ソードアート・オンライン ~闇と光の交叉~   作:黒ヶ谷・ユーリ・メリディエス

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 どうも、おはこんばんにちわ、黒ヶ谷・ユーリ・メリディエスです。

 今話はシノンのキャライベントですね、前半はゲーム、後半はGGOの会話を参考に書き上げています。

 視点はシノンです。結構シノンの心情を忠実に再現できたのではないかと思います。ゲームではキリト以外の心情描写はほぼありませんから、ゲームをプレイした方はこんな感じに思っていたのかなと妄想して下さい。

 ただ本作のシノンはゲームのシノンより、幾らかキリトに対してマイルドです。ゲームと違ってアスナ達全員に保護されたのでは無く、キリトによって庇護されているからですね。

 ただ庇護されているだけは嫌だという事でシノンは自らを強くしようと頑張っています。そのため、ちょっとだけ卑屈な部分も。そこは元来の性格が表れています。

 ではどうぞ!


第二十四章 ~猫の懺悔と黒の守護~

第二十四章 ~猫の懺悔と黒の守護~

 

 《朝田詩乃》こと《シノン》と名乗っている私は、今、キリトという男に戦闘の訓練をつけて貰っている。《SAO》と呼ばれるこのデスゲームに巻き込まれて、既に一ヶ月が経とうとしていた。

 現在は八十三層までクリアされ、順調に攻略が進んでいるらしい。キリトは前線から外されている為、攻略速度は落ちているらしいけれど。

 なんでも、キリト、同居人の短剣使いフィリア、彼の娘の大剣使いストレアのレベルが異常に高く、レイドのパワーバランスを取るためだとか。ボス攻略には参加するけど、マッピングは他の人達ですることになったらしい。

 それと、アスナ達から内緒で教えてもらったのだが、キリトの疲れを取るためだとも言っていた。確かに、ここ最近の彼は疲れを溜めている気がする。二週間前の第一層地下迷宮探索でも、ボスを倒した時に倒れたらしいし。

 ずっと前からソロとして独りで生きていた時の無理・無茶が普通になってしまって、自分の状態に鈍いところがあるんだとか。どれだけ無茶を続けてきたんだろう?

 そんな疑問を持ちながら、彼のホームの庭でキリトの訓練を受けている。

 私が一番上手く扱える武器は短剣と投剣。特に投剣は今のところ百発百中で、キリトからも驚きと共に褒められている。投剣の命中率が高いのは相当凄い事らしい。

 問題はメインで近接武器の短剣なのだが……

 

「ン……やっぱりしっくりきてない感じだよなぁ……」

「そうなのよ……なんでだろ?」

「片手剣や曲刀、細剣よりは良い感じなんだが……投擲武器は概して攻撃力が低いし、チャクラムも耐久値がある間は無限投擲が可能とはいえ、前線で戦うには決定打に欠けるし……」

 

 そう。なぜか私はしっくりくる武器がないのだ。短剣を使ってはいるが、それも他の武器よりマシなだけ。キリトに言わせれば、前線に出ればすぐにやられるレベルらしい。

 同じ短剣使いのフィリアにも、一対一でも辛勝すら難しいかも、と言われた。

 

「でも、私は強くなりたいのよ。どうにか出来ない?」

「ン……ンー……武器がダメならスキルで補う、か? でもソードスキルも使い手自身が武器の扱いに習熟してないとダメだしなぁ…………」

 

 私の我侭に腕を組んで唸るキリト。

 彼は厳しいと言いながらも、分かりやすい指導をしてくれる。お陰でそれなりにレベルは上がっていて、今は98。最前線にパーティーで出ても大丈夫なレベルではあるらしいけど、いかんせん武器自体に馴染んでいないからまだ行けていない。

 妖精リーファは99、別タイトルの《ALO》というゲームでも片手剣を使っていたからか、最前線に近いフィールドでフィリアとストレアの三人で狩りをしている。

 私だけ足手まといになっているのだ。

 

「ンー……シノンは近接武器というより、遠距離から攻撃する武器が得意っぽいんだよなぁ……でも《SAO》って遠距離武器少ないし……シノンにユニークスキルが出てれば話は別なんだがなぁ……」

「私に? ……そういえば、SAOに遠距離武器が少ないなら、それに比例して遠距離スキルも少ないのよね?」

「ン? そうだけど……なんか気になるスキルでもあったのか?」

「うん。これ見て」

「って、ちょっと待て!」

 

