デート・ア・ペドー   作:ホワイト・ラム

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さてと、今回からは第6の精霊です。
ペドーさんとは仲良く……成れないだろうなー
暴言等が出てくるので注意です。


美・声・歌・姫!!

『でねー、でねー?』

夕焼けに染まる町の中、ペドーが四糸乃とシェリを連れ家路につく。

よしのんが楽しそうに、声を漏らせば四糸乃が優しく肯定する。

その少し前をシェリが、少し不機嫌そうに歩いている。

 

「いやー、帰るのが遅く成っちゃったな……」

玄関の前、3人がドアを見る。

 

「くるみがすっごく心配してたぞ?」

 

「本当か?」

 

『ペドー君を探しに行こうって、はじめに言い出したのはくるみんなんだよねー』

ペドーの疑問に、よしのんが答える。

 

「けど、暗く成ってきたから、お留守番してもらって……」

 

「なるほどね」

3人の会話を聞いて、ペドーが納得する。

最年少のくるみを置いての年上組の捜索、きっとこの町をあまり知らない四糸乃は不安だっただろう。

そして、四糸乃以上にこの町の知識が少ないシェリ、勝気な性格の彼女の事だ。

不安そうな四糸乃を連れ、自ら先行して探しに来たに違いない。

ペドーは自らの、不手際と浅慮を反省した。

 

「二人ともごめんな。忙しくてすっかり忘れてしまったんだ。

けど、迎えに来てくれてうれしいよ。ありがとな」

二人を抱きしめて、優しく話す。

 

「ぺ、ペドーさん、今度は気を付けてくださいね?」

 

『よしのんとのお約束だよ~?

破ったら針千本のーます!!』

 

「ま、まぁこれ位なら……」

素直に話す四糸乃とは対照的に、シェリが照れた様に自身の頬を指で掻く。

一方ペドーは――

 

「ハスハス……幼女の香りだ!!視界一面幼女!!

吸い込む空気が幼女の香り!!!」

 

「…………」

シェリは無言で膝をペドーの顔面目掛けて、引き上げた。

 

ガスッ!!

 

 

 

 

 

「あ、ぺどーさん、おかえりなさいまし!

かえりがおそいので、しんぱいしましたわ!」

玄関を開けると、目の前のくるみが待っていた。

どうやらずっと玄関先に居たらしい。

 

「あら?なんではなぢがでてますの?」

 

「ふっ、やんちゃな子猫ちゃんに、イタズラされたのさ」

無駄に凝ったキメ顔でペドーが微笑む。

 

「寂しい思いをさせたねー、ごめんねー!」

 

「きゃ!?ぺどーさん!?」

カバンと制服のブレザーを脱ぎ捨て、ペドーがくるみに飛びつく!!

ペドーの衝撃でくるみが床にぶつかる瞬間、ペドーがくるみと体の位置をひっくり返す。

 

「はぁ、幸せな重み……」

地面にあおむけで寝転がるペドーの上に、くるみが乗っかった状態に変わる。

そしてそのまま、足を動かし寝たまま地面を這いずる!!

 

 

 

 

 

『いいかね?君の兄上の不調を注目してみるんだ。

最悪の手段を取らない様にするのが、キミの仕事だ』

ソファーに座った琴理がフェザーマン(名前うろ覚え)に言われた言葉を自身の中で反芻する。

帰りが遅い、連絡も無しに何が起きているのか……まさか?

『最悪の場合』を想定して、何度も頭を振るう。

そうだ、大切なのはそうならない事、つまりは自分のサポートが重要だという事だ。

小さな変化、おかしな行動も見逃さない。

琴理が小さく自分の中で、誓いを立てる。

そう、私がいる。私がペドーを救――

 

ガチャ!

 

「ただいま琴理ー」

 

「ッ!ずいぶん遅――何してるの!?」

ドアを開けたペドーがまるで自らをサーフボードにしたようにくるみを乗せて部屋の中を這いずりまわる!!

