ソードアート・オンライン ~闇と光の交叉~   作:黒ヶ谷・ユーリ・メリディエス

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 どうも、おはこんばんにちわ、黒ヶ谷・ユーリ・メリディエスです。


 唐突ですが、この場を借りて読者の皆様にお礼を申し上げます。

 何と8月26日午後21:40現時点、たったの三日足らずでお気に入り登録50名、UA2000名を突破していました!

 まぁ、短期間に連続投稿しているせいで感想・評価等は少ないですが、これに関しては別に思う所はありません。読者様がいるだけで、そしてお気に入り登録して下さっているだけでも嬉しいです!

 いや、マジで涙が出ます。今まで読んできた二次創作の先達が感動していたのがよく分かりました。自分で考えた設定、駄文と思ってしまうお話を評価して頂けるのは嬉しいものです。


 さて、そんなこんなで早三十話になりました。

 先の話をしておきますが、今まで私は《物凄い後》という言葉を連呼しています。これは《その時が来るまでは駄文である》と取って頂いて結構です。理由は次話以降のお話で自ずと分かります。


 そして一応、このSAO編は終了となるお話です。タイトルと前話後書きで書いた予告からも予想は付くでしょう。

 ですが……一応、です。何故一応なのかもすぐに分かります。

 ちなみに視点はキリト、珍しい事に書きやすい条件を無視した視点展開となります。ほぼ三人称っぽい情景描写ですが。

 ではどうぞ、因縁の決着です!




第三十章 ~【紅の神聖騎士】と【黒の二刀剣士】~

第三十章 ~【紅の神聖騎士】と【黒の二刀剣士】~

 

「皆さん。遂に……この日が来ました」

 

 2024年11月7日。つまりデスゲーム開始から、丁度二年が経過した今日。

 第百層【紅玉宮】へと辿りつき、今はそのボス部屋の前。アスナが総団長になり、恒例の宣言をしている。しかし、この場を満たす張り詰めた空気はいつもの比ではない。

 今まで以上の熱量と期待、そして緊張を孕んでいる。当然だろう。二年と言う長きに渡った死闘も、これで最後なのだから。

 ユウキと結婚した日から一緒に行動し始め、日頃の攻略はおろか日常生活もボス攻略も同じパーティーになるようになった。

 そして九十三層~九十九層のボスを速攻で撃破し、クリアの日は丁度二年の日にしようという事になり、準備期間の一週間で各々の準備を済ませた。

 俺はユニーク高難度ソロクエストをクリアし、特殊な二刀を取得。それをリズと共に強化融合させた事で、更なる力を持った二刀を得た。名前はあまり変わっていない。【魔剣エミュリオン】が【魔神剣エンリュミオン】に、【聖剣リンベルサー】は【神聖剣リンベルサー】になっただけ。ランクは最高の20。

 融合に使ったのは【魔剣エンシュミオン】と【聖剣エクセリオン】。なんとこの二刀、俺の二刀の対になる物だったのだ。三度の融合を経た俺の二刀と、SAO準最強の二刀は融合し、新たな形を得た。

 それは攻略組全員が見た、奇跡の瞬間。やはり、見た目は同じ黒と銀翠の剣。しかし、内包する力は融合前の四刀以上。正しく【最強】の名に相応しい。特殊効果の変化は特に無かったが、装備自体の能力が激増していた。

 他にも全能力が大幅に上昇する【インフィニティアンク】というお守りを得た。凄まじいステータス上昇効果の付いた装備品だ。実は九十九層攻略するまでしか売っておらず、持っているのは俺一人。なにせ一つの値段が9000万コル。誰もが買おうとして二の足を踏み、そして買えなくなってしまったのだ。

 俺はその事を知っていて、それを流してはいた。それで買わなかったのなら、それは自業自得というものだ。

 さて、これで俺の装備部位十箇所全てがチート武具で固まったことになる。

 

 二刀剣の 【魔神剣エンリュミオン】【神聖剣リンベルサー】

 体防具の【コート・オブ・ミッドナイト・ダークネス】

 足防具の【ブーツ・オブ・ミッドナイト・ダークネス】

 腰防具の【ベルト・オブ・ミッドナイト・ダークネス】

 腕防具の【武装魔導器(ボーディブラスティア)

