ALDNOAH.ZERO -Earth At Our Backs- 作:神倉棐
自分にとって処女作となる本作品につきましては長らく未完の状態ではありましたが、突然ではありますが連載再開と現在構想中の作品の実験の為にも一度内容の修正と改善の為に一部改稿させて頂きました。
今後とも一層のご愛顧を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
長いです。主に戦闘シーンの所為で、
Mission Name >
Operation Objective > 団子虫を撃滅せよ
Date > 2014/11/20
Time > 0600hrs.
Location > Japan Sinawara city
Sky Conditions > Scattered clouds
Cloud Cover > 2/8
さて、皆んな集まったな?
伊奈帆いる、ソラいる、韻子さんいる、カーム君いる、起助君いる、ユキさんもいるね。
じゃあ作戦会議を始めよう。
まず作戦目的を最初に確認する。本作戦における最終目的は避難民含む我々全員の
不幸中の幸いともいうべきか、何故かソーヴォグに乗る火星兵は今も
そこで我々は避難民の戦域離脱と同時進行でソーヴォグの撃破……最低でも避難の猶予を稼ぐべく新芦原市外への撃退作戦を行う。
こちらの
これについては最初に解明した伊奈帆に
で、各員の配置についてだが……ソラは耶賀頼先生から補佐の要請があるので先生の補佐に、ユキさんは本隊である避難民の誘導を、別働隊のカタフラクト小隊としてハンター1が伊奈帆、ハンター2に韻子さん、ハンター3にカーム君、ハンター4に起助君、俺も無人観測機のR/MQ-1T プレデターを使ってバックアップにバードアイとして出撃する。
そして囮役の輸送車の人選に関してだが……ん?誰だ?
アセ……んんっ、セラムさんと……確かアリアーシュさん?何か用ですか?
……聞いていたと思いますが直接戦闘には参加しない想定とはいえ輸送車は囮役、敵機に追跡される役回りな以上カタフラクトで出撃するこちらよりも遥かに長時間命懸けになります。それでもですか?
分かりました……では彼女達2人を加え作戦決行は
では各員の連携と奮闘を期待する。
以上、解散。
【日本 新芦原市 11月20日 6時1分】
〈Japan Sinawara city 0601hrs. Nov 20, 2014〉
芦原高校に入学して以降、もはや嫌というほどに聞きなれた火薬の破裂音と共に赤い閃光が上空に撃ち上げられる。見上げた空に灯る信号弾赤玉3発の意味は「戦闘開始」、これで埠頭にいるはずの軍や鞠戸大尉にはこちらが動いた事が伝わるはずだった。
《カズ君にナオ君、絶対に無事で帰ってきてね……》
《分かったユキ姉》
「勿論ですユキさん、後輩4人に民間人2人の命を預かっているんです。絶対に死なせはしませんよ」
眼下で心配そうに、だが本作戦の第一目標であり彼女自身の役割でもある残された避難民の誘導のために気丈に振る舞うユキの姿を見た一帆と伊奈帆は片や操縦席内で、片や輸送車に固定された機体の側で敬礼しつつ彼女を見送る。
《カズ兄、行こう》
「了解、作戦開始‼︎」
先頭は囮にして
「……さて、弱点も攻略方法も判明している。作戦は
加筆修正を行なってもなお、今のままでも十分綱渡りなものだがそれでも万が一にも囮役が逃げられない
───問題は
一帆は画面にある無人観測機が現在進行形で収集中の情報によって上書きされ続けている新芦原市の
「いつものランニングがこう役に立つとは思わなかったな」
周囲の状況にも目を配りつつ、地図を眺めた一帆はそう呟く。新芦原市と芦原市の市境かつ郊外にある
「バードアイよりハンター全機に通達、改めて確認しておくがソーヴォグはその特殊能力の都合上
《ハンター1、了解》
《ハンター2、了解ってああもうっ‼︎道幅きっつい!》
《ハンター3、了解。構うな、今日は減点なんてされねーよ》
《ハンター4、了解。でも居ねーな、どこ行ったんだ?》
何かを思いっきり踏み潰した音と共に先行している伊奈帆や韻子達の返信が通信機越しに聞こえてくる。
───よし、3分経った
「八朔一帆、TKG-6B スレイプニール、出撃する」
起動シークエンスの口頭確認は全省略、カタフラクト頭部にあるメインカメラが碧く起動したと同時に、一帆は
《見つけた。10時の方向!》
《出たな……団子虫……‼︎》
《ハンター3……一応ソーヴォグって敵性ネームが付いてんだけど……》
そして伊奈帆達のトレーラーが出ておよそ6分後、出発地点である芦原高校を起点に方位198より目標であるソーヴォグは新芦原市の街並みを踏み躙りながら文字通り一直線に前進しつつ囮役のキャリア1やその護衛のハンター2から4に向かって突き進んで来る。
───ふむ、観測機を飛ばして検証したデータで発見されるまで推測した時間からほぼ予定通りだな
しかしそれもまた想定内、むしろこちらが奴を発見しそして奴に発見されるまでが作戦第一段階。そもそもあの人型兵器にしてはやたら不恰好な団子虫は短足故に致命的なまでに鈍足なのだ。精々出せて60km/hがあるかどうか、現代戦車どころか下手すればその辺りの原付にすら速度性能で負けているあの機体では多少ショートカットをしようとそう簡単にはキャリア1には追い付けまい。飛行能力もないようだし、アルドノアなんてとんでもオーバーテクノロジーがある癖に火星の設計者は何を思ってソーヴォグをホバー機にしなかったのだろうか?
