デート・ア・ペドー   作:ホワイト・ラム

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さてさて、今回も更新。
もう50話かー……

この前、お気に入り200人とか言っていましたが、いつの間にか350人越えへ……
いやー、うれしい限りですね。
これからも頑張ります。


無・敵・到・着!!

何処かの話でこういったものがある。

『罪を犯したことのない物だけが罪人に石を投げよ』と、またある場合ではこういう物もある『死者を生き返らせたければ、死者をだしたことのない家の暖炉の炭を貰え』と。

どちらも、極端な話だが、自身も他者も同じく間違いを起こすという事。

罪を犯さない者はいないし、死者を出したことのない家もない。

ありがたーいお話の一つ。

さて、ここで今起きている一種の魔女裁判はどうだろう?

 

 

「このクソビッチが!!」「男のブツを咥えた口で歌を歌うんじゃねーよ!!」「彼氏と週9でヤッたってマジかよ!!」「AVいけや!!AV!!」

 

ステージで震えるのは、ついさっきまで人気者だった美九。

今となっては震えて、ステージの端で暴動を起こす者達から逃げる事すら出来ずに静かに泣いているだけだが……

 

対するのはモテない男たち。

恋人を作った事を咎める者に、『恋を作った事の無い者』だけが石を投げれるなら、彼らはその条件に見合ったメンバーなのだろう。

まぁ、ぶっちゃけると「恋人いない歴=年齢」の男たち!!

アイドルの裏切りに怒り心頭である!!

 

「いいかー!!そこのお前!!国際条例で決まっている『非彼女三原則』を言ってみろ!!」

 

「はい隊長!!

一つ!!『恋人を持たない!!』

一つ!!『恋人を作らない!!』

一つ!!『恋人を持ち込ませない!!』

であります!!」

 

「よくやった!!あの女はどうだ!?」

 

「全部、裏切っています!!死刑を求刑します!!」

暴動は治まる所を知らない。

罵詈雑言を投げかけられ、美九がゆっくりと気を失った。

そして、皆が見る前で姿を消した。

 

 

 

 

 

「どうです、令音さん。豚の様子は?」

 

『ああ、シン……今の所、おとなしくしているよ……

にしても、君よくこんな非情な事を考えるものだね……』

 

「いや、降参する事はちゃんと勧めたんですよ?

それでも止めないから、仕方なく……」

ペドーからの連絡を受けて、ガラスの向こうに居る部屋でうなだれる美九を令音が見る。

この部屋は、以前暴走した琴理を封じ込めた部屋だった。

美九は正直な話、破壊力に乏しく能力で他人を操る力が脅威なのだ。

なので、完全防音の部屋に固い壁に囲まれた美九は、全ての能力が奪われたのと同じ状況なのだ。

もっとも、彼女がまだ外に出たがるとは到底思えなかったが……

 

令音は小さく「ちがう……違う……」とだけ、光の消えた目でつぶやく美九を眺めた。

 

 

 

 

 

深夜のオフィス街――そのビルの屋上に、ペドーが立っている。

まばらな明かりに照らされたビル群。

空の星よりも輝く都会の社畜たちの光……

 

「あの何処かに――第二の幼女が居るんだな?」

ペドーの隣。音もなく狂三が立っていた。

 

「ええ、そうですわ……にしても、ペドーさんやる事がえぐいですわよね?

なんと言うか、力を貸していいのか私大分不安に成って来たんですけど……

あと、ほぼ確実に忘れているんでしょうけど、十香さんも此処にいますわ」

 

「え、そうなの?」

すっかり忘れているペドーを見て、狂三が何ともいえない顔をする。

さっきまで、美九の能力から解放された四糸乃によしのんを返して、くるみをみて「うんやっぱりこっちの方が良いな」と狂三に可哀想な顔をして、シェリに抱き着こうとして蹴飛ばされていた。

 

「はぁ……もっと……幼女と、触れ合っていたかった……

むふふ、みんなともっと――」

寂しそうにしながら、ペドーが遠い目をする。

じっと見ている内に、どんどんペドーの妄想が加速していく!!

 

「さ、さぁ!!早く行きますよ!!」

コレ以上は危険だと判断して、狂三がペドーを急かした。

 

その瞬間――

 

うぅううううううう☆!!うぅううううううううう☆!!

