デート・ア・ペドー   作:ホワイト・ラム

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少し遅れて投稿です。
今気が付くともう70越えなんですね。

継続はなんとやらと言いますが、自分でびっくりしている面があります。


「シャベッタぁああああぁあぁあああぁああぁああ!!!」

「はぁーん……空が青いなー」

高校の屋上、寝転がり畳んだブレザーを枕にしながら、小さくアンニュイにため息をつく。

さっきまでのペドーは、ペドー本人にとっての一世一代の賭けに出たのだ。

それは、今日初めて会った女の子をデートに誘い、尚且つOKを貰うというミッション。

びっくりするほどのリア充ムーブを決め、結果は成功。

その緊張から解き放たれたペドーが一息ついているのだ。

だが――その表情はすぐれない。

到底、美人の女の子とデートの約束を取り付けたラッキーボーイには見えない。

 

「まさか折紙が、迷うなんて……」

ペドーのイマイチ煮え切れないアンニュイな原因はソコだった。

以前の世界の折紙はペドーの知る限りでは『性欲のモンスター』だった。

 

『デート、構わない。むしろ、こちらからお願いしたい。

当日の服装は何がイイ?全裸でもスク水首輪犬耳でも切り刻んだ制服でもボンテージでも雌奴隷服でも構わない。

むろん下着の指定もしてくれて構わない。

なるべく脱がせがいのあるセクシーなのを選んでおく。

個人的には駅前のラブホ街に行きたい。特に【天魔の宿】は一番高い部屋なら牛乳風呂が――』

などという風に、凄まじい勢いでグイグイ来るはずなのだ。

マジで、ぐいぐい来るはずだったのだ。

それはもう

ビックリするくらい、ぐいぐいと。

だが、そうでは無かった。

 

同じ特殊な服装のプレイに関して、萌えとは、あるいはエロスとは何かをアツく語り合った仲だ。

過去の折紙、通称ロリ紙のお風呂上りの写真と、現在のペドーのお風呂上りの写真を交換し合った仲だ。

彼女は変態を超えた進化した変態。

名づけるなら『超進化変態』だった。

 

「俺に、神無月さん、そしてウェスちゃま……たった四人しかいなかった仲間が消えちまったよ……」

明らかに変わってしまった折紙の様子を胸に、ペドーはゴロンと転がった。

 

「あらペドーさん、こんな時間まで居残り――と言う訳ではなさそうですわね?」

瞬時に響く誰かの声――

ペドーはその聞き覚えのある声を耳にし、瞬時に飛び起きた!

 

「お前は…………時子!!」

ペドーの視線の先には、学校の制服に身を包んだ時崎 狂三がいた。

 

「うん、最早その呼び名は固定なんですのね……」

狂三が諦めた様にため息をつく。

 

「全く、酷いですわね。二人で協力して世界を変えた仲ですわよ?」

 

「え?世界を変えた?どゆこと?」

ペドーの頭の上にクエスチョンマークが浮かぶ。

 

「わぁお……すっかり綺麗に私の事忘れていますのね……」

がっくりと狂三がうなだれる。

手助けしたというのに、ここまでこの男は綺麗に忘れたのだろうか?

 

「あ!レジスタンスに紛れてたやつか!!」

 

「いや、レジスタンスは未来の話で――なんで知ってますの!?」

ペドーの言葉に狂三が驚く。

 

「ロリ紙助けた後、時の狭間に落ちて、未来の世界へ行ってガチペドオー大王に助けられて、パラレル世界を20個くらい旅して、パラレルの俺やこの次元に存在しない精霊たちと交流してって……

いやー、いろいろあったから大変だったよー」

やれやらとペドーがため息をついた。

 

「あれですわよね!?何時もの出鱈目ですわよね?

別の次元のペドーさんとか考えるだけで、頭痛が痛いですわ……

ガチロリコンが21人とか世界壊れる……」

出来ればただの出まかせ、デタラメであって欲しいと思いながら狂三は自身の頭を押さえた。

 

「はっ!?コラボ……コラボが書きたいんですの!?」

 

「おい、一体どうした?中二病極めてすぎて頭おかしくなったのか?」

よく分からない事を口走る狂三をペドーが冷ややかな目で見た。

 

 

 

「兎に角!!このすっかりみんなが変わった世界で、ペドーさんが不安になっていそうだから顔を見に来て上げたんですわ!」

 

「よし、このエロ画像がちゃんとある……むむ!このイラストは前の世界では無かったハズ……

だが、くぅ!この蔑む様なドSロリ様の表情はグッド!!」

 

