デート・ア・ペドー   作:ホワイト・ラム

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さて、今回から2巻の内容に。
頑張って書いていきます。


四糸乃イグニッション
出会いは雨と共に……


鈍色の雲が空を覆い、雨が足元の地面を濡らす中、士道が一人下校時間を過ごしていた。

ポタリポタリと、鼻先を濡らすと同時に体が芯から冷えていくのがわかる。

 

「雨か……女が濡れてるから、男がさしました。さて、なーにをさした?」

なーんて事を呟いてもそのクイズの答えである傘は今、手元になかった。

その代り中学生の頃に流行った、答えが一瞬だけ、卑猥な物に成るクイズを一人何となく口に出した。

雨に降られるし、傘は忘れるし……

雨の日は何処かアンニュイな気持ちになる士道だった。

 

「ん?」

そんな中、士道のロリコンの本能が近くに幼女がいる事を告げた。

 

「女――の子?」

士道の目の前に、何かが跳ねている。

緑色のうさ耳付フードに、左手にコミカルなウサギのパペットを付けている。

一瞬チラリと、士道と目が合った気がした。

 

「へィ、そこのおぜう――」

 

「ひぅ!?」

ズル!ベッタァン!!

士道が声を掛けた瞬間、幼女の意識が一瞬ズレさらに不幸が重なり足元を雨で滑らせる!!

さっきまで地面を踏みしめていった足が、空しく空を切る!!

その瞬間!!士道に搭載されていたロリコンブレインが瞬時に幼女の倒れる軌道を計算する、そして欲望に忠実な筋肉がその計算を元に弾丸の様に疾走る!!

 

「見えたッ!!」

カッ!!と目を見開く!!

そして士道の脳裏に、白い三角が焼き付く!!

*助けろとか、言ってはいけない。

 

「大丈夫かい?」

その幼女に手を差し伸べながら、士道が様子を見る。

 

「ん?」

寒さか、恐怖か幼女がカタカタと小さく震える。

士道が落ち着かせようと手を伸ばした時、逃げるかの様に士道の近くから飛び出した。

 

「ええとだな……?」

幼女を落ち着かせようとする士道、怯える幼女の顔に士道の動悸がどんどん早くなっていくのがわかる。

 

(落ちつけ……落ち着け、マイサン、距離を、距離を詰めるんだ……警戒されたら終わりだぞ?)

はたから見れば通報待ったなしの顔をして、士道が距離をじりじりと詰めていく。

 

「……!  こ、来ないでくださ……いッ……いたく、しないで…………くださ……い」

 

「大丈夫だよ~、初めてでも気持ちよくしてあげるからね~」

八割がた理性を捨て去った、士道が道の真ん中に落ちているウサギのパペットを見つける。

そう言えば、つけてたなと考えそれを拾い上げる。

 

「コレ、君のだろ?」

手の先にパペットを持って、幼女に向かって差し出す。

 

パシッ

 

手早く、士道の手からパペットを奪い取った幼女が素早く自分の手にブッ!ピガン!!(装着)する。

その瞬間、腹話術か妙にかん高い声がパペットの口から放たれる。

 

『やっはー、悪いねおにーさん。たーすかったよ』

無口な本体と比べ、ペラペラとしゃべり始める。

 

『んでさぁ?助けてくれた時にぃ、よしのんのいろんな所触ってくれちゃったみたいだけど……正直どうよん?興奮した?』

 

「うーん、あの程度じゃイマイチかな?あ、けど、『触らせてくれんの?』って言う期待で今、絶賛前屈み中だけど?」

言葉の割に全く、屈む様子のない士道がすさまじくいい笑顔でサムズアップする。

 

『うわぁお……おにーさん、欲望に忠実すぎない?