 首飾りの【ウェイトゥザドーン】

 お守りの【インフィニティアンク】

 指装備の 【廻り合う心】に【エターナルリング】

 

 ここまで揃うといっそ乾いた笑みが浮かぶ。何せこの装備、首飾りやお守り、指輪の【エターナルリング】以外は全て俺専用なのだ。龍神の贔屓な優しさが身に染みる。

 ただまあ、ここまで用意されては絶対に勝たなくてはならないわけで。

 だからこそ俺は全力で当たる。絶対に勝つ為に。

 

「私から言えることは一つだけです……必ず全員、生きて、現実世界に帰りましょう!!!!!!」

「「「「「おおおおおおおおぉぉぉぉぉっ!!!!!!」」」」」

 

 アスナが巨大な真紅の扉を開く。そこで待っていたのは、ヒースクリフだった。

 彼は悠然と十字盾と十字剣を持って待ち構えていた。攻略組はその意外な相手に完全に固まり、動きを止めた。予測していた俺を除いて。

 

「――――やっぱりここにいたのか、茅場晶彦」

 

 その言葉に、ヒースクリフは苦笑で応えた。

 

「そうだ。私は、五十層でキリト君との決闘後、外部干渉を受けたカーディナルによって強制的に管理者モードに移行、そのままここにいたのだ。本当はもっと早く、私自身がこの事実を伝えるべきだったのだが、それをキリト君に任せてしまった」

「それは良い。あそこでアンタが管理者モードとやらになって操作してなかったら、今頃俺達は死んでいたんだろう?」

 

 これは簡単に予想出来る。世界と世界が繋がってしまうほどのバグだ、茅場が全力で対処していなければ、今頃全員あの世逝きだったのだ。

 

「それはそうなのだが……いや、いい。それより、これまでのお詫びとして、君達にプレゼントをあげよう」

「プレゼント……?」

 

 俺は疑問の声を上げて身構えた。茅場からのプレゼントで嬉しい物はあまり無かった。

 だから警戒したのだが、茅場はそれに少し傷ついた表情になった。

 

「そう警戒しなくてもいい。プレゼントとは、SAOクリアだ。私を倒さなくても、全員が今すぐに出来る」

「……一体、何を企んでるの? ヒースクリフ団長?」

「ユウキ君、考えてもみたまえ。そもそも、五十層での決闘はどう考えても彼の勝利だ。確かに私は彼の隙を突いて長剣を出したが、彼は反応出来ていたし、事実、私に勝った。今までSAOがクリアされなかったのは、こちら側の不手際なのだよ」

「大元の原因は、須郷伸之、だろ?」

 

 というか、そうとしか考えられない。ヤツはこの世界のプレイヤーを実験体として使うつもりだったんだ。さぞかし、良い実験体として使うつもりだっただろう。

 俺の半ば確信している問いに、茅場は強く頷いた。

 

「そう、彼の件もある。君たちは須郷君の予測できない行動に、見事に対応して見せた。キリト君が殆ど片付けたようなものだが、それはこの世界を侵す者を止めてくれた事を意味している。だからこその報酬なのだ」

「……ねぇ、キリトさん。これ、受けても良いんじゃない? 戦わずに帰れるなら、それに越した事無いよ」

 

 ユウキがそう言ってくる。確かに、戦わないに越した事は無い。

 無いのだ、が……

 

「…………茅場。俺は、このデスゲームクリアのために、文字通り身を粉にして戦ってきた。全ては、最上階で待つラスボスを倒す為に……俺以外の全員をログアウトさせた後、俺とまた、五十層の時のように一騎打ちをしろ」

「…………つまり君は、無謀にもこう言おうというのか? 本来のラスボスと決着をつけさせろ、と?」

「俺の今の気持ちを言い表すなら、そうなるな」

「「「「「キリトっ?!」」」」」

「キリトさん?! どうして?!」

 

 茅場含めた全員が驚愕と共に俺を見る。そりゃ驚くだろう。けど……

 