《こちらハンター1、新芦原市上空にソーヴォグの無人観測機らしき機影を確認。方位264、距離200、数10》
「バードアイ、了解。全機、作戦第一段階より第二段階に移行セヨ」
伊奈帆からの報告と一帆の指示を受けたカーム達は自分達の目でもソーヴォグがキャリア1に注意を向けたのを確認してから上空に向かって
───その際に奴が取る行動は2通り、「安全をとって動きを止める」か「バリアを解除してでも行動する」かどうかの2択
しかしあの間抜けな小心者である
《奴の動きが止まった!》
《会長と伊奈帆仮説通り!》
《来た来た来た‼︎俺のじd……》
《 《オコジョ(バカ)
「《…………》」
そしてスピーカー越しに聞こえてきた韻子達の歓声とツッコミに、一帆と伊奈帆は安堵しつつもその余りの緊張感のなさになんとも言えない感覚にも包まれる。
─── コホン……
一帆からの評価はボロクソだが事実だから仕方ない。実際、ソーヴォグの火星兵は昨日伊奈帆達を弄んで取り逃がした挙句その後は結局じっと朝まで街に何をするでもなくこちらが動き出すのを馬鹿みたいに待ち続けていた。そんな事する暇があるなら手当たり次第街や基地を破壊して回れば良かったのだ、それだけで一帆達は確実に詰んだのにである。
───これじゃ完全に哀れな
内心「怯えろ!竦め!M○の性能を活かせぬまま、死んでゆけ!」と、何処か大佐の誰かさんみたいな
───あれは……火星の輸送機か
一帆や伊奈帆達の頭上、新芦原市上空を飛ぶ黒い機影は一帆の記憶がたしかならば火星のカタフラクト輸送用の
「バードアイからハンター全機へ、聞こえるか?」
《こちらハンター1、どうしたの?》
輸送機パイロットが一体誰か、そして何のためにわざわざこんなところに再び現れたのかについて一帆は一方的に相手の事情について識っているが、だからといって
《あいつ無茶苦茶!》
だがその前にソーヴォグが動き出したようだ。このタイミング、輸送機から座標誘導のバックアップでも受けているのだろう。
───どんだけ少女1人に固執してんだよ……確かにすごい秘密握られてるけどさ
《こちらハンター2、上空に火星の輸送機を目視で確認》
《ハンター2、4、援護してくれ!あのコウモリ!》
《ちょっとハンター3⁉︎》
《あいつの気流で煙幕が乱れる。落とさねーと!》
「バードアイよりハンター2から4へ、お前達は作戦通り第三段階に移行。コウモリは
《くっ……ハンター3、了解》
一帆の指示に銃口を空に向けて構えていたカームはやや不服そうではあったが、3人は素直に機体の向きを
「さて、キャリア1のセラムさん。聞こえますか?」
《はい、カズホさん聞こえます》
「あの戦術輸送機について
《分かりました。ヴァースの戦術輸送機でスカイキャリアと言います、機銃やミサイル以外の特殊な装備・能力は有していないと聞き……あります》
《……あれには弾が当たるの?》
《はい……みたい……です》
アセイラムの知識を
「……下手に当たって墜落はしてくれるなよ?