けど、まぁ、いいや。んじゃ、助けてくれた分って事でそんだけサービスしておくヨン!』

そう言って、そのまま角を曲がり姿を消してしまった。

 

「あーあ、逃げられたか……あそこまでかわいい子はあんまりいなかったのになー」

残念がる士道だが、不思議な満足感が満ちていた。

制服がびしょ濡れだが、そんな事すら気にしなかった。

 

 

 

 

 

「あー、最悪だー……パンツまでびしょ濡れ……」

自宅にて、玄関で士道が自身の服すべてを脱ぎ捨てる。

流石に気持ち悪く成って来たのだ。

シャワーを浴びようとそのまま、歩いていく。

 

ガラッ!

 

脱衣所を開けると……

 

「十香?何してんだ?」

 

「――ッ!!で、出ていけ!!早く!!」

脱衣所で全裸になっていた十香が、慌てて士道を押し出して浴室に入り込んでいった。

 

「えー、俺も入りたいんだけど?ってか、人ん家でよく脱げるな……

まさか、露出系の趣味が?」

 

「ち、違う!!ナントカ訓練で、琴里に連れてこられたのだ!!」

扉越しに十香がそう叫ぶ。

本来なら喜んで飛びつきそうだが、士道が残念ながらぶよぶよとでかく成った胸部に興味はないし、ある程度成長した肢体にも興味がなかった!!

 

「ふーん、訓練で人ん家で脱ぐのか……

おーい、琴里ー」

そのまま、琴里のいるであろうリビングに向かっていく。

 

「琴里ー、どういう事だ?」

テレビを見ている赤髪の妹に言葉を投げかける。

 

「あ、おにーちゃん。おかえ――なんで全裸なのよ!?服はどうしたの!!!」

 

「お前が十香を連れて来たのか?訓練ってなんのことなんだ?」

琴里の事を無視して、自分の疑問をぶつけ続ける。

 

「なんで落ち着いてるのよ!!少しは隠しなさいよ!!」

 

「すまない、シン。砂糖は何処かな?」

琴里の言葉を遮るかのように、台所からひょっこりと令音はコーヒーカップを片手に姿を現す。

 

「あ、令音さん来てたんですね。すぐに砂糖を持って来ますから」

そんな令音をみて、士道が台所の奥からスティックシュガーを取り出す。

 

「ふむ、ありがとう」

受け取った令音がコーヒーカップにサラサラと砂糖を落としていく。

 

「何で令音も落ちついているの!?士道が全裸なのよ!!どう見てもおかしいでしょ!!」

叫ぶ琴里!!しかし令音は特に気にした様子はない!!

 

「別に家の中なら、構わないではないのか?私の友人に寝る時は裸のヤツもいるぞ?」

 

「うわぁあああああ!!なんでまともなヤツがいないのよ!!」

琴里の声が住宅街に広がった。

 

 

 

 

 

「で?十香の精神安定の為、しばらく家に住むことに成ったと?」

 

「ふむ、そうだ」

琴里と令音の話を聞いて、士道がそれを復唱した。

ストレスの緩和の為、士道の近くに住むべきだと考え出したらしい。

 

「まぁ、この世界で知ってるのは俺だけだし、縋りつきたくなるのはわかる。

食費とは、その他必要経費はフラクシナスが出してくれるんだろ?」

 

「ああ、そうなるな。永続的にではないぞ?精霊用のマンションを作っているから、完成次第そちらに住まわせる様にするよ。

精霊と触れ合うのは君の訓練になるしね」

最後の一文で士道の動きが止まった。

 

「訓練?まさか……」

 

「そう、察しが早くて助かるわ。この世には十香以外にも精霊がいる、そっちも攻略してほしいの」

横から投げかけられる、琴里のリボンは黒、俗にいう司令官モードの琴里だった。

 

「あら?もう、精霊をデレさせるのは嫌なのかしら?」

挑発的な琴里の態度に士道がかちんと来る。

一瞬心の電源をオフにする、今は幼女の事は忘れよう。ただ、確実に交渉を進めなくてはいけない。

 

「当たり前だ。いやに決まっている」

士道は小さく声を漏らした。

 

「あっそ、なら世界が精霊にボロボロにされるのを見ているのね。

それか、ASTが精霊を倒す奇跡を待つか――

精霊の力を封印出来るあなたが嫌って言うなら仕方ないわね」

懐からキャンディを取り出し、琴里が口に咥えた。

 

「琴里。お前、勘違いしてないか?」

 

「へ?」

 

「頼むべきは、そっちじゃないのか?

