウスが挨拶をしてきた。

 しかし、ジュリウスって確か、前世でしていた別ゲームのキャラだったような……? 気のせいか……?

 そんな疑問が二つほど浮かびはしたが、これで俺のパーティーは完成だ。それをディアベルに伝えに行くと、俺達は取り巻き担当になった。というか、キバオウが割り込んできたのだ。

 当然それはロニエ達やユウキが猛反発したが、キバオウの意思は固く、それに俺は応じた。

 今回のボス戦で危険なのはコボルド王の刀もだが、実はその取り巻きの方が警戒すべき存在なのだ。なにせいるだけで本隊に支障が出るし、HPバーが最後の一段になれば無限湧きになるのだから。

 それを全員に説明して納得させるのに、軽く五分は掛かった。

 ちなみにこの情報、前回の記憶もあるが、一応偵察をして確認をしている。残り一段までは俺一人で削れたのだ。それ以降の無限湧きに圧されて撤退したが。これを聞いたユウキが烈火の如く怒り、涙を流してまで俺に説教したのを見て、リー姉は目を見開いていた。

 その後の話し合いで今日、明日は互いの連携を強化する事に努めることになったらしい。とはいえ、全体の動きのパターンを何とかする為なのだが。俺は前回や前世の戦闘経験があったからしないつもりだったが、今回は訓練に参加するべきだろう。というか、ユウキがいる時点で俺も強制参加なのだが。

 そして夜。俺は前回と同じ場所で宿を取っているが、今はトールバーナの宿屋一階で食事中だ。

 皆が思い思い(とはいえメニューは少ないしマズイのだが)の料理を口にしていく。

 俺は一人で飯を食っていた。一個の黒パンにクリームを塗ったパン。パン自体は固いし味も無いがこれはこれで楽しめる。クリームはたまに食べるのにはもってこいだ。俺は甘いのは苦手だが。

 しかし、何が悲しくて一人侘しい食事を摂っているかと言うと、ある男に付き合うためだ。

 

「前、座っても良いかい?」

「……どうぞ」

 

 しばらく周りのドンちゃん騒ぎを見ていると、ディアベルがやって来た。俺がここで食事をしている理由も、彼から呼び出しがあったから。申し訳なさそうにしているので、どうやら謝罪に来たようだ。

 

「……今回はゴメン」

 

 この言葉はキバオウの俺に対する言動のことだろう。俺とユウキが今回の最大戦力にも関わらず、個人の感情でそれを妨げた。彼と親しいディアベルがそれを謝罪しにきたという事だ。

 

「構わない。こういうのは慣れてるし、覚悟はしていた」

「それでも、だよ…………君は良いのかい?」

「このまま進んでいけばいずれは本隊へのオファーが掛かるだろうし、気長に待つさ。取り巻き相手は安全だが、ボス攻撃本隊への被害を考えると気を抜けないしな」

 

 俺の言う事は本心だし、気を抜けないと言うのも本当だ。

 というか、実はスキルや装備の制限さえ解除すれば単独でボス攻略も出来るのだが、この時期にそれをやるといらぬ面倒や騒ぎが起こる。キバオウあたりが騒ぎ立てそうなのだ。

 俺の思考が分かったのだろうか、ディアベルは苦笑している。

 

「そうか…………ところで、あの攻略本の情報は確かなのかい?」

「少なくとも、俺が知っていて且つ俺自身で集めた情報と、アルゴが集めたのとすり合わせをした分だから、間違いは無い筈だ」

 

 声を小さくして話して来るので、俺も合わせて小さくして返す。一応嘘は吐いてない。

 目の前の男は俺が嘘を吐いていない事に気付いたようだ。苦笑を浮かべて俺を見ている。それに居心地が悪くなり、話を変えることにした。

 

「……それはそうと、ディアベル。LAボーナス欲しさに突っ走るなよ。この先の攻略の要になり得るのはアンタなんだ、ここで死んでみろ、一気に士気は落ちて皆の希望は潰える。あんたは自分を《騎士》と称したんだ、なら絶対に死ぬな。あんたは騎士、この城の主、魔王を倒す勇者なんだからな」

 

 本来なら勇者は圧倒的な手数と威力を誇る《二刀流》スキル保持者、つまり前回の俺なわけだが、俺の代わりとなり得るディアベルを死なせるわけにはいかない。この忠告を先にしておかないと、この男は絶対に死ぬ。そう、決まっているのだ。

 俺の忠告をどう受け取ったかはわからない。ただの年下の言う事と真に受けないか、それとも俺がベータ時代に暴れた張本人であり、LAボーナスを取り捲った事に気付いて受け取るか。それはディアベル次第だ。