「何をしていますの!?」

ゴロゴロと寝転がって、怪しげなイラストの鑑賞会を始めるペドーを狂三が怒鳴りつけた。

 

「いや、だって……世界が変わったって言うから、俺のお宝コレクションは無事かなって……」

 

「……マジですの?ここまでくると逆にすごいですわ……」

狂三は絶句した。この男は世界が変わって一番困る事が、自身の集めたエロ画像が無くなっていないかという心配をしているのだ。

呆れ9割尊敬1割で狂三がため息をついた。

そんな時――

 

「あ”!!」

 

「なんですの?大事な小さな子の画像が足りませんの?」

うんざりと言いたげな様子で狂三が反応するが――

 

「レーザーだ」

なんでもない事の様に、ペドーが狂三の後ろを指さした。

 

次の瞬間――!

 

「へ――ぎゅあああああああああ!!????」

突如背後から放たれた光線によって、一瞬にして狂三が精霊から辛うじて人の形に見える焼死体へと変貌する。

屋上に人の焼ける嫌臭いが充満した。

 

「時子ー、おーい?生きてる?……あ、死んでるわ。かわいそ。

なむなむ、チーン……」

消し炭になった狂三に対して形だけの弔いを捧げる。

 

「あれ?ペドー君……?こんな所で何してるの?

それにその、炭は?」

手を合わせるペドーに、声がかかった。

この声の主は――

 

「よぉ、折紙!実はすごく腹ペド――じゃなくて、腹ペコになった俺は屋上で一人バーベキューをしていたんだ。

けど、ついウトウトしちゃってな?野菜もお肉もお魚も全部、炭にしちゃったんだよ……

あーあ、生産者さんごめんなさい!」

折紙に対して、困ったように話した。

 

「へぇ、そうなんだ……ペドー君って少し変わってるね……」

若干引きながら折紙が愛想笑いをする。

 

「ところで折紙こそ、屋上に来るなんてなんかあったのか?」

今度はペドーが質問を投げかける番だ。

 

「え、ここ屋上?あ――ごめんなさい、実は少し前から記憶が偶に飛ぶ時があって……」

驚くべきことに、折紙本人は自分がなぜここにいるのか自体、記憶していなかった。

 

「記憶が?うーん?貧血か、キングクリムゾンか?」

 

「キング……なに?」

 

「あ、いや、結構です……」

せっかくの冗談を華麗にスルーされ、ペドーが若干落落ち込んだ。

 

「あ、折紙。今度の土曜、ヨロシクな」

 

「え、土曜――っ、う、うん!こちらこそよろしくお願いします!!」

デートの予定を口に出すと、折紙は顔を真っ赤にして走っていってしまった。

なんというか、非常に『普通な』女の子らしい反応だった。

 

「あーあ、恐ろしいですわね……性格の変わった折紙さんにもう対処しているんですのね?貴方が手玉に取るのは幼女だけではないのですわね……」

さっき焼き焦げたハズの狂三がペドーの背後、折紙から見えない場所から姿を見せた。

 

「焦げた肉がシャベッタぁああああぁあぁあああぁああぁああ!!!!」

 

「何度もこの技見せてるでしょ!?なんで今更驚いているんですの!!」

驚くペドーに狂三がため息をついた。

 

「ふぅ、ボケを拾ってくれる子って良いわ~」

ペドーがしみじみとする。

やっぱり、せっかくのジョークにはツッコミが居ないと始まらないな。なんて言いたげにうなづく。

 

「それで、私が死んだ時――何が起きましたの?」

狂三の言葉にペドーの顔から笑みが消えた。

 

「最初は普通の折紙だった――目的は分かんない。

けど、屋上の入口に立ってお前(精霊)を見た時、一瞬で服装が変わった。

当然だけど、普通の服じゃない。あれはASTのワイヤリングスーツでもない。

あれは――」

 

 

 

つい先ほど、折紙の姿は普通の学生服を身に纏っていた。

だが、狂三を見た瞬間――

弾けるような闇が一瞬にして彼女に絡みつき、そして一切の感情を切り捨てた折紙の口が開き【魔王】の名を綴った。

 

「『救世魔王(サタン)』」

折紙の唇が紡いだ瞬間、黒い羽が瞬き、その一瞬後には狂三はレーザーで打ち抜かれていた。

ペドーは昨夜、フラクシナスのデータで見た()()()()()()()()()()()()()()の名前を口に出す。

 

「あれは『精霊狩り』の【デビル】だ。

やっぱり折紙が【デビル】だったんだ」

 

「【デビル】。あの子には、そんな名が付いたんですのね……

やはり、世界を変えても追ってくるんですわね。

本当に忌々しいですわね『運命』と言う物は」

何処か諦める様に、沈痛な面持ちで狂三がつぶやいた。

 

「けど、前の世界の折紙とは違うんだろ?