言ったよな?精霊を封印出来るのは俺一人だって、フラクシナスが何を考えてる組織化は知らないし、興味も無い。

だが、精霊を欲しがってるのはわかる。あんな力だ、欲しがるのもおかしくないさ。

だが!!制御できないんだよな?俺だけが、切り札なんだろ?」

士道の目が琴里を鋭く射抜いた、司令官モードにも関わらす琴里が僅かに動揺した。

 

「さて、研修期間を考えて――小学生のお前を司令官にする組織も馬鹿だが、それに祭り上げられたお前も馬鹿だな。

でだ、もう一つおまけに、デレさせるって方法もおかしくないか?

当然、このまま攻略していけばさらに親密な子が増えるだろう。

これって、浮気したことに成らない?

それとも『惚れたのはお前だろ?俺は知らん、キス位で恋人面するな』って十香に言うのか?」

フラクシナスの持つ矛盾を士道が痛烈に批判する。

 

「そ、それでも、封印が出来るのは士道しか――」

 

「おっと、勘違いするなよ~。

俺も鬼では無いんだ、かわいい妹がスク水エプロンで頼んできたらコロッと行っちゃうかもしれないな~?」

ワザとらしく、琴里に視線を投げる士道!!

コレは脅迫だ。

琴里は世界と精霊を盾に、士道に攻略を迫ったが士道は自身を盾に琴里に迫った!!

 

「さぁ!!語尾は『にゃん』だ!!敬語で『お兄ちゃん、琴里のお願い聞いてほしいにゃん』ってお願いするがいい!!特例として、スク水とエプロン、さらにサービスでニーソの着用を認めよう!!」

 

「ちょ、ちょ、ちょっと!?」

急に投げかけられた、要求に琴里が困惑して顔を赤くする。

 

「おいおい、自分だけが安全地帯で踏ん反り帰ってる気か?

さぁ、がんばれ。応援してやるから」

二ヤリと張り付く笑みで、士道がビデオカメラを装備している!!

 

「へい、『お願いにゃん』!『お願いにゃん』!『お願いにゃん』!」

 

「う、うう……うわぁ……」

琴里が泣きだしそうになるが、士道は止まらない!!

 

「此処はプライド捨てるべきじゃねーの?さぁ!!!レッツ『お願いにゃん』!!」

欲望にぎらつく士道!!もはやペドー兼ゲドー!!

 

「お、ねがい……にゃん……」

眼に涙を浮かべ、消え入りそうな顔で琴里が絞り出した。

 

「……まぁ、今回はこれで許してやるか……」

カメラを片した、士道が自身の部屋へと戻っていった。

 

 

 

 

 

深夜3時20分。

部屋で寝ていた琴里が目を覚ます。

 

「よくも今日はさんざんやってくれたわね……!!」

怒りに満ちた目をして、小さくインカムに声を掛ける。

 

『ターゲットは二階よ、そこに士道を運びこんで』

小さく琴里が含み笑いをする。

訓練の一環として、士道に十香を慣れさせるのが目的だがその心中は私怨が入りまくっていた!!

 

「扉を開けるぞ?」

 

「!! まて……音が……」

隊員の一人が、扉を開けようとした時に部屋の中から小さく声が聞こえた。

深夜だというのにまだ、起きているのだろうか?