 ボス部屋は四十八人しか入れず。それ以上入ろうとしてもコードによって邪魔されるのだ。つまりタイミングによっては、俺がいても助ける事が出来ない可能性もある。

 だからこその忠告であり、攻略本に刀スキルを載せたのだ。上手くそれを活用して生き残って欲しい。

 

「俺が勇者、か……大層な役回りだ」

「少なくとも、あんたを否定するヤツは少ないと思うぞ。ちゃんと全員が生き残ったら」

「責任重大だな……」

 

 そう言ってコップを呷る。中身は酒らしく、ディアベルの顔に赤みが差し始めた。それくらいしないと、押し潰されそうなのだろう。責任に、重圧に。

 

「死と隣り合わせのレイドのリーダーするんだ、当たり前だろ…………刀スキルは、発動を見てからじゃ絶対に遅い。スキルの構えを取るのを見たら何よりもまず防御だ。そうじゃないと、すぐに死ぬ」

「そうか…………次は、本隊に是非入って欲しいね」

「誰も拒まなかったらな…………じゃあな」

 

 俺が挨拶した後に、ディアベルは席を立ってキバオウ達に歩いていった。

 この世界の酒に酩酊のパラメータは設定していない筈なのだが、なぜか酔ってしまう。現に、キバオウなぞ馬鹿笑いしている。性格・見た目通りの笑い上戸らしい。

 他を見れば、クラインやリー姉、ユウキも飲んでいる。全員笑い上戸らしく、面白い感じに壊れている。俺も飲んでいるのだが、酒に強いのか中々酔えない。

 いい加減腹にもたれてきた気がするので、今日はもうやめにして取っている宿代わりの家まで戻る。

 今回はアスナとも軍に入ったコペルとも俺とは疎遠だ。つまり、この部屋は俺専用というわけ――――

 

「キーリートーさーん♪」

 

 ――――の筈なのだが、一体どこから嗅ぎつけてくるのだユウキは。誰にも見られないように動いた筈なのだが、一体どこから漏れているのやら…………まあ、フレンド追跡しただけだろうけど。

 俺が内心呆れつつ扉を開けると、そこにはなんとユウキだけでなく、俺のパーティーメンバー全員が集まっていた。全員、顔は赤いが理性の色はあるようだ。

 

「……皆どうしたんだ?」

「いや、お前が勝手にいなくなるから追いかけてきたんだ」

「それに、キリトさんとまだお話したいですし、明日からの事について何も話してませんよ?」

 

 エギルに続いてロニエが言う。なるほど、確かに話していないが、フレンド登録しているのだから別にそれでいいのでは?

 そう考えていると、アスナが赤いフーデッドケープの下から鋭い視線を浴びせてきた。

 

「…………ここで立ち話ってのもなんだから、早く入れてくれない?」

「え? ああ、まあ良いけど……どうぞ」

 

 俺が借りているのは農家の二階。結構広いが、八人も入れば結構狭苦しい。とはいえ、エギル以外は全員がそこまで大きい体格ではないので、そこまででもないのだが。

 ちなみに、ジュリウスの体格は中背中肉。平均的な体格だ。

 

「それで、リーダーとしてはどうするつもりなんだ?」

「俺がリーダーってのは決定なのか……? 普通はユウキじゃないのか?」

「いや、ボクよりキリトさんの方が圧倒的に強いし、適正あるでしょ」

 

 ボス戦で壊滅しかかった時は俺が一時的に指揮を執ってたから……そういう意味なんだろうが、率先してリーダーはしたくないな。

 

「…………まあいいが。そうだな…………ボスの取り巻きは、ボスのHPが残り一段になったら無限湧きになる。けど、そうなったら必ず突っ走るヤツが出る筈だ。俺はソイツを絶対に止める。たとえ、この身を危険に晒してでも…………」

 

 俺の言葉に少し気圧された七人。ユウキは俺を不安げに見ている。その彼女に俺は微笑みを向ける。

 

「そこまで不安にならなくても良い……ただ、絶対に突っ走るヤツには心当たりがある…………ディアベルだ」

「ディアベルだと? あの人はリーダーだろう? そんな勝手をするだろうか?」

 

 ジュリウスが思案しながら呟いた。どうやら思考回路自体は俺の知るジュリウスと同じらしい。だから分からないのだ。

 

「いいかジュリウス。今は死の危険があるとはいえ、元を正せばこれはゲーム。そして、第一~第百層全てのボスには『ラスト・アタック・ボーナス』、通称LAボーナスがあるんだ。一点物のレアアイテムで、能力は折り紙付き。それを最初に手に入れてリーダーシップを発揮する事で全体的な士気向上を図る。それが彼の狙いだ――――そうだろう? ディアベル」

「「「「「……えっ?!」」」」」

 

 俺がそう言って全員が驚くと同時、先程から反応があった相手に対して問い掛ける。そして数秒の後、予想違わずディアベルが入ってきた。

 