それどころか、本人は精霊になってお前を殺した記憶が無かった。

やっぱり、全く同じとは言えないんだろうな」

前の世界の折紙の反転した姿。

ペドーは直接見ていないが、狂三はその姿を見ている。

全てに絶望し、死人の様になり、ただひたすら破壊と恐怖と痛みをばらまくだけの存在へとなった『最悪の精霊(デビル)』の姿を――

 

「ええ、違いますわね……まだ、まだ希望はあるんですのね……

小さな、とても小さな、吹けば今にも消えてしまいそうな、希望が……」

 

「あ、折紙だ!」

 

「いえぇ!?」

ペドーの言葉を聞いて狂三がびくりと体を震わせる。

しかし、背後に折紙の姿は無かった。

 

「いえーい、時子ビビってる!ヘェイ!へいへいへい!!」

パンパンと手を叩き、奇妙なダンスをペドーが躍る。

 

「ふっざけんなですわよ!?撃ち殺しますわよ!!」

狂三が苛立ちながら、銃を構えて見せる。

しかし、それも一瞬。これ以上彼に構うのが得策ではないと思い直したのか、ペドーに背を向ける。

 

「……後の事は、お願いしますわ。折紙さんの事を救って見せてくださいませ――」

後ろを振り返りペドーの顔を見ようとするが、そこには誰も居ない。

 

「こ、このタイミングで帰りますの!?」

一人寂しく狂三の声が誰も居ない屋上に響いた。

 

 

 

 

 

五河家リビングにて――

我らが司令官、琴里は友人の村雨 令音とちょっとしたお茶を楽しんでいた。

 

「待ったく、ペドーったらどうしちゃったのかしら?

急に『自分が世界を変えて来たー』だなんて、中二病が再発したのかしら?」

ツインテールに、口に咥えるチュッパトップス。

それを外し紅茶に入れて、かき混ぜる。

 

「ふむ、琴里。その中二病と言うのが現実では信じられないモノ全般を指すのなら、我々だってその仲間だろう?」

令音がシュガーポッドから大量の角砂糖をティーカップに入れる。

彼女の言葉は精霊を指しているのだろう。

当事者である琴里にはすぐに分かった。

 

「けど精霊は実際にいるし、助けを求めているわ。

まぁ、私が知らない=存在しないなんてあまりにも幼稚すぎる理論なのはわかってるけどね?」

 

「確かに、にわかには信じれないよな~。

けど、全部本当の事なんだ。可愛い妹に俺は嘘はつかない!

あ、俺もソレ使いたいから貸してくれ」

 

「はいはい、分かった――ペドー!!何時の間に!?」

 

「うんうまい!このアメ、ほんのりマイシスターの味がする!」

いつの間にか横に座っていたペドーが琴里から渡されてアメを口に咥える。

 

「このッ――ペドフィリア!」

 

「キャンディ!?」

琴里のアッパーカットが口内のアメごとペドーを顎を粉砕する。

 

 

 

「――それで?一体どういう事か説明してもらえるかしら?」

ソファの上で琴里が足を組む。

目の前には床で座るペドーが居た。

 

「パンツ見えそう……あとすこし、あとす――ごほ!?」

 

「覗くな変態!!」

顔を真っ赤にして琴里がスカートを押える。

ペドーはそのまま床に倒れた。

 

「まぁ、話を戻すと俺は時子の能力で過去へ行った」

 

「過去ぉ!?」

訝し気に話す琴里にペドーは懇切丁寧に説明を始めた。

前の世界の折紙が精霊になった事。彼女を追い、時子の能力で過去に行った事。そして、その結果微妙に変わったこの世界へたどり着いた事。

 

「一体何を言って……」

 

「だが、一応筋は通っている。矛盾した部分も存在しない。

絶対にウソだとは言い切れない」

ペドー言葉を信じられない琴里に、令音が話す。

どうやら令音は琴里と比較してはだが、ある程度信じられると思ってくれたようだ。

 

「けど、時間を超えて……だなんて……」

 

「なら琴里。お前を後ろ手で縛って良いか?

【ザフキエル】で1分後のお前を召喚してやろう。

ただし!1分間、動けないお前が俺の前に晒される事になるがな!!

