デート・ア・ペドー   作:ホワイト・ラム

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ずいぶん時間が掛かりました。すいません。
今回で、七罪トランスは終わりです。
次回から、新しい章が始まりますよ


終わりが終わった日

空中艦〈フラクシナス〉の艦内では、琴里が精霊たちに向き合っている。

十香、四糸乃、くるみ、シェリ、耶倶矢、夕弦、美九と皆が集合している。

「本来なら、貴女たちを戦わせるのは〈ラタトスク〉の基本理念に反する物なんだけど……

ここは敢えて、司令官じゃなくておにーちゃんの妹の『五河 琴里』としてお願いするわ。

みんな、おにーちゃんを助けて」

何時もの自信にあふれた琴里らしからぬ、弱気な発言。

なるほど。確かにこの言葉は指揮官の琴里ではなく、先ほど自分で言った通りのペドーの妹としての頼みなのだろう。

 

「勿論だ!」

間一髪入れずに十香がうなづく。

彼女も琴里と同じくらいペドーが好きなのだ。この頼みを断わるなど考えもしなかった。

まぁ、助ければ黄な粉が貰えるかもしれないという、下心はわずかにあったのだが……

 

「くくく……ようやく、颶風の御子である我ら八舞の実力を見せる時が来たか」

 

「肯定。夕弦たちの力が有れば、どんな敵も楽勝です」

 

「ダーリン……ダーリンに頼られる……ダーリンに、もっと必要としてもらえる!!」

皆が力強くうなづく中、十香をはじめ八舞の二人と美九は気合の入りようが違った。

今まで良い所が無かった為、ようやくやってきたチャンスに気合を入れているのだろう。今こそ、影の薄い精霊脱却を目指す!もう、いらない子なんて言わせない!

 

だが――

 

『ペオォア!!』

画面に現れたのは、光の巨人。

何処となく、日向を歩けない良く見知った人物を思わせる顔立ちをした巨人が、怪物と大立ち回りを繰り広げた。

まるで現実感のない、それこそ、まるでモニターで特撮の怪獣映画を見ているような気分だった。

 

『きっっっしゃー!!』

フラクシナスのモニター画面上で、機械の怪物が謎の巨人の放ったビームによって、爆散四散した。

怪物の最期の抵抗とばかりに、その体を構成していた機械のパーツが雨の様に町に落ちていく。

 

「怪物、沈黙しました」

 

「ん?」「え?」「は?」「え?」

クルーの言葉に、皆が固まる。

気合を入れた物たちには、びっくりするくらいあっけない結末。

例えるなら、振り上げたこぶしをどこに振り下ろせばよいのか分からなくなった様な感覚。

だが、そんな非幼女精霊たちの気持ちなど知らない、と言わんばかりの笑顔でペドーが地上でこっちに手を振る。

 

「ぬ、ぬぅ……」

 

「うぐッ……」

 

「はぁ……」

助かって良かったという気持ちと、今回も出番はないのかという、悲しみが精霊たちの中でないまぜになって、口から弱弱しいため息となってこぼれた。

 

 

 

 

 

「ん、あー、無事無事。俺と七罪に怪我はないよ。え?あ、うん。七罪は一緒にいるぞ?え、ああ、うん、わかった」

ペドーが耳に手を当て、何か通信をしているのが七罪には分かった。

 

「あ、七罪?悪いけど機体トラブルと、破片が危ないからって、回収はもう少し後になりそ――を!?」

インカムから聞き取った情報を話しているペドーの腰に、七罪が体当たりをする。

まさかの衝撃に足元がふらつくが、何とか耐えきるペドー。

 

「えっと……ナッツミン?」

 

「ご…………ん………さ……」

ペドーの服に顔を埋めたまま、七罪が話す。

 

「えと、何って?」

聞き取れない言葉に、悪いがペドーが聞き返す。

何かをつぶやく七罪と、結局聞こえずに何度も聞き返すペドー。

こんな会話が数回繰り返された。

そして、何度か目にようやく七罪が顔をあげた。

 

「あんたたち……って、ほんとうにバカよね……

私を探して、逃げ遅れて……私、私、酷い事いっぱいしたのに……

いっぱいイジワルして……憎まれ口ばっかり叩いて……散々困らせたのに……」

少しづつ、七罪の言葉に嗚咽が混じっていく。

そしてついに目じりから、涙がこぼれ落ちる。

 

「うぐっ、ぐすぅ……いじわるしてごめ”ん”な”ざい”~~~!!

やさしぐじてぐれたどに……いたずらじて、ごめんなざい”~~」

ペドーのシャツを分泌液でドロドロにしながら、七罪が謝罪する。

そしてようやく上げた顔を再び、服に押し付けて隠してしまう。

 

「よぉ~し、よしよし。

大丈夫だぞ?俺はもう怒ってないからな?」

ペドーが優しく七罪を抱きしめる。

視線を合わせる様に、ズボンが汚れるのも気にせず膝立ちになる。

 

「ほんとう?マッサージ、うれしかったし、髪を切ってくれたのもうれしかった、服を選んでくれたり、メイクをしてくれたり、またしてくれる?」

恐る恐ると言った顔で七罪が聞いてくる。

 

「勿論さ。さ、友達に成ろう?

