デート・ア・ペドー   作:ホワイト・ラム

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今回は所謂つなぎの回。
大きく動くところの無い回ですが、ちょっとした要素を追加しておきました。


招・集・奏・者!!

「バンドをやろう」

 

「む?」

 

「意図が分からない?」

美九との約束から一日たった、日の放課後。

再び士織ちゃんモードへと変身したペドーが、十香と折紙二人に告げる。

話は昨日の夜に戻る。

 

 

 

 

「プロのアーティストに、作曲の依頼をして。

ソレから敵勢調査としてスパイを3人、あくまで妨害は最終手段で基本ぎりぎりで勝つわよ」

フラクシナス艦の中、琴理が珍しく使える指令官として指示を出していく。

イライラしたペドーが美九に勝負をふかっけたため、勝つために多分の努力を始めたのだ。

大型戦艦の司令官が、文化祭に対してここまで手を出すとは思っていなかった。

 

「さ、あんたはバンドのメンバーを集めなさいよ。

コレで負けたら許さないんだから」

口調は厳しいが、こちらに対する信頼が聞き取れる表情だった。

 

「琴理……ありがとな。

お前だって文化祭楽しみに――あ、一緒に回る友達いないから大丈夫――」

 

「うっさいわよ!!」

申し訳なさそうな、顔をするペドーに琴理がしかりつけた。

 

 

 

 

 

「ま、はじめはバンドをする交渉からなんだが……」

ペドーが現在バンドの練習をしているメンバーのいる音楽室へ向かうが――

 

「む?どうしたのだペドー、入らないのか?」

音楽室の前、突如動きを止めたペドーを十香が不審がる。

 

「ん――ちょっとな……」

数歩だけそう言って、後ろに下がった瞬間!!

 

「やってらんないわよ!!」

 

「アンタたちだけでやりなさいよ!!」

罵声と共に二人の生徒が扉を勢いよく開けて出て居く。

扉を開けた衝撃を十香が受けるが、前もって離れていたペドーは無傷だった。

 

「お、タイミング良く喧嘩してるな」

ペドーが音楽室に入ると亜衣麻衣美衣の3人が楽器を手に騒いでいた。

 

「ん、士織ちゃんじゃない……」

 

「どーすんのよ!!もう私たち3人しかいないじゃない!!」

 

「マイン君は、ウルトラ不器用で楽器ダメだし……」

 

「オーウ、ひどいデース!!木魚なぁ~ら、ヒケます!!」

端に居たマインが、エア木魚をポンポン叩く。

 

「楽器じゃねーじゃん……」

士織ちゃんモードの口調すら忘れ、ペドーがつぶやいた。

尚もマインは楽しそうに、木魚を叩き続けている。

 

「むむ、なんだそれは?面白いではないか」

興味を持った十香がマインに近づいていく。

 

「やりまーすか?」

 

「うむ!」

二人が楽しそうに楽器を見る。

 

「で、3人追加でいいの?」

麻衣が十香と、ひそかに楽器を確認している折紙が見えた。

 

「あ、うん……3人追加でおねがい……」

 

事情を知らない3人に対して、手短にそしてうまくごまかせて竜胆寺に勝とうとしている事を説明する。

 

「よーし、んじゃ出来る楽器はなに?」

 

「ギターが少し……」

亜衣の言葉にペドーが答える。

正直小学生くらいの子に教える積りで覚えたのだがまぁ、良いだろう。

 

「一日経ったら覚えてくる」

 

「あ、うん……」

無駄に折紙の言葉に説得力を感じるペドー。

亜衣麻衣美衣の3人も同じにおもったのか、何も言わずに了承している。

 

「ねぇ十香ちゃんは――」

 

「いいですネ!木魚のリズム!来てマース!!」

 

「おお!木魚のパワーか!!」

ぽくぽくポクポクぽくぽくポクポクぽくぽくポクポクぽくぽくポクポクぽくぽくポクポクぽくぽくポクポクぽくぽくポクポクぽくぽくポクポクぽくぽくポクポクぽくぽくポクポクぽくぽくポクポク……

 

「うるせぇー!!静かだけど、うるせぇぞ!!」

ポクポク地獄に他のメンバーが突っ込みを入れる。

 

「とりあえず、十香ちゃんの楽器は決まったわね」

 

「さすが十香ちゃんにマイン君……

難解な楽器をこうもたやすく……!!」

 