「……いつから聞いていると気付いていたんだい?」

「初めからだ。俺とユウキ達が話し始めた辺りでウロウロし始めたから、これは盗み聞きじゃないなって判断して、アンタを呼んだんだ。で? 俺の予想はどうだ?」

「……恐れ入るよ、まったくの大当たりさ。さっき俺に忠告したのも、それを見越してのことだったんだね」

「まあな」

 

 俺とディアベルの会話の間、パーティーメンバーの七人はディアベルにキツイ視線を浴びせている。特にユウキ、アスナ、リー姉の三人の目つきは冷たいものを感じる程だ。

 

「それを踏まえてもう一度言わせて貰う。一人で突っ走るな。LAボーナスが欲しいのは分からんでもない、ディアベルは他のみんなのリーダーたらんとして狙っているというのも理解している。けど、死んでしまったら元も子もないだろう…………頼むから、命を大切にしてくれ…………」

「キリトさん……」

 

 俺の懇願を聞いて、ユウキが俺の手を取って落ち着くように促す。

 俺は前回の犠牲者、特にケイタとテツオのことを思い出していた。俺のせいで死んでしまった二人だ、そして彼ら以外の犠牲者も同じ。俺のせいで出た犠牲者だ。

 俺がいなくても出ただろうが、俺もこの世界を創った者の一人、俺のせいなのだ。

 

「ディアベル、頼む。このことを周知徹底させてくれ。俺はもう、俺が助けられる目の前で誰かが死ぬところを、見たくない…………」

「…………わかった」

 

 俺の懇願をディアベルは聞き入れ、その後立ち去っていった。

 他の仲間も、今の俺には触れない方がいいと判断したらしく、「明日は連携の強化に注ぎ込む。朝八時にこの村のクエストを受けるぞ」と俺が言った後、ユウキを除いた全員が去った。

 

「……キリトさん。キリトさんが死んだら、ボクも追いかけるからね」

 

 怖いくらい真剣な目をして俺を見て言うユウキに、

 

「なら、絶対に死ねないな」

 

 俺は不敵に微笑むことで答えを返した。

 

 

 

 

 

 

 





 はい、如何でしたでしょうか?

 ユウキは持ち前のカリスマ性とリーダーシップを発揮して、第一層の時点で《アインクラッド解放軍》を設立し、そこの副リーダー的存在として君臨していました。

 元々原作で《スリーピング・ナイツ》を姉の次に率い、仲間に慕われ、大勢の人から見送られる程に人懐こいユウキが、一回目のSAOで《血盟騎士団》の第一副団長を務めていたのですから、これくらいは出来てもおかしくありません。誰もが不安に怯えている所で実力ある冷静な人物が上に立てば、自ずと人が集まるでしょう。

 そして前回と異なるのは、アスナを助けたのはユウキである事、コペルが今回登場していない事、代わりにパーティーに新キャラが四人とエギルが参入した事です。

 ジュリウスは《ゴッドイーター2》に出てくるブラッド隊隊長さんです、金髪美青年なゴッドイーターさんです。今作では両手剣使いとして参戦です。神機ってそれくらい大きいですし。リアルにこんな美青年居たらヤバいでしょうなぁ。そして本名プレイをしているに違いない(笑)

 ロニエとティーゼに関してはSAOファンであれば知っているだろうキャラですね、アリシゼーション編でもかなり優遇されているキャラです。本作のアリシゼーション編でも大活躍する予定ですが、その子達とこのSAOに出てきた子達は別人です。似ているだけです。正直数合わせの為に出すキャラに困って、可愛いからという理由で出しました☆(笑)

 残る槍使いのエリーですが、彼女に関しては完全にオリジナル、しかも構想もあまり練っていません。こちらはロニエ達よりも酷い理由です、数合わせとしてしか考えませんでした。まぁ、間延びした口調の溌剌な子って明るい雰囲気になるよねと思って書きました。若干原作ユウキに近いですが、彼女よりも天然溌剌としています。


 そして一回目との違いを出すため、会議もそこそこに今回はパーティーの役割の確認会議とディアベルを止める為の会話を入れました。

 前者はともかく、後者にはキリトなりの企てがあります。

 ユウキはそこに気付いていて、敢えて何も言いません。出来た妻ですねぇ……


 ではそろそろ、次回予告です。


 新たなメンバーでパーティーを組み、キリトとユウキにとっては二度目となるデスゲームでのコボルド王に挑むボス攻略戦。キリトが決死の情報収集をし、ディアベルも突っ込む真似をしないため、順調に事は進んでいた。

 だがしかし、そこで二人にも予想だにしなかった思わぬ存在が割り込んできた。その存在に、戦っていた全ての者が戦慄する。

 それは、誰も知り得ない存在だった……


 次話。第三章 ~疎まれし者~


 お楽しみに!


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