いやー、すんばらしい!!
皆さん熱くなってきたので、体調には気を付けてくださいね。
現代の天宮市の空中に突如、
『胎児のまま成長した存在』狂三は
さっきまで存在しなかったハズのそれは、両足を抱え込み、母親の中で誕生の時を待つ胎児のような恰好をしていた。
そして、狂三は初めて見るハズのそれに確信めいた予感が有った。
あれは『良くない物』だ。あれは『厄災』だ。
あれは絶望の果てに生まれた、さらなる絶望を呼ぶ存在だ。
そしてその顔は狂三にとって見覚えのある姿をしていた。
「なんですの、アレは――」
狂三の視界の先、ついさっき過去へと送り込んだハズの鳶一 折紙が精霊、それも反転した『魔王』として目の前に存在していた。
フォン――フォン――フォン……
折紙の周りを霊装の破片、黒い羽が回りだす。
なおも折紙は何の感情も見せない。だが、そんな彼女など知った事かとばかりに、羽が宙を舞う。
それだけはタダの羽、なんでも無さそうな存在に見えるが――
「っ!」
ASTと何度も戦った狂三には分かる。
今すぐ逃げるべき、今すぐ一歩でも遠くへ!!
きぃいいいいいいい!!!
羽が黒い光をほとばしらせた時、町は一瞬にして『輝く闇』に消し飛ばされた。
「…………」
ふわりと浮かぶ魔王は、折紙の顔をしてこちらをぼおっと、見ていた。
破壊行為をしたのに何の感慨もなく、ただただ空虚な心を以て何の理由もないタダの破壊を続ける。
そんな『魔王』に立ち向かう物が一つ。
一体いつから居たのか、最初からかそれとも急いで駆け付けたのか。
所々船体に傷のあるフラクシナスが『魔王』に対峙する。
だが結果は見えている。
黒い光が走った瞬間、フラクシナスが僅かに揺れ炎上し、あっけなく燃える町に落ちた。まるで焚火にまきを投げ入れたかの様に、一瞬だけ炎が立ち上った。
あの様子では生存者も居ないだろう。
悲鳴も、一矢報いる事も、何の感慨もなく、多数の精霊を救って来た希望の舩は闇に沈んだ。
勝てない。アレにはエレン・メイザースだろうと、世界中のASTの武装を合わせた物でも、どんな精霊でも、たとえ五河 士道だろうと近づくことも出来ないだろう。
「
何も、何も、何であろうと届かない深い絶望を抱えた魔王にこの世は蹂躙される。
何物も、何者も、何もかもあの魔王に消されてしまうだろう。
この世界は、あの魔王がやって来た時点で滅びが確約されたのだ。
唯一、たった一筋の希望があるとすれば――
「お願いしますわ。ペドーさん、こんなクソッたれな世界、
燃える町を尚も破壊する『魔王』を見ながら、狂三はつぶやいた。
『ねぇ、力が欲しくない?』
ノイズの様な、酷くおぼろげな存在。後にフラクシナスから『ファントム』と呼ばれる存在が公園で一人の少女に話しかけていた。
その少女の名は五河 琴里。五河 士道の妹にして、もしペドーが知る通りの運命を進むならこの日、この場所で精霊に
『ファントム』の掌の赤い結晶が、ゆっくりと怪し気に光を放つ。
その光の導かれるように、幼い琴里が手を伸ばす。
が――
「いらない。わたしにはおにーちゃんがいる!
パパもママも、おにーちゃんもわたしのことをぜったい、わすれたりしない!!」
強い意思を以てして、琴里は『ファントム』の誘惑を跳ね除けた。
『そう……か、なら仕方ないね。他の子を探し――』
「ひやっほぉほほぉう!!リアルマイリトルシスターかわえぇええええ!!!
今すぐ嫁にしたいわ!!っていうかしよう!!すぐしよう!!
純粋幼女こそが俺のジャスティース!!」
「えう!?だ、誰――」
後ろから飛びかかって来た怪しげな男に突き飛ばされ、琴里の手が『ファントム』が今しがたひっ込めようとしていた赤い結晶に触れる。
その刹那――!!
「あ、ああ、ああああああ!!!!おにーちゃぁああああああああああ!!!」
結晶が琴里の体に吸い込まれ、琴里の姿が精霊へと変わっていく。
体からあふれ出した炎は無数の火柱となり、町を襲う!!