他のみんなも怒ってないハズだぞ?」

顔面をドロドロにした、七罪が顔を上げる。

 

「うん、うん……けど、そろそろ私のお尻から手を放して欲しい」

七罪の声で、ずっと尻を撫で続けていたペドーの手が止まる。

 

「ぎくっ!?……これは、ほら、位置的に触っちゃっただけだし……

『うっほ!七罪のすべすべプリティお尻、超かわえ~むふふ』とか思ってないし……」

言い訳がましく弁明するペドーをみて、そう言えばコイツロリコンだったなと、七罪が友達になるべきか一瞬躊躇した。

 

だが、同時に思いたる部分も一つ。

 

「ねぇ、私ってかわいい?その……さっきみたいな事って、ブスにはしないでしょ?」

顔を真っ赤にして、七罪がペドーに尋ねる。

ペドーの数々のセクハラ。それは言い返せば七罪は「セクハラをするに値する」という意味でもあり……

 

「すっごいかわいいぞ!」

一瞬のラグもなく、ペドーが答えた。

まるでクイズの早押しの様なスピードに七罪が圧倒される。

 

「……ちょっと、こっち、顔よこしなさいよ……」

 

「ん?なに、なに?なんな――――ん?」

ペドーが顔を近づけた時に、七罪が顔を近づけ二つの唇が触れた。

その瞬間、ペドーの体に温かいものが流れる感覚がやってくる。

霊力の封印の合図だ。

 

「っ……初めて、何だから……」

顔を外すと、七罪が顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。

 

「七罪……隠した方が良いぞ?」

 

「え?……きょ!?」

霊力が封印されて、一瞬で崩れた服をペドーが指摘する。

七罪は急いで体を隠した。

 

「み、み、みた!?見た!?」

 

「見てない、見てない、見てない。

そんな事より、俺の服を貸してやろうな?」

ペドーが慌てて、手を振って自身の無実を主張する。

ナチュラルに服を脱ぎ捨て、全裸になる。

今回も不自然な光が差し込み、ペドーの足の間と胸を隠す。

「さ、服をどうぞ?」

イヤに紳士的な態度で、服を差し出すペドー(羽織った上着以外全裸)

「まず先にポケットの携帯を見せなさいよ!!」

 

「あ、ちが、これは偶然ムービーに成ってただけだし!!

決して封印後のあられな姿を盗撮する物じゃないんだよ?」

そう言って、大事そうにペドーが携帯をポケットにしまう。

 

「とりあえず出せ!!まずは、そっちからでしょ!!」

 

「やべ、逃げる!!」

無人の町、ロリコンと半裸の幼女が追いかけっこを始める。

空中にいるフラクシナスのメンバーはある者は笑い、またある者は怒声を放ち、またあるものはうらやましがった。

その、騒がしい声はペドーに危機がさり、日常が戻ってくるのを実感させた。

 

 

 

 

 

「しっぱいした……だと?」

重役室にしつらえられた画面を見ながら。マードックが茫然と声を漏らす。

 

「一体どうする気だ!?」

 

「主犯はマードックであり、我々は関与してない!!そうだろ?」

 

「ああ、そうだ。これはマードックの独断と暴走の結果だ!!」

さっきまで子供が騒いでいる様な重役室は、今度は保身を図る汚い男たちの悲痛な声で満ちていた。

マードック以外の者は皆、今回の件は「マードックの独断であり、自身は関係ない」というスタンスを取りたがっている。

まぁ、それも無理はないだろう。

なぜなら、こんな大がかりな事をすれば、必ず犯行はバレる。

そしてこんな事が明るみに出れば、当然命を狙われた本人はいい気はしない。必ず報復に来る。今回の件でマードックは無事に生活し続ける事は困難だろう。

始末されるのか、それとも死んだ方がましと思うような拷問が始まるのか、家族友人恋人ごとごっそりと存在をなかった事にされるかもしれない。

今回マードック達が殺し損ねた人物は、それが可能でなおかつ実行しうる人物だ。

 

「まだだ……まだ、終わっていない!!