「悪い、ユウキ……ラスボスを倒す為だけに戦ってきた俺にとって、この戦いは避けられない。ここで逃げたら、俺は一生SAO…………この浮遊城に魂を囚われたままだ。そんな状態で現実に戻っても……虚しいだけだ。だから……先に還っててくれ」

 

 俺の頼みに、皆は一様に黙った。少しして、アスナが口を開き始めた。

 

「キリト君だけ還らないなんて、そんなのは嫌」

「そうだよ。ここまで一緒にいたんだよ? 今更一人で戦おうたって、そうはいかないんだから」

「ホロウ・エリアで私を助けてくれたキリトを、一人残していけないよ」

 

 アスナ、リー姉、フィリアが苦笑して言う。

 

「あんたの二刀を鍛えたのはあたしよ? 見届ける義務ってもんがあるわ!」

「キリトさんは沢山の人を助けてました。その最後の戦い、見逃せませんよ!」

「キュルルルル!!!」

「私に力をくれたのはキリトなのよ? 向こうでも力になるって言ってくれたでしょ」

 

 リズ、シリカ、ピナ、シノンが続ける。

 

「平行世界のあたしも助けてくれたし、キリトくんは恩人なんだよ!」

「ケイタとテツオの分も、私たちが見届ける! 黒猫団のリーダーとして!」

「キリト一人じゃ危なっかしいしな。昔の仲間なんだ、見届けさせろ」

「そうですよ、キリトさん。あなたは一人じゃないんですから」

 

 リーファ、サチ、ルシード、ルネードも笑みを浮かべて続けた。

 

「そうです! パパの戦いは、パパ一人だけのものじゃないんですから!」

「お父さん……私たちを助けてくれた。だから……今度は私たちが支える!」

「そうだね! 姉さん達の分も、父さんの力になるよ!」

 

 MHCPとして人を見続けて来た娘達が、俺を応援してくれている。

 

「二年前、デスゲームが始まったあの時から君の事は見てたんだ。仲間を頼ってよ」

「キリト君は俺をボス戦で助けてくれた。その恩返しもまだ済んでないんだ、見届けさせてくれ」

「……ワイはキリトはんのことはいけ好かん! けどなぁ! そんなのは関係ない! ここで死んだら、一生許してやらんからなぁ!!!」

 

 違うギルドに属し、しかし元は同じである三人が俺を見て言う。仲間なんだと。

 

「向こうに戻ってから飯の一つも奢らねぇと、絶対に許さねぇぞ! キリの字!!!」

「俺の店はお前のお陰で繁盛したようなもんだ。向こうに戻ってから、一回くらい飯を奢らせろ。それに、保護者代表として残る義務もあるからな」

 

 大人の男の中でも、特に俺が信頼した二人が言った。真逆の事で元気付ける。

 俺と特に親しかった皆が、俺に声を掛けてくれた。それに胸が詰まる思いを抱いた。

 そして最後、俺の最愛の人に顔を向ける。彼女は苦しそうな顔をしながらも、俺が顔を向けると苦笑を浮かべた。

 

「絶対に、勝って。勝って、向こうでも……一緒に…………!」

 

 その先は言われずとも理解できた。向こうに還ってからも、俺は俺であるために戦う。

 だが、その前に保険を掛けておかなければならない。

 

「……茅場。一つだけ頼みがある」

「ほう? 何かな?」

「俺との戦いの結果とは関係無く…………皆をログアウトさせてくれ」

「「「「「ッ?! キリト?!」」」」」

「あくまで決闘で白黒をつけたいのか…………よかろう。それが……君の決意。背水の陣、かな?」

「――――違う」

 

 茅場の当然の問いに、しかし俺は否定する。俺がこの頼みをしたのは――――

 

「絶対に負けられない。ユウキと、向こうで会わなきゃいけないんでな。その楔だ」

「キリトさん……! 頑張って!!!」

「「「「「勝て!!!」」」」」

 

 ユウキとみんなの応援を背に、二刀を音高く抜き払う。漆黒と翠銀の二刀は夕陽を反射し、その刀身を煌かせている。

 その切っ先ををヒースクリフに向けると、皆は固唾を呑んで下がった。

 俺とヒースクリフ――――【黒の二刀剣士】と【紅の神聖騎士】の一騎打ちの決戦場が出来上がる。

 