「木魚……まさか、こんなすごい能力があるなんて……!!」

亜衣麻衣美衣の3人は非常に適当な事をいって十香をその気にさせていた。

 

「木魚があるバンド……?」

ドラムや、ベースやギターに混じって隅っこの方で木魚をポクポクしている様を想像するが、なんとも言えない気分になる。

 

「ミストマッチ……」

その後も誰がボーカルをするのか、どんな歌を歌うのかを相談しながら時間は過ぎていった。

 

 

 

 

 

同時刻――竜胆寺女学院会議室。

 

「ねぇ、皆さん、私一日目のステージの立つ事にしました」

美九の言葉に、会議室のみんなが騒然とする。

 

「本当ですか、お姉様!?あんなに人前に出る事を嫌がっていたのに!!」

 

「お姉さまの力があれば、優勝間違いなしです!!」

色めき立つ会議室、美九はそんな嬉しそうにしているみんなを微笑みながら見ていた。

 

「早速準備をお願いしますねー。

ああ、せっかくなら新しい衣装も欲しいですし、バックダンサーも生徒の中から選ばないと……」

嬉しそうに、指折り用事を数えていく。

しかしそんな中――

 

「ま、待ってください!!

そうなると、一日目に準備していた吹奏楽部の演奏はどうなるんですか!?」

美九の横に座ってた眼鏡の生徒が、恐々といった感じで立ち上がる。

 

「うーん、そうですねぇ。

気の毒ですけど、吹奏楽部の皆さんには今回はご遠慮してもらいましょうね。

私が出れば勝てるのは確実だから良いじゃないですかー」

なんの憐れみも無い、淡々とした口調で美九が言い放った。

 

「そんな!みんな、必死で練習してたんですよ!?」

その生徒の言葉に会議室の他の生徒がざわめきだす。

美九の歌はみんな聞きたい。それは確固として揺るがぬ意思なのだが、吹奏楽部の生徒の言い分も正しいと言えるのは分かっている。

 

「あの、非常に申し上げにくいのですが……

コレから新しい服を用意するとなると、予算がもう……」

物理的な壁、それが見え始め会議室全体にざわめきが広がっていく。

 

【いいから、私の言う通りにしてください】

美九の声に、一瞬にして会議室がシンと静まった。

 

「ではお願いしますねー」

水を打ったような会議室は美九の声で再び動き出した。

『はい、お姉さま』とひどく感情の無い声で言った。

 

 

 

 

 

9月22日。

駐屯地で、装備の整備をしていた折紙は小さな違和感を感じていた。

それは一言で言えば違和感。まるで精霊との決戦を前にしたかのような、張りつめた糸のような雰囲気。

 

「…………」

端末の情報で、大きな作戦でもあるのかと確認したがそのような情報は無い。

記憶を探ってみてもそれは同様だった。

 

ならば――

 

「ふみゅん!?」

折紙は自身の近くを通りかかった、ミルドレット――通称ミリィの白衣の襟をつかみ捕まえる。

若干おかしな声を出し、ミリィがこちらを恨めしそうな顔をする。

 

「一体いきなり何をするんですかー!!

ミリィの延髄に障害が出たらどうするんですか!!」

プンプンとミリィが起こって見せるが折紙がそんな事気にしない。

 

「何か大きな作戦でも近々有るの?トラロック?」

 

「ええ、そうですよ?知らないんですか?

まったく、リョウコは肝心な時に使えないんですからー。

いいですか?明日は――」

 

「ストップ。就任さン、それ異常は禁則事項ヨ」

海外部隊から配属された――確か寿司を食べてトイレに行っていた女がミリィの口をふさぐ。

 

「ごめんなさい、上からの命令でお教えする事は出来なんです……」

ミリィが悲しそうな声で告げる。

 

「なぜ……?」

 

「うふふ、上槽部の毛っ定よ?文句なら上に言うのネ」

勝ち誇った顔をして、トイレに行ったいた女が去っていく。

 

「ハウ!?ポンポンがエイク(痛い)!!

な~ぜ?テンプーラが当たったカ?それとも、デザートのスイカが?」

 

「食べ合わせですね」

ミリィの言葉を示す様に、トイレの女が再びトイレに向かって走っていく!!