 

「外部班!!部屋の内容は!!」

インカムに話しかける職員。

 

『パソコンに電気がついてますが、ベットに寝転ぶ影が有ります。

おそらくターゲットかと……』

 

「なるほど、ゲーム中に寝落ちしたか……よし、侵入する」

音もなく、工作員が入って行きベットに寝る人影を確認する。

 

「!?これは!!」

工作員が驚きの声を上げる!!

そこには……

 

『大変です、指令!!フェイクです!!ベットには服で作られた等身大の人形が寝ているだけデス!!部屋に誰もいません!!』

慌てて、報告される言葉に琴里が息を飲んだ。

 

「な!?あの、ロリコン何処へ……」

 

ぎしっ……

 

「はッ!?屋根裏……屋根裏よ!!士道の押し入れの天井から屋根裏に入れるわ!!!きっとそこから出て行ったのよ!!」

まさかの予想を聞いて、琴里が瞬時に指示を工作員たちに出す。

 

『屋根裏ですね!!了解!!』

再び音もなく、工作員たちが動き出す。

その時。

 

ジャー……

 

琴里の眠る一回のトイレから、水の音がした。

 

「まさか、十香が!?」

起きたのかと、別の工作員に確認を取るが未だに部屋で眠っている様だった。

 

「確認しなくちゃ……」

不安要素を取り除く為、琴里がトイレに向かっていく。

 

意を決して扉を開くと――

 

「携帯電話?」

琴里の目に留まったのは、士道の携帯電話。

メールの着信を示すランプが点灯していた。

水が流れた様子は無いし、携帯だけがタンクの上に鎮座していた。

 

「まさか!!」

手早く自身の携帯を使って、空メールを士道の携帯に送ると……

 

ジャー……

 

メールの着信音として、水を流す音が流れる!!

 

「やってくれたわね……こうなれば私が!!」

瞬時に琴里が次に変態がとるであろう行為を計算する。

 

部屋を脱出して、工作員を巻いて――

 

「私の部屋へ、来る気ね!!なら!!」

琴里がトイレを飛び出し、士道の部屋へと向かっていく。

 

「ココなら、安心」

既に士道によって破棄された部屋、持って来た隙間に差し込んで鍵を閉めるタイプの錠を使う。

これで、士道の部屋の扉は開かない。

 

「忘れる所だったわ」

最後に琴里は天井裏へ続く、押し入れに棒を差して開かなくする。

これで、天井裏、扉ともに厳重にロックされたことに成る。

 

「ふふふ……自分の部屋がまさか、私を守る最後の扉になるなんてね……!」

勝利を確信した、琴里がベット寝る等身大士道ぬいぐるみを見る。

へのへのもへじで顔が作られているが、本当に大きく確かにぱっと見わかりはしない。

 

「いったい、何時つくったのかしら?予測していた?」

 

「勿論。可愛い妹のことなら、ね?」

部屋に響く士道の声に、琴里が体をビクリと振るわせる!!

 

「し、士道!?何処に……!!」

 

「おにーちゃんを夜這いするなんて、悪い妹はオシオキがいるかな?」

 

「何処にいるかって聞いてるのよ!!」

恐怖にたまりかね、琴里が叫ぶ!!近所迷惑などもうすでに考えていない!!

 

「ここさぁ!!!」

琴里の目の前で、等身大士道人形が立ち上がる!!

 

「ひぃ!?」

 

「偽物の偽物は本物って事さ」

へのへのもへじの顔を取るとしたから出てきたのは、綿でなく士道本人!!

 

「さぁ、おにーちゃんと一緒に、寝ようか?」

 

「い、いやぁあああ!!」

ガチャガチャと、扉を押すが開かない!!

琴里が自分でつけた鍵だ!!

 

「うふうふふふふふふふふ……」

 

「うわぁあああああああ!!!!」

ガシャーン!!

 

琴里が窓を突き破って夜の闇に消えていく!!

 

「あーあ、逃がしたか」

残念そうに、士道がつぶやいた。




士道が少し強くなってる気がする。

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