デート・ア・ペドー   作:ホワイト・ラム

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さてさて、今回から新しい章『折紙パラドクス』が始まります。
矛盾を抱えた彼女の闇が、ついに見えますね。

ペドーは折紙を救えるのか!?


折紙パラドクス
「昏睡プレイみたいで、ひどく興奮する」「わかるー……」


カチャ――キィ……

 

小さな音を立てて、ペドーの部屋の扉が開く。

音を立てない様に静かに姿を見せたのは七罪。

だが、彼女の正体である幼い姿ではなく、グラマラスな美女(ペドー視点では消費期限が切れているどころか、近づいた瞬間加齢臭で『エンッ――!』とか言って白目をむいてしまいそうな姿だった)

 

「うふふ」

七罪はメンタルが弱い。

精霊は精神的に不安定になることで、ペドーとの封印のパスが開き、一時的に霊力が戻ってくる。

七罪は、その特性を悪用して自分で自分を追い込み、自発的に霊力を使う術を見つけたのだ。

 

いつも余裕たっぷりのペドーを、びっくりさせてやろうという七罪のいたずら心だった。

 

思い切って変身後の姿は下着姿だ。

これにはあのロリコン野郎も一撃ノックアウトだろう。

早速、布団にくるまる相手に手を伸ばした。

 

「ぺ・ど・うく~ん。おき――うぇぃ!?」

 

「う~ん……もう、あさ……ですの?」

素っ頓狂な声を上げる七罪。その衝撃で変身が解けるが本人はそんなことを気にしては居ない。

それほどまでに、目の前の存在は、驚きに満ちていた。

 

「ふぅあ……お、七罪じゃないか……どうしたんだ?」

目を覚ましたペドーが、あくびをながら話す。

 

「ちょっと!!なんで、『その子』と()()()()()()のよ!?」

七罪が声を上げて、指をさす相手はペドーのベッドからこちらを見ているのは、精霊たちの中でも最も幼い、くるみだった。

 

「ま、まさか、そんな幼い子に、いかがわしい事を!?」

 

「あー、ちがうちがう。昨日くるみの好きなアニメ『ごちゅじんたま、だいすきうさたん』通称『ごちゅうさ』の最終回だったんだ。

特別に、夜更かしして二人でリアルタイム視聴したんだけど……」

ちらりと、ペドーがくるみを見る。

 

「ぐすっ……うさたん……あんなのってないですわ……ひどすぎます……」

 

「あーよしよし。そうだよな。ひどいよな……」

見る見るうちに涙ぐむくるみをペドーが肩を抱いて慰める。

 

なるほど、昨日好きなアニメがショッキングな最終回を迎えて、悲しむくるみをペドーが慰めたのだろうと七罪は理解した。

 

「なんか、あんたが『慰める』っていうと、とたんにうさん臭く感じるのはなんでかしら?」

七罪が言葉を濁した。

 

その時――

 

「一体朝から何をしているのかしら?」

一体いつからいたのか、ペドーの部屋のドアの向こう。

琴里が、静かに怒りをみなぎらせて立っていた。

 

「やぁ、琴里」

 

「ねぇ、おにーちゃん?一体どうして、同じベッドでくるみと寝てるのかしら?

そして、なぜ七罪まで部屋に連れ込んでいるのかしら?」

小さな司令官は相当お怒りの様だった。

その背後から流れるプレッシャーに、七罪がわずかにたじろぐ。

 

「ふっ、一緒に寝てくるみを慰めていたのさ。

そして、七罪は何か知らんけど、下着姿で部屋入ってきただけ。

くるみが見てなかったら、今ごろチョメチョメしてたぜ!!」

 

「ちょ、あんた起きて!?」

 

「起きてたよ?今度は、その姿で、あの恰好をしてほしいぜ!」

 

「この――ロリ兄!!」

グッとサムズアップするペドーに向かって、琴里が飛び蹴りを放つ!!

 

「む?薄ピンク……!」

 

「覗くなぁああああ!!!」

琴里の下着を覗きこんで、ペドーはまるで罰を受け入れる聖者の様な趣すら放ちながら蹴りを受け入れた。

 

 

 

 

 

「――でな?こう、すぐ横にくるみの寝顔が有る訳ですよ!!

小さなお鼻が動いて、睫毛が震えて、時折アニメの悲しいラストを思い出して、僅かに涙を滲ませて『うさたん、だめ……ですわ……ついて、いっちゃ……』なんて言うんだよ!!

これは抱きしめるしかなくね!?優しくハグして、優しく撫でて、よしよしすべきじゃね!?

もうね!!俺はもうねぇ!!ちっさいからだが震えて、なおかつ涙目なのよ!!