「ふっ…………人の意志と言うのは、本当に面白い。もしかしたら私は、この光景が見たくて、この世界を作ったのかもしれないな」

 

 心からであろう、感情のある微笑を浮かべ、俺と後ろの皆を細めた目で見る。その目は、憧憬を内包しているように見えた。

 

「そのあんたが創ったこの世界を、今度こそ、本当のあり方で終わらせる!」

 

 俺の笑みと共に放った声に、ヒースクリフは今度こそ破顔する。歓喜の笑みを浮かべ、十字剣を抜き払って構える。

 

「よろしい、ならば掛かって来たまえ。正真正銘のラストバトルを始めよう!!!」

 

 その言葉と同時、俺とヒースクリフは駆け出した。互いに笑みを浮かべ、互いをライバルと認め、剣舞を舞う。

 黒と翠の二刀、白銀赤十字の十字剣盾。攻撃は最大の防御。防いだ後の隙狙い。

 俺は笑っていた。今までこんな高揚感は感じたことは無かった。それはヒースクリフも同じ。俺と同じ笑みを浮かべている。ソードスキルなんて不要、自分の力じゃないものなんて無粋だ。俺は今、最強の騎士を相手にしているのだ。

 俺自身の力でなくては、それは無礼にあたる!

 

「うおおおぉぉぉぉぉっ!!!」

「はあああぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 互いの咆哮、攻防で散る火花と響く音。それは剣舞の調べ。

 そう、俺とヤツは舞っているのだ。この世界での最後の舞を。そして楽しんでいる。互いの命を懸けた、戦いを。黒と紅が混じり合い、神速を以って刃を交え、鎬を削る。

 やがて、二つの音が響いた。

 リンベルサーと十字盾が吹っ飛ばされたのだ。ユウキ達が悲鳴を上げているが、それに俺は頓着しない。目の前の男も同じ。

 《二刀流》は片手直剣二本を、《神聖剣》は片手剣と盾を同時に装備する事でスキルの効果を得る。つまり、今の俺達は互いに元の――――昔の戦いと変わらないのだ。

 そのまま漆黒と白銀の剣を交え続ける。既に防御は一切考えず、ただ攻め、ただ弾き、ただ隙を突いて相手を斬る。今までしてきた基本的な戦いであり、久しくしていなかった戦い。このまま続けばと、そう思った。

 しかし、いつかは決着が来るもの。

 既に互いのHPは一割にまで減少している。もうこれ以上続けられない。

 ヒースクリフもそれを悟ったようだ、俺を見て腰溜めに構える。俺も同じ構えを取る。

 

「……そろそろ決めようか、キリト君」

「……そうだな、ヒースクリフ」

 

 互いに同じ構え。放つ技は《フェイタル》。溜め時間に応じて威力が上がるこの技は、それに応じて光も強力なそれへ変わる。

 数秒、数十、数百、数千秒経っただろうか。互いの剣の元の色が分からなくなり、紅玉宮の真紅の間を、虹の七色の輝きが満たす。

 更に溜める間、俺は想像する。俺の根源を。俺の力を。

 この世界で生きる間、俺は贖罪に生きた。多くの罪を背負った俺は、“闇”そのものと言っても良い。それは生ける死者だからでもある。

 

 

 

 この光が俺の力なら、俺は“闇”の光を放つ――――!

 

 

 

 その想いと同時、俺の剣は虹の輝きから漆黒の煌きへ変わり。同時にヒースクリフの十字剣の輝きも真紅の煌きに変わる。

 

 

 

 互いの象徴に想いを乗せて、全力で解き放つ!!!