一瞬にして、平和な町は地獄へと変わった。
「あ、やっべ……くそぉう!ファントム!!俺の可愛いい妹によくも!!」
そう言って、琴里に飛び掛かった少年は『ファントム』に向き直った。
『え、ええ……』
ペドーの怒りに困惑気味に『ファントム』のノイズが揺れた。
「まぁ、飲めよ。おごりだ」
『あ、ありがと……』
現代ではもう潰れてしまった駄菓子屋で、ペドーが2本のラムネを手に表の椅子に腰かける。
夏の暑い日差しの中、氷水の中で冷やされたラムネの炭酸とすっきりした甘さが喉を潤す。
周囲の人間は逃げ惑っているが、ペドーは未来から来たのでこの駄菓子屋が奇跡的に無傷で燃え残る事を知っている。
『あの、いろいろ聞きたいんだけど……まずは妹さんいいの?』
「あー、これは仕方ない事だからな。アイツが精霊にならんとこっちもいろいろ困る」
ファントムの言葉にペドーが答える。
もし今、琴里が精霊に成らなければラタトスクに見いだされる事も無かっただろうし、それにより精霊をの霊力を封印出来るペドーが発見される事も無かっただろう。
しかし、流石にかわいそうだったので、燃える琴里に【
「あ!けど、こんな事したのは許して無いからな!?」
『………………え?何割かは君のせいじゃない?』
ファントムは琴里の拒絶された時、正直な話すでに諦めていた。
結果として精霊にはなっかたが……
『しかし、その姿、そして能力――君は未来から来たんだね?
心当たりはある、時を超える【天使】も存在しているからね』
ぷしゅ!
「よっしゃ!ラムネ開けるの成功」
たまーに失敗するんだよなー、なんて言いながら口を付けるペドー。
『……君は人の話を聞かないね』
「ぷはぁー!うまい!」
『まさか、この時代に来たのはラムネを飲むためと言う訳ではないだろう?』
ファントムが再度口を開く。
「うん、もうすぐこの辺にもう一人の精霊がやってくる」
空を見上げて、件の精霊を思い出しながらその姿を探す。
『未来で生まれた、精霊だね?』
思い当たるところがあるのか、ファントムが話す。
「そいつは多分お前を狙ってくる。帰ってくれ、隣界に。
お前の為を思ってじゃない。俺は、今から来るそいつに、人殺しをさせたくないんだ」
『そっか』
ペドーの言葉を聞き、ファントムがラムネに口を付けた。
『やっぱり君はやさしいね。私が見込んだ通りだ』
「俺の事、知ってたんだな?」
やっぱりの言葉を聞いて、ペドーが視線を鋭くする。
このノイズの向こうにいる人物は、ペドーが知っている人物の可能性が出てきた。
無論、さっき精霊の力を使っても驚かなかった点から、ペドーが精霊の力を
『おっと、しまった。君は抜けている様で、その実すごく鋭いのだね。
さてと、君のご厚意はうれしいが、残念ながらそうはいかないんだよ。
私にもまだやることはある。
さ、たかみや君。君は元の時代に帰りなさい?』
それだけ話すと、ファントムはふわりと浮かび上がった。
そして、ゆっくりと空へ昇っていくと――
シュン!シュ、シュン!!
数本のレーザーがファントムの体をかすった!!
「折紙!?」
ペドーの視界の先、遂にこの時代にやって来た折紙とファントムが戦いを始める。
折紙は自身の両親を殺した精霊を、始末する気だ。
その第一候補として、ファントムに目を付けたのだろう。
「けど、おかしいぞ……さっき話した感じじゃ、ファントムは折紙の両親を殺したりする様には思えない。
琴里も多分この時間の俺に霊力を封印されているハズ――ハッ!?」
非常にシリアスな状況で、ペドーは自身の視界の端に幼女を見つける。
だが、その幼女にはすさまじく見覚えがある姿で――
「折紙……ロリな頃の折紙……!?
つまりロリ紙!!か、かわええぇ!!
