ソードアート・オンライン ~闇と光の交叉~   作:黒ヶ谷・ユーリ・メリディエス

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 どうも、おはこんばんにちわ、黒ヶ谷・ユーリ・メリディエスです。

 前話の後書きでオールフィリア視点っぽい事を言っていましたが、キリト視点もあります。ただ諸事情で途中から変わるだけです。

 さて、今話は前話言った通り、キリトVSホロウキリトです。ゲームでもある展開で、更には最強の敵の片割れ《ナイトメア・ホロウ》としても出現する敵ですね。

 現時点でキリトのレベルは220を超えているので、この戦いは《ナイトメア・ホロウ》との戦いと言っても良いかもしれません。ただの《ホロウキリト》では負けるでしょうし。

 今作の《ホロウ》は《オリジナル》と同じ技量を持ち、同じ思考回路を持つという設定です。

 ただしこの《ホロウキリト》は人格が違います、更にはボスとプレイヤーという立場があるのでボス補正が働きます。その差で勝負が分かれてきます。

 拙い戦闘描写ですが、楽しんで頂ければ幸いです。

 ではどうぞ!


 ちなみに、《ホロウキリト》は喋ります。『』で喋ります。
 
 キリトは今まで通り「」これです。


第二十一章 ~虚ろな黒~

第二十一章 ~虚ろな黒~

 

「『ハアアアアアアッ!』」

 

 俺と俺のホロウは、二刀を激しく交えていた。前世でゲームをしていた頃から薄々思っていたが、ホロウはやはり記憶・体験を受け継いでいるらしい。俺と全く同じ剣筋だ。

 俺とホロウは《桐ヶ谷和人》としても《桐ヶ谷悠璃》としてもおそらく同じだ。つまり俺のする事、考える事は全てホロウにも分かると言っても良い。技は当然、フェイントや剣のクセまで同じだろう。

 違いと言えば、現状の立場か。

 俺は《桐ヶ谷和人》として生を受けてからも、多くの罪を背負った。SAOの製作に携わっておきながら何だが、初めは作らせないよう努力した。しかしやはり無理と分かり、ならばとゲーム製作に当たって多くの担当をした。流石にボスの配置は担当できなかった(ラスボスは《ヒースクリフ》――《茅場晶彦》自身なので当然だが)が、多くの情報を得られた。それを第一層の時から小出しにして、多くのプレイヤーを助けられるようにしたのだ。

 しかしそれでも犠牲者は後を絶たなかった。少なくない人数が犯罪・殺人に走った。犠牲者が増えるのを俺は許せなかった、だから不本意ながらレッドを殺したのだ。俺はその罪を背負っている。

 だがアスナ達攻略組は、一部反感・不満はありながらも俺を受け入れてくれている。俺は《桐ヶ谷和人》だと隠していながら、それに甘えている。

 ならば、少しでも早くSAOをクリアするのがせめての恩返し。それに、ここで負ければ【アインクラッド】にいるプレイヤーは死ぬか隔離エリアに行くかされて、クリアまでの道が遠のく。現実で横たわっている肉体の限界、衰弱死のことも考えると悠長にはしてられない。

 俺は絶対に負けるわけにはいかないのだ。比喩抜きで、俺の双肩と二刀には、全プレイヤーの命が掛かっているのだから。

 

「うおおおおおおぉぉぉっ!!!」

『っ?!』

 

 俺の突然の咆哮に意識を割いてしまったホロウに、《スターバースト・ストリーム》を放つ。高速十六連撃は全て綺麗に決まり、ホロウを十メートルほど吹っ飛ばす。

 今の攻撃でやっと七割に入った。やはりと言うべきか、思考・記憶・戦い方・スキルまで同じなら装備も然り。超ステータスと超高性能武具に身を包む俺だ、この程度でHPを多く削れる訳が無い。

 しかも重要なのは、この戦いに限っては装備の特殊効果――《ラストリーヴ》と《コンボリーヴ》という、ほぼ絶対に死なない特殊効果が無効化されるということ。つまり、いつものように戦えば俺は死ぬのだ。この二刀【魔剣エミュリオン】【聖剣リンベルサー】の特殊効果としてそういう特殊効果を無効化する効果がある。他のステータス上昇やリジェネ関連は効果はあるだろうが、いざという時の保険がないのは地味にきつい。

 加えて二刀の特殊効果に、スキルの硬直や使用待ち時間、初動を全て省略するものもある。一切気を抜けない。抜けば、《スキルコネクト》を連発されて何も出来ないまま死ぬ。

 