 キリトが慌てるけど、私にはその理由が分からなかった。

 何? と聞くと、キリトは真剣な目をして言ってくる。

 

「いいか、シノン。他人には自分のステータスを見せちゃいけない。ステータスは自分の生命線。それを知られればデュエルは勿論、PKとの戦いで圧倒的不利になる」

「え? でも、キリトは私とデュエルしたり殺そうとしたりしないでしょ? 私が人殺しに走れば別だろうけど」

「いや、まあ、それはそうだけど……」

「じゃあ別に良いじゃない、あんたが言わなければ。ほら、ここ、早く見てよ」

「はぁ……他の人には見せるなよ」

「わかってるわよ」

 

 キリトは溜息を吐きながら私のスキル一覧を見る。すると、訝し気な声を上げた。

 

「どうしたの?」

「《精密動作》に《危険察知》のパッシブスキルか……これを取ってるなんて珍しいな、普通狙わないと出せないスキルだぞ。しかも結構数値も高い……」

「え、もしかして効果薄いの?」

 

 これらを珍しいと言うのなら、もしかしたら効果が低くて実用では無いのではと思った。しかしキリトはその考えを否定した。

 

「悪い、俺も一応取ってコンプリートしてるけど、その二つについては俺もあまり分からないんだ。クリティカル率と《索敵》と《隠蔽》に補正が掛る事くらいは分かってるけど……ン? これは……《射撃》だと?!」

 

 これが気になったスキルなのだ。昨日の夜、スキルの熟練度確認をしていた時、いつの間にかあったのだ。それは既に習得している。

 

「そのスキル、いつの間にか出てたのよ。どういうのか分かる?」

「いや、こんなの見たこと無いが……毎日の訓練で出たのかもしれないな……いや、もしかしたら投剣の命中率が高いから出たのか」

 

 《射撃》スキル……名前からして遠距離武器スキルだろうけど、やっぱり……

 

「射撃ってやっぱり……銃、とか……?」

 

 数年前から私を蝕むモノ、銃。悪夢にも見るそれを、私はここでも見るのか。しかも、自分の武器として。

 しかしキリトは、私の問いに対して、横に首を振った。

 

「いや、それは無いな。ソードアート・オンラインというタイトルが示すとおり、そもそもこの世界は遠距離武器が少ない。チャクラムや投剣、ピックがせいぜい…………いや、待てよ? もしかしたら…………シノン、急いで最前線の店に行くぞ!」

「えっ? え、ちょっと?!」

 

 私の手を取って足早にコラルの村に向かい、最前線の街に転移する。そのまま裏路地をドンドン進んでいくが、いい加減私はキリトに問い質したくなった。

 

「ちょっと待ちなさいよ。なんでいきなり最前線の店なの?」

「いいか、シノン。十中八九まず間違いなく《射撃》スキルはユニークスキルだ。俺も知らないスキルだし、誰かが持ってるって話も聞かない」

「ユニークスキルって、そんなに凄いの?」

「俺の《二刀流》、ヒースクリフってヤツが持ってた《神聖剣》がそれだ。大雑把に『ゲームバランス崩壊スキル』と言える」

 

 うん、キリトがゲームバランス崩壊気味なのは知ってた。皆から話を聞く度に言われてるし。

 

「それでだ、いいか? この世界には遠距離武器は少ない。そして、《射撃》スキルはおそらく遠距離武器スキルだ。それ専用の武器は今まで役に立たなかったものだろう。だから骨董品としてあるかもしれないんだ」

「なるほど……だから最前線の店なのね?」

「ああ。最前線の骨董店ならある確率は高いし、何よりシノンは遠距離攻撃が得意分野だ。後衛から攻撃できるのはパーティー戦で、大きいアドバンテージになるからな。本人がやる気だし、是非とも攻略組に入って欲しい」

 

 そう言ってそのまま路地を進み、うらぶれた店に辿りついた。店と知らなければ絶対に入らない家屋だ。

 中に入ると、ローブ姿の老人NPCが私たちを迎え入れた。

 

「……いらっしゃい」

「私一人だったら、絶対にここ入らないわよ……」

 

 内装は陰気で、何に使うかよく分からない物が多い。ボロボロなローブに錆付いた武具、染みの浮いた本…………骨董店というより、怪しい呪術具店の方が正しいのではないだろうか?