琴理の座るソファーの周囲をぐるぐると回転する。

何かの映画で、サメがこんな風に遭難者を取り囲むシーンが有ったな。と琴理が思う。

 

「お、十香も来ていたのか」

 

「おお、ペドー、おかえりだぞ!」

ゲームをしていた十香がこちらを見る。

 

「よーし、遅くなったお詫びだ。今日は腕によりをかけてハンバーグを作っちゃうぞ!」

 

「ほんとうですの?」

ペドーの腹の上、くるみが喜び立ち上がる。

その結果くるみの体重が鳩尾に加わり……

 

「どうしたんですの?ぺどーさん?」

 

「ちょ、ちょっと、興奮しただけだよ!!」

誤魔化すようにペドーが笑う。

シェリと琴理は自体を理解したように「いたそー」とつぶやいていた。

その時――

 

うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅうううううううぅぅ☆

 

「むむ、空間震か!?みんなで夕食はまた今度だな」

 

「なんで死亡フラグっぽいこと言うの!?」

ペドーの言葉に、琴理が叫ぶ。

 

 

 

 

 

「鳶一 折紙。本日付けで謹慎は終了だ。

ASTへの復帰を認める……

次は無いと思えよ?」

厳つい顔をした男、日坂が厳しく釘をさす。

 

「は、了解――」

折紙が口を開いた瞬間、その部屋に侵入者が現れる。

 

「これは何ですか!?」

姿を現したのは、日下部 燎子だった。

 

「外国人の補充が10人!?しかも、特例によって独自行動の許可まで……!

一体どうなっているんですか!?」

仮にも国家の一部を担うAST、そこに好き勝手出来る権限を持った外国人部隊とは明らかにおかしい話である。

 

「いや、だって。お金貰ったし……」

 

「頭腐ってるんですか!?」

申し訳なさそうに、札束を取り出す日坂を燎子がしかりつける。

その時、再びドアが開く。

 

入ってきたのは、10名ほどの外国人たち。

先頭の赤髪の少女が、二人を視界に収めて声を出す。

 

「あ羅?死霊で見た顔ネ、確かトビイチ オリガミとASTの体調さんよね?」

なんだか文字化けと、誤字を盛大にしまくったような口調の女だった。

 

「京漬けで、配属されることになった、ジェシカ・ベイリーで酢。

夜露死苦ね!」

 

「何をしに来たのかは知らない……けど、ここの隊長は私、私の指示に従ってもらうわよ?」

 

「あなたに従えば、精霊を倒せると?ここ数ねん、精霊を大量に発見しながらも、今谷一帯も倒せていない、おままごとチームだってネ」

ジェシカの言葉に燎子が顔を歪ませる。

 

「おままごとはどっちよ!!あんたんトコの社長なんか赤ちゃんプレイ野郎じゃない!!」

 

「あ、赤ちゃんプレイ野郎!?べつに伊井でしょ!好みは人それぞれ……」

流石に厳しかったのか、ジェシカが苦し紛れに反論する。

 

「け、けど強さなら、私たちの方が上ヨ!

ホワイトリコリスと4Gなん手、欠陥品を使ったけど、結局勝てなかったンデショ?」

 

「…………」

ギリッと折紙が歯ぎしりする。

そして時間を置かずに、空間震警報が鳴りだす。

仕事だ。折紙は自身の中のスイッチを入れる。

 

「丁度良い話。私たちの強さ、見せてあげるワ」

ジェシカがニヤリと意味深な笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

「ここは――ステージ?」

フラクシナスにより、送りこまれた場所をペドーが確認する。

周囲にはスプーンでえぐり取られたような、クレーターが出来ており精霊の出現をいや応なしに感じさせる。

 

「これは……歌?」

ステージの中、かすかな歌がペドーに耳に届く。

まさかと思うが、ステージに顔をやると誰かがいた。

観客もスタッフも居ない、一人きりの孤独なステージ。

しかし、そんな中でも彼女は煌びやかで、神聖な雰囲気さえ出しながら歌っていた。

 

『アレはまさか……〈ディーヴァ〉?』

 

「デーブ?」

 

『違うわよ!!』

インカムから聞こえる琴理の怒鳴り声を予想して、ペドーがインカムを耳から外す。

 

「おい、説明」

 

『この……!

はぁ、〈ディーヴァ〉半年位前に、一回だけ出現が確認された精霊よ。

その一かいこっきりだから、正確能力いずれも不明。

接触するなら、気を付けてね……』

 

「うわ、スゲェデブ……帰って良い?」

胸部に目をやり、げんなりしたペドーが踵を返そうとする。

正直な話、幼女以外に興味なし!!

 

『帰んな!!攻略しなさいよ!!』

再び耳から外したインカムから、琴理の声が漏れる。

だが、今度反応したのはペドーだけではなかった。

 

「あら、誰かいるんですか?