普通だったら、胸とかお尻とかお腹と触っちゃうけど、そん時ばっかりはそうは成らなかったわ……純粋に抱きしめて――殿町?聞いてるか?」

 

「大丈夫……おれは、ノーマル……俺はロリコンじゃない……おれは、まだ……エレンさんがいる……きっとエレンさんがすぐに……助けに来てくれる……大丈夫……大丈夫………」

今朝有った事を殿町と楽しく談笑(ペドー視点)しながら、学校での時間をつぶす。

その時、扉が開きタマちゃん先生(消費期限切れ)が浮かない顔をして入ってくる。

 

「あれー?タマちゃんなんか浮かない顔してる?」

 

「ほら、きっと昨日の『ごちゅうさ』の最終回が……」

 

「ああ、あれか……監督曰く『昨今の売れたら取りえず2部商法をさせないため、絶対に続きが無い終わりにした』らしいから……」

ざわざわと騒ぐ教室の中で、尚もうつむくタマちゃん(消費期限切れ)が、事態の重さを物語っていた。

静寂はその事を如実に語り、だんだんと教室内に伝播していく。

そして、皆は自然に自身の席に座り、次の言葉を待ち始めた。

 

「今日は皆さんに悲しいお知らせが2つあります……

まずは鳶一さんです、彼女はお仕事の都合でイギリスの学校に転校することになりました……必要書類は後程送るそうですが……もう一つは……

一部の人は知っているでしょうが、昨日お友達のマイン君が亡くなりました……」

 

「え?」

その言葉に、衝撃を受けたのはペドーだけではなかった。

その言葉の真意を確かめる様に、マインの席を見るがそこには誰も座っていなかった。

その机を囲む様に亜衣、麻衣、美衣の3人がうつむく。

亜衣は唇を固く結んで無言。麻衣はまるで魂の抜け殻の様な光の無い瞳。麻衣に至っては机に突っ伏し「まじ……やばいし……」という言葉と共に嗚咽が聞こえる。

 

クラスの中はあのオモシロ外国人がいなくなったことで落ち込みに落ち込んだ。

 

「このクラスもだいぶさみしくなったな……」

休み時間にペドーが一人つぶやく。

 

「結局、時子とマインのどっちも居なくなっちまったし、折紙まで……

それに遂には殿町まで錯乱して、また窓を突き破って飛び降りちまったし……なんで、俺の大切な友達は居なくなってしまうんだ!!

あと、殿町が飛び降りるのにクラスメイトが慣れててクッソ草生えた……」

ドォん!!と、机に自身の両腕を叩きつける。

 

 

 

 

 

ドォん!!と、ベッドに自身の両腕を七罪が叩きつける。

思い出すのは、今朝の事。

いたずら心のままに精霊ズマンションを抜け出したのは良い。

上手く家の中に入り込んでペドーの部屋に来れたのは良い。

だが、そこから七罪のネガティブが発動して、思い留まってしまった。

此処で帰ればよかったのだが……

 

「仕方ないじゃない~~」

誰に弁明するでもなく、七罪がベッドを殴りつける。

突然霊力が逆流して、大人の姿になった七罪はみるみるウチに自分に自信が湧いてきた。そしてその勢いのまま、あろうことかランジェリー姿で突入してしまったのだった。

 

「う、う……どう考えても痴女じゃない……100%痴女よ!!」

七罪の脳裏では、全裸のペドーがナカーマと言いながら、無駄にいい笑顔で握手を求めて来ていた。

 

「うわぁあああ!!私は、変態じゃないぃいいいいい!!」

再度ベッドを攻撃する仕事に戻った七罪。

だが、不意に聞こえたチャイムの音でピタリと動きを止める。

 

「だ、だれ?」

怯えながらも、走って玄関ののぞき穴から、来客の顔を確認する。

それは――

 

「オイ、引きこもり!!」

 

「ちょっと!?なんでいきなりけんかごしなんですの?

ぺどーさんとふたりでねたのが、そんなにきにくわないんですの?」

 

「ンな!?そ、そんなワケ無いだろ!?」

 

『おやおや~?シェリちゃんは意外とやきもち焼きなんだね~

これは、四糸乃もうかうかしてられないよ?』

 

「よ、よしのん……?」

漢字の通り姦しい3人組の幼女たち。

この前紹介された、ペドーが嘗て霊力を封印したという3人が立っていた。

待たせてはいけない!という強迫観念染みた動きで、反射的に七罪は玄関のドアを開けていた。

 

「あ、え……と」

しかし、この後どう言葉を繋げばいいのか分からなくて、七罪は言葉をつぐんでしまった。

 

「こんにちは、なつみさん。わたしたちとおちゃしませんか?