あの町に派遣した〈へプタメロン〉がある……最終手段だ」

 

『ミスターマードック。サードエッグの準備できてます』

通信の先から聞こえるのは、マードックの残した最後の切り札。

2つの人工衛星を合体させた怪獣が本命なら、『サードエッグ』は万が一の保険だった。

 

「ウェスコットの居場所は分かるか?」

 

『反応によりますと、ホテルから動いていない様子。

エレンママの反応はありますが……なぜか、遠くに行ってしまい今から間に合う可能性はゼロです』

マードックはその情報を聞いて口角を上げた。

あの厄介な魔術師はいない。いつも張り付いていたうるさいあの女がいないのは、朗報だった。彼女がいなければウェスコットの暗殺もより簡単になるだろう。

見せつけられた余裕は、マードックのプライドを痛く傷つけたが今回ばかりは、助かったと言えるだろう。

なお、実際は――

 

「ぐすっ、ひっく……まま、きてぇ……ぼく、こわいよぉ……」

イザとなればエレンママに頼めばいいや。と高をくくっていたウェスコットは見事に見捨てられ、いくら連絡しても助けの来ないうぇすちゃまは恐怖のあまり腰が抜けて、赤ちゃんプレイ以外でのお漏らしを久しぶりにしてしまっていた。

勿論マードックが知れば腹を抱えて、爆笑する情けない姿なのは変わりないが……

 

 

 

「くっ……余裕ぶって、動かなかったのが仇になったな!!

やれぇい!!」

マードックの命令が〈へプタメロン〉に伝えられた。

 

 

 

 

 

無限の闇が広がる世界宇宙――

その中で最も、人間に見られたであろう衛星に一機の機械が降り立った。

 

『ぺんぺん、ぺたぺた、ぺんぺたぺた!俺も餅つきの大会に参加させてくれ!!

何処だ!?餅つき大会の会場は何処だ!?』

シルバーのボディをした、バンダースナッチの様なマシンが手に持った杵を掲げる。

一瞬だけ、ノイズが走り通信がつながった。

 

「シーズ!!月になんでそんなもん持ってきているんだ!?」

通信の相手は、地球にいる彼の相棒 元ヒャッハー!系ASTのスズモトだった。

そして、その通信に応答するのは相棒のシーズだった。

 

『おお、スズモトか。月ではウサギが不眠不休で永遠と餅をつき続けているのだろう?ぜひとも俺も参加してみたくてな。

来年のお正月が俺に任せろ!!』

 

「馬鹿野郎!月でウサギが餅をついてるのは、伝説だ!!

そんな昔話があるだけだ!!」

 

『なにぃ!?それでは……俺の、「お餅つきたい」欲求は何処へ!?』

機械の為、決してシーズの表情は変わりはしないが、なぜかとても感情的に見えるのは、彼が優れたAIを持っているからだろうか?

 

「ヒャッハー!!こいつすっかり自分の仕事を忘れてやがる!!」

対してスズモトは、通信先の地球の何処かで、おかしなことをする相棒に頭を痛めた。

 

『安心しろ、スズモト!ちゃんと、計画通りに俺が出向いて、DEM社の衛星の一個に保存されているプログラムを回収すればいんだろう?』

スズモトの言葉に、自身がなぜここにいるかを思い出す、シーズ。

 

「ああ、イザコザで混乱している今がチャンスだ」

 

『無論、了解して――ん?』

その時、シーズが何かに気が付く。

「どうした、シーズ?」

 

『俺の野生の勘が言っている!

なにか、地球でエライ事が起きているぞ』

 

「てめぇはロボだろ!?野生だったことなんてねーだろ!!」

 

 

 

 

 

皮肉な事に、シーズの野生の勘は当たっていた。

 

「なんだ、あれ?」

ペドーが気が付くと同時に、見た事の無い空中戦艦が、ビームの光を溜めていた。

それは、攻撃の発射の寸前であることは容易に想像でき――

 

「不味――」

ペドーがとっさに、七罪に覆いかぶさると同時に、その空中戦艦が爆発四散した。

 

「え?」

 

「無事でよかった。ペドー」

爆発音の中、見た事もない装備を身に着けた折紙が立つ。

その装備はASTよりも、DEM社のスーツに近い様に感じた。

 

「折紙……それ……かっこいいな!?触って良い?」

 

「だめ。これは企業秘密がいっぱい。変わりに――私の体なら好きなだけ触って構わない。

さぁ、胸でも、腿でも、XXX(自主規制)でも!!」

 

「うわぁ……変態だ」

突如始まった変態同氏の会話に、七罪が露骨にひいて見せた。




因みに今回のトランスは、変身のトランスフォームではなく、精神に異常のあるトランス状態のトランスです。

では、次回予告、行ってみよう!!

「十香たちは、普通に生きたいだけなんだ!!
あと、幼女精霊たちとハーレムで俺はくらしたい!!」

「私が殺すのは、精霊だでではない。情にほだされた私じしん……
それより、縛られる貴方を見てると興奮する。襲っていい?」

「そんな、折紙が……」

「ひゃっほう!!ロリ紙最高やないか!!
これはメインヒロイン確定ですわ!!けど、現代じゃ賞味期限が……」

『ペドーさん!?目的忘れてますわよ!?』

次回!!折紙パラドクス編、開始!!

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