『流石、オリジナルは違うな』

「そういうホロウのお前こそ」

 

 互いにニッと口を歪め、二刀を構える。全く互角の戦いの中、勝敗を分けるのは何か。

 

「キリト……絶対に、勝って……!」

 

 後ろにいるフィリア。見るわけにはいかないが、おそらく焦燥に顔を歪めているだろう。もしかしたら泣いてすらいるかもしれない。

 なにせホロウのHPはまだ七割あるが、俺は既に注意域の四割。どうもホロウにボスとしての補正が掛かっているらしく、中々HPを減らせない上に俺よりステータスが高いので防戦一方。しかも掠っただけで結構削られる。はっきり言って詰んでいる。

 

『もう諦めた方が良いんじゃないか? そっちの方が楽だぜ?』

「お断りだな。あいつらを消えさせるわけにもいかないんでね」

『強情だな。ま、俺としてはオリジナルを殺さないとダメなんだけどな』

「お前、俺とは違うんだな。簡単に殺すとか……」

『事実だからな、偽善振っても仕方が無い……そろそろ、決めさせてもらうぜ』

 

 そう言ってホロウが深く腰を落とした。おそらく、《神速》を使った突進攻撃を喰らわせるつもりなのだろう。俺も持ってるユニークスキル全てを使っているとはいえ、それは相手も同じ。むしろ俺よりステータスが高く、本能で戦ってる分俺の数倍は強いだろう。

 徐々にリジェネで回復していき、俺は六割、ホロウはボスリジェネもあってフル回復してしまった。これも勝負が中々つかず、俺に勝ち目が薄い原因の一つ。

 次の瞬間、ホロウが一瞬で突っ込んできた。俺も迎撃するも、しかし二刀連撃は一撃も当たらない。そのままホロウの二刀を喰らい続け、ホロウが《ダブル・サーキュラー》を発動、思いっきり吹っ飛ばされた。

 

「キリトっ?!」

 

 フィリアの悲鳴が聞こえた。ホロウはゆっくり構えている。俺のHPは残すところ数ドットとなっていた。

 勝てないのか……俺は、全員を死なせるのか……?

 その瞬間、俺の中に何かが入り込む感覚がした。剣ではない、もっと異質な、しかし俺に一体化するような何かが……

 

 ――ユニークスキル《――》 インストール ターゲット《Kirito》――

 

 その表示が視界に現れた瞬間、俺の意識は途絶えた。

 

 ***

 

 わたしは信じられない思いでキリトを見た。

 ホロウとの剣劇の応酬はわたしには見て取れないほどの、超高速の戦いだった。でもキリトとはパーティーを組んでるから分かる。キリトは攻撃を受け続けて、もう危険域に入る。そこにダメ押しのようにホロウがソードスキルを使ってキリトを吹っ飛ばした。

 彼はあたしの左横まで転がってきて止まった。キリトのHPはもう数ドット、あの全プレイヤー中最強と謳われているキリトが手も足も出ないなんて。いくらキリト自身だからって、これは理不尽すぎる。

 そんなキリトに、ホロウは容赦無く迫る。勝ちを確信しているのか、その表情は見たくも無い、狂気に彩られた笑みが形作られていた。

 もう、キリトは終わってしまうのか。

 ホロウの二刀がキリトを斬り裂き、キリトがその体を蒼いポリゴン片へと四散させる、そんな最悪な未来を幻視した。

 無音の悲鳴を口から迸らせる。彼の名前を叫びたいのに、彼が死ぬという恐怖で身が竦んで上手く声が出せない。

 ホロウがどんどん迫る。そしてキリトに向けて二刀を重ねて大上段から振り下ろした。

 

 

 

 その時!

 

 

 

 ガギィィンッ!!! と金属がぶつかる音を立てて、ホロウの二刀がキリトの二刀で止められていた。そのキリトは深く俯いていて表情が見えない。リジェネのお陰か、HPは……何故かHPが完全に回復していた。

 それにホロウも気付き、しかし驚愕の表情を浮かべている。どうやらホロウとして作り出された時点の、キリトが持つスキルか何かの効果ではないらしい。でも完全回復結晶は使ってなかった筈。なら何?