 キリトはこういうところが好きなのか、ウキウキで置いてある道具類を漁っている。

 

「こういうところに、よく値打ちモノが転がってるんだよ。お? ……店長、これは?」

「ああ、それは弓だな。つい先日手に入ったんだが、珍しいだけで役には立たんよ」

 

 キリトが持ち上げたのは白い革が巻かれた弓だった。既に弦は張られていて、神聖さと威圧感がある。それを受け取り、一緒にあった矢を番えてみる。

 かなりしっくりきて、これは使えると確信した。

 

「うん、使える。戦えそう」

「分かった……店長、これ買い取る……って、なんだよこの値段。役に立たないって言ってたんじゃなかったのかよ…………」

「どうしたの? もしかして高いの?」

「いや、余裕で何とかなるよ……ちょっと値段が高すぎるだろうってだけだ」

「キリトが高いって言うって……幾らなの?」

「300万コル」

 

 その値段に完全に固まってしまった。

 NPCの店やリズの武具店で扱われてる装備でも、10万~30万がせいぜい。それを軽く超える金額を聞き、驚愕と共に固まったのだ。

 キリトが買い取った白弓をトレードで受け取り、それを試し射ちしてみると、スキルが立ち上がった。これは私には完全に使えるのだ。

 今日の訓練は終わりになったしすることもないので、余った時間を商店街の冷やかしに使うことになった。その間、キリトにとっては理不尽な事だけど、私はムクレていた。

 

「……借りは、あまり作りたくないんだけど」

「借りとか思わなくても良いよ。ユニークスキルのお祝いと思ってくれ。さっきの威力を見る分に、多分少し訓練すれば最前線に出られるぞ」

 

 キリトの言葉に嬉しく思うも、やはり300万コルは大きすぎる借りだ。それもデスゲームの中で絶対必要な武器を買ってくれた300万。これは本格的にケジメをつけなければならない借りだと思う。

 少しでも感謝の印として何かをしたい。今の私に出来る事……そうだ。

 

「…………ねぇ、せめてご飯を奢らせて」

「へ? いや、それは悪いっていうか」

「何よ。私には奢られたくないって言うの?」

「……いえ。じゃあお言葉に甘えます」

 

 最近分かったが、キリトはこと戦闘以外のことでの押しに弱い。それが戦闘に一切関係無いのなら尚の事。

 キリトを誘えた事に嬉しく思い、同時に何故嬉しく思うのか不思議に思いつつ、七十六層にある喫茶店に入る。木造建築でいくつもテーブルがあり、アニメや小説で出てくるような西洋の喫茶店が思い浮かぶ。リアルでもイギリスなどの喫茶店はこうだろうけれど。

 その一角のテーブルに着き、対面で座る。メニューを取ってどれにしようか選ぶ。

 

「……ここ、落ち着く雰囲気だな」

「そうでしょ? 生産クエストの時に見つけたんだけど、ここのデザートが美味しいのよ。ついついリーファと来てしまってね。オススメは、【リンゴのシブースト】よ」

「へぇ……それじゃ、俺はそれと……【フルーツミックスケーキ】」

「なら私も【リンゴのシブースト】に、【フルーツサンド】」

 

 注文を済ませ、すぐにやってくる店員。ここが現実とは違うところだ。

 

「……そういえば、記憶はどうだ? 結構戻ったんだろう?」

 

 そう。私は少しずつだが、記憶が戻ってきている。

 ――――忘れていたかった、忌まわしい記憶も一緒に。

 

「うん……」

「…………無理するなよ。焦っても良いことは無いからな」

 

 そう言ってシブーストを食べるキリト。

 少し前に、彼が今年で十四歳だと聞いた。今の私は数えで十五歳だから彼は年下なのだが、全くそう見えない。落ち着いている雰囲気や喋り方は歳相応どころか、大人以上ではないだろうか。

 それが私の幻影と重なり、自己嫌悪に陥ってしまう。

 似ても似つかない彼と私。

 彼の強さがいったいどこから来るのか、知りたくなった。

 

「不躾で悪いんだけど……言いたくないなら言わなくて良いの……キリトはさ……人を殺して、どう思ってる?」

「どう思う、か……そうだな…………後悔はしてない。でも、もっと違う方法があったんじゃないか、って思うことはあるな」

「…………それを、どうやって乗り越えたの?」

 

 私のか細い問いに、キリトはスプーンを置き、瞑目する。

 一分ほど経った頃、ようやく彼は口を開いた。

 

「……乗り越えてないよ」

「え?」

 

 強いと思っていた彼のその答えは、私にとっては予想外も良いところだった。困惑しながら、彼に聞く。

 

「乗り越えてないって……でも、キリトは普通にしてるよね?」

「……人を殺した夜、俺は必ず夢でそいつ等を見る。夢の中の俺は、何も抵抗できなくてな…………そのまま殺されるんだ。人を殺すのは嫌だし、怖い。それがたとえ昔のことでも同じだ。一切乗り越えてないよ」

「そ、そんな…………」

 

 キリトほどの強さを持っても、過去を乗り越えられないなんて…………なら、私はずっと克服できないのだろうか? 

