ALDNOAH.ZERO -Earth At Our Backs-   作:神倉棐

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本作品を読んで頂きまして誠にありがとうございます。
自分にとって処女作となる本作品につきましては長らく未完の状態ではありましたが、突然ではありますが連載再開と現在構想中の作品の実験の為にも一度内容の修正と改善の為に一部改稿させて頂きました。
今後とも一層のご愛顧を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。


PROLOGUE.00/
0/1 「始まりの前の日」


 

【いつか何処かの話 X月YZ日 17時24分】

〈Unknown to Places 1724hrs. ??? YZ, 20XX〉

 

 

とある街の本屋にて、

 

「へぇ、『アルドノア・ゼロ』ねぇ……」

「おう、これが案外面白いんだぜ。俺的にはこのメカニックにグッとくるもんがある!」

 

ブレザー型の制服を着た少年2人が本棚の前で話していた。茶髪気味の少年が隣でラノベを読んでいる黒髪の少年の所に強引にその本を差し込んでくる。表紙に載る題名は『アルドノア・ゼロ』、あらすじは火星から来たお姫様暗殺をキッカケとした『地球』対『火星』の星間戦争が起こり火星側のスーパーロボットを地球側のリアルロボットが倒していくものである。

 

重装騎兵(カタフラクト)……鋼の巨人ねえ。前は確か『マクロスフロンティア』のデカイ茶色い奴だったよな?ころころ変わりすぎじゃね?」

「るせー、「VB-6 ケーニッヒモンスター」だよ。そういうお前は現実じゃ「F-22 ラプター」かマクロスじゃ「VF-25 メサイア」一択のまんまじゃねえか、いい加減新しい奴見つけろよ」

「めんどい、大体俺は戦闘機とかが好きだから良いんだよ。カッコイイだろ?リボン付きとVF-25」

 

少年2人の内、黒髪の方の少年がそう言う。彼は彼らは互いに趣味嗜好の差はあれど、浪漫──それも「空を飛ぶモノ」が好きな者同士仲が良い。特に黒髪の少年はいつか誰かに問われた「ソラの色」が気になるようで、彼が好む「リボン付き」と「VF-25」はいつも彼が見上げるだけしかできないそのソラを自由に飛ぶ「理想」の象徴のようなものだった。そんな彼は読んでいたラノベを本棚に直し「アルドノア・ゼロ」の本を手に取った、パラパラと内容に目を通す。

 

「ふむ……、主人公は『界塚 伊奈帆(かいづか いなほ)』。情報解析、作戦立案能力、操縦技術、共に他人より頭一つ分飛び抜けてる優等生。イケメンかつシスコン、あとリア充……スゲー。天はコイツに二物どころかいくつもやってんな」

「……お前も中々だぞ?」

「ん?何がだ?」

「いや、お前だよ……」

 

茶髪の少年はまるで分ってない黒髪の少年にため息を吐く。目の前の黒髪の少年だってこの主人公に負けないくらい変なところで色々飛び抜けてる上に、本人は気付いていないが彼もまた決してこの主人公と劣ることのない部類に入る人物なのだから。

 

「そうか?俺はお前の方が頭良いしイケメンだと思うんだがな」

「それはない、お前が自分を下に見過ぎてるだけだ。普通にみればお前は俺なんかよりもっとイイ奴さ、八朔 一帆(ほずみ かずほ)

 

茶髪の少年はそう言って溜息を吐く。

 

「まあ、いっか。じゃあこれ買うよ、家で読んでみる」

「ほんとに良いのか?毎回俺が薦めた奴しか買ってないが……」

 

黒髪の少年──八朔は本棚から3巻程引っ張り出すと片手に取りレジへと向かう。ちなみに彼の家の本棚は彼本人の趣味で集めたソラ関連の書物や文庫本、推理小説の他はそのほとんどが茶髪の少年に薦められたラノベが占めている。

 

「良いんだよ、どうせお前が薦めてきた本は基本外れないし」

 

そう言って八朔は茶髪の少年と共にレジ袋を片手に本屋を出た。

 

「八朔、次の中間考査どうする?」

「う〜ん、数2の範囲が広いから理系に力入れようかな?」

「お前は文系、特に現文は常に90点台だからな。羨ましい限りだ」

「逆に理系が駄目駄目なんだけどな。数2むずいだよなぁ……」

「教えてやる、だからお前は俺に古典と現文教えてくれお願いします教えて下さい」

 

2人は帰路につきながらそんなたわいの無い話をする。夕暮れ時の十字路に差し掛かった。

 

「勿論構わないよ、毎回助かってるしお礼だ」

「サンキュー八朔(はっさく)‼︎」

「はいはい、まったく俺は果物じゃないんだぞ……はぁ」

 

信号機が赤に変わる、2人は歩道に留まった。車が動き出し目の前を車が行き交う。

 

「ところで明日の時間割なんだっけ?」

「確か……1時間目から地理、数2、古典、体育、化学、英2だったはず」

「6限で終わりか……なら数情に顔を出しとくか。お前はいつも通りサッカーだろ?」

「ああ、ウチは弱小サッカー部とはいえしばらくしたらまた大会があるからな。最近練習がキツイんだよ、八朔も知ってんだろ?アレだぜ?キツイに決まってんじゃねーか」

「ああ……あれか。外周した後グラウンドで基礎練エンドレス、最後にゲームっていうぶっ倒れるの確定の鬼メニューか」

「ああ……、今日も何人かぶっ倒れてマネージャーに引っ張られてたよ……」

「……その…ガンバ?」

「サンキュー……我が友よ……」

 

下らない、実に下らないようなそんなたわいのない話。

 

家には家族が居て、お隣さん家にはちょっと気になる幼馴染(女の子)が居れば学校にはお祭り好きの愉快な級友(クラスメイト)達が、隣にはバカみたいな事でバカみたいに笑い合える友達が居る。気まぐれにソラを見上げては、「テストは嫌だー」とか「勉強は嫌だー」とか「本当に将来使うのこの知識?」とか文句を言い(ブーたれ)ながらもなんだかんだで学び舎なんてモノを嫌いになれず、その癖将来の事や夢には不安ばかりの正に「学生」らしい実に平凡な日常、なにげない青春の1ページ。

 

「────ん?」

 

しかしそんな日常らしい日常(いつも通り)の一コマに写った()()を八朔は見てしまった。

 

少し行った所の歩道、そこを歩く同級生の女子生徒(青いリボンの髪留め幼馴染)の背後からスリップした乗用車が突っ込んで来ているその瞬間を。そしてその一瞬に理解したのだ───このままでは自分達もまた巻き添えを喰らうと。

 

「クソッ!脇道に逃げろ‼︎間に合えっ‼︎」

 

八朔は隣にいた茶髪の少年を車に当たらないであろう突っ込んで来ていない元来た脇道(方角)に突き飛ばし幼馴染に向け走る。彼女を傍に抱える様にして歩道奥へと跳ぶが間に合わない。

 

「チッ、しっかり受け止めろよ『海斗』」

 

空中で女子生徒を突き飛ばし茶髪の少年──海斗の元に送る。

 

────‼︎ ──⁈

────⁉︎……──‼︎

 

八朔一帆が最後に目にした光景は、突き飛ばされ驚き手を伸ばしていた茶髪の少年と彼に向け突き飛ばされ、次の瞬間にはしっかりと受け止められ驚いた顔をしていた幼馴染だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───…………あ、俺持ったままだったけど『アルドノア・ゼロ』最後まで読んでない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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