 

 

 

 振り抜いての一瞬の静寂、次いで轟音と閃光の炸裂。

 俺の剣はヒースクリフの十字剣を砕き、その刃で彼の胸の中心を斬り裂いた。

 そのまま数秒停止し、ヒースクリフが口を開く。その表情は晴れやかだ。

 

「――――見事だ、キリト君……ここまで鮮やかに勝利して見せるとは、私の想定以上だ………………」

「――……俺自身……ここまでの戦いが出来るとは、思いもしなかった。やっぱり……あんたとの決着、着けといて良かったよ」

 

 ヒースクリフは俺を労い、俺もヒースクリフを労う。二人の間に弛緩した空気が流れた。他の皆が寄ってくるも、それも俺達から数メートル開けて止まる。

 俺はリンベルサーを、ヒースクリフは十字盾を回収し、金で装飾された真紅の玉座の前で対峙する。この男とは決着は着いた。後はログアウトを待つだけだ。

 

「……さあ、最後のボスは倒された。君たちは全員、現実へ帰れる。これから順に、君達はログアウトしていく」

「……ヒースクリフ、あんたは?」

「フッ……私は戦いに敗れたのだよ。ここで私自らがルールを破っては、私にとって唯一の現実であるこの世界を、否定する事になってしまう」

 

 ゲームでも口にしていた、同じセリフ。昔は特に感慨は浮かばなかった。格好良いくらいしか、感想は浮かばなかった。

 しかし、この男と直に刃を、心を交えた今、俺は何か声を掛けようとして、しかし出来ないでいる。結局ゲームと同じ、それでも、俺にとっての本心の言葉を口にする。

 

「……確かに、この世界は仮想世界だ。でも、この世界を全力で生きた俺は、ここも一つの現実だと思ってる。確かに狂ったゲームだったけど、それでも、な…………」

「っ! ……そう思って、くれるのか…………ありがとう。キリト君……」

 

 ヒースクリフは深く瞑目した後、左手でウィンドウを操作する。

 システムアナウンスが流れた。『ゲームはクリアされました』という、お決まりの言葉が響いた直後、うわあぁっ!!!!!! とアインクラッド全体が震えた。この部屋でも、攻略組の皆が喜んでいる。

 俺とヒースクリフはそれを遠巻きに眺め、互いに別れを告げる。

 

「キリト君……それとも、現実の名で呼べば良いのかな?」

「いや、この世界にいる間は、《キリト》で頼む、《ヒースクリフ》」

 

 まだ、最後になるだろう楽しい夢から、醒めたくないから。

 

「そうか…………君に、念のためにGMアカウントを託しておく。必要になれば使うと良い。とはいえ、使えるのは……」

 

 そう言った直後、目の前に卵型の半透明な物体が降りてきた。

 それをキャッチすると、それはいきなり消えた。格納されたのだろう、俺のナーヴギアのローカルメモリに。

 

「それが関わる世界だけだがな…………それは世界の種子、芽吹けばどういうものか分かる。もし君が、この世界に憎しみ以外を持っているのなら――――」

「あるさ。皆と会えて……楽しい時もあった。それを無くす事なんて、出来ないからな」

 

 俺の即答に、一瞬驚いて目を見開くも、すぐにそうかと微笑しながら呟いた。

 

「…………ヒースクリフ。良き旅路になる事を祈ってる。因果の交差路で、また会おう」

「気付いていたのか……私も、キリト君が良き生を歩む事を、心から祈っているよ」

 

 柔らかく微笑み、今度こそヒースクリフ――――茅場晶彦はこの世界を去り、どこかの異世界にあるであろう、本当の浮遊城を目指して旅立った。

 

「…………また、な。茅場……」

 

 俺は青い光に包まれつつ、ユウキの喜ぶ姿を見ながら、意識を浮上させた。ユウキと向こうで会える事を夢に見て、俺は現実へと帰還する。

 ユウキと最後の会話が出来ないのが少し寂しいが、向こうでも会える。そう思って、俺は我慢する事にした。

 

 最後に俺が見たのは、茜色の夕陽の中、主を失って役目を果たした浮遊城が崩れ去るところ。

 崩れ行き、赤く煌く光に紅玉宮が呑まれ、その最後の一欠片を散らすとこだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これが、2022年11月7日に勃発し、2024年11月7日に収束した大事件。

 

 

 

 

 後に、【SAO事件】と呼ばれる事になる世界の終焉……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――となる筈だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 はい、如何でしたでしょうか。