 

その音は、ついこの間も聞いた空間震警報の音。

一瞬精霊が来るのかと、身構えてがひょっとしたらの可能性が、ペドーの脳裏をよぎる。

「このタイミングって事は、まさか?」

 

「ええ、おそらく本当の空間震ではなくDEM社の仕業でしょうね。

コンビニや、無関係の人をシェルターに避難させて地上から目を無くすのが目的でしょうね」

狂三の予測した通り、数人の人間がシェルターへと避難している。

恐らく、向こうにこちらの事はすでに分かっているのだろう。

 

それを表す様に、空に銀色のボディのマシンが数体浮かぶ。

バンダースナッチ。DEM社の作った機械仕掛けのウィザードだ。

そして、地上には装備を身に着けた人間のウィザード。

 

「まぁまぁ。皆さんお揃いの様です――わね!!」

狂三の合図と共に、彼女の影から大量の狂三が湧き出る!!

皆銃を構え、ウィザード達を攻撃する。

 

「ペドーさん、今からDEM社の第一支社に乗り込みますわ。

そこが一番第二の精霊が居る可能性が高いですわ。

しっかり捕まっててくださいましね?」

狂三がペドーを背負い、高速で走り出す!!

 

「狂三……さっきのヤツ……」

 

「ええ、わたくしの影ですわね」

 

「黒いし、ゴキブリみたいだよな!!」

 

「叩き落としますわよ!?――――っとぉ!?」

まさかの一言に、美九が背中のペドーを怒鳴りつける瞬間。

何者かが、狂三の足を引っかけた!!

狂三はバランスを崩し、空気中に放り出されたペドーは2本の細腕にお姫様抱っこの体制で捕まった!!

 

「ニーソマン――じゃなくて兄さま無事でいやがりますか!?」

その相手はまさかのペドーの実妹真那だった。

新型の見たことのないワイヤリングスーツを身に纏っている。

 

「真那!?どうして此処に……ハッ!?

そうか、お前もDEMの社員だったな……

仕方ない、幼女の為だ。お前だろうと戦う――」

 

「そっちに至っては大丈夫でやがります。

真那は今、フラクシナスに身をよせているんです。

それよりも気を付けてくだせぇ、コイツは兄さまを攫ってタイヘンなヘンタイプレイをさせようとしてたにちげぇありませんよ!!」

真那の言葉に、ペドーが自身の体をかばうように胸の前で手をクロスさせた。

 

「……しませんわよ!!」

 

「といった次の瞬間には、服を脱いで、物陰に連れ込んで……」

 

「ビデオカメラ召喚からの、撮影マニアックプレイを強要するにちげーねぇです」

スーパー変態プラザーズが、こそこそと耳打ちし合う。

余りに息の合った、まるで事前に打ち合わせでもしたかのような二人!!

 

「なんですの!?この二人は!!」

狂三が地団駄を踏んで暴れる。

 

「……ペドー……無事……で良かった」

 

「折紙!?」

真那の後ろから、包帯を巻いた折紙が出てくる。

 

「あー、姉様は此処に来る途中見つけたんで……

帰る様に言ったんですけど、聞かねーんですよ……」

 

「折紙、大丈夫か?なんか、俺に出来る事は無いか?

結婚以外で」

 

「なら、公開種付――」

 

「待て待て待て!なんなんです!?

此処敵地の真ん中ですわよ!?」

狂三が折紙の言葉を遮った。

 

「これで我慢してくれるか?」

そう言いながらペドーはズボンから器用に下着を脱ぐと折紙に渡した。

 

Excellent(すばらしい)。元気百倍……!」

いそいそと頭にペドーの下着を被った折紙が、鼻血を流す。

 

「この町には変態しかいませんの!?

うわぁああああ!!かかってらっしゃい!!私が相手ですわぁああああああ!!!」

驚異の変態率の前に狂三が、遂に作戦すら捨てて、一人第一支社に一人勝手に特攻をしていった!!

 

「最近の切れやすい若者はこえーな」

 

「同感でやがりますね」

 

「……下着のフィット感が……やばい」

三者三様の様子で、一人走り去っていった狂三を眺めた。

その時、ペドーの足もとで火花が散った!!

 

ババン!!ババンバァン!!

 

「うわぁつ!?」

ふと、視界をずらすと数人のウィザードに囲まれていた。

どうやら、ジリジリと距離を詰められた様だった。

 

「兄さま、先に――」

 

「行って」

二人がペドーをかばうように、武器を構える。

一瞬の躊躇の後、ペドーが二人に背を向けた。

 

「無理だけはすんなよ!!」

 

「はい、兄さま!」

真那が走るペドーに、インカムを投げ渡す。

 

「真那……」

 

「さぁ、義姉様も感じてるように、()()()()()来やがりますよ」

二人の目の前の壁を内部から叩き壊し、紅い機械の怪物が現れた。

人の身ほどの巨大な剣、大きすぎる2門の巨砲――ミサイルポッドと融合したスラスターを兼ねる、機動系。

そしてその怪物を動かす為の――

 

「ジェシカ……」

 

「ハぁ、い。マナぁ……まえ吾、また、あえて嬉しい、ワ……

おや、ソッチハ、おりがミじゃない?わ、わたしに恥をかかかかかっかセタ、罪は重いワ!!