一帆は
44口径──分かりやすく
───流石火星製、距離や弾種にもよるが翼に艦砲や戦車砲クラスの弾を受けてへし折れないとは恐れ入る
地球製の輸送機ならばまず間違いなく1撃で主翼ごと機体がへし折れて墜落しているであろうダメージを主翼に受けた火星製輸送機──スカイキャリアは高度を落として海岸に向け飛んで行く。これで一帆の不安材料は1つ減った。
《こちらキャリア1およびハンター1、中継地点に到着》
「よし、バードアイより全体へ。作戦第四段階に移行する。煙幕追加、遠慮なくぶちかませ!」
《了解‼︎》
伊奈帆の機体の起動を隠蔽する為にさらに煙幕追加、既に先程まで直掩ですぐ側にいた韻子達ハンター隊は先の
《電圧チェック、油圧チェック、温度チェック、回転数ノーマー
フォースフィールドバックチェッキングプログラムスタート
エジェクションシート正常、IFF確認
戦術データリンク、アクティベート
システムオールグリーン、ホールドオープン》
ものの数分程度で伊奈帆の
───港湾地区まであと3分……このままいけるか?
“新芦原市港湾地区”
そこは「厄災」によって
───ハンター2達はもう配置に着いたか、あとは囮のキャリア1以外は俺と伊奈帆だけ。急がないと
所々港湾地区内には工事中の看板やカラーコーンの柵などが乱立しているが、その最終誘導地点はそれらを無視して蹴散らし越えた先にある。現状先行していた韻子達は既に指定の配置場所に待機しており、残すは囮役のキャリア1を除けばバックアップの一帆と別行動の伊奈帆のみ。
《最終誘導地点まで600を突破、予想到着時刻は作戦予定時間より+12秒後です》
アセイラムの状況説明に耳を傾けながら一帆は全速力で海岸線への橋を渡り切る。ソーヴォグの腕を蛇行しながら二度三度と避けながらもキャリア1もほぼ同時に市街地から海岸線へと抜けたが、それに苛立ったのかソーヴォグが急に腕を横に薙ぐ。
───マズイっ
それによって堤防沿いの路肩に立てられていた街灯の残骸が数本纏めて輸送車に向かって飛ばされる。単純に振られる腕一本ならともかく5~6mの複数の金属の棒や瓦礫の残骸は躱せない。観測機越しに映された映像によると幾本かの残骸が輸送車のタイヤをパンクさせ、運転席付近にもその内の何本かが激突し輸送車は数mを
「っ⁉︎セラムさんにライエさんっ‼︎」
《……っ、くぅっ……》
思わず通信機越しに叫んでしまった一帆だが、なんとか2人は無事とはいえずど死んではいない様だ。それにしっかりとライエさんは最終誘導地点までトレーラーを到達させている……だが時間が足りない。
───決行を早めるか?いやまだ1分以上ある。最悪肝心の伊奈帆がまだ配置に着いてないかもしれない
一帆はまだ良い、配置につけているに越したことはないがつけていなくとも一帆の役割は指揮と
「っ、バードアイより全体に告げる。作戦中si《いいえ……まだです》……なんだって⁈」
故に作戦中止を宣言しようとした一帆をアセイラムは止める。彼女はトレーラーから降りて敵カタフラクトを見つめていた。
《作戦予定時刻まで32秒……あとは私が》
「セラムさん、駄目です」
《いいえ、トレーラーが動かない以上、走って逃げても私達の足では逃げ切る事は出来ません。なら……私はカズホさん達の可能性に賭けます》
《見苦しいな。今になって命乞いとは》
大破した輸送車に追い付いたソーヴォグの外部スピーカーから慢心したような男の声がこちらにも聞こえる。さっさと攻撃でもすれば良いところをわざわざ外部スピーカー起動して話し出すところをみるとどうにも詰めが甘い……だがその甘さに縋らねばならない一帆達にとってソレは救いであり、屈辱でもあった。
《控えなさい!この目に余る狼藉、許しません!このヴァース第一皇女のアセイラム・ヴァース・アリューシアの名に置いて!》
アセイラムの、お姫様の胸元にあるペンダントが閃光を放ち光学迷彩を解除すると彼女は本来のドレス姿に戻る。
《なっ!?……アセイラム・ヴァース・アリューシア姫殿下!?まさか!?》