なんだ、あのかわいい子は!!お家に連れて帰りたい!!」
さっきまでの思考を捨て去り、走るロリ紙に夢中になる。
「きゃぁあああ!!」
その時、レーザーが降りかかり、ロリ紙の後ろの道が抉れる。
間違いない、精霊となった折紙の攻撃だ。
「ちぃ!折紙め、怒りで周囲が見えていないのか!!」
ペドーが話す様に、折紙は周囲の被害などお構いなしに、周囲にレーザーを撃ちまくっている。
そのレーザーは『誰』に当たってもおかしくはない。
折紙の両親を殺した精霊。殺しなどしなさそうなファントム。両親の元へ走るロリ紙。そして『精霊』となり『無差別』に『周囲を攻撃する』折紙。
「そういう、事かよ……そういうカラクリかよ!!」
ペドーの脳内で複数のキーワードが一つに結ばれた。
このままでは、最悪の事態を迎えるかもしれない。
そうだ、もし、もしこの想像が正しければ、折紙の両親を殺したのは、琴里でもファントムでも、まだ見ぬ精霊でもなく――――――
「ふっざけんな!!そんな、そんなことが有ってたまるかよ!!」
ペドーが勢いよく走り出した。
自身の先を行くロリ紙を追いかけ走る。
抉れた地面を蹴り、燃える壁を越えて、折紙の両親と思われる人物を探す。
「おとうさーん!おかあさ――」
角を曲がったペドーの視界に飛び込んできたのは、ロリ紙の目線の先に居る夫婦だった。
そして当人たちは気づかないが、その頭上のに精霊となった折紙がファントムをにらみながら浮かぶ。
折紙が手を前に伸ばすと、白い羽のビットが周囲を回転し始める。
そのうちの一発が、ペドーの目の前の地面を吹き飛ばす。
煙が上がり、ロリ紙の足がもつれる。
「お、かーさ、おとー……」
ロリ紙の見上げる空の上。『天使』がレーザーに光を蓄える。
「ま、に、あえぇ!!」
ペドーが足元の瓦礫を【ハニエル】で
体重をかけて飛び上がる。
その瞬間、今度は自身の体重を軽くする為にロリ紙のほどの年齢へと変える。
ロリ紙をの頭上を飛び越える。
だが、まだ両親には届かない。
そして今しがた、ゆっくりとレーザーが放たれた。
「まだだ、まだ終わらない!!」
自分の体にはまだ【カマエル】の回復がある。最悪自分を盾に、折紙の両親をつき飛ばせばよい。
死ななければ、何とかなるだろう。
「けど、もう一個切札があったりして!!」
空中でペドーが自身の背中を服ごと凍らせる。水分が一瞬にして氷塊をつくり上げる。
そして――
「熱いんだろうなぁ……」
次の瞬間、氷塊を炎が勢いよく包んだ!!
これはさっき琴里にもやった、【
だが、今回は水を作りたいのではない。
水は、液体から気体に変わるとき体積が増える。
氷の冷たさ、そしてそれを焼く炎の熱にペドーが顔をしかめる。
だが――
「うおりゃぁああああ!!!」
空中で体重がゼロになったペドー!!
背中からスチームを噴出させ、その勢いを使い加速!!
そのままペドーが折紙の両親を突き飛ばし、地面に転がる。
ペドーのすぐ後ろを光が通過して、地面をえぐった。
その光は突き飛ばしたペドーと折紙の両親を飲み込んだ。
「あ、ああ……」
クレーターを見て、ロリ紙が膝をつく。
家が無くなった。これでは自分の両親も――
「痛ってぇ……まじ、死ぬ……」
クレーターの一部が盛り上がり、一人の少年が這い出る。
光の直撃を免れたのか、彼の下で自分の両親の姿が見えた。
「あ、貴方は……」
ロリ紙が茫然とする中で、見ず知らずの少年は立ち上がり笑みを見せた。
「よお、折紙。お前の両親は無事だぜ?
だから、だから絶望するんじゃない……
折紙の知らない、その少年はボロボロの姿で笑みを浮かべ、消えた。
「は――っ!?」
自身のベットでペドーが目を覚ます。
時計を見ると、日付は折紙に監禁された翌日となっていた。
手足に縛られた痕跡はない。
「戻って来たのか……未来に?
あっ!バック・トゥ・ザ・フューチャー!!
スマフォもある!!ロリ画像を集めたパソコンもある!!
たった五年でも、進歩はすごいな!!
スゴイ!!ジダイ!!ミライ!!」
ガチャ――
「アンタ朝から何やってるのよ……」
自室で騒ぐペドーを見かねて、琴里が姿を現す。
「あ、琴里……琴里……か……」
「何よ?なにいきなり残念そうな顔してる訳?
残念なのはアンタの頭だけにしてよね、あ、残念じゃなくておめでたいの間違いか。
私としたことが、ミスしちゃったわ」
相も変わらず毒を飛ばしてくる。
「ふぅー……劣化したな」
「はぁ!?ちょっと!!今一体なにを言ったのかしら!?
誰が!!誰が劣化よ!!」
琴里が憤りをペドーに見せつける。
「はぁ、やっぱり過去からお持ち帰りすればよかったな~」
妹の怒号を聞きながら、ペドーは朝食の準備をすべくキッチンへ向かった。
さて、次回からは現代へ!
世界はどう変わったのか?
そして、ガチペドオーは?
多分もう出ない!!