けど、うれレレしいいいいいいワ、漸くあなたアチを壊せるからぁあああああ!!!」

真那は全身に血のにじんだ包帯を巻き、明らかに正気を失った嘗ての同僚を悲しそうな目で見た。

 

 

 

 

 

『ペドー君聞こえますか!!』

 

「神無月さん!!これは、心強いですね」

最後まで真那の助力を受けて、ペドーは一人DEM社の支部に走り込んでいった。

そこには数人のウィザードが倒れ、奥まで続いていた。

 

「神無月さん、突然ですけどDEM社の内部ってスキャン出来たりしません?

怪しげな場所を探して――」

インカムに、声を送るが――

 

『ザー、ザザードー君……ザー、ジャミン、ザーザー

強くてザザー、話がザザー、ザザザー……応援を……ザー、ザーたよ……』

殆ど内容は砂嵐。僅かに聞き取れた情報から整理すると恐らくだがジャミングか何かがされて、居るのだろう。

真那と折紙は外で、この場所に敵が入らない様にしてくれる。

狂三はこの内部で、敵を引き付けてくれている。

だが、ペドーは敵地の真ん中で素手のみで応援すらない状況だ。

 

「ここは慎重に、いかないとな……」

自身の中から、精霊の力を取り出し、小振りの〈サンダルフォン〉を呼び出す。

何時もの大きさでは、この閉鎖空間では大型武器は非常に使いづらい。

くるみの〈ザフキエル〉では近距離に入られた時、反応出来ない。

そして何より――

 

「お前が、ウワサのガキだぁな!?」

 

「捕縛する!!」

 

「止まれェ!!」

 

「うわっと!?いきなりか!?」

廊下を走って来た3人の職員が、ペドーに銃を向け発砲する。

ゲームや漫画とは違う、リアルな血の通った『同じ人間』が自身を敵と認識しているのだ。

なかなかに精神的にきついモノがある。

 

「四糸乃は、こんな気持ちだったのか?」

ヒュン!

一発の銃弾が、ペドーの頬をかすめる。

今まで味わったことのない、痛みだ。

 

「シェリちゃんは、こんな事ばかりの世界で生きて来たのか?」

気が付くと、小さなナイフが腹に刺さっている。

僅かに教えられていた、『戦いだけの世界』の話。

シェリはこんな痛みを味わっていたのだろうか?

 

「だが、折れる訳にはいかないんだぁああああ!!」

ペドーが剣を振るって、銃弾を交わしウィザードに肉薄する!!

だが、分かる。間に合わない。相手のナイフの方が先にペドーを……!

 

「くそ、せっかくここまで――」

 

「ガンバったなら、あきらめるなよ!!」

ウィザードが横から照射された、光線によって突き飛ばされた!!

さらに、空気中を飛んで来た銃弾が氷の盾に、寄って阻まれた。

 

「ぺどーさんだいじょうぶですか?」

この能力は見たことが有った!!

この声は聴いた事があった!!

 

「みんな……来てくれたのか」

ペドーの目の前には3つの小さな影!!

虫眼鏡を構える、褐色肌のボーイッシュな幼女!!

フードを被り、おずおずとしながらも気丈な目をするパペットを付けた幼女!!

そして最後に、黒いゴスロリに身を包んだ若干舌足らずな、一層幼い幼女!!

シェリ、四糸乃、くるみの3人が目の前に武器を構えていた!!

 

 

 

 

 

「ぐぁ!!」

 

「ああっ!!」

折紙、真那の両名が怪物――スカーレットリコリスによって、壁にたたきつけられた。

意図的なチューニングをされたと思われる、ジェシカはすさまじい力を誇っていた。

それは、新しい装備を支給されたとは言え、久しぶりの実戦、しかも怪我を負った折紙を庇ってでの戦闘は非常に厳しい物だった。

 

「マナぁ、おりがみぃぃぃぃぃ、遊びマショウよ?

ほら、ほらぁ!!コわれるまで、もっと、もっと!!」

ブレードを構え、二人の首めがけてスカーレットリコリスが飛び込む!!