そしてそんな彼女の姿を見たソーヴォグの動きは完全に静止した。
───まったく賭けに勝ったから良いものを……これじゃ原作と殆ど変わらない結局は姫様頼りの綱渡りじゃないか
《下がりなさい!無礼者!!》
《馬鹿な……そんな馬鹿なぁっ⁉︎》
───でもなんだかスゲー効果覿面過ぎて寧ろ笑えるな
とはいえ彼女が身を挺して時間を稼いでくれたおかげで作戦予定時間には十分間に合う。万全を期すため、武装と仕掛けの最終チェックを素早くしていると警報装置とメインモニターに映したレーダースクリーンに反応があった。
───攻撃信号?それにレーダー上に複数の
海の方からソーヴォグに多数のブリップ──正確には何発もの
《くっ!》
無人観測機の高感度カメラで発射元を確認する。カメラに映ったのは自らが放ったSSMの引いた白煙を蹴散らして洋上をこちらに向かって全速航行する
───あれは連合の
LCACが放ったそのSSM群はバリアによって大半は消えてはしまったが、標準がズレて地面に着弾したものやそれによって巻き上がった爆炎も含めて何発ものSSMは良い陽動になった。
「作戦第五段階への移行を宣言する‼︎セラムさんとライエさんは輸送車かもしくは遮蔽物の陰に退避‼︎ハンター2から4、カウント省略、今‼︎」
《 《 《了解‼︎爆砕ボルト
《なあ⁉︎》
一帆の号令とともに韻子とカーム、そして起助の3人がそれぞれ担当の地下にある工事中の人工地盤の爆砕ボルトに着火したことよりソーヴォグの足元のコンクリートの地面と地盤がブロック丸ごと完全に崩壊。足場を崩されたソーヴォグは意味も分からずに成す術もなく海面に水没する。
《クソォっ⁉︎このクソネズミ共がぁっ⁉︎》
「……おお、凄いな。海水がぐんぐん減ってるぞ……」
ソーヴォグの表面に触れた海水が即消滅し、吸い込まれるようにしてなんとソーヴォグ周りでは芦原隕石孔内の水嵩が2m程下がる。今回一帆達が贅沢に
《無駄だ!我がニロケラスは鉄壁の防御!貴様らなんぞに》
───はいはい、分かった分かった。でも良い事を教えてあげよう、鉄の壁であろうと手を尽くせば突破できる。覚えておけ、人の手が造ったものは、人の手で必ず壊せるんだ
「ハンター1、
《こちらハンター1、了解。作戦を最終段階に移行》
そして同じく地下にカタフラクトごと潜んでいた伊奈帆がクレーター内の水嵩の減った海水を蹴り飛ばしつつ
《貴様ぁ……いつの間に⁉︎》
《お前のバリアに穴があるのは既に分かっていた》
こちらから打ち出した弾丸だけでなく赤外線や音波・電波でさえエコーが戻らない時点でソーヴォグの表面を覆うエネルギーフィールドがおよそあらゆる物質や物体、挙げ句の果てには運動エネルギーさえも吸収し無効化するものであることは既に突き止めていた。そしてその上で伊奈帆が疑問を抱いたのは「どうやってアイツはバリアのこちら側を見ているんだろう?」ということだ。
《例とするなら接地面、そこまで覆ってしまえばお前は立つことすらできない》
外部からのあらゆる情報がバリアで
《その鎧は強すぎるが故に全身を覆い尽くす事が出来ない》
であるならばバリアのどこかにその無人観測機や外部の味方などとの通信のやり取りを行うための「穴」がどうしても必要なはずなのだ。
《そして、光すら遮断するために目の代わりとなる外部カメラのデータ送受信部。それもバリアの隙間の1つだ》
伊奈帆はナイフで装甲を抉る様にしてソーヴォグが抱える唯一にして致命的な弱点、バリアの穴となっている部分の装甲を抉じ開けアサルトライフルの銃口を差し込む。
《これで……終わりだ》
AP弾だけでなくオマケとばかりグレネードまでゼロ距離でぶち込み続ける伊奈帆の徹底具合……余程この逃走生活はストレスになっていたのだろう、あとここまで加減も容赦もないのはユキを怪我させた実行犯でもあるからか。そして伊奈帆が
───あれがバリアの内側、光すら飲み込まれた暗闇か?その光学迷彩か偽装が剥げたってことはバリアが解けたか