いいちゃばがあるんですのよ?」

くるみが一目で高いと分かる紅茶の缶をこっちに見せた。

 

『四糸乃たちの手作りお菓子もあるよん!』

パペットのよしのんが、小さな手で四糸乃が持つバスケットを差した。

 

 

 

「えっと……」

困ったような顔をして、七罪は自身の部屋のテーブルの表面を凝視する。

ちらりと視線を上げると――

 

「ん?」

シェリと目が合い、慌てて再度テーブルを凝視する作業に戻る。

部屋に3人を上げ後、くるみはお茶を入れる旨を伝え台所へ、四糸乃もお菓子を盛り付けるお皿を借りると言って奥へ行ってしまった。

結果、褐色系ボーイッシュロリに、引きこもり系ネガティブロリが対峙することとなった。

 

「あの……えっと、ごめんなさい……」

さっき表で3人が話していた内容から、逆算して七罪が謝罪を述べた。

 

「ん?さっきの話なら、気にしなくていいからボクだって、アイツとはそんなカンケーじゃないし……」

以前鋭い眼光を向けたまま、シェリがそう話す。

 

『けどけど~気にしてないって、お顔じゃないね~』

 

「みなさん、おちゃがはいりましたよ」

救いの手を差しのべたのは、お茶の準備をしに行っていた二人とパペットだった。

テーブルの上に、くるみがおちゃを並べる。

何処か良家のお嬢さんを思わせる優雅さ、それさえある動きだった。

 

「ゐ、イタダキます……」

一人だけの空間にまかさの客人に、七罪は自身の声が裏返るのを感じる。

 

「なにか、こまったことはありませんか?」

 

「あ、え?ん?」

四糸乃の言葉に、七罪がしどろもどろに反応する。

 

「何か困ったコトは無いかって聞いたんだよ」

言い淀む七罪の言葉をシェリは聞こえなかったと判断した様で、再度聞き直してくれた。

 

「とくには……」

 

「まだ、なれませんわよね。けど、ゆっくりならしていけばいいんですのよ?

それより、おちゃのかんそうをきかせてくれませんか?

ぺどーさんはなにをいってもおいしいしかいってくれませんの」

くるみがティーカップを傾けながら話す。

 

「あ、あの……そう言えばだけど、みんな前はごめん!!

散々いたずらして、困らせてごめん!!」

七罪の行動で、皆が目を見開く。

そう、この前まで七罪はペドーをはじめ、彼女たちにも散々嫌がらせをしていたのだ。

 

「ま、あれくらいイイじゃないか?」

 

「もう、やらないでくださいね?」

 

『よしのんは寛大だから許す!』

 

「まぁ、ぺどーさんにくらべれば……」

 

「え、みんな良いの?」

あっさり許す、3人に対して七罪はあっけにとられる。

 

「ああ、あのペド野郎と比べるとな……」

シェリがくるみの言葉に続いて賛同する。

 

「ペドーさん……は、すこし……」

 

『あんだか、一番人間離れしてるからなー』

皆が次々と『ペドーにくらべれば』と比較して許してくれる。

 

「いや、アイツなにしてるの!?」

許してくれたことよりも、皆が話すペドーの行動が気になる七罪。

 

「へぇ?知りたいか?」

 

「そうですわよね……なつみさんも、これからぺどーさんの()()()()()になるわけですし……」

 

「だ、だいじょうぶです……すこし、愛情表現が特殊なだけですから……」

 

「ひ、被害者!?アイツそんなに……あ、いや、今でも十分やばいけど!!」

ペドーという共通の相手を話のネタにして、七罪たちのお茶会が始まった。

 

 

 

 

 

「べぇっくしょん!!えう~」

道の真ん中で、ペドーが大きなくしゃみをする。鼻をすすり、歩みを止める。

 

「これは……きっと、家でロリたちが俺の噂をしているに違いない!!」

最早超人的な勘の良さで、速攻でペドーがくしゃみの原因を探る。

 

『ペドーさん、早く帰ってきてくださ……』

涙目の四糸乃がペドーと離れ離れになった悲しみに耐える様によしのんを抱きしめる(妄想)

 

『ぺどーさん、はやくかえってきてくださいまし……』

くるみが家の前で、帰ってくるペドーを今か今かと待っている(妄想)。

 

『ペド野郎……ボクを待たせるなんて、ナニ考えてんだぁ……』

さみしくなったシェリがペドーのベッドに顔を埋める(妄想)。

 

『七罪……七罪ぃ!!!』

七罪が、鏡の前でペドーに変身して、自身を求める姿を映す(妄想)。

 

 

 

「みんな!!待っててくれ!!今、帰る!!!」

ペドーが走り出した時、後ろから何者かに押さえつけられ、布を口に宛がわれる!!

意識を失う瞬間、ペドーが見た下手人の顔は――

 

「おり……がみ……」

 

「昏睡プレイみたいで、ひどく興奮する」

 

「わかるー……」

変態同士が、同調してペドーは意識を失った。

 

「…………とりあえず上着をぬがす……いや、全部……!!」

にたぁっとした笑みを張り付け、折紙がペドーをハイエースしていった。




皆さん、過去のロリ紙にペドーを合わせるのは危険だと判断した様で……
まぁ、その通りなんですがね?

さぁ、遂に時を超える変態の、物語スタートです!!

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