 悪夢に出る、あの《銃》には……あの男には…………

 

「でもな」

 

 キリトが続けて口を開いた。その言葉はさほど大きいとは思えなかった。ともすれば、店に包まれている喧騒でかき消されてしまうほどに、小さな囁き。

 しかし、なぜか私の意識はそれに引かれた。大切な事だって、思ったから。

 キリトはゆっくりと語り始める。

 

「忘れる事が出来なくても……悪夢に見るのだとしても……それは消す事はできない。だったら、それを受け入れて生きるしかない……シノンがこの事を聞く理由は、大体分かった。その上で言わせて貰う……誰かを守る為にしたのなら、守られた人の事を考えて、自分を救っても良いんだ」

「自分を、救う……? 守られた人の、事を……考えて?」

 

 考えた事が無かった。人殺しの自分に、そんな権利があるのだろうか……?

 

「殺人は確かに、してはならない事だ。でもな……もしその選択が人を殺すことで人を護るものだとしたら……そして、殺さなければ自分が、あるいは誰か大切な人が殺されるとしたら。その状況で、それでもその選択を選ばないことが出来るか?!」

 

 キリトの小さな、しかし鋭い叫びに、私は息を詰まらせた。

 知っているのか。一瞬、そう思った。この目の前にいる黒尽くめの少年は、私を蝕み、過去を黒々と染める、あの忌まわしい出来事を知っているのか、と。

 

 

 

 ――――違う……多分、キリトも……昔、その選択をしたんだ……

 

 

 

 私は十一歳の時、母親と共に銀行にいた。その時に銀行強盗が現れ、拳銃を取り出して威嚇した。警察に連絡しようとした職員を一人撃ち、続けて母親も撃とうとした。

 母親は私が幼い頃に父親が死んだ事がキッカケで、精神が幼い状態になっていた。私は幼い心で母親を護ると決めていた。だから強盗から銃を奪い取り、それを奪い返そうと襲ってくる強盗の男に向けて銃を撃った。

 一発目は腹に、二発目は右鎖骨に。ここで私の両腕両肩は激痛を発していて、しかしそれを無視しての三発目の射撃は、腹を狙ったものの、狙いが逸れて男の額の中央へ。

 男は絶命し、母親を守れたという喜びと共に母を向けた。この世で誰よりも愛する母親の両眼に――――

 明らかに私に向けられる、恐怖と怯えの色を見た。

 まだ両手で自分が握っていた拳銃のグリップには、赤黒くドロリとした飛沫がついていた。

 そう。私は、母親を守るために、人を殺したのだ。

 状況や事情は違うだろうけど、おそらく、キリトも同じ。

 

「俺はたとえ、【殺戮者】のレッテルを貼られて極刑に処されることになっても、きっと同じ事をする……それでも俺は弱い。それは力がどうとかの話じゃない。俺は多くの罪を背負って生きてる、止められた筈の事を止められなかった、な…………乗り越えられないし、過去を克服することもできない。なら、受け入れて生きるしかない。自分の選択は、人を守ったんだって」

「それが、キリトの生き方…………私には……」

「一人でダメなら、俺がシノンを支える」

 

 できない、と言おうとして、しかしキリトの言葉で固まった。

 人殺しの私は昔から虐められていた。同級生、その保護者、学校の教師達にも、だ。誰一人として私を理解してくれなかったし、理解しようともしてくれなかった。私自身、それを拒んでいた節があるのは否めないが、誰も《朝田詩乃》という一人の人間を見てくれなかったのだ。

 でもキリトは私を見てくれた。全ての事情を話したわけではないのに、それでも私を見てくれた。その上で、支えると言ってくれた。

 胸の奥が大きく高鳴った。それは今まで感じたことが無い疼き。それが何なのか、今の私には分からないけど…………気分の悪いものでは無かった。

 でも、過去の経験から簡単に信じられなくなってしまった私は、おずおずと確認してしまった。

 

「……ホント?」

「ああ。現実の家が遠いといつでもってわけにもいかないけど……それでも、支えるさ。手段は色々あるんだしな」

「ホントにホント? 私を、裏切るなんて……しない?」

「…………裏切り、か。皆に隠してる事の中でも特大のがあるけど、それは裏切りになるかもな……」

 