そのままソーヴォグは既に前のめりに倒れ込み元の水嵩に戻りつつある海面へと没する。徹甲弾とグレネードの破壊の雨だ、確実に内部はスダズタになっているだろうしパイロットもそのまま死んでしまっている可能性は高い。できれば後々のことを考えて機体ごと
《みんな、無事?》
《ユキさん!》
海上のLCACからの通信が入る、やはり海上からの
《全員、被害状況を報告!それと死んでるやつは返事しろ!》
通信機越しの鞠戸大尉の相変わらず古典的な無茶振りに一帆は苦笑する。
《こちら界塚伊奈帆、損傷はありません》
《こちら網文、問題ありません!》
《こちらクラフトマン、同じく》
《こちら箕国、生きてます》
「こちら八朔および民間人2名、無事です」
《バカ野郎、お前達は生きてるだろうが》
「死んでる奴は返事なんかできませんよ?鞠戸大尉」
《ジョークが分かってないな……八朔》
「わざとです」
《尚更だ‼︎》
《あははは……》
空気はようやく和んだらしい。いつまでも張り詰めてたら気が持たないからな、大切なのは適度な緊張である。
《艇を接岸できる岸につけます。合流ポイントは戦術データリンクを参照してください》
「了解です。バードアイより作戦参加全体に通達、全作戦を終了を宣言。だがここにいる全員が無事にここから脱出するのが作戦目的だ、LCACとの合流するまで気を抜かないように。全員が帰還したら作戦成功を宣言する」
《 《了解》 》
「あと伊奈帆、後で話がある。それとセラムさんとライエさんを運ぶの手伝って」
《分かった》
地下から上がって来た伊奈帆にそう頼むと伊奈帆はすぐ近くにいたライエをスレイプニールの手に乗せる。一帆の方もすぐ側まで来ていたアセイラムを手に乗せてできるだけ揺れない様に気を付けつつ合流地点に向け歩き出した。
《カズホさん……》
「何ですか?」
《パイロットの方は……》
「……分からない、地球製のカタフラクトなら確実に駄目だろうけど火星製は……」
これは本当に分からない。まさか当てずっぽうに
「アセイラムさん、貴女はやはり優しい人です。だから貴女はこんな場所に来るべきじゃなかった……貴女が暗殺派の火星のパイロットの事さえ心配してしまえる程優しい、優し過ぎる人だと分かっていたのに……」
《でも私は……貴方と共にここに来て良かったと思っています。ここに来なければカズホさん達がいる戦場を理解する事なんて出来なかった、私の
アセイラムは言う。
《だから……ありがとうございます、カズホさん》
彼女の微笑みは冬に咲く桜の花の様に綺麗で、そしてとても澄んだ凛としていたのだった。
火星のヴァース帝国が運用する三発式の大型戦術輸送機。熱核バーストタービンエンジンを搭載し、機体後部が下に展開することで機体後部にある双発エンジン上部がステップとなり、このスペースにカタフラクトを直接搭乗させることで大気圏内の何処へでも輸送可能な輸送機形態となる。
機体の全容としては巨大な鳥のような尾翼らしい尾翼を持たない全翼機でかつ胴体部の左右から前方に向けて伸びる大型の前進翼を持った機体であり、やや被弾投影面積が広いために被弾しやすくステルス性もほぼ皆無。機首先端部に単座式の
主な武装は機首両側に榴弾を装填した可動式の機銃に、空対空と空対地ミサイルが装填されたミサイルポッドと輸送機としては過剰だが戦闘機としては標準的。性能面においても速度性能はそれほど高くないものの機動性や安定性が極めて高く、機体は頑丈でステップ展開による制動を利用した垂直上昇やカタフラクトを載せた状態での
またカタフラクトでなく兵員・兵器輸送用コンテナをステップに装備することで兵員を輸送する兵員輸送機やミサイルや爆弾を搭載した武装コンテナを装備することで大型攻撃機や爆撃機への転用が可能にもなるといった汎用性が高い機体。
カラーリングは黒を基調に差し色に赤が入っており、特に所属を示す国籍表示やエンブレムが入ってはいないものの主に火星本国ではなく衛星軌道上に点在していた軌道騎士たちの揚陸城に多くが配備されている。
……やっぱり戦闘シーン難しい。