 

『俺とも遊んでくれ!!』

 

「へ!?」

スカーレットリコリスの前に、何者かが入り込んだ!!

 

『相撲か!!悪くない!!』

ソレは両手を伸ばして、スカーレットリコリスと正面からぶつかった!!

凄まじい勢いで地面を踏んで減速していく!!

 

「あ、何者!?」

 

「おいおい、何やってんだぁ!!ささっと退けろぉ!!」

スカーレットリコリスの後ろ、何者かが機材をつかみ正面の者と二人でリコリスを横に退けた!!

 

『ふっ、俺の活躍を見たな!!』

二人の目の前のソレは、人間ではなかった。

シリンダーの見える逆関節の足に、サングラスの様なシルバーのカメラアイ。

それは何処かバンダースナッチを人間に近づけた様な姿だった。

 

『スズモト!!相撲で後ろから攻撃するのは反則ではないのか!?』

 

「ヒャッハ!!あれは相撲じゃねーって言ってるだろ!?」

そして、瓦礫を退かして歩いてくる男に二人は見覚えがあった。

世紀末風のスーツをメタリックにし、近未来風に。

世紀末なのに近未来という矛盾したコンテンツ、そして頭のヘルメットから突き出た巨大な『モヒカン』。

 

「「ヒャッハーさん!!」」

 

「ヒャハ!!二人とも久しぶり――」

 

『俺の活躍はどうだ!?最高だろう!!至高だろう!!』

 

「ひゃは!?邪魔すんな!!」

ヒャッハーさんの言葉を邪魔して二人の前に躍り出たバンダースナッチの様な機械をヒャッハーが再度退かす。

 

「バンダースナッチ?それにその装備は……?」

真那が不思議そうに、見る。

バンダースナッチの様な機械も、ヒャッハーさんの装備もフラクシナスでもDEM社でも、ASTでも見たことが無かった。

 

「ヒャハ!ちっと、他のとこで拾われな!!

相棒ももらっちまった!!」

 

『俺の名は、G―XS!!気軽にシーズで良いぞ!!』

バンダースナッチの様な機械、自称シーズはそう名乗った。

 

「何なのぉ!?じゃまは、ささあああああ瀬世させない!!」

スカーレットリコリスを操り、ジェシカがすさまじい勢いで走り込んでくる。

今度は遊びでは無い!!本気で4人を倒すべき、力を見せる!!

 

「ヒャハ!!いきなりだが、アレやってみるか!!シーズ!!」

 

『問題ない!!転送装置起動!!』

シーズがポーズを取ると、彼に向かって何かのパーツが転送され始まる。

それをみて、ヒャッハーがそのパーツの集合場所に飛び込んだ!!

シーズの体に、パーツを挟んでヒャッハーの持つスーツと合体する!!

 

『同調完了!!負担軽減!!システムオールグリーン!!

何時でもイケるぞスズモト!!』

 

「ヒャッハー!!行くぜ!!

Gaia―guard―gloria―gospel―eXtreme!!」

それはかつて、ヒャッハーが暴走させた、4Gによく似ていた。

だが、今度は違う!!黄金の白銀に飾られた、かつての戦闘マシンは今、真の意味で大地を守護する栄光の福音へ変わる!!

 

「さぁ!派手に暴れるゼ!!4G―X起動だぁ!!」

ヒャッハーは大きく飛び上がった!!




4G―X

以前問題に成った、4Gの改良作。
以前は人間の脳を戦闘コンピューターの補助に使ったが、今回は上級AIを外付けする事で人間の脳への負担を減らした。
しかし、AIというワンクッションが存在するため、一瞬の遅れが出る。
その解決策は、AIに高度な人格を与え、装着者と共に生活させ、行動を予測させる新たなアプローチ通称『バディシステム』に在る。
当然だが人間一人につきバディAIが必要となる。

人間一人一人に、高度なAIを持たせ、さらに意思疎通までの時間が短くするための『慣らし』の時間が必要であり、人間又はバディAIのどちらかが引退すると当然使用は不可能になるため、量産は不可能として見送られた。
なお、バディAIに人間らしい人格をプログラム出来るプログラマーが非常に少数な為もあり計画は、完全に見送られた。

G―xs
通称シーズ。
天才プログラマー伊草により制作されたバディAI。
4Gの戦闘計算と人間の戦闘計算を複合させ、その同時を人間の形に合うようにすり合わせるのが仕事。
本体でもそこそこの戦闘が可能。
なおネーミングはG―system supporterの意。

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