 皆に隠している特大のもの。それが裏切りにあたるかもしれないと言う。

 人は誰しも秘密を抱えるものだが、キリトのそれは確かに大きそうだ。皆に言っていない時点で、それは確信を持って言える。

 それを知りたいけど、皆にも言っていないのなら、私が聞いても無駄かな。でも、一応聞いてみたい。

 

「それは、どういうのなの?」

「皆が知ったら、俺を殺し来るレベルだ。実際は、俺も被害者なんだがな…………」

 

 ふっ、と自嘲気味に笑うキリトの顔を見て、信じても良いかもしれないと思った。どうしてかは分からないけど、何故かそう思えたのだ。

 

「信じるわよ。キリトはこんなにも優しいんだし、今までしてきた事も皆の為って聞いた。だから、私はキリトを信じる」

「そうか…………なら、その『信頼』に応えられるよう、裏切らないようにしないとな」

 

 寂しげに笑うキリト。でも、そこに切なそうな表情は見えない。

 過去の自分を振り返ってでもいるのだろうか……?

 

「さ、早く食おう。せっかくの美味いデザートが無くなっちまうし」

「そうね……それじゃ――――キリトの美味しそうなケーキ、貰い!」

「あっ! 後で食おうと取っておいたのに! ならこっちだって!」

 

 そのまま何事も無かったかのようにはしゃいで食事をする。笑顔溢れる食事は、何年振りだっただろう。とても、楽しい平和な一日。

 

 でもその時、私はまだ知らなかった。

 彼が抱えている『闇』の深さを…………

 それを知る事になるのは、本当に、ずっとずっと後になってからだった。

 

 

 

 

 

 

 




 はい、如何でしたでしょうか?

 キリトは原作キリトをトレースして台詞を口にしているのですが、割と本心で話している面もあります。ですが、シノンに掛けた言葉が完全にブーメランになると自覚していません。

 ここ、ストーリーのキーポイントです、ある意味最重要と言っても良いですよ。何度かその辺はお話に出ていますね。


 シノンの過去ですが、ここは原作と同じです。SAOに入るかどうかで原作とゲームで分岐しているんですね。

 記憶が戻ったのはゲームよりちょっと速いですが、ここで思い出させておかないと、彼女の強さを求める理由が分からないままになってしまいかねなかったので、この時期に思い出すようにしました。

 ゲームでは《短剣》と《弓》を交互に使ってくれます。弓スキルの《ヘイル・バレット》と呼ばれる六連撃は毒をボスにすら付与させる技ですので、とても重宝しました。高難度クエストの際には彼女を連れていき、スキルの連携を連発してフルボッコなんてしていましたね(笑) そのお蔭で正妻アスナより十数レベル上でした(笑) HFでアスナは130レベルなのにシノンは200レベルですしね(笑)


 そんなこんなでシノンに超強化フラグが立ちました。

 最後の三行、キリトの『闇』、そしてそれを知る事になる『時期』について明確に記していませんが、何れ必ずわかります。そして分かる時がシノンの超強化フラグ成立です。現段階ではまだです。

 ネタバレになりますが、基本的にSAOメインキャラは原作を超越して強くなると思って下さい。全員という訳ではありませんが、その一人にシノンが入っています。

 理由? シノンが好きだからに決まっています(笑)

 正確にはシノンも好きです。過去に誰かを守るために人を殺し、それを周りから言われて心に傷を負っている、という過去に悲しい事があり、それでも立ち向かうという所がツボなんです。

 そういう訳で、何れ転生特典&前世の経験込みの強さを持つキリトに素で匹敵するキャラが誕生します。その頃には戦闘描写はもっと細かく、臨場感溢れる書き方になっていると(自己判断ですが)思うので、楽しみに待っていて下さい。

 とは言え、毎度言っていますが物凄い後です。それもあってこんな阿呆な連続投稿をしているという理由もあります。溜めているお話が物凄い話数という事もありますが。


 ではそろそろ、次回予告です。


 キリトによる鍛錬を受け、SAO在住のフィリア達はおろかシノンにも後れを取っていると感じるリーファには焦りがあった。それはとある感情から起きるもの。

 感情と焦りが混ざり合って苦悩する中、キリトの言葉を受けてリーファは思わぬ行動に打って出た。


 次話、第二十五章 ~妖精の焦燥と黒の過去~


 妖精リーファとのお話です。



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