 ヒースクリフとの戦い、そこそこ緊迫感というか、臨場感は出ていたのではないかと思います。でも原作のアスナVSユウキのようなギリギリ感はちょっと薄いですね、そこは精進し、物凄い後は結構良い感じで書けています。

 ちなみに最初にあったチート装備についてですが。実はゲームやアニメでも十個の装備欄があります、それを本作のキリトは全てチート装備で固めました。

 まぁ、実は一つだけ、本当の意味で最強のチート装備でないものがあります。結婚指輪にもなっているエターナルリングではありません、首飾りが最強ではないです。

 ゲーム《ホロウ・フラグメント》をやり込んでいる方ならすぐ分かったと思います。

 今話を書いていた時点で出店されているゲームは《インフィニティ・モーメント》と《ホロウ・フラグメント》で、ゲームにありがちですが、タイトルの名前を借りた装備というものがあります。お守り装備が前者のゲームなら、このキリトが揃えた装備には後者のものが無いんです。

 現時点では入手しません。当時はアップデートしてませんでしたので、無いものとして書いていたからなんです。なので存在自体一切触れてません。

 ですが、現時点では、と書いているので……にふにふ☆

 ちなみに入手方法については明記しませんが、ヒントは一応今までで出しています。まだ入手していない人は頑張って私の前書き、後書きを読んで推理してみて下さい。ヒントは《HF》ストーリーのお話です。

 余談ですが、PSVita&PS4ゲーム《ロスト・ソング》では、種類は言いませんが同名の武器が手に入ります。ゲームをプレイしている中でまだゲットしていない方は探してみるのも良いと思いますよ。何でこれが手に入るの? って首を傾げる武器もあります。

 おかしいなぁ、SAOのものの筈なんだがなぁ……というものだったり、見た目同じでも名前が違う武器なんてものもあります。原作のキャラがALOで装備してる武器もありますから、ファンの方も狂喜乱舞した事でしょう。私もです。

 アップデートで追加されたボスからはGGOキリトの原作武器【カゲミツG4】が手に入りますからね。ただ《ロスト・ソング》の歴史ではGGOが無いので、バグってる設定で手に入りますから、名前は一部伏せられてます。

 でも強いです、そして高く売れます☆(笑)

 アップデートでGGO衣装も手に入るので、シノンと一緒に是非GGOミリタリージャケットで冒険に出かけましょう。《HF》と《LS》の両方で可能です。恰好良いですよ、長髪キリトで《二刀流》は。

 私は持っていませんが、PS4版の《Re:HF》では主人公であるキリトを女性アバターに変えて、完全に別人プレイを可能としているようですね。TS好きの人は一見の価値あるのではないでしょうか。私はハードが無いので見れないです……(泣)



 さて、長々と蛇足を語りましたが……最終章と言っておきながら、何やら妙な終わり方をしましたよね?


 既に答えは出ています、というか最初から出してるんです。


 言っておきますがALOにはまだ入りません、ALOの前のタグのお話になります。


 そして今までの前書きや後書き、活動報告などで、違いを、とか、差を付けて書いている、とか私は書いています。


 実はこれ、原作との違いだけじゃなかった訳です(笑) 引っ掛かった人は多いだろうと思います、逆にん? と何かが引っ掛かって首を傾げていた人はとても国語力が高いです。

 私、原作と違いを出すために、というのは限定的には書いていても、全体的な事に関しては明記していません。その為に長文を書いていました、半分わざとです☆

 にふにふ☆



 さて、そろそろ次回予告です。


 二年もの長きに渡って過ごした鋼鉄の浮遊城《アインクラッド》、その最期を見届けたキリトは静かに目を閉じ、現実への帰還を夢見る。愛する人との再会、大切な家族との再会、そして自身に待っているだろう死の定めに思いを馳せながら。

 しかし、そんなキリトの目の前に映ったのは、あり得ない光景だった。


 次話。第二回SAO編 第一章 ~始まりへの遡行~


 最終章というのは《逆行する前のSAO》という意味だった訳です。


 ちなみに遡行とは、時を遡る事を言います。逆行を難しく言っただけです。



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