 その思考はほんの一秒にも満たない時間だったが、キリトはその時間でホロウの二刀を弾き返した。そして顔を上げる。その彼の顔を見て、あたしは固まった。

 SAOの顔はリアルに基づいている。基本日本人は黒や茶髪で瞳もほぼ同じ。たまにわたしみたいな金髪蒼瞳みたいな外国人っぽいのもいるけど、キリトは髪も瞳も真っ黒だった。

 でも、今のキリトの瞳は金、白眼の部分は黒い。しかも表情は――――狂気染みた笑みが浮かべられていた。どう考えてもいつもの彼ではない。

 

『なっ……?! それはっ……?!』

「――――ァァァァアアアアアアアアアアアッ!!!!!!」

 

 ホロウが怯んでる間にキリトの二刀がブレた。

 その次の瞬間に、ホロウの体からダメージエフェクトが出た。しかも幾重にも重なって。フルだったホロウのHPは、この一瞬で一割にまで激減している。一体キリトに何が起こったというのか。

 

『ガッ?! そ、そうか、それは確か……』

「――――ォォォォオオオオオオオオオオオッ!!!!!!」

 

 ホロウが何かを言いかけるが、キリトの再度の咆哮はそれを遮って二刀がまたブレた。

 そしてホロウのHPがゼロになる。ホロウの表情は悔しそうで、しかしどこか心配そうだった。

 

『気をつけろよ。それは諸刃のつる――――』

 

 それがホロウキリトの最期となった。カシャァァァン……と、プレイヤーと同じ破砕音とともにポリゴン片へと四散した。

 それと同時にシステムアナウンスがアップデートを破棄することを告げるが、今のわたしにはそれは重要でない。

 キリトが二刀を振り切った姿勢のまま固まり、倒れたのだ。急いで彼の元へ行き、膝枕で彼を寝かせて介抱する。どうも気絶しているだけらしい。

 それにしても、さっきの黒目金瞳と表情は何だったのか。表情はともかく、何の操作もせずに瞳の色が変わるなんてのはおかしい。しかもHPがフル回復した上、見たところステータスも圧倒的に高くなっていた。何か新しいスキルを土壇場で得たとしても、熟練度が低いだろうし効果は低いだろう。本当に一体何があったのだ。

 キリトの頭をゆっくり撫でつつ、あたしはその疑問と推測で頭が一杯になっていた。

 そのまま数分してキリトは目を覚ました。戦闘中の事は記憶に無いらしく、瞳の色や表情の事は伏せて戦いの顛末を教えた。

 その後、システムコンソールであたしと、ホロウを倒した事でオレンジエラーとなったキリトのオレンジを修正、元のグリーンに戻った。これでアインクラッドに戻れるようになったらしい。

 ただ……もう少しお揃いがよかったかな、なんて……

 そのままアインクラッドに戻り、一時的にわたしはキリトのホームへお邪魔する事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 これで《ホロウ・エリア》でのお話は一応終わりです。如何でしたでしょうか?

 PoHにやられている時、キリトに慰められている時の心情描写に精根尽き果てていたのか、かなりの多分になってしまいました。まぁ、キリト視点からの戦闘描写はそこそこ緊迫感があるのではないかと思います。

 私が戦闘しているキャラの視点で書く時、それは大抵不利になっているキャラですので、必然的に緊迫感が出てくると思います。

 逆にそうで無いときはアッサリ終わります。途中フィリアに変わった時のように、その戦闘について何が起こったのか理解できないくらい差がある場合、何も知らない人の視点の場合はかなりアッサリ終わると思ってください。

 ちなみにこれを書いていた頃は《ホロウ・フラグメント》のアップデートをしていなかったので、《ナイトメア・ホロウ》の存在も知りませんでした。実際に戦ってみてボコボコにされて、《ジ・イクリプス》を喰らった時なんてHPフルから一桁まで減ったので冷や汗を流した覚えがあります。今話のキリトと同じ展開ですね。

 そして最後、《ホロウキリト》を倒す際にキリトの身に起こったあの豹変。アレはまた今後も出てきます。そう何度もという訳ではありませんが、アレによって命が救われる事もしばしばです。

 あの豹変はキリトにのみ起こる現象ですので悪しからず。そう頻繁には起きませんから、条件的に。後にその条件も判明しますのでお待ち下さい。


 ではそろそろ、次回についてです。


 ホロウPoHの企てをどうにか阻止したキリトはフィリアを伴って、《アインクラッド》での日常へと戻った。

 そんな中、レベリングと攻略をしている途中である人物と遭遇する。

 その人物とは、キリトも無関係では無い存在だった……


 次話、第二十二章 ~心の少女~


 知っている人は知っているあの子の登場です。お楽しみに!

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