俺は40秒でラ●ュタに行く支度が出来る男だからな、60秒もあれば……むっふっふっふ……」

気持ち悪い顔でペドーが良からぬ事を考える。

 

「いぃいい!!」

ゾゾゾっと、琴里の背中に寒い物を感じる。

と言うか、ペドーの目には躊躇と言う物が無かった。

『やって良い』とさえ言ってしまえばおそらく彼は容赦なく――

 

「わ、分かったわよ!!信じる、信じるわ。

それに、私たちはペドーが本気で『信じてくれ』って言えば結局信じてあげるわよ。

それくらい当たり前でしょ?何のための私たちだと思ってるの?

それともペドーはそんなに私たちが頼りなく思えるのかしら?」

挑発的に琴里が、口角を上げる。

 

「信じてくれるかどうかは置いておいて、割と無能じゃないか?お前」

 

「は?」

ピしりッ!と空気が凍る。

 

「最初は十香の静粛現界を見逃したり、四糸乃の能力で凍って町に落ちそうになったり、時子の能力に混乱しっぱなしだったり……

えーと、数えると他にもいっぱい……」

1、2、3とペドーが指を折りながら数えていく。

 

「例えるならアレ。ホラー物の携帯電話。

肝心な時に繋がらない、肝心な時に電池切れる、肝心な時に落とす、あるいは逆に相手に利用される的な?」

 

「ふむ、悔しいがその通りかもしれない」

ペドーの言葉に令音までもが同意する。

 

「う、だ、黙りなさいよ!!

ふ、ふーんだ!

いいかしら?今回はこっちは大手柄を立てているのよ?

こっちだって、超重要な物的証拠が有るのよ!」

 

「物的証拠?」

琴里の言葉をペドーが繰り返す。

 

「実は、なんか朝からペドーがおかしかったから、その、フラクシナスの小型カメラをいくつか飛ばしてたのよ」

気まずそうに琴里が話し出す。

因みに小型カメラとは、小さな昆虫型のカメラでペドーのデートをリアルタイムでバックアップするために、相手に気づかれない様にフラクシナスが飛ばしている物だ。

 

「令音」

 

「了承した」

琴里が一言声をかけると、令音は部屋を出ていった。

そして数分立った後、小さなパッドを持って帰って来た。

おそらくだが、上空に浮かぶフラクシナスから持ってきたのだろう。

 

「これを見てくれ」

令音がパッドを立ち上げ、一つのファイルを開いた。

そして、画面に動画が流れ始める。

 

「放課後のペドーの様子よ、折紙に何か渡したことも、屋上でサボった事も、もちろん時崎 狂三と出会ったことも知ってる。

そして、今回問題なのはその後よ」

動画が屋上を映しペドーを捉える。

そして、その近くに現れる黒い影(狂三)とその影を打ち抜くレーザー光線。

そのレーザーに巻き込まれて動画が砂嵐だけになる。

 

「はっきりと映っては無いけど、誰かが精霊になって狂三を倒したのも分かってる。

もっとも、その時カメラはレーザーに巻き込まれて、お釈迦に成っちゃったけど」

どうやら、ペドーの言葉で曖昧な情報は最後の1ピースが埋まった様だった。

 

「やるわよペドー、あの折紙を攻略して、前の世界から追ってきた悪縁なんて壊しちゃいなさい!」

 

「ねぇ、令音さん。これって、琴里の私生活もこれで観察できます?

あと、四糸乃やシェリちゃんとか、他の子も……」

 

「無論可能だ。倫理さえ気にしなければ彼女たちのプライベートは丸裸さ」

令音のそのセリフを聞いた瞬間、ペドーの目に光がともる!

 

「イェス!こういうの欲しかったんだ~

胸に差してるカメラペンじゃうまく撮れなくて……

精霊攻略の結果如何によっては、しばらくレンタルとか……出来ないですかね?」

 

「ちょっと令音!?」

とんでもない契約が交わされそうになっている事に気が付いた琴里が、全力で止めようとする。

 

「大丈夫!紳士なペドーさんはのぞきなんてしないよ!!

ただ、空を飛んでる蟲の視点が気になってぇ。

おうちの中を飛んでみようとぉ――」

 

「どう考えても嘘じゃない!!

あと、その胸のペンも渡しなさい!!」

 

「断る!!」

どったんばったんと兄妹の争いが始まった。

 

「やれやれ、【魔王】が相手でも彼はブレないな……」

そんな二人を令音が感情の読めない声で、つぶやいた。

 




コラボは募集しません。
書いて!と言われてもマジで無理です……
貸して!ならまだ何とか……

けど、ひと様の世界にガチロリコンを送り込んだら大変な事になる気しかしない。
まさに、世界の破壊者。

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