丁度退屈していた所なんです、もしよかったらお話しませんか――」

優し気な声を響かせ、こちらを精霊が探す。

 

『どうやら、会話は可能な様ね……こっちでサポートするから、接触してみてくれる?』

 

「りょーかい」

しぶしぶと言いたげに、ペドーが歩き出す。

 

 

 

高度一万5000メートルにある、空中艦〈フラクシナス〉そこで琴理たちが画面に映る選択肢を見る。

 

「選択肢ね――、全員選択!」

今回の選択肢は4つ。

①「あまりにも君が綺麗だから、見惚れてしまったよ」

②「君の歌――すごくきれいだね」

③「下からの眺めは最高だったぜ、ぐへ!ぐふふふふ!!」

④「ここからは俺のステージだ!!」

 

ポチポチと、選択肢が集まってくる。

やはりと言うか、最も人気のあるのは②だった。

 

「さすがに④はいないわね……ん?

だれよ、③に入れたの?神無月?」

 

「違います!!私は①に入れました!!」

 

「え、じゃあ……」

 

「すいません、私です……」

琴理の言葉に、一人の職員が手を挙げた。

比較的まじめな、職員でなぜこんなモノを選んだ不明だ。

 

「その、歌に聞き覚えがあって……、手が滑って③を押してしまい……」

 

「間違いって事ね?けど、聞き覚えがある?」

少し納得いかない感情もあるが、琴理はペドーに②を言うように指示した。

 

 

 

 

 

ペドーは意を決して、ステージに足を掛ける。

その様子に精霊も気が付いた様だ。

 

「あら、わざわざ出来てくれ――」

 

「やぁ、君の歌――とても綺麗だ――」

ビーッ!ビーッ!!

その時、ペドーの耳にけたたましいアラームが鳴る!!

この音は、精霊が不機嫌な時のアラームだ!!

 

『ちょっと、何したのよ!?』

 

「え、いや……何も……してない、ハズ?」

しかし未だにアラームはとどまらない!!

 

『好感度が下がっています!!ま、まさにゴキブリレベルです!!!』

 

「え、ええ?」

混乱するペドーを他所に――

 

「わッ!!」

精霊が突然、声を荒げる!!

音の壁、ともいえる衝撃波がペドーをステージから押し出そうとする!!

 

「わわ、と、と!?」

ステージの端、落ちそうになり何とか上半身でくっつく。

結構な高さで、堕ちたら少し危なそうな位置だった。

そんなペドーに、精霊がゆっくり近づいてくる。

 

「なんでしがみついているんですかぁ?なんで落ちてないんですかぁ?なんで死んでくれないんですかぁ?可及的速やかに、ステージから落ちてこの次元から消え去ってくれませんかぁ?」

 

「は?いま、なんて?」

一瞬ペドーが何を言われたか分からず固まる。

 

「なんで、しゃべりかけているんですかぁ?止めてくださいよぉ、気持ち悪い人ですねぇ。

声を発さないでください。唾液を飛ばさないでください。息をしないでください。あなたが大気を汚染しているのがわからないんですかぁ?分からないですねぇ?」

余りにさんざんな言い草に、ペドーの中の何かがキレる。

 

「なにを見ているんですかぁ?気持ち悪いですねぇ、不快ですねぇ……視線を合わさないでください」

キョロキョロし始めるペドーを精霊が、不機嫌に話す。

 

「……豚がしゃべった!!」

そしてひどく驚いた様子で精霊を見る。

 

「はぁ?」

今度は精霊が固まる番だ。

 

「ステージの上で豚を飼っているのか?

豚は大人しく屠殺場へ行け!!」

 

「ああ、あああ貴方は!!黙っていたら――」

 

「吠えるな、豚。発情期か?」

 

「きぃいぃいいいいいいい!!」

遂に歯ぎしりを始める精霊、その時――

 

バゴン!!

 

アリーナの天井が破れ、ASTが現れる。

今回来た精霊を狩りに来たのだろう。

 

『隊長、アレを――』

 

『イツカ・シドー……これは行幸!!』

ジェシカがペドーを見つけた瞬間、精霊ではなくそちらに躍りかかった!!

 




今更ですけど、イツカ・シドーって書くとガンダムのパイロットっぽくないですか?

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