 

「……アイツ、いつもトイレ行ってんな」

折紙が去っていく女を見てそう呟いた。

 

 

 

 

 

その日の夕方――

 

「はぁー、ちかれた……」

士道の恰好に戻ったペドーが、家路を急ぐ。

手には買い物袋、夕飯の買い出しなのだがその表情はすぐれない。

 

フラクシナスがバックアップしようにも、相手は声で他者を魅了する能力の持ち主だ。

たいしてこちらは、素人バンドと木魚ポクポク女。

戦力が大幅に負けている気がする。

 

「いてッ――!」

ギターの弦をはじきすぎたせいで、指が痛い。

小さく舌打ちして歩くが――

 

「あ、くるみ」

目の前にくるみがいつの間にか立っていた。

ペドーを視界に居れた瞬間――

 

「ぺ、ぺどーさん!!」

目に涙を溜めて抱き着いてきた。

 

「おお、どうしたどうした?」

優しく抱き返して、くるみの髪の臭いをクンカクンカする。

 

「ぺどーさん、やめてくださいまし」

若干不機嫌になって、くるみがぺどーから離れる。

 

「いったいどうしたんだ?迷子か?携帯を持たせたハズだけど――」

以前令音が、迷子に成らない様にと外出時に持っていく携帯を共用として用意していたのを覚えていた。

 

「つかいかたが、わかりませんの……」

罰が悪そうに、くるみがポケットから携帯を取り出す。

なるほど、確かにくるみにはすこし難解な道具かもしれない。

 

「よーし、ここはお兄さんがつかいかたを教えてあげようねぇ!!

このボタンをおして、この番号を選んで――」

 

ピポパと、

 

くるみの持つ電話を操作させる。

 

「こ、コレですの?」

 

ぷるるるるるる!!ぷるるるるる!!

 

「ひう!?」

自ら発したコール音にくるみが驚く。

そして――

 

ガチャ

 

『もしもし、くるみですかー?』

自身の持つ電話から聞こえてくるペドーの声に、ぱぁっと顔が明るくなる。

 

「ぺどーさん、きこえていまして?」

 

『もちろんだよー。今度はコッチから電話するぞ?』

目の前に居るのだが、あえて携帯で会話する二人。

くるみは携帯を切り、ペドーからくる着信を待つ。

 

ぴりりりり!!!ぴりりりり!!

 

『ぺどーさんですの?』

さっきと同じく、くるみが驚くが今度は笑って電話をとる。

 

「そうだよー」

ここでふととある事を想いつくペドー!!

さっそく、その思い付きを実行に移す。

 

 

 

「はぁ、今日も泊まりかしら……」

空中艦フラクシナスのなかで、琴理がため息を付く。

勝負の日まで時間がなく、様々な事を同時進行で行わなければならない。

幸い人員に不足はないので、致命的な事にはなっていないが――

 

「篠原、ライブで背景に流す用の映像は――」

 

「むっひょー!!!私個人の中で、美九×士織キマシタワー!!

男とかむさくるしいモノ要らんかったんや!!」

メンバーの一人が、この前のペドーと美九の二人が一緒にいる写真を加工して遊んでいた。

背景に怪しい百合の花を咲かせたり、合成で士織に首輪を装備させ、美九には乗馬鞭を装備させている。

 

『泣きながら『あなたの事が大好きです』って言わせたいで――』

 

「最高や……」

タイミング良く、微妙に加工した美九の声を混ぜれば少し特殊な指向向けの映像に変わる。

その姿を見て、琴理が怒り出す。

 

「何をやって――」

 

「何をやっているんですか!!ここは美九×士織じゃなくて、士織×美九でしょうが!!」

 

「なにぃ!?おねー様の方が上に決まってんだろうがJK(常識的に考えて)!!」

他のメンバーが喧嘩を始める。

 

「アンタら――」

 

ぶるるるるる!!

 

「うひゃ!?携帯……ペドーからね。

なによ?今どっかのペド野郎のおかげで忙しい――」

 

『くるみと携帯で会話したんだよ!!

電話かけると、振動でびくッっとするんだよな~

振動、つまりバイブ!!俺の操るバイブで驚くくるみちゃんくぁわい――』

 

ブッチ!!

 

「何なのよこいつら!!変態しかいないの!?

何なのよ!!」

携帯を思いっきり床にたたきつけて、琴理が激しく慟哭した。




ああ……禁断症状が……やばい……

マジキチアニメが見たい……日曜7時くらいの……頭空っぽで見れるアニメがみたい……
安心して見れる、馬鹿ばっかりやってるアニメの偉大さに最近気が付きました。

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